オープンソースの力でデータをフル活用: Memorystore for Valkey の一般提供を開始
Ankit Sud
Senior Product Manager, Google
Ping Xie
Software Engineer
※この投稿は米国時間 2025 年 4 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
編集者注: Ping Xie は、Valkey Technical Steering Committee(TSC)の Valkey メンテナーです。
Google Cloud の Valkey、Redis、Memcached 向けフルマネージド インメモリ サービスである Memorystore は、組織のシステムにおいてますます重要な存在になっています。実際、Google Cloud の上位 100 社のお客様の 90% 以上が Memorystore を利用しています。このたび、Google Cloud は Memorystore for Valkey サービスの一般提供を開始しました。これは、クラウドでのオープンソースのインメモリ データ マネジメントにおいて大きな前進となります。この一般提供により、99.99% の可用性を保証する SLA に裏打ちされた Memorystore for Valkey で本番環境のワークロードを実行できるようになります。また、Private Service Connect、マルチ VPC アクセス、クロスリージョン レプリケーション、永続性などの機能も利用できます。
2024 年 8 月に Memorystore for Valkey のプレビュー版をリリースして以来、Major League Baseball(MLB)や株式会社バンダイナムコスタジオなど、Google Cloud の数百社ものお客様がこのサービスをシステムに取り入れています。過去数か月間にこうしたお客様から貴重なフィードバックをいただき、本日発表するサービスに反映することができました。
「私たち Major League Baseball は、Memorystore を活用してファンにデータを提供する方法を最適化しています。このたび、真のオープンソース ソリューションである Memorystore for Valkey の一般提供が開始されたことを大変嬉しく思います。このサービスだけが備える柔軟性とコミュニティ主導の開発力によって、当社のスピード、スケーラビリティ、リアルタイムのデータ処理能力が一層強化され、ファン、選手、運営にさらに優れたサービスを提供できると確信しています。」- Major League Baseball、ソフトウェア エンジニアリング担当バイス プレジデント、Rob Engel 氏
「バンダイナムコスタジオは、Memorystore を使用して、多くのタイトルに不可欠な低レイテンシと高スケーラビリティを実現しています。Memorystore for Valkey の一般提供が開始されたことに興奮しています。そのスピード、機能、オープンソースの真の特性は、当社が提供するリアルタイムのゲームプレイの強化や、グローバル プレーヤー ベースに合わせたスケーリングを可能にするはずです。Memorystore for Valkey の機能を活用して、ゲームのイノベーションの限界をさらに押し広げていきます。」- 株式会社バンダイナムコスタジオ、テクニカル ディレクター、Motoo Fukuda 氏
一般提供版の新機能
Google の高度な高可用性とゾーン配置アルゴリズムに基づく 99.99% の SLA にサポートされた Memorystore for Valkey は、一般提供開始に伴い、以下のようなエンタープライズ グレードの包括的機能セットを提供します。
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Private Service Connect のサポート: Memorystore for Valkey は Private Service Connect 上に構築されており、わずか 2 つの IP アドレスで最大 250 個のシャードに接続できます。Memorystore の検出エンドポイントは高可用性を備え、クラスタに単一障害点は存在しません。
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ダウンタイムのないスケーリング: Memorystore for Valkey は、ダウンタイムのないスケーリング(スケールイン、スケールアウト)を提供します。アプリケーションのニーズに合わせてクラスタを拡張して、ワークロードの費用も最適化できます。1~250 ノードのクラスタサイズに対応します。
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Google が構築したベクトル類似性検索の統合: Memorystore for Valkey は、超低レイテンシのインメモリ ベクトル検索に対応しており、10 億を超えるベクトルに対して 1 桁ミリ秒単位のレイテンシでベクトル検索を実行でき、その再現率は 99% を超えます。このパフォーマンスは、Google のベクトル検索モジュールによって実現されています。これは、Valkey OSS プロジェクトの公式検索モジュールであり、Memorystore for Valkey に統合されています。このモジュールにより、検索拡張生成(RAG)、レコメンデーション システム、セマンティック検索など、生成 AI ユースケースに対応した最新の AI アプリケーションを実現できます。また、ハイブリッド検索のサポートにより、より正確でコンテキストに関連性の高い検索結果を取得することが可能で、アプリケーションのパフォーマンスとユーザー エクスペリエンスが向上します。
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マネージド バックアップ: 組み込みのマネージド バックアップにより、移行、障害復旧、コンプライアンスのために自動バックアップとオンデマンド バックアップの両方を利用できます。
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クロスリージョン レプリケーション(CRR): CRR を使用することで、障害復旧への備えとリージョン全体での低レイテンシの読み取りが可能になります。現在、プライマリ リージョンに加えて、異なる数のレプリカをもつクラスタを備えた、最大 2 つのセカンダリ リージョンがサポートされています。Memorystore for Valkey では、データプレーンとコントロール プレーンの両方が同期された状態をリージョン間で維持します。
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マルチ VPC アクセス: Memorystore for Valkey では、複数のクライアントサイド VPC から Valkey クラスタ上の 1 つの Private Service Connect エンドポイントに接続できます。この技術を使用することで、複数のプロジェクトや VPC にまたがるクライアントを安全に接続することが可能です。
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永続性: Memorystore for Redis は、RDB スナップショットと AOF ロギングをベースとする永続性を提供し、さまざまなデータの耐久性要件に対応します。
Memorystore for Valkey は、Valkey 7.2 と、Google が推奨するエンジンである Valkey 8.0 の両方に対応しています。Valkey 8.0 は、前バージョンに以下のような多くの機能強化が加えられています。
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パフォーマンス強化: 非同期 I/O の改善により、Memorystore for Valkey 8.0 ではスループットが向上しており、Memorystore for Redis Cluster の 2 倍の秒間クエリ数(QPS)をマイクロ秒単位のレイテンシで実現します。これにより、インターネット スケールの要求の厳しいワークロードをアプリケーションで簡単に処理できます。ノード単価は Memorystore for Redis Cluster と同じ価格帯ですが、パフォーマンスを最適化して同じワークロードを処理するために必要なノード数を削減できるため、大幅な費用削減が見込めます。
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メモリ効率の最適化: Valkey 8.0 ではメモリ管理が最適化され、メモリを効率的に節約することで、さまざまなワークロードの運用コストを削減できます。
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信頼性の向上: Valkey 8.0 では、空のシャードの自動フェイルオーバーや高可用性の移行状態など、Google が提供した機能強化により、スケーリングの信頼性が大幅に向上しています。また、システムの復元力をさらに強化するために、移行状態の自動修復も導入しました。
さらに、Memorystore for Valkey では、メンテナンスの時間枠、シングルゾーン クラスタ、シングルシャード クラスタ、無料のゾーン間レプリケーションなどの機能も利用できます。
オープンソースとお客様の信頼に対する Google の取り組み
2024 年 3 月の Redis による Redis OSS のライセンス更新を受けて、オープンソース コミュニティは、代替となる Valkey OSS を立ち上げ、Google、Amazon、Snap などの組織がサポートを表明しました。
Google は、お客様から寄せられる信頼を重要視し、お客様に強力でオープンなテクノロジーを引き続きご利用いただくために、Google Cloud で Memorystore for Valkey をリリースしました。Redis とは異なり、Valkey OSS プロジェクトは 3 条項 BSD ライセンスに基づいており、Linux Foundation の支援を受けています。Valkey の勢いには目覚ましいものがあります。
Google は、Memorystore for Valkey に加えて、Memorystore for Redis Cluster と Memorystore for Redis の新機能のサポートと提供にも取り組んでいます。また、Memorystore for Redis のお客様が Valkey を導入する準備が整ったときには、その価格性能比、信頼性、オープンソースの特性を活かして、移行を全面的にサポートいたします。Memorystore for Valkey は、Redis OSS 7.2 API や使い慣れたクライアントと完全に互換性があるため、オープンソースへの移行も容易です。さらに、Memorystore for Redis や Memorystore for Redis Cluster の確約利用割引(CUD)を再利用して、移行をスムーズに進めることもできます。
Memorystore for Valkey を今すぐ試す
Memorystore for Valkey のパワーを体験する最良の方法は、実際に試してみることです。ドキュメントを参照して開始、または最初の Valkey インスタンスをデプロイしましょう。自己管理が必要な Redis から解放されましょう。Memorystore for Valkey のシンプルさとスピードを今すぐ体験し、組織のアプリケーションをどのように強化できるかをご確認ください。そうすれば、お客様は重要なこと、つまりビジネスのためのイノベーションと影響力のあるアプリケーションの作成に集中できるはずです。
-シニア プロダクト マネージャー、Ankit Sud
-ソフトウェア エンジニア、Ping Xie


