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リテール

Redis Enterprise と Google Cloud でオムニチャネルのコンバージョン率を最大化

2023年1月13日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 1 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックは、売り手と消費者双方の小売環境を一変させました。ロックダウンにより、デジタル トランスフォーメーションと、カスタマー エクスペリエンスに重点を置いた取り組みが加速しました。多くの非小売業者と実店舗を主とする従来型の小売業者は、消費者と直接関わり、デジタル チャネルで商品やサービスを顧客が簡単に購入できるようにするためのオンライン プレゼンスの必要性を認識しました。その結果、小売業者は、e コマースをオムニチャネルの収益を上げるための成長の原動力と捉えるようになりました。Morgan Stanley によると、世界の e コマースは現在の 3.3 兆ドルから 2026 年には 5.4 兆ドルに増加すると予測されています。

今日の消費者と買い物客は、e コマースおよびモバイル小売アプリケーションに「常時利用可能なエクスペリエンス」を期待しています。40 人に 1 人の訪問者しか購入に至らない、競争が熾烈な今日のビジネスの世界で消費者を惹きつけて維持するには、可用性とパフォーマンスが高く、復元性があり、安定した e コマース プラットフォームを実現することが必要不可欠です。

購入手続きは、購買プロセスにおける最終段階ですが、この段階で実際に購入を完了する顧客は 3 人に 1 人のみです。そのため、購入手続きのエクスペリエンスは最も重要であり、小売業者はそれに応じた最適化を行う必要があります。

ショッピング カートは、e コマース プラットフォームの最も重要なコンポーネントの一つです。このブログ投稿で取り上げる 2 つのトピックは、e コマース セッションの復元性を最大限に引き上げることと、レイテンシを最小限に抑えることです。

まず、セッションとは何か

セッションとは、ユーザーがアプリケーションを操作する時間のことです。ユーザーがアプリを操作している間、このインタラクション データは、一貫したユーザー エクスペリエンスを提供するためにクライアントサイドとサーバーサイドの両方に保存されます。クライアントサイドでは、このデータを Cookie として保存します。サーバーサイドでは、これをセッションと呼びます。シームレスなユーザー エクスペリエンス実現のためには、これら 2 つの別個のデータ型が同期していることが重要です。

セッションは、パーソナライズされた一貫性のあるシームレスなエクスペリエンスを提供することで顧客に購買プロセスを完了してもらううえで重要な要素です。サーバーが特定のセッションのデータを失うと、クライアントに安定したエクスペリエンスを提供できなくなります。したがって、未処理の例外やサーバー / ゾーン / リージョンの障害に備えて、セッションのデータを効率的に保存、復元させることが重要です。

サービス主導型の経済では、セッションの安定性スコアとレイテンシ指標が、モニタリングの対象となる上位 2 つの KPI です。

1 - 安定性 / 復元性

高可用性、事業継続性、障害復旧は、すべての e コマース プラットフォームにとって重要な条件であり、この条件を満たす必要があります。

99% の稼働時間と言われると、かなり良い数字のように聞こえます。99.9% ならどうでしょうか?

数字の幻想から離れて、現実を掘り下げてみましょう。

1 年あたり、99% の稼働時間は 87 時間 40 分のダウンタイムに相当し、99.9% の稼働時間は 8 時間 46 分のダウンタイムを意味します1。Amazon の場合、1 時間の収益損失は 1,300 万ドルを超えます。Walmart では約 250 万ドル、Wayfair では 58 万 9,000 ドルで、その他の企業でも大きな損失となることがわかっています。実質的に、ウェブサイトが 100% 機能していないと、毎秒収益の損失が生じます。年末商戦の時期であれば、損失はさらに甚大です。

セッションの安定性と復元性を強化するために費用をかけることは、シームレスなカスタマー エクスペリエンスの実現だけでなく、収益の面でも価値があります。

99.999% の稼働時間は、1 年間でわずか 5 分 16 秒のダウンタイムに相当します。

*ここに記載されている統計は、小売アプリケーションの稼働時間から算出した理論上の数値です

2 - レイテンシ

単一のマイクロサービスが購買プロセスのボトルネックになると、そのレイテンシがエクスペリエンス全体を決定付けてしまいます。たとえば、ショッピング カートはトランザクションが発生する場所であり、オペレーション データとトランザクション データを処理する段階です。ミリ秒単位のレイテンシは、収益の損失とカスタマー エクスペリエンスの低下につながります。「速いものが遅いものを食う」時代となっている今、レイテンシの発生は競合他社に負けることを意味します。

分散アプリケーションには、いつでもどこでもユーザーにサービスを提供するための分散アーキテクチャが必要です。CDN、アプリケーション サーバー、データベース サーバーと同様、セッション キャッシュ サーバーも疎かにはできません。セッション キャッシュ サーバーは、アプリケーション サーバーの近くに分散させて配置する必要があります。

セッション ストアに Redis Enterprise を使用する理由

Redis は、最高水準のパフォーマンスで複数のデータモデルを提供するインメモリ データベースです。低レイテンシと高スループットを実現して、レスポンシブなアプリケーションとウェブサイトをサポートします。Redis Enterprise は、ユーザー エクスペリエンスを向上させ、常に高速かつレスポンシブな小売アプリケーションと e コマース ウェブサイトを実現するためのパフォーマンスを提供します。

Redis Enterprise は、サーバーの障害に耐える永続性を提供し、Conflict-Free Replicated Data Types(CRDT)テクノロジーに基づく唯一のアクティブ - アクティブ地理的分散型 Redis データベースであり、ゾーン間だけでなくリージョン間でも高可用性と事業継続性を実現します。また、個々のアプリケーション サーバーの競合を管理できるため、顧客は継続的かつシームレスなマルチチャネル ショッピングを体験できます。

99.999% の可用性を提供する Redis Enterprise のアクティブ - アクティブ機能

Redis Enterprise は、Redis Enterprise プロキシを介し、リアルタイム アプリケーションからの要求に応じて、容量とパフォーマンスをスケールアップできます。アプリケーション コードを変更する必要はなく、ダウンタイムや中断もありません。Redis Enterprise は、自動化された障害検出、フェイルオーバー、クラスタ復旧を提供することで、季節的なピーク時のトラフィック急増や予期しない需要の急増が生じた場合でも、小売業者が業務を継続できるようにします。

セッションを Redis Enterprise に保存することで、セッションはより安定し、レイテンシが軽減されます。

ソリューション アーキテクチャ

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上図2は、Google Cloud 上の小売 / e コマース アプリケーションのマイクロサービス アーキテクチャを示しています。e コマースの受信トラフィックは、侵入者による DDoS 攻撃やアプリケーション攻撃を防御するための Google Cloud ロードバランサと Cloud Armor、さらにエンドユーザーへのコンテンツ配信を高速化しながら配信費用を削減するための Cloud CDN を経由して受信されます。次に、受信リクエストは、Google Cloud Run のスケーラブルなサーバーレス環境のコンテナでホストされているマイクロサービスによって処理されます。個々のマイクロサービスは、未使用のリソースをオーバープロビジョニングすることなく、リアルタイムのワークロード要件に基づいてスケールインまたはスケールアウトできます。商品カタログ、在庫システム、顧客プロファイルなどは、CloudSQL やサードパーティの Redis Enterprise フルマネージド サービスなどのフルマネージド データベース サービスに保存され、永続ストアとリアルタイム セッション ストアをそれぞれ提供します。最後に、注文フルフィルメントや管理システムなどのバックオフィスのカスタム アプリケーションやパッケージ化されたアプリケーションが、Google Compute Engine や Google App Engine などのさまざまな Google コンピューティング環境でホストされます。Google Cloud Looker は、Google Cloud 可視化ツールの重要なコンポーネントであり、より多くの分析情報を提供することで、小売業者の生産性、意思決定、イノベーションの向上を支援します。全体として、図に示されている小売ソリューション アーキテクチャは、業界で最も安全で、パフォーマンスが高く、スケーラブルなクラウド プラットフォームにデプロイされていると言えます。小売業者は、革新的で柔軟性の高い Google Cloud でコアビジネスを快適に運営できます。

まとめ

小売業界における競争はこれまで以上に激化しています。消費者は「常時利用可能」なエンゲージメントを求めており、小売業者がそうしたエクスペリエンスを提供しない場合、消費者は躊躇せずに別の小売業者に乗り換えます。あらゆるチャネルにおいて、レスポンシブでシームレス、かつパーソナライズされたエクスペリエンスを提供することは、今や当然のことです。e コマースの顧客行動には多くの変化がありました。たとえばショッピング カートは、商品をブックマークするために使われるようになりました。あるチャネルで開始された買い物が、別のチャネルで完了されることもよくあります。そのため、ショッピング カートは堅牢で応答性に優れている必要があります。

低レイテンシ、高可用性、事業継続性、効果的なマルチチャネル エクスペリエンスのためには、小売アプリケーションと e コマース プラットフォームに Redis Enterprise を採用することを検討すべきでしょう。セッションの安定性を維持することに関して、アクティブ - アクティブ機能を備えた Redis Enterprise は 99.999% の可用性を実現します。これは、1 年間で約 5 分間のダウンタイムに相当します。

すべての主要な e コマース ソフトウェアまたは開発フレームワークは、すでに Redis と統合されています3。小売 / e コマース プラットフォームの運営に真剣に取り組むなら、アーキテクチャのすべてのレベル(アプリケーション レベル、データレベル、セッション キャッシュ レベル)で復元性とレイテンシに関する要素が必要となります。

まとめると、Redis Enterprise は、リアルタイムで高度に接続された小売カスタマー エクスペリエンスを提供するためのコア技術です。Google Cloud は、ブラック フライデーやサイバー マンデーを含め、小売業者が 24 時間 365 日、コア ビジネスを構築して運営するうえで必要なその他あらゆるものを提供します。

お客様事例:

Ulta Beauty, Inc. は、イリノイ州ボーリングブルックに本社を置くアメリカの美容用品店チェーンです。ロックダウン中に Ulta Beauty が顧客を魅了し、データとデジタルを使用して収益を 40% 増加させるうえで Redis がどのように役立ったかについては、こちらをご確認ください

次のステップ

小売業向けの Redis Enterprise ソリューションの詳細や、Redis Enterprise と Google Cloud テクノロジーを試してみる方法については、次のリンクをご参照ください。


1. ここに記載されている統計は、小売アプリケーションの稼働時間から算出した理論上の数値です

2. Redis の提供画像(2022 年 6 月)

3. すべての e コマース ソフトウェアおよび開発フレームワークに関するまとまった参考資料がないため、次の例をご参照ください: SpringFlaskAdobe CommerceKong


- Google Cloud、パートナー エンジニア Kathryn Eeds
- Redis、クラウド パートナー ソリューション アーキテクト Gilbert Lau 氏

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