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ハイブリッド クラウド

Google Distributed Cloud Edge の小売ユースケースを詳しく見る

2023年10月5日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 9 月 27 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

小売業者はエッジ コンピューティングを活用して、カスタマー エクスペリエンスの向上と費用、効率面での目標達成を両立させる新たな機会を獲得できます。在庫検出、外観検査、大規模データ分析などのユースケースが可能になります。

このブログ投稿では、次のようなエッジでの主な小売ユースケースを詳しく見ていきます。

  • 小売業者がエッジでリアルタイム分析を行う方法
  • エッジ分析で店舗内カスタマー エクスペリエンスを向上させる方法
  • アプリケーションのエッジ ロケーションへのデプロイ時の課題を克服する方法

小売の課題とユースケース

Ayden が 451 Research に委託した米国での調査によると、顧客が待ち時間に不満を覚えた結果、小売業者は毎年 377 億ドルの売り上げを失っています。実店舗、オンライン、モバイルの各チャネルで、顧客は簡単な購入体験をよりいっそう期待するようになっています。これが実現しないと不満を募らせ、別の業者に向かったり、購入そのものを取り止めたりする可能性があります。そのため、小売業者はオムニチャネル販売をサポートする、在庫管理、顧客管理、マーケティングの自動システムなどを構築する必要があります。

小売業者が顧客のニーズを満たすには、データを迅速に収集し分析するデータドリブンな意思決定が必要です。そのためのオムニチャネル小売ソリューションは、先に挙げた在庫管理、顧客管理、マーケティングの自動システムに重点を置く必要があります。いずれもデータ ウェアハウジング、データレイク、ビジネス インテリジェンスのソリューションへの投資が必要になります。

これにより、大きな課題が新たに生じる可能性があります。ハードウェアとソフトウェア、IT インフラストラクチャのサポート サービスの展開に関連した費用です。小売業者によっては、従来のオンプレミス システムといくつかのクラウド環境といった、複数の開発エコシステムを利用しているケースも見られます。

これらのエコシステムを横断する店舗運営をショッピング センターでサポートし、統一的な管理機能と制御を実現するのは、特に大規模小売業者において、きわめて困難なことになる場合があります。クラウド環境や従来のオンプレミス環境など、さまざまなプラットフォーム(ネットワーク接続の信頼性が低いものもある)が複数のロケーションにまたがる場合、IT の実装は複雑で高額なものになる可能性があります。

小売業者がデータ侵害やサイバー攻撃などのセキュリティ リスクを和らげ、自社データと顧客データの完全性を保護する場合、セキュリティも死活的に重要です。解決策となるのは、さまざまなハードウェアとソフトウェアのソリューションの導入と、顧客への安全なショッピング体験の保証に役立つ、セキュリティを意識した設計法の推進です。

差別化されたソリューション

Google Distributed Cloud(GDC)はフルマネージドのハードウェアおよびソフトウェア プロダクトのポートフォリオです。組織はこれを活用して、エッジ ロケーションや顧客データセンターでワークロードを実行できます。

コンプライアンス、レイテンシ、データ所在地要件などのために、すべてのワークロードをクラウドに移行することは現実的に不可能です。GDC を活用すれば、小売、製造、通信、自動車、公的機関、金融サービスなどさまざまな業種のお客様は、実質的にあらゆる場所でワークロードを Google Cloud 上で実行できます。

カスタマー エクスペリエンスを効果的にモダナイズする方法を追求する小売業者にとって、このソリューションは大きな変化をもたらす可能性があります。

Google Distributed Cloud Edge(GDC Edge)を使用する Google Cloud と Deloitte のコラボレーションでは、小売業者はエッジ機能として店員の生産性ソリューション、非接触型の購入手続き、店舗内商品スキャン、非接触型モバイル決済、会計の映像モニタリング、無人店舗などを活用できます。Google Cloud と Deloitte は、在庫検出や店員の生産性向上などのユースケースを実現してモダナイズされたインテリジェントな店舗を構築する能力を、小売業者に付与します。

Kroger などの小売業者は、Deloitte と連携した Google Cloud テクノロジーを使用して、夜勤スタッフのマネージャーを支援するシステムを構築しました。マネージャーは入荷する商品量、スタッフ数、在庫ニーズを可視化でき、チームの業務の優先順位付けで支援を受けることができます。しかも、そのすべてはモバイル デバイスを数クリックするだけで実現します。

小売のお客様はスムーズな購入手続き、リアルタイムの在庫モニタリング、顧客フローと陳列棚の分析、自然言語による自動カスタマー サポートなどのユースケースの実現に、エッジ ソリューションを活用しています。そのすべてで、GDC Edge は基盤となるフルマネージドのハードウェアおよびソフトウェア プラットフォームとして機能し、店舗での現在と将来のアプリケーションをモダナイズできます。

GDC Edge は Google Cloud の AI 機能と ML 機能の威力を引き出すことができます。小売業者はある時点の店舗内人数などの統計情報に関連したインサイトのリアルタイム取得、危険の検出、分析の実行、顧客の購入パターンの特定、スタッフの生産性向上を実現できます。サンフランシスコで開催された Google Cloud Next で行われた、エッジでの AI の実行に関する Kroger、Orange、Deloitte、Google Cloud のエッジ専門家の発言をご視聴ください。最新のカスタマー エクスペリエンスを実現する方法について語られています。

この図は、小売業者が Google Cloud と GDC Edge の機能を活用して、カスタマー エクスペリエンスと生産性の向上をもたらす店舗のモダナイズ化を実現している様子を示しています。

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Google Cloud がリモートでモニタリングするハードウェア上のコンテナまたは仮想マシン(VM)内で、小売業者が保護されたアプリケーションを実行します。そのため、小売業者は IT ハードウェアやプラットフォーム スタックの購入と管理に要する費用を心配せずに、アプリケーションとビジネスの管理に集中できます。

店舗が接続性の喪失や劣化に見舞われた際のビジネスの継続性の確保にも、GDC Edge が役立ちます。接続性が復元すると、GDC Edge は指標とログをクラウドとの間で同期させ、システム構成の変更やパッチを自動的に受け取ってデプロイします。これにより、小売業者は高額のネットワーク接続のアップグレードを必要とせず、あらゆるロケーションの店舗で運営をモダナイズできます。

Google Cloud と GDC Edge のアプライアンスの運用では、お客様との間でセキュリティ責任が共有されます。お客様はハードウェアの物理的なセキュリティに責任を負い、アクセスを許可された関係者に限定するなどの措置が必要となり、Google Cloud はアプライアンス ハードウェアのセキュリティに責任を負います。たとえば、Google Cloud はデータ暗号化を組み入れており、これによりお客様はアップロード、クラウドへの転送、Cloud Storage での保存時にデータを AES-256 暗号化アルゴリズムで暗号化できます。セキュリティと Google Cloud の責任共有モデルの詳細については、こちらをご覧ください。

Google Cloud が Omdia に委託した調査 Modern retail at the edge: Directions for 2023 and beyond(エッジにおける最新の小売: 2023 年以降の方向性)でも、エッジにおける小売業者が実現できる最先端について詳しく説明しています。エッジ コンピューティングを優先させる主要な原動力、組織の壁が開くエッジでのイノベーションの可能性、導入成功の命運を左右するトランスフォーメーション、投資、インフラストラクチャ、サプライヤーなど、小売ビジネス リーダー 112 人から得られた貴重なインサイトを紹介しています。

導入方法

仕組みをよく理解するために、例として GDC Edge を使用して非接触型ショッピング システムを構築する方法を見ていきましょう。顧客が商品を手に取ったり陳列棚に戻したりする行為を識別する、特殊な高速高精度カメラを導入します。これらのカメラには、ローカルとサービス間での転送中の両方で有効なエンドツーエンドのデータ暗号化など、ハードウェア セキュリティ機能が組み込まれています。カメラが見落とした可能性のあるものをすべて突き止めるため、陳列棚の商品を精確に検出して識別する棚センサーも導入します。

これらのデバイスは、店舗内の GDC Edge ハードウェア上で実行されるさまざまなコンテナまたは仮想マシンベースのアプリケーションとやりとりします。これらのアプリケーションは、カメラやセンサーからのデータを処理し、ローカルで店舗運営の計算を行います。この論理図には、地域のすべての店舗で非接触型の購入手続きソリューションに Google Cloud の機能を投入するための、高レベルのアーキテクチャが詳細に描かれています。

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このアーキテクチャでは、コンテナ化されたアプリケーションによって非接触型購入手続きのショッピング システムが機能する様子を確認できます。最初に、顧客がハンドヘルド デバイスにモバイルアプリをインストールします。顧客が店舗に足を踏み入れると、小売業者はアプライアンス上で実行されるプロファイル管理サービスにより、顧客のユーザー プロファイルをスキャンし、ID を登録します。

全体的なショッピング体験は、ローカル アプライアンスにストリーミングされる高速カメラとセンサーからの一連のデータにより完全にモニタリングされます。データを受信した各アプリケーションは、取り込んだデータを処理し、AI を使用して陳列棚の商品数、店舗内での顧客の動き、顧客が陳列棚から取り出した商品などの詳細を判断します。

顧客が商品をショッピング カードに追加したり、そこから削除したりすると、ローカルに配置されたアプリケーションが注文を処理して請求の準備を進めます。顧客が店舗から出ていくと、センサーにトリガーされたシステムが請求を処理し、領収書を発行します。また、陳列棚から取り除かれた数量に基づいてリアルタイム在庫が更新されます。次に、小売業者はデータをクラウドに転送して長期的に保存したり、BigQuery や AI ツールによる分析に供したりできます。AI ツールを使用して、在庫分類、価格設定、顧客向けキャンペーン、全般的なカスタマー エクスペリエンスの向上に役立つモデルをトレーニングできます。

このアーキテクチャは、レジなし、非接触型、無人店舗型の小売システムの構築に特化していますが、他のユースケース向けにカスタマイズできます。小売業者は必要に応じていつでも、若干の調整により同じような顧客のショッピング体験の向上と運用負担の軽減を実現できます。

GDC のユースケースは小売に限られません。GDC を通じて AI、セキュリティ、オープンソース性が装備された最新のアプリケーションをエッジで提供するために、Deloitte のようなパートナーやお客様が GDC をどのように使用しているかをご覧ください

構築しましょう

組織がどのような小売ユースケースを目指していても、Google と Deloitte は最新のエッジ ソフトウェアおよびハードウェアを活用して、地理的に分散した店舗での運用の課題を克服するお手伝いができます。

Google Cloud と Deloitte のエッジ専門家とのミーティングを予約して、今すぐ始めましょう。

謝辞

この記事の執筆にご協力くださった Mamoun Hirzalla 氏(Deloitte)に心より感謝いたします。

-エンタープライズ GSI、シニア パートナー エンジニア Schneider Larbi

-カスタマー エンジニア Venu Vanama

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