Model Context Protocol の gRPC トランスポート
Victor Moreno
Solutions Product Manager
Mark D. Roth
Senior Staff Software Engineer
※この投稿は米国時間 2026 年 1 月 14 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
AI エージェントはテスト環境から企業業務の中核へと移行していて、複雑なマルチステップの目標を達成するには、外部のツールやシステムと確実にやり取りする必要があります。Model Context Protocol(MCP)は、こうしたエージェントとツールの間の通信を可能にする標準プロトコルです。実際、Google は先月、フルマネージドのリモート MCP サーバーのリリースを発表しました。デベロッパーは、Gemini CLI などの AI エージェントや標準の MCP クライアントを、Google サービスと Google Cloud サービスのグローバルな整合性を備えたエンタープライズ対応エンドポイントに、簡単に接続できるようになりました。
MCP は標準トランスポートとして JSON-RPC を使用しています。これは、行動指向のアプローチと、エージェントが基盤モデルとのコミュニケーションで直接伝達できる自然言語ペイロードを兼ね備えているため、多くのメリットをもたらします。しかし、多くの組織がリモート プロシージャ コール(RPC)モデルの高性能なオープンソース実装である gRPC を利用しています。gRPC フレームワークを採用している企業は、MCP で使用される JSON-RPC トランスポートに合わせて自社ツールを調整する必要があります。現在、これらの企業は、JSON-RPC MCP リクエストと既存の gRPC ベースのサービスの間で変換を行うために、コード変換ゲートウェイをデプロイする必要があります。
MCP コード変換の興味深い代替手段として、MCP のネイティブ トランスポートとして gRPC を使用する方法があります。多くの gRPC ユーザーが、独自のカスタム MCP サーバーを実装して、この方法を積極的に試しています。Google Cloud は、サービスを有効にしてグローバル規模で API を提供するために gRPC を幅広く使用しており、こうした広範な利用から得られた技術と専門知識の共有に尽力しています。具体的には、本番環境で MCP を導入している gRPC 実務担当者にサポートを提供したり、MCP コミュニティと積極的に協力して、MCP のトランスポートとして gRPC を利用する手段を模索したりしています。MCP の主なメンテナーは、MCP SDK でプラグ可能なトランスポートをサポートすることに合意しており、Google Cloud は、MCP SDK にプラグインできる gRPC トランスポート パッケージを近い将来提供する予定です。コミュニティがサポートするトランスポート パッケージにより、gRPC 実務担当者は、一貫性があり相互運用可能な方法で、gRPC を使用して MCP をデプロイできるようになります。
トランスポートとして gRPC をネイティブに使用すると、コード変換の必要性がなくなり、gRPC を積極的に使用している環境の運用で整合性を維持できます。この投稿の残りの部分では、MCP のネイティブ トランスポートとして gRPC を使用するメリットと、Google Cloud がこの移行をどのようにサポートしているかについて説明します。
RPC トランスポートの選択
サービスに gRPC をすでに使用している組織は、gRPC がネイティブにサポートされることで、サービスの変更や、コード変換プロキシの実装をすることなく、既存のツールを引き続き使用して MCP 経由でサービスにアクセスできるようになります。これらの組織は、エージェントがサービスにアクセスする手段として MCP が使用されるようになっても、gRPC のメリットを維持できるように取り組んでいます。
「gRPC はバックエンドの標準プロトコルであるため、社内で gRPC を使用した MCP の試験的なサポートに投資してきました。すでにメリットを実感しています。それは、開発者が使い慣れているため扱いやすいという点や、構造と静的に型付けされた API を使用することで MCP サーバー構築に必要な作業を減らせるという点です。」 - Spotify、シニア スタッフ エンジニア兼デベロッパー エクスペリエンス担当テクニカル リード Stefan Särne 氏
gRPC のメリット
ネイティブ トランスポートとして gRPC を使用すると、MCP が gRPC ベースの最新分散システムのベスト プラクティスに準拠できるようになるため、パフォーマンス、セキュリティ、運用、デベロッパーの生産性が高まります。
パフォーマンスと効率
gRPC のパフォーマンス面でのメリットは、次の特性により効率を大幅に向上させます。
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バイナリ エンコード(プロトコル バッファ): gRPC はバイナリ エンコードにプロトコル バッファ(Protobuf)を使用しているため、JSON と比較してメッセージ サイズを最大 10 分の 1 に縮小できます。つまり、帯域幅の消費が削減され、シリアル化 / シリアル化解除がより高速になります。これにより、ツール呼び出しのレイテンシの短縮、ネットワーク費用の削減、リソース フットプリントの大幅な縮小が実現します。
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全二重双方向ストリーミング: gRPC は、クライアント(エージェント)とサーバー(ツール)が、単一の永続的な接続を通して、連続したデータ ストリームを同時に相互送信することをネイティブにサポートしています。この機能は、エージェントとツールのやり取りを大きく変えるものであり、アプリケーション レベルの接続同期を必要とせずに、真にインタラクティブなリアルタイムのエージェント ワークフローを実現できるようになります。
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組み込みのフロー制御(バックプレッシャー): gRPC にはネイティブなフロー制御が含まれているため、送信速度の速いツールがエージェントを圧倒するのを防止できます。
エンタープライズ クラスのセキュリティと認証
gRPC ではセキュリティが最重要事項とされているため、エンタープライズ クラスの機能がコアに直接組み込まれています。これには以下が含まれます。
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相互 TLS(mTLS): ゼロトラスト アーキテクチャに不可欠な mTLS は、クライアントと gRPC を利用したサーバーの両方を認証することで、なりすましを防止し、信頼できるサービスのみが通信できるようにします。
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厳格な認証: gRPC は、業界標準のトークンベースの認証(JWT / OAuth)と統合するためのネイティブ フックを提供し、すべての AI エージェントに検証可能な ID を提供します。
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メソッドレベルの認可: 特定の RPC メソッドまたは MCP ツールに認可ポリシーを直接適用できるため(例: エージェントは ReadFile が認可されるが、DeleteFile は認可されない)、最小権限の原則を厳格に遵守し、「過剰なエージェンシー」に対処できます。
運用の成熟度とデベロッパーの生産性
gRPC は、拡張性と再利用性を通じて、復元力に関する措置の負担を軽減し、デベロッパーの生産性を向上させる、強力な統合ソリューションを提供します。主な機能は次のとおりです。
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統合されたオブザーバビリティ: 分散トレース(OpenTelemetry)と構造化されたエラーコードとのネイティブ統合により、すべてのツール呼び出しの完全かつ監査可能な証跡が提供されます。デベロッパーは、単一のユーザー プロンプトを、その後に続くすべてのマイクロサービス インタラクションを通じてトレースできます。
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堅牢な復元力: 期限、タイムアウト、自動フロー制御などの機能により、たった 1 つの応答しないツールがシステム全体に障害を引き起こすことを防止できます。これらの機能により、クライアントはツール呼び出しのポリシーを指定して、このポリシーを超過したらフレームワークが自動的にキャンセルされるようにすることで、障害の連鎖を回避できます。
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多言語開発: gRPC では 11 以上の言語でコードが生成されるため、デベロッパーは厳密に型指定された一貫した取り決めを維持しつつ、作業に最適な言語で MCP サーバーを実装できます。
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スキーマベースの入力検証: Protobuf の厳格な型指定により、シリアル化レイヤで不正な形式の入力を拒否することで、インジェクション攻撃が軽減され、開発タスクが簡素化されます。
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エラー処理とメタデータ: フレームワークは、標準化された一連のエラーコード(例: UNAVAILABLE、PERMISSION_DENIED)を返して、クライアントが確実に処理できるようにします。また、クライアントは、主なリクエストの内容をシンプルに保ちながら、メタデータで Key-Value ペアとして帯域外情報を送受信できます(例: トレース ID)。
使ってみる
Agentic AI Foundation の初期メンバーであり、MCP 仕様の主要な貢献者である Google Cloud は、コミュニティの他のメンバーとともに、MCP SDK にプラグ可能なトランスポート インターフェースを含めることを提唱してきました。MCP のトランスポートとして gRPC を使用することにご関心がある場合は、ぜひ参加してお知らせください。
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MCP トランスポートとして gRPC を有効化することにご関心をお持ちの場合は、Python MCP SDK のプラグ可能なトランスポート インターフェースのアクティブな pull リクエストに貢献してください。
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AI のコミュニケーションの未来を形作るコミュニティに参加して、Model Context Protocol の発展にご協力ください。Contributor Communication - Model Context Protocol(貢献者によるコミュニケーション - Model Context Protocol)。
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お問い合わせください。Google は、ユーザーの皆様の経験から学び、それぞれの取り組みをサポートしたいと考えています。
- ソリューション プロダクト マネージャー Victor Moreno
- シニア スタッフ ソフトウェア エンジニア Mark D. Roth
