L’Oreal、世界中の開発者に安全なクラウド開発環境を提供
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2023 年 1 月 25 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
e コマースの爆発的な拡大から COVID のパンデミックまで、過去 20 年間に小売界で起きた数多くの劇的な変化により、小売や日用品(CPG)業界の企業にとってデジタル化はもはや単なる戦略上の選択肢ではなく、競争に勝ち残るうえで避けられないものになっています。このブログ投稿では、世界をリードする化粧品メーカーの L’Oreal が Cloud Workstations などの Google Cloud ソリューションを活用して、どのようにデジタル化を加速させ、世界中の開発者の生産性とセキュリティを向上させているかについて説明します。
小売のデジタル化により開発者の生産性が向上
開発者は、デジタル ファースト戦略を実現し、製品化までの時間を短縮するうえで重要な要素です。しかし、開発者は多くの場合、高負荷のワークロードを抱えており、納品までの過程で大きなプレッシャーにさらされています。最近の調査によると e コマース開発者の 94% がパンデミック中に仕事を増やしており、この傾向はパンデミック後においても継続しているか、むしろ強まっている可能性があります。このことから、多くの企業にとって、開発者の生産性の向上が重要な課題となっています。周辺タスクに時間を費やすのではなく、中核となるビジネス ロジックの作成と収益の促進に集中できるように、開発者に適切なリソースを提供する必要があります。McKinsey の調査によると、開発者の生産性が高い小売業者は、同業他社の最大 4 倍の速さで収益を底上げすることができています。
ただし、開発者の生産性を向上させることは容易ではなく一筋縄ではいきません。長期にわたるオンボーディング、適切なツールの利用に際する無用の手間、環境間の不一致、セキュリティ関連の混乱など、開発者の足を引っ張る要因は数多くあります。さらに、リモートで働く開発者の増加と、開発の早い段階におけるソフトウェア サプライ チェーンへのセキュリティ攻撃の増加により、複雑さが増しています。
開発者の生産性に関する課題
世界最大級の化粧品メーカーである L’Oréal は、e コマース、トラベル リテール、実店舗を通じて、150 か国で美容製品とヘア製品を製造、販売しており、35 の世界的な美容ブランドを管理し、85,000 人を超える従業員を擁しています。
L’Oreal は、美容ビジネスのグローバル リーダーとして、高度な IT テクノロジーを活用したデジタル化の最前線に立っています。Google Cloud と提携して、私たちは Beauty Tech Data Platform を立ち上げました。これは、データ プロダクトを「サービスとして」提供する次世代型データ プラットフォームであり、ビッグデータとサーバーレス テクノロジーを使用した即時の高度な分析によって意思決定を支援するものです。
何百人もの開発者がこのプラットフォームに取り組んでおり、さまざまな国のチームが多様なプロジェクトで協力しながら、同じ作業方法を共有しようとしています。
当初、既存の開発環境のセットアップで多くの問題が表面化し、当社のデータチームは、開発者の作業効率を向上させるより優れたソリューションが必要であることに気づきました。
まず、開発者はすべてのファイルが保存されているローカルの物理的なノートパソコンでコーディングを行っていたため、新しい環境のセットアップに非常に時間がかかり、また、エラーが発生しやすくなっていました。開発者はコーディングを開始する前に、ノートパソコンにコードエディタ、ライブラリ、ユーティリティなど、多くのものをインストールする必要がありました。物理的なノートパソコンは単一障害点となり、コードの引き出し(コンピュータからの不正なコード転送)などの潜在的なセキュリティ リスクにつながる可能性がありました。
また、開発者チームはさまざまな方法、速度、熟練度で作業していたため、最終段階におけるコードの合理化に極めて多くの時間がかかっていました。さらに、それぞれのチームが異なるライセンスを持つ独自の開発ソリューションを使用していたため、費用管理が大きな頭痛の種になっていました。そのうえ、全体として一貫したセキュリティ体制を維持することはほとんど不可能でした。異なるセキュリティ機能を備えた異なるツールを各チームが使用していたこともあり、セキュリティを同一レベルに構成することは非常に困難でした。
私たちは、こうしたサイロを打破し、開発者の生産性とセキュリティを全体的に向上させることができるソリューションを探し始めました。
Google Cloud のソリューション
ソリューションを探すにあたって私たちが目標にしていたことは、いつでもどこでも、どのデバイスでも、効率的かつ安全、一貫した方法で開発者が作業できるようにすることでした。このような大胆なビジョンをもって、私たちは再び Google Cloud と提携しました。今回採用したのは Cloud Workstations です。
Cloud Workstations は、Google Cloud のソフトウェア デリバリー シールドの重要な部分であり、開発者のオンボーディングを加速させ、開発者の生産性を安全な方法で向上させることに重点を置いています。高度なセキュリティ機能、複数の統合開発環境(IDE)のサポート、カスタマイズ可能な開発環境、定評のある多くのデベロッパー ツールを備えたクラウドベースのフルマネージド開発環境を提供し、L'Oreal のデータチームをはじめとする企業の開発者チームのニーズに対応します。
Cloud Workstations を使用することで、開発者のオンボーディングに要する時間を、数週間や数か月ではなく、数日に設定できるようになりました。ボタンをクリックするだけで、新しい開発環境をデプロイできます。ほんの数分で、まったく新しい開発環境がクラウドに展開されます。クラウドベースのソリューションを使用すれば、開発者のローカル ノートパソコンにコードを保存する必要がなくなります。開発者は、ブラウザまたはお気に入りのローカル IDE から、いつでもどこでも高速な開発環境にアクセスできます。
さらに、開発環境は、一般に使用される開発ツールを使用したり、セキュリティを同一レベルに構成したりするなど、世界中のチーム全体で一貫して事前構成できます。コンプライアンスはもはや達成が難しい目標ではありません。Cloud Workstations を使用すれば、VPC Service Controls、IAM、プライベートの上り / 下り(内向き / 外向き)などの機能を利用して、さまざまなチーム間で一貫したセキュリティ構成とポリシー制御を適用できます。また、膨大な開発環境の更新やパッチ適用も簡易化できます。プラットフォーム チームがワークステーションのイメージを一元的に更新すると、Cloud Workstations サービスが個々のワークステーションの更新を高速かつスケーラブルな方法ですべて処理します。
Cloud Workstations は、効率的で一貫した方法で世界中の開発者チームが作業できる単一のソリューションを提供するだけでなく、各チームのさまざまなニーズに対応する柔軟性とカスタマイズ性も提供します。たとえば、フロントエンドとバックエンドの開発者が、特定のニーズに応じて、異なる CPU、RAM、またはストレージ設定を備えたワークステーションをリクエストできるように、特定の環境プロファイルをサポートしています。また、IntelliJ IDEA、PyCharm、Rider、Code-OSS、CLion などのよく使われている複数の IDE と、定評のあるデベロッパー ツールもサポートしているため、開発者は使い慣れたツールを選択してコーディングを高速化できます。
「Cloud Workstations は、当社で活躍する世界中のすべての開発者にパワフルでスケーラブルなソリューションを提供することで、技術的な障壁を取り除いてくれています。」 — L'Oréal、データ エンジニアリング責任者 Sebastien Morand 氏
まとめ
開発者の生産性は、デジタル トランスフォーメーションの成功の鍵となります。物理的なマシンによる従来の開発モデルは、開発者の生産性に悪影響を与えるだけでなく、セキュリティ リスクももたらします。Cloud Workstations のようなクラウドベースの開発環境ソリューションは、開発者を対象とする私たちの大胆なビジョンを実現し、いつでもどこでも、どのデバイスでも、効率的かつ安全、一貫した方法で開発者が作業できるようにします。
Cloud Workstations の詳細をご確認のうえ、今すぐお試しください。
- Google Cloud、プロダクト マーケティング マネージャー Ning Ge