Google のカスタム コンピューティングの過去、現在、未来
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 3 月 22 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
20 年以上も前の創業時からずっと、Google はお客様やユーザーのニーズを満たす、世界最大かつ最も効率的なコンピューティング システムを設計して構築してきました。ムーアの法則がすべての人に急速な発展をもたらすこともなくなった今、カスタムチップはパフォーマンスを向上させる手段の 1 つです。現在、Google はこのアプローチを強化しています。
コンピューティングにおける Google の将来的なビジョンの背景を把握するため、これまでの歩みを振り返ってみましょう。2015 年、Google は Tensor Processing Unit(TPU)を導入しました。TPU がなければ、リアルタイム音声検索、写真オブジェクト認識、インタラクティブな言語翻訳といった多くのサービスは実現しませんでした。2018 年、Video Processing Unit(VPU)をリリースしました。これにより幅広い動画の形式とお客様の要件に合わせた動画配信が可能になり、リアルタイムのビデオ通信への急な需要にスケーラブルかつ効果的に対応できました。2019 年には、OpenTitan を発表しました。これは初となる、オープンソース シリコンを使用したルート オブ トラスト プロジェクトでした。また、SSD からハードドライブ、ネットワーク スイッチ、ネットワーク インターフェース カードまで、多くの場合外部パートナーとの密接なコラボレーションを通じて、カスタムのハードウェア ソリューションを開発しました。
クラウド インフラストラクチャの未来は明るく、急速に変化しています。世界各地におけるコンピューティングの需要への対応に取り組む中、本日より Google Cloud は Uri Frank をサーバーチップ設計エンジニアリング担当バイス プレジデントとして迎えます。Uri は、ほぼ 25 年間にわたるカスタム CPU の設計と提供の経験を活かし、イスラエルにおいて世界クラスのチーム作りに取り組みます。Google は長い間、Waze、通話スクリーニング、洪水の予測、検索の中でも影響が大きい機能、Velostrata のクラウド移行ツールといった新しい技術の開発をイスラエルに求めてきました。そして、この世界的なイノベーションの中心地で Google の存在感を高められることを大変嬉しく思います。
Google のコンピューティングは、重要な転換点にあります。これまで、マザーボードは Google の統合ポイントの役割を果たし、マザーボード上でさまざまなベンダーの CPU、ネットワーキング、ストレージ デバイス、カスタム アクセラレータ、メモリを構成して最適化されたシステムを構築してきました。しかし、これだけでは十分ではなくなりました。パフォーマンスを高め、消費電力を低減するには、ワークロードと基盤となるハードウェアの統合をさらに深める必要があります。
マザーボード上で部品を数インチもの長さの配線でつないで統合する代わりに、「システム オン チップ(SoC)」に移行しています。この設計では、複数の機能が 1 つのチップまたは 1 つのパッケージ内の複数のチップに搭載されます。つまり、SoC が新しいマザーボードです。
SoC では、異なるコンポーネント間のレイテンシと帯域幅が桁違いに向上し、マザーボード上で ASIC を個別に構成するよりも電力とコストが大幅に削減できます。マザーボードと同じように、個々の機能ユニット(CPU、TPU、動画のコード変換、暗号化、圧縮、遠隔通信、安全なデータ要約など)のソースは異なります。最適なベンダーから調達しますが、必要であれば Google で構築することもあり、業界全体にメリットを与えるエコシステムを目指しています。
Google のグローバル パートナー エコシステムの皆様と提携して、最先端のコンピューティング インフラストラクチャを活用してイノベーションを続けていきます。また、ほかでは得られない次世代の機能をお届けするよう取り組むとともに、想像もつかないような未来のアプリケーションとサービスを生み出す豊かな土壌を作っていきたいと考えています。
-Google Fellow 兼システム インフラストラクチャ担当バイス プレジデント Amin Vahdat