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Google Maps Platform

場所から評価まで: BigQuery の Places Insights を使用した不動産の分析

2025年9月30日
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Yolee Escuadra

Technical Sales Engineer at Navagis

Erika Yamasaki

Group Product Manager, Google Maps Platform

※この投稿は米国時間 2025 年 8 月 26 日に、Google Maps Platform blog に投稿されたものの抄訳です。

編集者注: 本日のブログ投稿は、Google Maps Platform 担当グループ プロダクト マネージャーの Erika Yamasaki と、Navagis のテクニカル セールス エンジニアである Yolee Escuadra 氏によるものです。このブログでは、Navagis が最近実施した分析について紹介しています。この分析では、地下鉄の駅やスーパーマーケットなどの地元の施設に近いことが土地の価格にどのように影響するかを定量化しています。


不動産の価値の決め方は、不動産開発業者、投資家、都市計画担当者にとって根本的な問題です。住所情報のみにとどまらず、不動産の価値は、周辺の環境、サービス、インフラストラクチャなど、その場所の特性と深く関連しています。主要な場所の特性が土地の価値に直接影響する度合いを定量化できると、企業は新しい物件の価格をより正確に予測できるようになります。また、不動産業者や開発業者は、評価の傾向に関する重要な分析情報を得て、競争優位性を高めることができます。Places Insights は、豊富な実世界のコンテキストで分析を強化することで、ビジネスの差別化要因となります。

Google Maps Platform パートナーの Navagis は最近、地下鉄の駅やスーパーマーケットなどの地元の施設からの距離が地価にどのように影響するかを定量化する分析を実施しました。これらの関係を理解するために、東京と四日市という 2 つの異なる日本の地域を調査しました。地理空間データを使用する同社の不動産市場の分析は、より深掘りした豊富な分析情報を引き出すための強力な青写真を提供します。

地域の評価を定量化する課題

不動産の価値は、価格に影響する可能性のある要素が多いため、ブラックボックスのように思えるかもしれません。さらに、これらの変数は近隣地域ごとに大きく異なる可能性があります。物件の評価額を把握する定量的な方法がない場合、新しい物件の価格設定は専門家の判断と地域市場の知識に頼ることになり、規模の拡大が難しくなります。しかし、交通機関の近くの物件は価値が高いという思い込みのような、裏付けの乏しい論理を超えて、テストして広く適用できる、より定量化可能なデータドリブン モデルに移行できるとしたらどうでしょうか。

Places Insights と BigQuery ML を使用して、不動産価値に影響する地理空間特性を特定する

解決策は、Google Cloud と Google Maps Platform のパワーとスケールを組み合わせた、最新の合理化されたワークフローを使用することです。Places Insights は、Analytics Hub で利用できる Google マップの包括的なカバレッジと最新のプレイスデータに関する統計分析を可能にするスポット(POI)データセットです。この分析可能なデータセットでは、300 以上の場所タイプ、車椅子対応、駐車場、支払いオプションなど、POI 属性の詳細にアクセスできます。

まず、Navagis の事例で使用した parcels_row テーブルなど、物件の所在地とその価格に関するサードパーティの基本データセットから始めます。次に、このデータを、Places Insights から取得した各物件周辺の主要なスポットの密度に関する情報と組み合わせます。Places Insights で利用できる場所の数関数を使用すると、主要な属性(「地下鉄の駅」の primary_type など)に基づいて、各物件のジオコーディングされた座標の定義された半径内の POI 数を数えることができます。このケーススタディでは、各区画から半径 500 m 以内のアメニティを検索しました。出力は、parcel_features という新しい拡充された特徴テーブルで、区画 ID、価格、count_of_subway_stations、count_of_supermarkets、count_of_restaurants などのアメニティ数の新しい列が含まれています。不動産価値に影響を与える可能性があると考えるあらゆる種類の POI と POI 属性に基づいて、分析をカスタマイズできます。

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東京と四日市のさまざまな側面を比較したグラフ。

最後に、BigQuery ML を使用して物件の価値を予測します。parcel_features  テーブルが充実したことで、お客様は簡単な create model ステートメントを使用して、独自の価格データで ML モデルをトレーニングできます。お客様が提供した価格データを使用してモデルをファインチューニングすることで、周辺環境が物件の価値に与える具体的な統計的関係、つまり重みを特定し、価格のプラスまたはマイナスの変化と相関する場所を明らかにできます。このアプローチの利点は、モデルのトレーニングと予測がデータ ウェアハウス内で直接行われるため、ML オペレーション パイプラインが大幅に簡素化されることです。

東京と四日市から得られた驚きのインサイト

この分析により、不動産価値の要因について思いも寄らない発見がありました。東京では、地下鉄の駅に近いほど土地の価値が高くなるという有意な相関関係が明らかになりました。地下鉄の駅から 500 メートル以内の物件は、土地価格が 893,798 円上昇する傾向がある一方、鉄道の駅に近い物件は、物件価格が 411,128 円下落する傾向があります。この結果は、一般的に地下を走行する地下鉄と比較して、地上を走行する電車の騒音などの要因が影響している可能性があると考えられます。このモデルは関係(相関)を示すものであり、因果関係については何も示さないことにご留意ください。

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東京の不動産価格に対するアメニティの種類別の価格の影響を示すグラフと表。

四日市市では、分析により、不動産価格のさまざまな主要要因が特定されました。大学に近いことが最も強いプラスの要因で、価格が 9,135 円上昇する相関関係がありました。これは、モデルが地域固有の特性を捉えることができることを示しており、価値があるとみなされる周辺施設は都市によって大きく異なる可能性があることを示しています。

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四日市市の利便施設の種類に基づく不動産価格への影響を示すグラフと表。

モデルには大きな説明力がありました。東京では、周辺施設のデータで地価の変動の約 43% が説明されました。四日市では、その割合はさらに高く、周辺施設が価格変動の約 53% を説明していました。このレベルの分析情報は、Google Maps Platform のプレイスデータから得られた分析情報をほぼそのまま使用して導き出されたものであり、このアプローチの可能性を示しています。

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土地価格を説明するアメニティ データの割合を示す円グラフ。

実用的なアプリケーションとビジネスへの影響

この種の分析から得られた知見は、さまざまな業界で実用的なアドバイスとして活用できます。不動産投資家は、近隣施設のプロファイルを分析して投資候補を迅速にスクリーニングし、「もし~なら」シナリオを実行して将来の開発の影響を推定できます。不動産業者は、これらの主な傾向と分析情報を活用して、地域の市場で最も重視されているものと関連付けながら、物件をより効果的に宣伝し、位置付けることができます。都市計画担当者は、経済的および社会的利益を最大化するために、新しい公園、交通機関の停留所、公共サービスをどこに建設するかについて、データに基づいた意思決定を行うことができます。小売業者は、同じデータを立地選定に使用して、ターゲットとするユーザー層を引き付ける最適なアメニティの組み合わせを持つ場所を特定できます。

機械学習でよりスマートに構築

BigQuery 内で直接、自社のビジネスデータと Google Maps Platform の豊富なコンテキスト データを組み合わせることで、単純なマッピングから予測モデリングに移行できます。Navagis の事例では、BigQuery ML と組み合わせた簡単な SQL クエリをいくつか使用するだけで、現実世界の価値を左右する要因について、強力でスケーラブルかつ驚くべき分析情報を得られることが証明されています。

この分析はほんの始まりにすぎません。より高度なモデリングを取り入れたり、市場動向や地域のゾーニングに関するデータを含めたりすることで、予測力をさらに高め、位置情報インテリジェンスを真の戦略的優位性に変えることができます。ご自身のデータの拡充を始める準備はできましたか?Google Maps Platform の地理空間分析プロダクトのテストへの参加に関心がある場合は、ぜひご連絡ください

-Navagis、テクニカル セールス エンジニア、Yolee Escuadra 氏 
-Google Maps Platform 担当グループ プロダクト マネージャー、Erika Yamasaki

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