Air Aware Labs: よりきれいな空気への道筋を Air Quality API で描く

Louise Thomas
Co-founder and Chief Executive Officer, Air Aware Labs
Dr. Will Hicks
Co-founder and Chief Scientific Officer, Air Aware Labs
※この投稿は米国時間 2025 年 6 月 3 日に、Google Maps Platform blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: 今回の記事は、Air Aware Labs の共同創業者で最高経営責任者でもある Louise Thomas 氏と共同創業者で最高科学責任者の Will Hicks 博士によるものです。人々が、よりきれいで健康によい空気を吸えるよう、Google Maps Platform の Air Quality API を使用したソリューションによって十分な情報に基づく意思決定を支援している方法について語ってくださいました。
大気汚染は現在、世界的な健康リスクの第 2 位の要因となっており、地球上のほぼすべての人々が日々、健康によくない空気を吸っています。ロンドンに住む共同創業者の Louise Thomas は、大気汚染について知らないわけではありませんでした。しかし、娘の学校周辺の空気をきれいにするボランティア活動に参加したとき、人々が吸う空気についてより多くの情報を提供するためにできることがまだたくさんあることに初めて気づきました。一方、Thomas の共同創業者である Will Hicks 博士は、博士論文のために大気汚染を研究するなかで、大気汚染が人体に及ぼす広範な影響に衝撃を受け、何か対策を講じたいと考えるようになりました。
Thomas と Hicks は、人間を取り巻く空気の質に関する信頼性の高い分析情報を提供するために、共同で Air Aware Labs を設立しました。AI と Google Maps Platform のリアルタイムの大気質データを組み合わせた当社のソリューションは、よりきれいで健康によい空気を吸うための十分な情報に基づく意思決定を支援します。まずは Strava と統合し、何百万人ものランナーがルートを計画する際に、フィード内で大気質データを参照できるようにしました。そして 2025 年 4 月には、パーソナライズされた大気汚染に関する分析情報をあらゆる人々に提供する消費者向けアプリ AirTrack をリリースしました。
当社のプラットフォームを構築するとき、その品質は投入するデータの質に左右されるであろうことはよくわかっていました。つまり、正確な大気質データをリアルタイムで伝える分析情報を使用する必要がありました。これにより、ユーザーがその瞬間に吸い込んでいる空気に基づいて意思決定を下せるようになります。複数のプロバイダを検討しましたが、500 × 500 m の解像度で 1 時間ごとの大気質情報をリアルタイムで提供し、さまざまな汚染物質に関する詳細な情報を表示できる Google Maps Platform の Air Quality API は、当社のニーズに最適なソリューションとして際立っていました。社内で実施したテストでは、PM2.5(微小粒子状物質)や二酸化窒素などの汚染物質について、さまざまな都市環境でのモデルの一般的な R² 値が 0.7 を超えることがわかりました。このため、ユーザーは受け取る分析情報を信頼できるだろうと判断しました。また、Google Maps Platform はグローバル対応しているため、成長に合わせてアプリをスケールアップし、新しい地域に簡単に拡大することもできます。


ユーザーが吸う空気の質をより明確に把握可能に
AirTrack アプリのユーザーは、特定の地域を移動する際に、自分が吸い込む汚染物質のレベルに関する正確かつ局地的な情報を入手できます。当社のアルゴリズムは、Air Quality API からの大気汚染フィードとユーザーの GPS 座標を組み合わせて、ユーザーが一定期間中にさまざまな汚染物質にどの程度さらされるかを示します。これらの分析情報は、ユーザーが最近のアクティビティをすべて確認できるダッシュボードに表示されます。ユーザーは、特定のルートについて次の項目を確認できます。
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ルートスコア: 選択したルートが他のルートと比べてどれだけ優れているかを把握可能。
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ルートマップ: 汚染物質の濃度が最も高かった場所と最も低かった場所を示す。
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時間スコア: そのルートの大気質が他の時間帯と比べてどの程度であるかを示す。
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そのルートの大気質の変動を時系列で可視化。


このように明確かつシンプルな情報を表示することで、ユーザーはどのルートをいつ利用するかについて、十分な情報に基づいて迅速に判断できます。同時に、Air Quality API を使用すると二酸化窒素や PM2.5 汚染などの個々の汚染物質を表示できるため、より詳細な分析情報を必要とするユーザーは、特定の汚染物質のレベルを掘り下げて、個々人の健康上のニーズに応じて意思決定を行うことができます。たとえば、喘息持ちのランナーは二酸化窒素の濃度が高いルートを避けることができますし、認知機能の低下が気になっている場合は PM2.5 への曝露を優先的に考慮できます。Air Quality API がなければ、これほど詳細な分析情報を実現することは不可能だったでしょう。
パーソナライズされたルート提案機能で特定の汚染物質から受ける影響を低減
現在は、予測機能と、よりパーソナライズされたルート提案機能の構築に注力しています。たとえば、Air Quality API を使用して 1 時間ごとの大気質情報を予測することを計画しています。これにより、ユーザーは特定のルートを入力して、最適な出発時間や、汚染の少ない代替ルートに関する提案を受け取ることができます。また、これらの予測をユーザーの健康に関するより具体的な情報と組み合わせることで、よりパーソナライズされた提案を行うこともできます。たとえば、心血管疾患のある人が PM2.5 に長時間さらされないルートを提案できます。
こうした分析情報をウェアラブル デバイスのデータと組み合わせることで、心拍数や呼吸数が空気中に存在する特定の汚染物質の摂取にどのように影響したかなど、汚染物質の曝露に関するよりパーソナライズされた分析情報を短時間でユーザーに提供できます。大気質には天候が大きく影響することを考慮し、Google Maps Platform の Weather API を統合して、大気質の分析情報と予測をさらに充実させることも計画しています。Air Quality API から受け取るデータと組み合わせられるデータが多いほど、分析情報に深みが出て、ユーザーに説得力のある提案ができるようになります。


ユーザーがよりきれいな空気を吸えるよう着実にサポート
当社は Gemini Pro を使用して chatbot を構築する実験も行っています。これはユーザーが自然言語を使用して、周囲の空気の質に関する明確でわかりやすい分析情報や、個人の健康目標を達成するための推奨事項を取得できるものです。いわばユーザー専任の空気質科学者の役割を果たす chatbot により、健康によい選択がさらに容易になり、有害な汚染物質への曝露を減らすことができます。
消費者向けアプリに加えて、ビジネスアプリ AirTrack Enterprise の展開も拡大しています。このアプリは、組織で従業員の健康改善に役立つ福利厚生として提供できるほか、従業員が大気汚染にどの程度さらされているかの分析情報を企業レベルで把握するために使用することもできます。現代において特に重要な健康課題を前にして、当社は、可能な限り多くの人々に、きれいで健康によい空気を吸うために必要なソリューションを提供することを目指しています。そして Google Maps Platform が、それを可能にしてくれます。
-Air Aware Labs、共同創業者 / 最高経営責任者、Louise Thomas 氏
-Air Aware Labs、共同創業者 / 最高科学責任者、Will Hicks 博士