2021 年の API を活用したデジタル トランスフォーメーションの動向トップ 5
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2021 年 1 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google による「State of the API Economy 2021」のレポートでは、企業にとって長い間ビジネスの最重要課題の一つであったデジタル トランスフォーメーションについて、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)のパンデミックと市況の変化により緊急性が高まったことが実証されています。世界中の組織が何年もかかるデジタル トランスフォーメーションをわずか数か月で集中的に推し進めることで、パンデミックを乗り切りました。
次の調査結果は、そのような緊急性を示しています。2020 年、パンデミックとビジネスに及ぼす影響に対応するために、およそ 4 社のうち 3 社の組織がデジタル トランスフォーメーションへの投資を継続しました。そのうち 3 分の 2 の企業が投資を増やすか、戦略を根本的に変えてデジタル ファーストの企業を目指しています。
デジタル トランスフォーメーションは、組織が自社のサービス、機能、アセットをモジュール型のソフトウェアにパッケージ化して、繰り返し利用できるようにする能力にかかっています。世界中のあらゆる企業のシステムにはすでに貴重なデータや機能が組み込まれています。しかし、そのようなデータや機能の価値を活用するということは、組織間の壁を取り払ってさまざまな状況で相互運用と再利用を可能にすることを意味します。パートナーや他のサードパーティの貴重なアセットと組み合わせる場合もあります。
API を利用すると、システムが相互運用を目的としていない場合でも、さまざまなシステムのデジタル アセットに簡単にアクセスして組み合わせることができるようになり、相乗効果が生まれます。API の基本形はソフトウェアが相互に通信する仕組みです。ただし、独自の仕様に基づく統合プロジェクトとしてではなく、デベロッパー エクスペリエンスを考慮して設計されると、API は極めて強力になり、新しいアプリケーションや自動化の開発にデータや機能を繰り返し利用することが可能になります。
「State of the API Economy 2021」の調査レポート作成の一環として、パンデミックとビジネスに及ぼす影響への対応に関する重要な動向を把握するため、世界中の 700 人を超える IT 管理者を対象に調査を実施しました。調査の結果により、API ファーストのデジタル トランスフォーメーションに関して 2021 年に重要となる 5 つの動向が明らかになりました。
1. SaaS およびハイブリッド クラウドをベースにした API デプロイの増加
今後注目、投資するテクノロジー分野についての設問に対し、2 人に 1 人の回答者が仕事量の管理を目的とした SaaS の利用拡大と、ハイブリッド クラウドの採用の増加を挙げました。どちらの分野でも、API は非常に重要なツールです。
API は、内部アプリケーションの接続からデジタル エコシステム戦略の実現まで、さまざまなユースケースに対応しています。そのため、多くの組織が API をホストするインフラストラクチャとしてオンプレミスとクラウドを組み合わせて利用するのは当然と言えます。
2. 分析によって競争力を拡大
API のデプロイは企業のデジタル プレゼンスを高めますが、API を最大限活用し、イノベーションをさらに進める方法を明確にするには API のパフォーマンス測定が不可欠です。
現在の自社 API の測定方法についての設問に対し、調査回答者が特に多く挙げたのは API のパフォーマンス、従来の IT 関連の数値、API の使用量を重視した指標でした。一方、API 測定に関する優先順位の設問では、ネット プロモーター スコア(NPS)や市場投入までの時間を含む、ビジネスへの影響が 1 位に挙げられました。
トップ企業は新たな戦略の判断材料にするためだけでなく、組織上層部の目標と成果を調整するために API 分析を活用しています。上層部の支持者は具体的な成果を認める傾向にあるため(例: デベロッパーからの注目度の高い API、新製品の提供を早める API)、各部門は API 指標をもとに、デジタル戦略に関するリーダーの意見を効果的に集約し、API プログラムへのプラットフォーム単位の継続的な投資について妥当性を説明することができます。
3. AI と ML を活用した API 管理への高い注目
API のセキュリティと管理においては、アクセス制御のために認証メカニズムを使用する、あるいは API 呼び出しが一定回数を超えた場合にレート制限を適用する(DDoS 攻撃を受けている間など)といったシンプルな方法もあります。その一方で、組織が API の管理およびセキュリティ機能を強化するうえで人工知能(AI)と機械学習(ML)は重要な手法になってきています。
企業が悪意のある攻撃を検知し防御できるようにするため、AI と ML を新たに活用した API セキュリティおよびモニタリング ソリューションが広く採用されているのも頷けます。実際、Apigee のお客様を対象に 2019 年 9 月と 2020 年 9 月の異常検出、bot 防止、セキュリティ分析の使用量を比較したところ、前年比で 230% 増加していました。
4. API エコシステムがイノベーションを推進
API は、パートナー、開発者、顧客のネットワークを含むデジタル ビジネス エコシステムの根幹です。このエコシステムは、完全に内部関係者(組織内の開発者など)だけで構成することもあれば、サプライヤー、サードパーティ プロバイダ、請負業者、顧客、開発者、規制機関や、さらには競合他社といった、外部の個人や組織にまで広げることもできます。
Google の調査によると、API 活用の成熟度レベルにかかわらず、企業は新規アプリケーション開発のスピードアップと内部アプリケーションの接続を重視する傾向がありますが、成熟度の高い組織においては、開発者向けあるいは B2B パートナー向けに自社 API のエコシステムを構築することに注力する傾向が極めて高いことがわかりました。
5. これまで以上に重要になる API のセキュリティとガバナンス
2020 年には COVID-19 の影響を受けて、小売や製造から金融、サービス業にいたるほぼすべての業界がデジタル成熟度を重視する姿勢を明確にし、ビジネス手法を転換しました。顧客、従業員、パートナー向けの業務はすべてデジタルな手法へ移行されました。移行によって新たなイノベーションの機会が生まれましたが、その反面で、ハッカーが機密データにアクセスする手段が増えたため、セキュリティ上の脅威の高まりに対応することがより一層困難になりました。
適切に設計して管理された API は、ビジネスにおける選択の幅を広げます。デジタル アセットへのアクセス制御、古いシステムへの新しいテクノロジーの組み込み、開発者がテストや新たな変革を行い、変化する顧客のニーズに対応するための支援が可能になります。ただし、適切な制御、セキュリティ保護、開発者への配慮、可視化メカニズムがないまま公開された API は、企業および顧客データを危険にさらす事態を引き起こす可能性があります。
この調査から、企業がデジタル アセットの活用と保護を進めるために、セキュリティとガバナンスへの投資の増加が依然として最大の課題であることがわかっています。
2020 年の多くの課題を持ち越して 2021 年が始まりましたが、企業は先を見据え、今後 10 年間に向けてデジタル トランスフォーメーションにとらわれず考えをめぐらせ、デジタル エクセレンスを実現するために尽力すべきでしょう。成長を続けるグローバル デジタル エコシステムを維持するために、企業はセキュリティ、グローバル対応、アクセス管理、人工知能に関する高度なクラウドの機能を活用する必要があります。適切に設計し管理された API を利用すると、業務が中断した場合に状況に合わせてビジネスを適応させることができるようになります。そして Google はパートナーとして、貴社がデジタル エクセレンスを実現できるようお手伝いします。
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「State of the API Economy 2021」のレポートは、2020 年を通してデジタル トランスフォーメーションの取り組みがどのように発展したのか、そして今後どこに向かうのかについて説明しています。本レポートは、Google Cloud の Apigee API 管理プラットフォームの使用状況データ、Apigee のお客様事例、従業員 1,500 人以上の企業のテクノロジー リーダー(米国、英国、ドイツ、フランス、韓国、インドネシア、オーストラリア、ニュージーランド)を対象としてサードパーティが実施した複数のアンケートの分析結果に基づいています。
-ビジネス アプリケーション プラットフォーム部門プロダクト管理ディレクター(担当責任者)Bala Kasiviswanathan