Cloud WAN: プレミアム ティアと Verified Peering Provider で信頼性の高いグローバル接続を実現
Prasad Nellipudi
Sr. Product Manager
Dave Schwartz
Sr. Product Manager
※この投稿は米国時間 2025 年 5 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
先日の Google Cloud Next 25 で、Google は最新のクロスクラウド ネットワーク イノベーションとなる Cloud WAN を発表しました。これは、企業の広域ネットワーク(WAN)アーキテクチャを変革する、信頼性とセキュリティに優れたフルマネージド ソリューションです。本日の投稿では、Cloud WAN に関するシリーズの続きとして、Cloud WAN を支えるテクノロジー、すなわちプレミアム ティア ネットワーキングと Verified Peering Provider プログラムについて詳しくご紹介します。
変化を続けるエンタープライズ ネットワーク
企業の WAN は、以前は主に支社と本社をつなぐものでしたが、その後の目覚ましい進化により、今ではインターネット、クラウドベースのサービス、Software as a Service(SaaS)アプリケーションへと向かう、増加の一途をたどるトラフィック量の管理へと転換しました。このように大きく変化した状況の中で、一貫したエンドツーエンドの信頼性を実現することが組織にとって最優先の課題となっています。
しかし、従来の WAN アーキテクチャでエンドツーエンドの信頼性を確保しようとすると、多くの場合、費用がかかり、複雑化します。たとえば、複数のベンダーのソリューションを統合すると、費用が増加し、運用が複雑化する可能性があります。さらに、信頼性を保証するためにネットワーク リソースを過剰に割り当てるのが一般的ですが、これによっても、経済的負担が大幅に増えます。クラウド サービスを利用するために複数のインターネット ホップを経由する必要があることで、レイテンシが発生し、サービスレベル契約(SLA)が予測できなくなる可能性があります。こうした課題に加え、帯域幅の需要の変動により、効果的な費用管理がますます困難になります。
要するに、費用対効果が高く、管理しやすく、予測可能な方法で、エンドツーエンドで一貫した信頼性を従来の WAN アーキテクチャで実現することは、非常に困難です。企業がクラウド ソリューションや SaaS ソリューションの導入を加速するにつれて、この課題はますます顕著になってきています。
Cloud WAN: 分散型企業向けのグローバル接続
Cloud WAN は、信頼性の高い多対多の接続を実現する単一のフルマネージド ネットワーク ソリューションです。Google の高パフォーマンスのグローバル ネットワーク(YouTube、検索、マップ、Workspace などのサービスに毎日 10 億人以上のユーザーを接続しているインフラストラクチャ)を利用して、企業のサイト、クラウド アプリケーション、データセンター、ユーザーを接続します。
Cloud WAN は、以下を利用して、高パフォーマンスで、一貫して信頼性の高いアーキテクチャを実現します。
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プレミアム ティア: Google の高パフォーマンスなグローバル バックボーンにより、Google ネットワーク内、および Google サービスからインターネットに向かうすべてのトラフィックで、信頼性の高いトラフィック配信が保証されます。
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Verified Peering Provider(VPP)プログラム: 企業と Google ネットワークの間で信頼性の高い高品質のインターネット接続を確実に提供するためのプログラムです。
この後の各セクションでは、これらのコンポーネントが連携して、強力で信頼性が高く効率的な WAN を構築する仕組みについて説明します。
プレミアム ティア: 高パフォーマンスのバックボーン
プレミアム ティアでは、上り(内向き)のユーザー トラフィックが、ユーザーの場所に合わせて最適化されたエッジ ポイント オブ プレゼンス(PoP)でエニーキャストを使用して Google のネットワークに入ります。このトラフィックは、Google のバックボーンを通じて、任意の Google Cloud リージョンでホストされている関連アプリケーションに送信されます。アウトバウンド トラフィックの場合、ピアリング リンクの輻輳を回避するために、宛先 ISP に近いピアリング ロケーションが選択されます。送信パケットは経路の大部分で Google のバックボーン上を移動し、宛先の近くでトラフィックは下り(外向き)に送信されるため、最大限の信頼性が確保されます。Google Cloud のネットワークは、Google Cloud のリージョン間に少なくとも 3 つの独立したパス(N+2 の冗長性)があるように設計、プロビジョニングされており、光ファイバーの問題や計画外のサービス停止が発生した場合でも可用性を維持できます。
トラフィックは、ピアリング PoP からインターネット サービス プロバイダ(ISP)のネットワークを経由してエンドユーザーに送信されます。ISP が Google の Verified Peering Provider(VPP)プログラムに参加している場合、その ISP から Google のグローバル ネットワークへの接続が冗長性と多様性を備えていることを Google が事前に検証しています。このため、お客様には、より信頼性の高いエクスペリエンスが提供されます。


プレミアム ティアの主なメリットは次のとおりです。
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グローバルなリーチ: 42 のリージョン、世界中に 200 以上のネットワーク エッジ ロケーション、200 万マイルを超える光ファイバー、33 本の海底ケーブルへの投資で接続性を確保
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パフォーマンスの向上: クロスクラウド ネットワークにより、パブリック インターネットと比較してパフォーマンスが最大 40% 向上1
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高い信頼性: 稼働率 99.99% の SLA を保証し、重要なアプリケーションに関して安心を提供
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予測可能な料金: 2025 年下半期より、プレミアム ティアとスタンダード ティアのインターネット データ転送の確約利用割引を提供予定
「Google Cloud のプレミアム ティアのネットワークは、1 日あたり 4 億 5,000 万人に及ぶ Snap のアクティブ ユーザーに、優れたネットワーク到達性と一貫した低レイテンシの接続を世界中で提供しています。これにより、Google Cloud リージョンからサービスを提供している多くの国にアクセスできます。Google Cloud のリージョン間の低レイテンシにより、Snap は優れたユーザー エクスペリエンスに不可欠なリアルタイムの応答性を確保できています。Snap が Google Cloud を選んだ最大の理由は、複数のクラウド プロバイダ間の低レイテンシ性能など、その優れたネットワーク パフォーマンスです。」- Snap、ソフトウェア エンジニアリング担当マネージャー Mahmoud Ragab 氏
Verified Peering Provider: シンプルで信頼性の高い接続
Verified Peering Provider プログラムは、Google のネットワークへの高品質で多様性と信頼性の高い接続を実証した ISP を認定するものです。Google Cloud のユーザーは、これらの ISP を介して Google のサービスに接続し、一般に公開されているすべての Google サービスにアクセスできます。
Google Cloud のユーザーが Verified Peering Provider を選択すると、次のようなメリットがあります。
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シンプルで信頼性の高い接続: Verified Peering Provider を選択すると、企業向けに最適化されたインターネット サービスを提供する ISP を特定できるため、Google への接続が簡素化されます。Verified Peering Provider との接続を選択したユーザーは、Google のピアリング要件を満たす必要がなく、複雑なピアリングの手続きを ISP に任せることができます。
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安定したインターネット レイテンシ: このプログラムのピアリング冗長性要件により、参加する ISP は、物理的に離れたネットワーク ロケーションにわたって Google のネットワークへの多様な経路を維持し、単一障害点を最小限に抑えることができます。この設計により、計画されたネットワーク メンテナンスや予期しない停止の際に、レイテンシを安定させて予測可能に保つことができます。
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接続性の高い ISP を簡単に特定: Google のネットワークへの多様性と信頼性の高い接続を持つ ISP を見つけたり、ISP のネットワークが Google に接続されている場所を把握したりするのは、ユーザーにとって簡単ではないかもしれません。Verified Peering Provider プログラムでは、ISP が Google に接続している場所が公開されているため、ユーザーはワークロードに最も近い ISP を選択できます。
Verified Peering Provider プログラムの拡大
Cloud WAN では、Verified Peering Provider プログラムも拡大しました。昨年の開始以来、このプログラムには、北米、ヨーロッパ、中南米、アジア太平洋地域の 50 の都市圏にわたる 40 以上の ISP が参加しています。こうしたパートナーシップは、一般に公開されている Google サービスにアクセスするための簡素化された接続ソリューションを提供していて、ユーザーの Google Cloud エクスペリエンスを向上させるうえで非常に重要なものとなっています。
この勢いに乗って、Google は VPP への登録資格を世界中の ISP に拡大しています。ご関心をお持ちの ISP の皆様には、技術的な要件を確認して、登録プロセスを開始することをおすすめします。
未来のエンタープライズ ネットワークの基盤
プレミアム ティアと Verified Peering Provider プログラムを組み合わせることで、Cloud WAN は、Google Cloud リソースと、より広範なインターネットへの高パフォーマンスで信頼性の高い安全な接続を実現します。
プレミアム ティアは、インターネットと Google Cloud の間のトラフィックが、ユーザーにできるだけ近い場所まで Google の高パフォーマンスのグローバル ネットワーク上に留まるようにし、信頼性とパフォーマンスを最大限に高めます。これは、さまざまなリージョンでアプリケーションのパフォーマンスとユーザー エクスペリエンスの一貫性を求める、世界中に拠点を持つ企業にとって非常に重要なことです。
プレミアム ティアと連携した Verified Peering Provider プログラムは、Google に接続する ISP が企業の支社から Google のグローバル ネットワークへの信頼性と冗長性の高い接続を備えることを意味します。Verified Peering Provider を選択すると、ISP から Google への既存の接続を使用して、エンタープライズ対応のシンプルな接続性を実現できるとともに、その ISP の SLA やサポート サービスも利用できます。
プレミアム ティアと Verified Peering Provider を組み合わせることで、企業はエンドツーエンドで次のことが可能になります。
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パフォーマンスの向上: 帯域幅が高くなるため、アプリケーションの応答時間が短縮
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信頼性の向上: ネットワークの稼働率の向上と一貫したユーザー エクスペリエンス
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管理の簡略化: ネットワーク運用の効率化と複雑さの軽減
信頼性と効率性に優れた企業ネットワーク接続に対する需要は、AI の台頭とともにますます高まっていくでしょう。企業は Cloud WAN を利用して、ネットワークをアップグレードし、クラウドベースのアプリケーションやサービスの可能性を引き出すことができます。Cloud WAN の詳細については、クロスクラウド ネットワークのソリューション ページをご覧ください。また、Cloud WAN を特集したシリーズの最初のブログで、NCC ゲートウェイに関する情報もご確認ください。
1. テストでは、ターゲットへのトラフィックがクロスクラウド ネットワークを経由した場合、パブリック インターネットを経由した場合と比較して、同じターゲットへのトラフィックのネットワーク レイテンシが 40% 以上短縮されました。
-シニア プロダクト マネージャー Prasad Nellipudi
-シニア プロダクト マネージャー Dave Schwartz