I/O で発表された Vertex AI の最新情報: Google Cloud のお客様に新たな Gemini モデルと Gemma モデルを提供
Burak Gokturk
VP & GM, Cloud AI & Industry Solutions, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2024 年 5 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Vertex AI は、モデルを大規模に活用するための、Google Cloud のフルマネージド統合開発プラットフォームです。150 を超える Google の基盤モデル、オープンモデル、サードパーティ製基盤モデルの選択肢を提供し、エンタープライズ対応のチューニング機能、グラウンディング機能、モニタリング機能、デプロイ機能を使用してモデルをカスタマイズしたり、AI エージェントを構築したりできます。
ADT、IHG Hotels & Resorts、ING Bank、Verizon をはじめとする多くのお客様が、AI アプリケーションとエージェントを構築、デプロイ、管理するためのワンストップ プラットフォームである Vertex AI を利用して、イノベーションを加速しています。
Google は本日の Google I/O 2024 で、Vertex AI に関する一連の最新情報を発表いたしました。その中でメイントピックとなったのは、Google DeepMind および Google のさまざまなグループによって開発された、現在 Cloud のお客様にご利用いただける以下の新しいモデルと今後予定されているイノベーションです。
今すぐ利用可能:
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Gemini 1.5 Flash(公開プレビュー版): 100 万トークンという画期的なコンテキスト ウィンドウを提供すると同時に、1.5 Pro より軽量です。スピードと規模を念頭に置いた設計により、チャット アプリケーションなどのタスクに効率的に対応できます。
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PaliGemma(Vertex AI Model Garden で利用可能): オープンモデルの Gemma ファミリーに初めて加わった視覚言語モデルであり、画像キャプションや Visual Question & Answering などのタスクに最適です。
近日提供予定:
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Imagen 3: テキストから画像を生成するこのモデルは特に高い品質を提供し、細部まで表現された現実感のある画像を生成できます。
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Gemma 2: Gemini の作成に使用されているのと同じテクノロジーで、幅広い AI デベロッパーのユースケースに対応できるよう構築された、次世代のオープンモデル ファミリーです。
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Gemini 1.5 Pro: 200 万のコンテキスト ウィンドウに拡張されます。順番待ちリストへの登録はこちらでお申し込みください。
お客様がモデルのパフォーマンスを最適化するために利用できる、コンテキスト キャッシュ保存、生成制御機能、Batch API などの新機能も発表いたしました。さらに、デベロッパーがより柔軟かつ迅速に AI エージェントを構築できるよう支援するために、Firebase Genkit と LlamaIndex を Vertex AI 上で利用可能にしています。
本日発表したさまざまな機能によって引き続き、デベロッパーがイノベーションを実現し、組織が本番環境での AI のデプロイを加速できるよう支援していきます。では、これらの機能を詳しく見ていきましょう。
Gemini 1.5 Flash: 費用とレイテンシが重要となる大容量のタスク向けに構築されたモデル
今年に入って Google が発表した Gemini 1.5 Pro では、業界トップクラスの 100 万トークンという画期的なコンテキスト ウィンドウにより、大量のドキュメント、コードベース、あるいは動画全体を単一のプロンプトで正確に処理できます。Gemini 1.5 Pro は 4 月に公開プレビュー版になった後、翌月には一般提供される予定です。
本日発表した Gemini 1.5 Flash では、Gemini の機能がさらに拡張されています。Gemini 1.5 Flash でも 1.5 Pro と同じ 100 万トークンのコンテキスト ウィンドウを利用できますが、Gemini 1.5 Flash はチャット アプリケーション、字幕、動画や画像の詳細な分析、長文形式のドキュメントからのコンテンツとデータの抽出といった費用とレイテンシが重要となる大容量のタスクに特化して構築されています。
たとえば非常に大規模なコードベースや包括的なドキュメント ライブラリの分析など、さらに大きなコンテキスト ウィンドウが必要となるユースケースでは、最大 200 万トークンのコンテキスト ウィンドウを利用可能な Gemini 1.5 Pro を試してみることができます。順番待ちリストへの登録はこちらでお申し込みください。
PaliGemma: Vertex AI 上でのデベロッパーの選択肢を拡充
今年に入ってリリースされたオープンモデルの Gemma ファミリーは、Gemini モデルと同じ研究とテクノロジーを活用して構築され、軽量の 7B および 2B パッケージで最先端のパフォーマンスを実現します。ありがたいことに Gemma はコミュニティで受け入れられており、ダウンロード件数はわずか数か月で数百万件に達しています。
本日発表した PaliGemma は、Gemma ファミリー初の視覚言語オープンモデルです。PaliGemma は、画像キャプション、Visual Question & Answering、画像内のテキストの理解、オブジェクト検出、物体のセグメント化などのユースケース向けに最適化されています。PaliGemma により、Vertex AI 上でアクセスできるモデルの選択肢が広がり、モデル デベロッパーは予算の要件に合わせて、適切なタスクに適切なモデルを組み合わせることができます。
Imagen 3 および Gemma 2 モデルに伴う、さらなるモデル イノベーション
現在利用可能なモデルとツールに加え、Vertex AI のお客様は間もなく Imagen 3 および Gemma 2 モデルを使用してイノベーションを開始できるようになります。
今年の夏から、Vertex AI のお客様は Imagen 3 を利用できるようになります。とりわけ高度な画像生成機能を備えた Imagen 3 は自然言語を理解することから、プロンプトの背後にあるインテントをより深く理解して、長文のプロンプトから詳細をくみ取って、画像内のテキストをより正確にレンダリングできます。
同じく今年の夏に Vertex AI 上で利用可能になる Gemma 2 には、はるかに大きいモデルに匹敵するパフォーマンスを発揮する 27B モデルが含まれており、オープンモデルを必要とするユースケースでデベロッパーに充実した選択肢を提供します。
本番環境へのモデルの移行を加速
Vertex AI を使用すれば、デベロッパーや企業が基盤モデルをチューニング、最適化、評価、デプロイ、モニタリングできます。すでに組み込まれている、Google が最近発表したプロンプト管理ツールとモデル評価ツールに加え、次の 3 つの新機能が導入されます。
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コンテキスト キャッシュ保存: 来月公開プレビュー版になるこの機能を使用すると、キャッシュに保存されたコンテキスト データを積極的に管理して再利用できます。コンテキストが長いほど処理費用は増えることから、長いコンテキストのアプリケーションを本番環境に移行するには費用がかかります。Vertex AI のコンテキスト キャッシュ保存を利用すれば、キャッシュに保存されたデータを利用できるので、費用を大幅に削減できます。
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生成制御機能: 今月中に公開プレビュー版として利用可能になるこの機能では、Gemini モデルの出力を特定の形式やスキーマに応じて定義できます。ほとんどのモデルでは、明示的に指示したとしても、その出力の形式や構文を保証できません。Vertex AI の生成制御機能により、お客様は事前構成済みのオプション(YAML、XML など)を選択するか、カスタム形式を定義することで、目的とする形式の出力を選択できるようになります。事前構築済みオプションとして現在 JSON を利用できます。
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Batch API: 現在公開プレビュー版を提供しており、レイテンシの影響を受けにくい大量のテキスト プロンプト リクエストを送信するのに極めて効率的な方法であり、分類と感情分析、データ抽出、説明の生成などのユースケースで利用できます。単一のリクエストで複数のプロンプトをモデルに送信できるため、デベロッパーのワークフローを加速するうえで役立つとともに、費用の削減にもつながりなす。
以上の新機能により、組織が生成 AI モデルから最良のパフォーマンスを容易かつ大規模に実現できるようになると同時に、試験運用から本番環境への移行のイテレーションを加速できます。
Agent Builder: 新しいオープンソースのインテグレーションにより、迅速なエージェント構築を支援
Next ‘24 で発表された Vertex AI Agent Builder では、自然言語を使用して AI エージェントを構築できるノーコードのコンソールから、LangChain on Vertex AI などのコード ファーストのオープンソース オーケストレーション フレームワークに至るまで、デベロッパーがそれぞれのニーズと専門知識レベルに応じたさまざまなツールを使用して、エンタープライズ対応の生成 AI エクスペリエンスを簡単に構築してデプロイできます。これらの機能を利用すれば、迅速な試験運用およびイテレーションと、費用、ガバナンス、パフォーマンスの要件とのバランスを取ることができます。
Agent Builder をさらに優れたツールにするために、Google はデベロッパーが容易に Firebase Genkit および LlamaIndex on Vertex AI にアクセスできるようにしました。
本日 I/O で Firebase が発表した Genkit は、プロダクション レディな AI エージェントの開発、デプロイ、モニタリングを簡素化するために設計されたオープンソースの TypeScript / JavaScript フレームワークです。Firebase デベロッパーは現在、Vertex AI プラグインを使用して Gemini や Imagen 2 などのモデルとテキスト エンベディングを利用できるようになりました。
LlamaIndex on Vertex AI は、データの取り込みと変換からエンベディング、インデックス登録、取得、生成までの検索拡張生成(RAG)プロセスを簡素化します。現在、Vertex AI のお客様は Google のモデルと AI に最適化されたインフラストラクチャ、および LlamaIndex のシンプルで柔軟なオープンソース データ フレームワークを活用し、カスタム データソースを生成モデルに接続できます。
これらの新機能と LangChain on Vertex AI の既存のサポートにより、一層インテリジェントで情報豊かな AI エージェントを作成するための最先端のツールをデベロッパーに提供するという Google のミッションにおいて、オープンソースは今後も重要な部分になります。
最後に、Google はお客様が所有する「企業の実体」のデータベースや指定のソースで出力をグラウンディングできるようにする一方で、「Google 検索によるグラウンディング」を一般提供することを発表いたします。さらに、Google 検索によってグラウンディングされた出力が生成 AI 補償サービスの対象となるよう、Google は生成された出力の補償範囲を拡大しています。Gemini モデルを Google 検索によってグラウンディングすることで、応答の完全性と精度を大幅に向上させられるよう、お客様に Google の最新の基盤モデルを組み合わせた力を提供するとともに、最新かつ高品質の情報にアクセス可能にしています。
今すぐ Vertex AI の利用を開始しましょう
Vertex AI で Gemini 1.5 Flash を今すぐ利用できます。
Google Cloud のお客様の生成 AI での成功事例については、Google が最近発表した電子書籍「Crossing the generative AI tipping point: From quick wins to sustained growth」をご確認ください。また、「101 real-world gen AI use cases from the world’s leading organizations」では、他のお客様の構築事例を確認できます。