AI で実現を促進: Google Cloud が AI を活用して気候変動対策を加速している方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 12 月 3 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
国連気候変動枠組条約第 28 回締約国会議(COP28)が開幕しましたが、より野心的な目標を掲げて対策を講じるうえでタスクが山積みであることは明らかです。国連の最新の分析により、現在の排出量削減の公約では今世紀中に摂氏 3 度近く気温が上昇する可能性があることが判明しました。これは洪水、火災、農地の消失などの災害が世界中で急速に拡大することを意味します。また、上記の公約が果たされない場合は温暖化が著しく進行するおそれがあります。
では、私たちはどうすればよいのでしょうか。国連は、特に高所得で排出量の多い国々による低炭素変革の加速が急務であるとしており、これは Google が貢献できるまたとない機会となります。
Google では、気候変動は現在世界が直面している最も緊急かつ重大な共通課題の一つであると考えており、そのための支援をさまざまな方法で提供しています。Google はパリ協定への取り組みに加え、サステナブルな道筋をつけるという急務において、揺るぎない姿勢を貫いています。さもないと、気候変動による最悪の結果を招くことになるからです。
そのため、Google は 2030 年までに事業所とバリュー チェーン全体で排出量実質ゼロを達成するべく取り組んでいます。これは、すべての送電網でカーボンフリー エネルギーを常時使用するという野心的なクリーン エネルギー目標に支えられています。これは、検索、Gmail の利用、写真の保存や、ビジネスのために Google プロダクト使用している何十億もの消費者やユーザーにとっては朗報でしょう。
Google の取り組みはお客様やパートナーにも及びます。Google Cloud は、クラウドと AI が企業の効率化と持続可能な成長をもたらしながら、炭素排出量の削減に重要な役割を果たす可能性について認識しています。Google が BCG に委託して発表した最近のレポートでは、AI によって 2030 年までに世界の温室効果ガス排出量の 5~10% を軽減できる可能性があることが示唆されています。5% は米国全体の排出量の 3 分の 1 に相当します。
移行の促進という COP28 議長国の目標を支援するため、Google は 3 つのポイントに重点を置いています。そのポイントとは、気候変動に関するデータへのアクセスの改善、気候テック エコシステムの構築、気候変動レジリエンスに対する地理空間分析の可能性の実現を指します。
1. 気候変動データへのアクセスを改善する
現在、企業の温室効果ガス(GHG)排出量や排出削減目標に関する主要データを含む気候変動データは、一貫した方法で報告されておらず、そのアクセスには障壁があることが少なくありません。さらに、企業が排出量を削減して費用対効果を改善できる範囲について、実用的な分析情報を得るのも容易ではありません。
こうした状況を踏まえ、マイケル ブルームバーグ氏が COP28 で立ち上げようとしている Net-Zero Data Public Utility の開設に Google も参入することになりました。
Net-Zero Data Public Utility(NZDPU)の狙いは、一元化されたグローバルでオープンなリポジトリとして、すべての関係者が民間企業の気候変動に関連するデータを自由に利用できるようになることです。参加者は、気候変動に関連する企業レベルの一連のコアデータへ簡単にアクセスして、解釈することができます。つまり、ネットゼロへの移行を実現するうえで重要なステップを達成できます。NZDPU の RFP プロセスを通して、COP28 で開始される NZDPU 概念実証の設計と構築を担当する企業として Google、Insomniac Design Inc.、CyBourn Inc. が選ばれました。
2. 気候テック エコシステムを構築する
Google は、クラウドと AI を活用して成果を上げようとしている気候テックの起業家やスタートアップに支援に尽力しています。
その軸となるのが、あらゆるお客様がサステナビリティへの移行を促進できるよう支援する Google Cloud Ready - Sustainability(GCR-S)検証イニシアチブです。すでに GCR-S の指定を受けた 40 社の気候テック パートナーは、炭素排出量の削減、バリュー チェーンにおけるサステナビリティの改善、組織の気候データ管理の支援、気候リスクの特定によるレジリエンスの改善を目的としたソリューションを Google Cloud 上に構築しています。Google は、クラウド テクノロジー、財務サポート、Google Cloud エコシステム全体のパートナーとのつながりを組み合わせて、革新的な気候テックベンダーが成長を加速できるよう支援してまいります。
3. 気候変動レジリエンスを高めるために地理空間分析の可能性を引き出す
最後にお伝えしたいのは、Google は気候の物理的影響を重視しているということです。地理空間分析は、特にレジリエンスの改善において、気候リスクへの適応をサポートする大きな可能性を秘めています。
地理空間分析は、ビジネス インフラストラクチャやサプライ チェーンに対する気候変動の影響について組織が理解を深めるうえで役立ちます。Google Cloud とそのパートナーは Google Earth Engine、BigQuery、Vertex AI を活用して、短期的な急性リスクと長期的な慢性の気候リスクの両方を可視化しています。
たとえば、Google Cloud Ready - Sustainability パートナーの Climate Engine は、Google Cloud 上で SpatiaFi をリリースしました。Google Cloud と Climate Engine は Deloitte と提携し、英国の NatWest 銀行が Climate Engine の SpatiaFi ソフトウェア プラットフォームと衛星データ アーカイブを組み合わせて利用できるようにしました。これにより、NatWest は農業に従事するお客様向けに主要な気候関連データポイントを取得する際、地理空間データがどのように役立つのかを把握できました。
同様に、2023 年中 Google は、国連の Race to Resilience が地理空間データと分析を活用して気候変動へのレジリエンスと適応を改善できるように支援しました。また、2023 年 9 月のニューヨーク気候週間中には、Google.org と協力してデザイン スプリントを実施しました。困窮しているコミュニティが気候変動から受ける影響を地理空間テクノロジーによって把握し、その影響を軽減するソリューションを導入できる可能性を探るためです。Race to Resilience チームと Google は現在、このプロジェクトを 2024 年にパートナーとともに実施するという次の段階を検討しています。
COP28 の目標は気候変動対策を加速することです。Google は、組織が AI と Google Cloud テクノロジーの力を活用して、低炭素経済に向けてビジネスを測定、最適化、再構築できるようにすることに取り組んでいます。こうした新たなデータ プラットフォームの中心となり、AI の可能性を引き出して、Google は今後も気候テック イノベーターをサポートしてまいります。
-Google Cloud Go to Market 担当プレジデント Adaire Fox-Martin
-グローバル サステナビリティ担当マネージング ディレクター Justin Keeble