加速する金融サービス企業のクラウド導入
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2018 年 7 月 23 日に The Keyword に投稿されたものの抄訳です。
他の業界と同様に、金融サービス企業は、リスク管理や新たなレベルの成長と収益性の追求、優れたユーザー エクスペリエンスの提供といった課題に直面しています。その一方で、ダイナミックな市場動向や規制の変化にも対処しており、多くの場合、数十年分のデータやレガシー システムも抱えています。その結果、多くの金融サービス企業がクラウドを利用するようになっています。
このような金融機関のお客様と会って話をすると、成長や差別化の推進、コストの削減、より俊敏で革新的な企業への変革にクラウドが役立つことを期待する声をよく耳にします。こうした金融機関は、古いシステムをモダナイズし、機械学習 API を使って顧客エクスペリエンスを向上させ、効率性や新しいビジネス モデル、機会創出を促進するコネクテッド エコシステムを構築しています。そして、効率を高める手段としてだけでなく、変革の起爆剤としてクラウドを位置づけています。
世界 67 の国と地域に約 3,900 支店を展開する金融機関 HSBC は先ごろ、クラウド ファースト戦略をどのように進めているかについて情報をシェアしました。HSBC は、より迅速なイノベーションの実現に向けて、信頼性と回復力の高いサービスを構築できるクラウドへの移行を推進中です。データ アナリティクスを利用して顧客ニーズをより良く理解し、新しいバンキング機能を顧客に提供しようとしています。また、詐欺行為を迅速かつ高い精度で検知するにあたって、機械学習をどのように活用すればよいのかを探っています。
HSBC だけではありません。PayPal は最近、「ワークロードをクラウドに移行した当初は、リソースを浪費しないスケールアップやスケールバックを目的としていたが、今では、自社データを利用した機械学習機能を構築する方法も調査している」と述べています。
実際、多くの金融機関が、インテリジェンスを加えた顧客エクスペリエンス(改良されたチャットボットやインテリジェントな案件処理)を、機械学習 API のようなツールを使って提供する方法に注目しています。データ アナリティクスは、高度にパーソナライズされたユーザー エクスペリエンスの提供を支援します。また、リスク状況が変化し、不正の手口が巧妙化する中、機械学習は異常の早期発見や誤検出の削減、詐欺の防止に役立ちます。
機密情報を幅広く取り扱う金融サービス企業は、データを完全な管理下に置くことを絶対的に優先します。Google Cloud はセキュリティを中核に据えて設計、構築され、運用されており、そのプロダクトは、セキュリティ、プライバシー、およびコンプライアンス管理について、独立機関による検証を受け、さまざまな国際基準の認証や認定を受けています。その中には、NIST 800-53(FedRAMP)、ISO 270XX、日本の FISC 安全対策基準、シンガポールの MTCS Tier 3 などが含まれます。私たちは、お客様がデータを所有できるようにし、さらに Google Cloud 内でデータをどのように配置するかを決定できるようにして、データの分離、リージョン別の管理、暗号鍵の管理、破棄といったファクターの適用を可能にしています。
Credit Karma が Google Cloud を採用した理由の 1 つは、こうしたセキュリティへの取り組みにあります。Credit Karma は、8,000 万人の会員にサービスを提供するプラットフォームの拡張を行っています。同社 CTO の Ryan Graciano 氏は今年 5 月、「強力なセキュリティ体制の維持は、複雑なパーソナル ファイナンス サービスを使いこなせるよう会員を支援するという当社のミッションをサポートすることにつながる」と述べています。ユーザーの信用を基にビジネスを展開している Credit Karma にとって、セキュリティはクラウド プロバイダーを選択するうえで決め手になったのです。
金融機関は、ビジネスのグローバル展開を進める中で、クラウドを最適なインフラストラクチャと考えるようになっています。そこで私たちは今年 5 月、Google Cloud Platform(GCP)のリージョンをチューリッヒに開設し、金融サービスを手がける多くのスイス企業が高可用性かつ高パフォーマンスのアプリケーションを容易に構築できるようにすると発表しました。
チューリッヒは、GCP のリージョンがカバーする多数の金融センター(ロンドン、東京、シンガポールなど)の 1 つです。私たちは将来、香港と大阪にも GCP リージョンを開設する計画です。欧州で 6 つ目となるスイス リージョンが加わることで、既存および発表済みの GCP リージョンは合計で 20 となります。そしてこの数はさらに増えていく見込みです。
多くの金融サービス企業にとってクラウドへの移行はまだ初期の段階にありますが、喫緊の課題であることは間違いありません。お客様の関心は「クラウドに移行するかどうか」から「どのように移行するか」に移っており、それをお手伝いできることを私たちはうれしく思います。さらに、多くのお客様によるクラウドへの取り組みに協力できることを楽しみにしています。Google Cloud の金融ソリューションについてはこちらのページをご覧ください。
- By Tariq Shaukat, President, Partners and Industry Platforms, Google Cloud