Google Cloud Next '25 デベロッパー基調講演: プロンプトからエージェント、仕事、やりがいのあることへ

Google Cloud Content & Editorial
※この投稿は米国時間 2025 年 4 月 12 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
Google Cloud Next のようなテクノロジー カンファレンスに参加すると、ニュース、セッション、ブレイクアウト、学習、ネットワーキングなど、さまざまな情報に圧倒されるように感じます。しかし、目まぐるしい数日間が過ぎた後にデベロッパー基調講演を見ると、混沌の中にも秩序があるように思えます。目にしたすべてのものから、筋の通った 1 枚の絵が浮かび上がり、オフィスに戻って実現できるすばらしいアイデアへの道筋を示します。

今年のデベロッパー基調講演は、Google Cloud チーフ エバンジェリストの Richard Seroter とデベロッパー スキルおよびコミュニティ担当責任者の Stephanie Wong という無比のデュオに加え、Google Cloud のプロダクト、エンジニアリング、デベロッパー アドボカシーの各チームから多くのエキスパートがホストしました。基調講演は、AI デベロッパー エクスペリエンス エンジニアである Paige Bailey の自宅の 1970 年代のキッチンを AI を使って改装するという、高潔で共感しやすい目標を中心に構成されていました。では、それをどのように行ったのでしょうか。
すべての始まりはプロンプトから
生成 AI エクスペリエンスは、プロンプトでデータと意図をモデルに提示することから始まります。Paige は、Google DeepMind のシニア プロダクト マネージャーである Logan Kilpatrick とともにステージに上がりました。Logan と Paige は AI Studio に Paige のキッチンを分析するようプロンプトで指示し、テキストによる説明、間取り、画像を提供しました。すると、AI Studio はアイデアを形にする Gemini のネイティブな画像生成機能を利用して、キャビネット、まとまりのあるデザイン、カラーパレット、素材を提案しました。次に、特に Paige が住む地域の費用に関する重要な質問に答えるために、「Google 検索によるグラウンディング」機能を使用して、実際の材料費、地域の建築基準や規制、その他の関連情報を取得しました。
Logan は次のように述べました。「動画の理解から、ネイティブな画像生成、Google 検索による実際の情報のグラウンディングまで、これらは Gemini でしか構築できないものです。」
これを可能にする新機能:
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Gemini 2.5 Pro: Vertex AI のプレビュー版と Gemini アプリでご利用いただけます。
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Gemini 2.5 Flash: 低レイテンシと費用効率を重視して最適化された Google の主力モデル。Vertex AI、AI Studio、Gemini アプリでまもなく利用可能になります。


プロンプトからエージェントへ
プロンプトが生成 AI クエリの要であることは、皆様がご存じだと思います。「では、エージェントとは一体何でしょうか?」とリチャードが尋ねました。「とてもよい質問ですね。」
「エージェントとは、AI モデルと対話して、エージェントが持つツールとコンテキストを使用して目標ベースの操作を実行するサービスです」と、Stephanie は説明します。では、プロンプトからエージェントに移行するにはどうすればよいのでしょうか。一つの方法は、AI アプリケーションとエージェントを構築して管理するための包括的なプラットフォームである Vertex AI と、エージェントを設計するためのオープンソース フレームワークであるエージェント開発キット(ADK)を使用することです。ADK を使用すると、Gemini モデルと Google AI ツールを活用したエージェントを簡単に使い始められます。
Google Cloud のデベロッパー リレーションズ エンジニアリング マネージャーである Fran Hinkelman 博士がステージに上がり、ADK を紹介しました。エージェントには 3 つのものが必要だと Fran は説明します。1)エージェントの目標を定義するための指示、2)エージェントの実行を可能にするツール、3)LLM のタスクを処理するためのモデルです。
Fran は Python を使用してエージェント コードを記述し、ほんの数分でデプロイして、キッチンの改装を開始するためにリフォーム業者が必要とするであろうすべてを指定した、プロフェッショナルなレイアウトの PDF を取得しました。「時間の節約に大きく役立っています」と Fran は言います。
これを可能にする新機能:
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エージェント開発キット(ADK): エージェントの動作の正確な制御を維持しながら、エージェントと高度なマルチエージェント システムを構築するプロセスを簡素化できる、新しいオープンソース フレームワーク。ADK を使用すると、100 行未満の直感的なコードによって AI エージェントを構築できます。
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ADK による Model Context Protocol(MCP)のサポート: MCP は、LLM がデータ リクエストを処理するために必要なすべての情報の標準化された構造と形式を作成します。


1 つのエージェントから複数のエージェントへ
1 つのエージェントを構築することと、エージェントのグループをオーケストレートすることは別の話です。後者はまさに、キッチンの改装のような複雑なプロセスに必要なことです。その方法を示すために、Google Cloud のスタッフ デベロッパー アドボケイトである Abirami Sukumaran 博士が、ADK を使用して、1)建設提案エージェント、2)許可およびコンプライアンス エージェント、3)材料の注文と配送用のエージェントの 3 種類のエージェントを含むマルチエージェント エコシステムを作成しました。
マルチエージェント システムが準備できると、Abirami は ADK から Vertex AI Agent Engine に直接デプロイしました。Vertex AI Agent Engine は、ADK を含む多くのエージェント フレームワークをサポートするフルマネージド エージェント ランタイムです。
それに加え、Abirami はエージェントをデプロイした後、Google Agentspace でテストしました。Google Agentspace は、独自のエージェントとサードパーティのエージェントを共有するためのハブです。
しかし、問題が発生しました。途中で、エージェント システムが失敗したように見えたのです。Abirami はすぐに行動に移り、Gemini Cloud Assist Investigations を開始しました。Gemini Cloud Assist Investigations は、ログ エクスプローラを使用して、関連する観測と、問題の原因に関する仮説を返しました。さらに、エージェントに推奨されるコード修正も提供しました。Abirami はコードを調べて承認し、エージェントを再デプロイして事態を収拾しました。
これは大変重要です。「複雑なエージェントやサービスをオーケストレートするシステムを構築するだけでも難しいことです」と Abirami は言います。「開発者は、複数の依存関係をデバッグするために時間を無駄にすべきではありません。ログの取得やコードの調査には、開発者が通常持っていない、多くの時間とリソースが必要になります。」
これを可能にする新機能:
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Vertex AI Agent Engine: Vertex AI のフルマネージド ランタイム。テスト、リリース、信頼性の機能が組み込まれ、カスタム エージェントを、グローバル規模で安全に本番環境にデプロイできます。
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Cloud Assist Investigations: インフラストラクチャの問題やコードの問題の診断に役立ちます。
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Agent2Agent(A2A)プロトコル: Google は、マルチエージェント エコシステムをサポートするオープン プロトコルを作成した最初のハイパースケーラーです。このプロトコルにより、基盤となるテクノロジーに関係なく、エージェント同士が相互に通信できます。


独自の IDE とモデルの選択
「バイブ コーディングをご存じですか?」と、次のプレゼンターである Google Cloud のシニア デベロッパー アドボケイト、Debi Cabrera が尋ねました。バイブ コーディングはエージェントによるコーディングのことです。基本的に、ユーザーはプロンプトでアイデアとコードをエージェントに提示して、効果的なプログラミング出力を得ることができます。エージェントによるコーディングは、Windsurf を使用してますます行われるようになっています。Windsurf は人気のある新しい統合開発環境(IDE)で、Debi も気に入っています。
Debi は、Copilot で Gemini モデルを使い、Cursor と IntelliJ を活用する例も示しましたが、Visual Studio Code、Tabnine、Cognition、Aider を使用することもできます(Debi はスペイン語でプロンプトを作成しましたが、Gemini は問題なく処理しました)。最終的には、「開発者の皆様がそれぞれに最も適した場所で Gemini をご利用いただけるようにします」と Debi は述べました。
逆に、Gemini をモデルとして使用したくない場合は、Llama、Gemma 3、Anthropic、Mistral など、Vertex AI Model Garden の 200 以上のモデル、または Hugging Face のオープンソース モデルのいずれかを使用できます。
「どれを使った場合でも、皆様がどのようなものを生み出すのか、楽しみにしています。」
これを可能にする新機能:
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Gemini 2.5 Pro: 個人向け Gemini Code Assist で利用可能になりました。
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Android Studio: 現在、Gemini Code Assist のサポートが利用可能です(プレビュー版)。
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Gemini in Firebase: 新しい Firebase Studio で完全な AI 支援を提供します。


野球での活用例
次に、プレゼンターは Paige のキッチンの改装から離れて、価値の高いもう一つの問題として、投球方法を取り上げました。
メジャーリーグ ベースボールは Google Cloud でデータを処理しており、1 試合あたりのデータポイントは 2,500 万件にのぼります。そのような膨大なデータポイントがあるなかで、投球技術は AI にうってつけの問題です。
最近の Google Cloud x MLB ハッカソンの優勝者である Jake DiBattista 氏は、偉大な左腕、クレイトン カーショウ投手の動画の分析から始めました。Jake 氏はコンピュータ ビジョン ライブラリを使用して動画を前処理して、投球の種類や試合の状態などの選択を使用して MLB データを取得し、Google Cloud に保存しました。最終的に、この情報をすべて Gemini API に送信した後、Jake 氏は答えを得ました。カーショウ投手は、彼の代名詞であるカーブボールをほぼ自身の理想どおりに投げていたのです。
すごいことですが、プロではない私たちにはどれほど役立つのでしょうか?Jake 氏は、経験の浅いプレーヤー向けに「アマチュア モード」を作成し、そのモードで、ホストの Richard が投球する動画を使用しました。カーショウ投手向けのプロフェッショナル モデルを Richard 向けのアマチュア モデルに適応させるためのプロンプト エンジニアリングを行うと、より指示的な結果が得られました。Richard には潜在能力があり、必要なことは、腕を少し引き締め、パワーを最大限に引き出せるように、足の力をより多く使うことだけであるという結果でした。
Jake 氏は、プロジェクトの着想について次のように語っています。大学で砲丸投げの選手だったとき、彼は投擲技術の正確さを測定したいと考えました。何が間違っていて、何が正しいのかわからなければ、改善することはできません。当時、この種のデータは、彼の成長にとって非常に貴重なものでした。
しかし、本当に驚くべきことは、Jake 氏は投球を分析するための完全にカスタマイズ可能なプロンプト生成ツールを、わずか 1 週間で構築したことです。「これは基本的にすぐに機能しました」と Jake 氏は言います。「カスタムモデルを実装したり、過度に複雑なデータセットを構築したりする必要はありませんでした。」


仕事での活用例
一方、Google Cloud のデベロッパー アドボケイトである次のプレゼンター、Jeff Nelson が取り上げたのは、普段の仕事でのエージェントの活用例です。彼はステージに上がると、元データを、セールス マネージャーが使用するデータ アプリケーションに変換するという明確な目標を掲げました。Jeff は BigQuery ノートブックで予測を構築し、SQL コードを記述しました。BigQuery は結果を Python DataFrame に読み込みました。Python では、任意のサイズのテーブルに対してコードを実行するライブラリを簡単に使用できるためです。
では、このエージェントを実際に使用して売り上げを予測するにはどうすればよいでしょうか。Jeff は、ノートブックに組み込まれている Gemini データ サイエンス エージェントを選択し、「エージェントに質問」をクリックして、テーブルから売上を予測するよう求めるプロンプトを入力しました。最も優れているのは、この時点から、すべてのコードが Gemini データ サイエンス エージェントによって生成、実行されることです。
さらに、Jeff はエージェントが特徴量エンジニアリングに Spark を使用していることも指摘しました。これは、BigQuery の新しいサーバーレス Spark エンジンだからこそ可能なことです。SQL、Spark、Python の切り替えが簡単なので、ジョブに適したツールを使用できます。
予測自体を構築するために、Jeff は Google の新しい基盤モデルである TimesFM を使用しました。このモデルには BigQuery から直接アクセスできます。従来のモデルとは異なり、このモデルは事前トレーニング済みで、大量の時系列データセットを使用しているため、データを入力するだけで予測を取得できます。「予測は、誰もがアクセスできるデータアプリになります」と Jeff は述べました。


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これを可能にする新機能:
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データ エンジニア、データ アナリスト、ビジネス ユーザーをサポートする専門エージェント(プレビュー版)
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BigQuery ノートブックに統合されたデータ サイエンス エージェント: まもなくリリース。Colab で今すぐ始められます。
やりがいのある作業に集中
開発者として、技術設計書やプロダクト要件書の作成といった退屈な作業を任せられたら、どうでしょうか。エンジニアリング担当シニア ディレクターの Scott Densmore がデモを締めくくり、退屈な作業を減らす驚くべき方法として、Gemini Code Assist とその新しいかんばんを紹介しました。
Code Assist は、ソフトウェア開発ライフサイクルのあらゆる側面でエージェントをオーケストレートするのに役立ちます。これには、Scott が「バックパック」と呼ぶ、エンジニアリング コンテキストをすべて保持する機能が含まれます。Scott は、Java の移行に関する技術設計ドキュメントを例として使用し、Google ドキュメントから直接コメントを作成して、Code Assist に割り当てました。新しいタスクはすぐにかんばんに表示され、追跡できるようになります。この機能は Google ドキュメントに限定されません。チャットルームやバグトラッカーから直接タスクを割り当てたり、Code Assist にタスクを積極的に見つけさせたりすることもできます。
次に Scott は、より難しい例として、プロダクト要件ドキュメントのプロトタイプを作成するよう Code Assist に依頼しました。Code Assist に変更内容を指示し、満足のいく結果になるまで繰り返しました。簡単ですね。
「Gemini Code Assist は、アプリケーションの作成を支援し、反復的で退屈なタスクを排除してくれる、コーディングの助っ人です。これで、やりがいのある仕事に集中できるようになります。」
これを可能にする新機能:
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Gemini Code Assist のかんばん: Google のエージェントとのやり取りや、Gemini がタスク完了のために作成した作業計画の確認、さまざまなジョブやリクエストの進捗状況の追跡ができます。


数々のすばらしいことが実現するとおわかりいただけたと思います。ここでご紹介した、魔法のように便利な機能のすべてをより深く理解するために、デベロッパー基調講演の完全版をもう一度ご覧ください。1 時間の価値は十分にあるとお約束します。
-Google Cloud コンテンツおよび編集担当編集長