マネックス証券株式会社の事例: フィンテック API のエコシステムの構築

Daisuke Houki
System Development Dept., Monex, Inc.
※この投稿は米国時間 2019 年 7 月 30 日に Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集部注 : マネックス証券株式会社は、マネックスグループ株式会社を親会社とする個人向けの日本のオンライン証券会社です。法貴大輔氏はマネックス証券システム開発部に所属し、マネックス証券株式会社のフィンテック API を担当しています。
マネックス証券株式会社は、個人投資家向けの日本のオンライン証券会社です。マネックスでは常にサービスの向上に取り組んでいますが、新サービスの導入や既存サービスの変更の度にバックエンド システムを更新しなければいけないという課題がありました。そこで、新しい商品やサービスの開発にかかる時間を削減し、工程を簡素化するためにAPIを活用することとしました。API を使用すると、新しい投資サービスやスマートフォン アプリをより迅速に開発することができ、公開までの期間が短縮できます。API はマネックス証券に新たな可能性をもたらしました。そこで、更なる可能性を求め、魅力的な新しいアプリの開発に携わるフィンテック事業者の皆様にも API を公開することにいたしました。
セキュリティとパフォーマンスの向上
マネックス証券API の提供前、提携先のフィンテック事業者はアプリで顧客のポートフォリオの残高データを表示するために、スクレイピングという方法を使用していました。しかし、この方法ではフィンテック事業者の業務に求められる品質水準に届いていませんでした。API を開発、公開することは、フィンテック事業者がセキュリティとパフォーマンスを向上させ、新しいサービスの構築を簡素化するためのリソースを提供することです。マネックス証券がフィンテックのエコシステムの中心となり、マネックス証券API をご利用いただくことで、お客様が多様なサードパーティ サービスをマネックスのアカウントから直接操作できるようにしたいと考えています。
弊社では小規模な開発チームで熱心に API 開発プログラムに取り組んできましたが、オンプレミスで API ゲートウェイを開発することは最善ではないと判断しました。マネックス証券 API は OAuth2.0 に準拠していますが、OAuth2.0 に準拠するための開発をスクラッチで行おうとすると、時間や費用が多く必要となりますし、API ゲートウェイをオンプレミスで運用しようとすると、運用のための人手も多くかかってしまいます。そこで、API の開発、公開、管理に Apigee API 管理プラットフォームを採用することで、機能の最大化とコスト削減を図りました。Apigee の採用によりアクセストークンの発行が容易になり、また、認証の仕組みは既存のバックエンドのものをそのまま活かすことが可能になりました。
フィンテック アプリのハブを目指して
バックエンドでのエラーの診断をする際に、Apigee のモニタリング機能や分析機能が非常に有効であることもわかりました。弊社にとっての Apigee プラットフォームを利用する最大のメリットは、Apigee に API サービス管理を任せることで開発期間を大幅に短縮できることです。プラットフォームには多数の組み込み機能があるため、API とアプリの開発が高速化しました。
株式や投資信託などのポートフォリオの残高データをお客様がより効果的に表示できるよう、現在約 15 種類の API を社内および社外開発者に公開しています。弊社エコシステムのパートナーによるアプリ開発の支援に加え、マネックス証券API を利用する製品の開発も社内で進めています。フィンテック開発者が参加する弊社のエコシステムを拡充するとともに、お客様に満足してご利用いただける金融サービスを統合するハブとなれるよう、今後も取り組んでまいります。
API 管理プラットフォームについて詳しくお知りになりたい方は、Apigee のサイトをご覧ください。