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API 管理

API の価値を生み出す 4 つの方法

2020年11月26日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2020 年 11 月 18 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

ザ・エージェント」が 1996 年に公開されてから 20 年が経ちましたが、この映画のある台詞は特別なものとしていまだに人々の心に響いています。スポーツ エージェントであるジェリー マグワイア(トム クルーズ)と新進のプロアメフト選手であるロッド ティドウェル(キューバ グッディング ジュニア)との絶えない言い合いは見ていて面白いものですが、この映画の主要なテーマは、ティドウェルが積極的に主張しただけでなくマグワイアにもそうするように求めた、あの言葉にあります。

「金を見せろ。」

ティドウェルは、アメフトに対する情熱よりもお金を稼ぐことに対する情熱の方がはるかに高い人物でした。そしてお金のことを忘れてプレーをした時初めて、チーム、チームのオーナー、そして最終的には自分自身にとって本来の価値を生み出すまでのプレーをすることができたというのがこの映画のテーマの一つでした。

これを API 管理に置き換えてみましょう。デジタル製品の所有者も似たような道をたどる傾向にあるからです。つまり、お決まりの行動として、最も簡単に API の価値を高めるために使用料金の請求をするのです。最も簡単なのはこの方法であるかもしれませんが、多くの場合、API の価値を最大限に高められるのは他の間接的なやり方です。三者にとって価値のある取引(エンドユーザー、パートナーであるデベロッパー、API を公開する企業のすべてが満足する提案)をすることで、未開発の大きな価値を見つけ出せる可能性があります。あの映画のアメフト選手、スポーツ エージェント、アメフトのチームのように、「試合」に情熱を向けることで三者すべてが勝者になれるのです。

API から価値を生み出す方法

API の価値を高める 4 つのベスト プラクティスは以下のとおりです。

1. チャネルのリーチを拡大する

貴社のアプリケーションは、優れている一方でターゲットが特定のユーザー層に絞られていると仮定します。もし、アプリを使えない特定のユーザー層がいるとしたらどうでしょうか(もしかすると特定の層ではなく、チャネル全体かもしれません)。アプリケーションが他企業のシステムとうまく統合できない場合や、ある市場では利用できない場合、特定の通貨に対応していない場合、特定のビジネスモデル(前払いや後払いなど)をサポートしていない場合などが考えられます。API プロダクト、つまり、システム間の統合だけでなく、開発者の消費と生産性のために設計された API を作成することが、アプリケーションを柔軟にして、現在の販売アプローチでは対応していないチャネルにも機能を採用できるようにするための唯一の最良の方法となります。

これの良い例としては、Walgreens の Photo Prints API があります。写真がデジタルカメラからスマートフォンに移行したことから、サードパーティの写真アプリが出てきました。このようなアプリは素敵な写真を撮影でき、素晴らしいエフェクトの機能がありますが、写真を簡単にプリントできません。Walgreens の Photo Prints API と全国の Walgreens 店舗にある写真プリント設備への容易な接続を活用することで、これらのアプリは同店舗を写真プリントの場として利用することができるようになりました。これにより、ユーザーは好きな写真をすぐにプリントでき、デベロッパーは機能豊富なアプリを構築しやすくなりました。さらに Walgreens の写真サービスは店舗を凌ぐリーチを獲得し、API が製品化されなければターゲットとならなかったであろう多数のアプリやスマートフォンに自社の存在感を示せたのです。Walgreens はデベロッパー エコシステムをチャネル パートナーに変更し、現在では写真プリント以上のサービスを提供しています。

このモデルでは、三者すべて(API を公開する企業、デベロッパー、ユーザー)にとって明確な価値提案があったため、この API プロダクトは無料で提供されています(Walgreens の Apigee の利用方法をご覧ください)。

2. ブランドの認知度とプロモーションについて検討する

貴社のアプリケーションが、アプリストアで類似するその他のアプリに埋もれて目立たなくなっているとしましょう。その場合、何をすべきでしょうか。認知度を高める一つの方法は、API を通して事業のリーチ / フットプリントを広げ、ユーザーとデベロッパーに登録や利用に対するメリットを提供し、新しいサーフェス エリア、エクスペリエンス、フォーム ファクタでのアプリケーションの利用率を大幅に増加させることです。

たとえば、ストリーミング サービスには一般に、ストリーミング プレーヤーとさまざまなデバイス、フォーム ファクタ、デジタル エクスペリエンスへの統合を容易にすることによるメリットがあります。これにより、デバイス メーカーやアプリメーカー間でのサービスの統合にもメリットが生まれ、エンドユーザーやストリーミング プレーヤー API を統合する開発者にとっての価値提案が指数関数的に増加する可能性があります。ユーザーにとって視聴のオプションが多様になり、ストリーミング サービスのコンテンツの品質が良ければ、登録者数が増えて顧客のタッチポイントにさらに多くリーチできるという自己促進型のサイクルになります。デベロッパー、デバイス メーカー、API を公開するサービスは収益化を実現し、ユーザーは安定して改善される柔軟性の高いサービスを受けられます。

同様に、ブラジルの小売会社である Magalu(旧称 Magazine Luiza)の API を活用した成果を、CTO の Andre Fatala 氏が 2019 年のブログ投稿で、「新しいサービスやカスタマー エクスペリエンスの実現、既存のサービスや顧客体験の調整が簡単かつ迅速」になったことで、「皆が 5、6 人の小さなチームで活動し、アプリケーションを構成する各セグメント(オンラインでの購入手続き、実店舗での購入手続き、注文管理)を担当できるように」なったと述べました。このアプローチにおいて、Magalu 社は「今や小売会社というよりソフトウェア会社だ」と Fatala 氏は言います。

このアジリティを新たに獲得したことで、同社は e コマースの戦略をサードパーティの販売会社まで拡大し、販売会社が Magalu の API を通して簡単にエコシステムに参加できるようなデジタル マーケットプレイスを作りました。企業の従来の販売と流通のシステムでは 5 万 SKU しかサポートできなかったのに対し、このマーケットプレイスでは何千もの販売会社と何百万もの SKU をサポートでき、ブランドのリーチを大幅に拡大しています。

3. カスタマイズを可能にして新たな価値提供を行う

銀行サービスのエコシステムを作ることを目指して、ABN Amro は通信会社の KPN、スマートホームの専門会社である 50five、Energizer と連携し、自社の支払いアプリである Tikkie、Olisto の IoT デバイスをトリガーするプラットフォーム、Google Nest API を活用し、スマートホームのソリューションに関するまったく新しい価値提供を行うことができました。この連携によって、Nest Protect のスマート煙警報のバッテリー残量が残り少なくなったときに、交換品を自動で注文できるようになりました。この注文では、Tikkie を介して支払いを行い、バッテリーが所有者の自宅に直接配達されるようにトリガーされます。この機能があることにより、バッテリー切れによって煙警報が動作しなくなるリスクを大幅に軽減できます。また、現在 Google は ABN Amro のソリューションが生まれたプログラムに代わる新しい Nest の取り組みを展開していますが、Google の API が今後どのような斬新で便利なユーザー価値提案を可能にしていくのか楽しみにしています。これらの API パートナーシップによって、ABN Amro はサービスを柔軟なプラットフォームとして位置付け、需要を集約するネットワーク効果を生み出せています。新たな価値提案がこれら多くのエコシステムで生まれるにつれて、ABN Amro はすでに統合された状態で、エコシステムの需要に対応できます。同社の柔軟でカスタマイズ可能なプラットフォームにより、将来の類似した API パートナーシップも何の抵抗もなく進められることでしょう。

このモデルでは、三者すべてにとって明確な価値提案があったため、この API プロダクトは無料で提供されています。API を公開する ABN Amro は、その柔軟性からお金を保管しておく(また、一緒にビジネスをする)より理想的な場所となり、デベロッパーは顧客の深刻な問題を減らすことで自社の製品の価値と差別化を生み出せます。また、ユーザーは機能が優れた煙警報を使用できるという恩恵を受けられます。

4. レアで価値のある機能へのアクセスを可能にする

API の価値を生み出すベスト プラクティスが使用料金の請求である状況があります。もし API プロダクトが他社のサービスに代替されるリスクが低い(貴社の価値提案がレアで貴重であり、間接的競合において争いがない)なら、利用料金を請求することで API の価値を直接的に生み出せるチャンスがあります。良い例は、車内のネット接続用であるテレマティックス API などの通信インフラストラクチャ API です。競合となりえる通信会社は他にもありますが、車内のアプリケーションとネット接続を通信会社ではない他のプロバイダが提供する脅威(つまり、サービスが代替されるリスク)は非常に小さいからです。結果的に、通信会社は珍しく価値が高いため API プロダクトの使用料金を請求できます。

API の価値創出の重要性を、単純な収益生成やコスト削減と捉えてしまうことにより、API プログラムのデベロッパーをターゲットにした場合に浮上する未開発の価値の重要なソースを見逃してしまうことがよくあります。デベロッパーを刺激するこの能力は、グッディング演じるロッド ティドウェルが人々がアメフトを観戦したくなるような活力を再発見した時のような、インターネット経済の基盤であり、エコシステム効果と大きな 価値の創出を可能にする「需要の集約」モデルです。

API 製品化のアプローチを検討する際には、これらすべてのことを念頭におくことで、成功への道を開けます。詳しくは、API 製品化に関する Google の電子書籍をご覧ください

-シニア プロダクト マネージャー David Feuer

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