健康に焦点を当てた環境データを通じて気候変動への対応を強化する
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 12 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
気候変動は深刻な脅威であり、すでに人々の健康にさまざまな形で影響を与えています。実際、大気汚染の一因となる砂塵嵐や山火事などの気象と気候に関わる現象が頻繁かつ激化しているため、約 33 億~36 億もの人々が気候変動による健康への影響を非常に受けやすくなっています。
驚くべきことに、毎年 700 万人が大気汚染への曝露によって早すぎる死を迎えており、大気汚染は健康に対する最大の環境リスクの一つとなっています。大気汚染は、特に呼吸器系や循環器系の問題に関して深刻な影響を及ぼしているにもかかわらず、喫緊の課題であると認識されていないことがよくあります。
大気汚染物質には国境がなく、国を越えて移動し、発生源を超えて大気の質や生態系に影響を与えます。この問題は世界的なものですが、世界保健機関(WHO)が強調しているように、主に発展途上国において、保健インフラが脆弱な地域が特に大きな被害を受けています。
史上初の COP28 健康デーでは、差し迫った気候と健康の危機に焦点が当てられ、個人と集団の両方の行動による適応策の必要性が強調されています。Google Cloud では、Google Maps Platform の環境 API などのテクノロジーが重要な役割を果たすことができると考えています。公衆衛生の意思決定者、政府、地方自治体、企業は、大気汚染に関連する健康問題への意識を高めるためにこうしたテクノロジーを利用して、ガイダンス、ツール、アドバイスを提供することができます。最近の事例をいくつかご覧ください。
環境データを活用して意識を高める
特に輸送、廃棄物、汚染に関する深刻な課題に直面している都市部において、気候変動に対する復元力とサステナビリティを推進する政策を採用するよう政府に働きかけるには、国民の参加が不可欠です。都市が成長するにつれて、これらの問題への対処はより複雑になるため、地方自治体の意思決定者は、認知度と持続可能な行動の促進を通じて変化を推進するという重要な役割を担うことになります。
一般の人々に参加してもらうには、肉眼では見えないこともある大気汚染の深刻な脅威への意識を高めていく必要があります。ロンドンの道路脇で、大気汚染が死を招くことを喚起するために設置されたテディベアの「トキシック トビー」は、大気汚染の有害な影響についての意識を高める公衆衛生キャンペーンで大気質データがどのように利用されたかを示す好例です。ロンドンの路上に置かれたこのテディベアのロボットは、リアルタイムの位置ベースの大気質データを収集しました。大気汚染が危険なレベルまで上昇するたびに、トビーは咳き込んで地元の政策立案者のソーシャル メディア アカウントに警告を流し、立法措置や教育的取り組みを促しました。
同様に、パリ市当局は大気汚染を重要な公衆衛生問題とみなして、歩行者や自転車利用者のための汚染のないオープン スペースと移動ルートを新たに確立しようと努めました。このキャンペーンでは、都市計画の取り組みに情報を提供し、交通移動を最適化するために、道路交通、信号機、バスや地下鉄の駅が汚染の流動性に及ぼす影響を 1 日を通して測定しました。また、大気質データの統合と AI を活用した分析を使用して、健康に焦点を当てた実用的な推奨事項をパリ市民にリアルタイムで提供するとともに、個人の健康リスクスコアを含む汚染曝露情報へのアクセスを提供しました。
環境データと分析情報にアクセスできれば、政府が地域社会に影響している健康被害についてより深く理解できます。その後、この情報を活用して政策を立て、その有効性をモニタリングすることも可能です。このデータは、人々の健康と福祉を守ることを目的とした教育キャンペーンにも活用できます。
国民がより健康に良い意思決定を行えるよう支援する
環境に関する重要な分析情報の信頼できる提供元となることで、政府、地方自治体、保健機関は、国民がより健康に良い意思決定を日々行えるよう支援して、国民の生活を向上させることができます。大気質データがあれば、ヒートマップを提供し、汚染物質の詳細情報を共有して、大気汚染への曝露を最小限に抑えるための推奨事項を作成できます。どの公園に行くべきか、屋外で運動をするべきか、窓を開けるべきか、空気清浄機を作動させて屋内にとどまるべきかといった局地的な行動についてもこういった推奨を行うことができます。
たとえば、Google.org が資金提供している AirQo は、アフリカ諸国の人々が大気汚染への曝露を抑え、大気汚染を軽減できる効果的な行動を取れるよう支援することを目的としています。これを実現するために、AirQo は都市インフラ全体に低コストの大気質モニターを設置し、Google Cloud ベースの AI ソフトウェアを使用して大気質を分析しています。これにより、今後数日間の地域汚染を予測し、アフリカの大気汚染の課題に対する地域主導のソリューションを提供しています。
気候変動に対する復元力を高めるイノベーションをサポート
Google は、人類と地球のための積極的行動を推進する決定を下そうとする個人に、優れた情報を提供することに重点を置いています。気候変動による健康危機に対処するための適応策をサポートするテクノロジーとイノベーションを推進するために、Google Maps Platform の Air Quality API や Pollen API などの環境プロダクトを活用しているあらゆる人を支援できるよう、今後も尽力してまいります。
気候危機に対して公衆衛生を改善するための Google の取り組みについて詳しくは、Google のサステナビリティへの取り組み をご覧ください。COP28 の期間中、今後もブログを投稿していきますので、こちらをチェックしていただければ幸いです。
-Google Cloud、バイス プレジデント兼営業担当グローバル スペシャリスト Phil Davis
-Geo Sustainability、グローバル営業責任者 Daniel Elkabetz