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サステナビリティ

責任ある水の使用: データセンター コミュニティの流域の健全性を評価

2024年1月15日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 12 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

人々や企業が日々利用するデジタル プロダクトやデジタル サービスに対する需要はかつてないほど高まっています。拡大するデジタル需要に対応するには、データセンターの容量を増やす必要があるため、Google では、その容量を提供する持続可能な方法を見つけることに取り組んでいます。

この投稿では、地域コミュニティの流域の健全性をより正確に評価するための新しいフレームワークを紹介します。これは、データセンターにおける責任ある水の使用を推進するためのデータドリブンなアプローチを確立するものです。このフレームワークは、データセンターの冷却に対する気候変動に配慮したアプローチに基づいて構築されており、Google の、事業を展開する地域コミュニティにおけるウォーター スチュワードシップに向けた取り組みの重要な要素です。

Google がデータセンターを建設する際には、お客様やユーザーとの距離の近さ、Google との連携に前向きなコミュニティの存在、サステナビリティと気候の目標に沿った天然資源の利用可能性など、さまざまな要素を考慮します。一般的に、水冷は空冷よりもエネルギー効率に優れていますが、どのキャンパスにおいても、「データセンターの冷却に水を使用することは環境に配慮しているのか?」という重要な問題を考慮する必要があります。

これまでは、その答えを見つけるために、公的に利用可能なツールを使用して大まかなインサイトを得たり、大規模な帯水層や河川流域が直面する水問題(太平洋岸北西部のコロンビア川や北ヨーロッパのライン川など)の「Earth View」を提供したりしていました。しかし、地域の「ストリートビュー」に近い目線で特定の水源の状態(オレゴン州のドッグ川やオランダのフローニンゲンのエームス運河など)をより深く掘り下げたいと考えた場合、その地域の水問題を十分に把握でき、気候に配慮した方法でデータセンターを冷却する方法を得られるツールを見つけるのは困難でした。

Google は、世界的な水問題への対処には地域密着型のソリューションが必要であると認識しており、そのために、業界をリードする環境科学者、水文学者、水のサステナビリティのエキスパートからなるチームと協力して、データドリブンな水リスク フレームワークを開発しました。

水リスク フレームワークの舞台裏

このフレームワークは、局地的なレベルで流域の健全性を理解するために必要となる具体的な情報を備え、新しいデータセンターのための実行可能で反復可能な意思決定プロセスを提供するほか、既存の立地での変化する水リスクの評価にも役立ちます。評価結果によって、流域のリスクレベルが高い場合に、再生水や空冷技術などの代替ソリューション(水の使用量は少ないがエネルギー消費量が多い)を検討する必要があるかどうかを知ることができます。

このフレームワークでは、データセンターの立地の水リスクレベルを評価するために、主に以下の 2 つのステップを踏みます。

  • 責任ある使用の評価: 地域の公共事業や水道局の管理計画のデータを使用して、コミュニティとデータセンター候補地の両方における、現在と将来の水の需要と利用可能な供給量を比較します。この評価では、流水や地下水のモニタリング データを使用して、健全な流域に求められるレベルと比較した最近の水位の履歴や、地元の水道局が水の使用を制限しているかどうかも考慮します。これらの指標に基づいて、流域の健全性を評価するエキスパートが、水源が不足したり枯渇したりするリスクが高いかどうかを判断します。リスクが高い場合は、そのデータセンター キャンパスで使用する代わりの水源や冷却ソリューションを探します。
  • 複合リスクの測定:既存のインフラストラクチャを使用する、公共事業パートナーと協力して廃水再生や工業用水ソリューションなどの新しいソリューションを構築するなどの、データセンターにおける水の供給と排水処理の手段の実現可能性を検討します。さらに、コミュニティでの水の利用しやすさ、規制リスク、地域住民の感情、降水量の減少や干ばつの増加など、将来の水供給に影響を与える可能性のある気象傾向も評価します。

このフレームワークは、データセンターの各候補地における水関連のリスクを包括的に検討するために設計されました。その結果、地域ごとの流域に関連する課題や、インフラストラクチャの改善および拡張プロジェクトや水資源保護プロジェクトにどのように投資すれば流域の健全性を維持できるかが明らかになります。水資源の動的な性質を考慮して、Google のポートフォリオ全体でこれらの評価を 3~5 年ごとに繰り返し、既存の施設での新たなリスクや進行中のリスクを特定し、緩和することも検討します。

責任ある使用の実践

Google では、すべてのデータセンターの新設計画と開発プロセスに水リスク フレームワークを組み込んでいます。

特に、最近発表した、アリゾナ州メサのデータセンターの計画段階で実施した責任ある使用の評価では、当地の水源が枯渇または不足するリスクが高いことが判明しました。そのため、このデータセンターの冷却ソリューションに空冷を採用し、地元の流域への影響を最小限に抑えることにしました。また、この地域の水の安全をさらに支援するため、流域の回復と山火事のリスクに焦点を当てた Salt River Project(SRP)の取り組みにも寄付を行いました。この SRP とのコラボレーションは、Google が 2021 年に行った南西部の水資源保全の改善を目的としたコロラド川インディアン部族のシステム保全と運河敷設プロジェクトへの投資に続くものです。

今後について

世界の流域の繁栄と健全性を維持するには、共同作業と透明性が必要です。Google は人々や企業が日々使用するプロダクトやサービスを提供するために取り組むなか、気候変動に配慮した冷却の取り組みを通じて学んだことを共有し、他の工業用水利用者が自らの事業において責任ある水の使用を決定する際の模範を示したいと考えています。

Google の水リスク フレームワークは、責任ある水の使用を実践する多くの要素の一つにすぎません。このフレームワークを導入することは、Google のウォーター スチュワードシップの取り組みの新たな一歩であり、野心的な 24/7 カーボンフリー電力の目標を補完するものになります。流域の健全性は複雑かつ動的であるため、組織やコミュニティで責任ある水の使用の実践を目指す他の人々と教訓を共有しながら、このフレームワークの改良を続けていきます。詳しくは、水リスク フレームワークのホワイト ペーパーをご覧ください。

-データセンター サステナビリティ部門グローバル責任者 Ben Townsend

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