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インフラストラクチャ

Google データセンターでのデマンド レスポンスにより電力網を支援

2023年10月11日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 10 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

ユーザーが Google 検索、YouTube での動画視聴、Gmail でのメール送信などを行うたびに、Google データセンターでは少量の電力を使用してこれらのタスクを完了しています。これらのサービスを提供するために、Google は YouTube 動画の処理や Google 翻訳への新しい単語の追加といった緊急ではない数多くのタスクも、バックグラウンドで実行しています。

このたび、Google は、地域の電力網に大きな負荷がかかっているときにデータセンターの電力消費を削減する新しい方法を開発し、その試験運用を開始したことをお知らせします。これは、緊急ではない計算タスクを別の時間帯や場所にシフトすることで行い、ユーザーが日々使用している Google サービスには影響を与えません。

Google は、データセンターを可能な限り効率的に運用するよう努めており、エネルギー効率に優れた企業のリーダーとなるために意欲的に行動しています。また、新しいテクノロジーを活用することで、世界中にある Google のデータセンターにおけるエネルギー使用の柔軟性を高め、データセンターのインテリジェントな運用を目指しています。2020 年以降、Google は独自のカーボンインテリジェント コンピューティング プラットフォームを使用して、計算タスクとそれに伴うエネルギーの消費を、カーボンフリー エネルギーを電力網で利用できる別の時間帯や場所にシフトしてきました。

現在では、タスクをシフトするこのような機能を、デマンド レスポンスに使用できるようになりました。データセンターにおける電力消費を一時的に削減し、ニーズに応じて貴重な柔軟性を提供することで、地域の電力網が信頼性と効率性を保ちながら稼働し続けられるよう支援します。

デマンド レスポンスが重要な理由

従来、増大するエネルギー需要は、二酸化炭素排出量が多い新しい資源を電力網に追加することで満たされてきました。電力網の運用を支えるための需要の削減措置は、ほとんどが緊急的なものであり、最後の手段として考えられてきました。一方、最近の研究によると、デマンド レスポンスは電力網にとって重要なツールとなり、化石燃料をベースとする新たな資源への投資の必要性を減らし、太陽光や風力のような変動する再生可能エネルギーの成長を支え、電力網の運用を改善するのに役立つと報告されています。

Google は、データセンター全体でデマンド レスポンスのための新しいアプローチを構築し、他社も同様の取り組みを行えるように道を切り開くことで、このような重要な電力網レベルのメリットを引き出せるよう尽力しています。

仕組み

Google の新しいアプローチは、カーボンインテリジェント コンピューティング プラットフォームを実行するソフトウェアを基盤とし、電力会社や運用事業者など外部の電力システム パートナーから要請があった場合に、Google データセンターの電力需要を一時的に削減できる新機能を追加したものです。

https://storage.googleapis.com/gweb-cloudblog-publish/original_images/230818_Google_Data_Centers_Demand_Response_v04.gif

Google データセンターでのデマンド レスポンスの実例

地域の電力網への影響が予測される事象(たとえば、電力供給の制約を引き起こす異常気象など)について運用事業者から通知を受け取ると、グローバル コンピューティング プランニング システムに対し、それがいつ、どこで発生するかについてのアラートを発することができます。このアラートによって、指定したデータセンターに対して時間ごとに指示を生成するアルゴリズムが有効になり、事象が発生している間は緊急ではない計算タスクが制限され、事象が解消した後にそれらのタスクが再スケジュールされます。可能な場合は、これらのタスクの一部を別の電力網のデータセンターに迂回させます。これらはすべて、コンピュータ ハードウェアを追加することなく実行されます。また、検索、マップ、YouTube、Google Cloud、Workspace(Gmail、ドキュメント、スプレッドシートなどを含む)といった個人や企業、公共機関のお客様が日々利用している Google サービスのパフォーマンスに影響を与えることもありません。

Google は、地域の電力網が高負荷な状態のときにこのような対策を講じることで、電力網パートナーが顧客に信頼性の高いサービスを提供し続けられるよう支援しています。

Google の取り組み

Google は、このデマンド レスポンス アプローチを開発するにあたり、複数の地域でパートナーとともに継続的にテストを行い、その効果を実証してきました。

  • ヨーロッパ: 2022 年から2023 年にかけての冬、ヨーロッパでは天然ガスが不足し、エネルギー価格が歴史的な高水準に達しました。Google は、電力需要の削減とエネルギー安全保障をサポートする EU 全体の取り組みを支援するために、オランダ、ベルギー、アイルランド、フィンランド、デンマークのデータセンターで、毎日の通常のピーク時間帯(午後 5 時~午後 9 時)に電力消費の削減を行うなど、2022 年 12 月から2023 年 3 月にかけて、さまざまな対策を実施しました。エネルギー不足の間、これらの取り組みにより協力してヨーロッパの電力網をサポートできました。
  • アジア: 台湾では、地理的制約によって、特に夏季に島しょ部の電力網の信頼性に問題が生じる場合があります。2022 年と 2023 年の夏、Google は、毎日のピーク時間にデータセンターの電力消費を削減することで、台湾電力公司が実施する電力網の信頼性向上プログラムをサポートしました。この削減の取り組みは、現地の電力供給マージンがひっ迫している中でも、電力網の信頼性を維持するのに役立ちました。
  • 米国: オレゴン州、ネブラスカ州、米国南東部では、熱波や冬の嵐を含む最近の異常気象により地域の電力需要が増加し、電力網がひっ迫して、エネルギー価格が高騰していました。Google は、地域の電力会社と協力し、このような時期にデータセンターの電力消費を削減することで、電力網を確実に稼働させ、地域社会のニーズに応えられるようにしました。

今後の展望

Google の初期のパイロット プログラムでは、デマンド レスポンス アプローチの実際のユースケースと、電力網運用のサポートにおける効果を実証することができました。Google は今後も機能を進化させ、私たちにサービスを提供してくれる電力網のサポートを充実させていきます。また、パートナー様と協力して、ともに良い影響を生み出していけるよう努めてまいります。

パートナー様の声をご紹介します。

米国西部でシステムの信頼性向上の取り組みが進む中、デマンド レスポンス機能は、異常事態の発生時に地域社会や地方に多大な価値をもたらすでしょう。Google と Northern Wasco County PUD は最近、オレゴン州ザ ダルズの Google 施設での試験運用において、「前日デマンド レスポンス」機能の実証に成功しました。これらの機能の成熟に伴い、Google との継続的な協力によって柔軟性を拡大、改善できることを楽しみにしています。- Northern Wasco County PUD、電力資源担当ディレクター Chris Allen 氏

再生可能エネルギーの普及が進むオランダおよびヨーロッパ諸国では、安定性と安全性の高いエネルギー システムが重視されています。そのため、効率的で信頼性の高い電力システムの運用を維持するためのメカニズムとして、需要に柔軟に対処できることがますます重要になっています。オランダで実施した前回の試験運用では、Google データセンターの対応能力が実証されました。今後も協力して有望な結果を積み上げていきます。- Eneco Energy Trade、コマーシャル ディレクター Lucien Wiegers 氏

信頼性と費用対効果の高いクリーンな電力網リソースとしてのデマンド レスポンスの可能性を最大限に発揮するには、エネルギーを大量に利用するユーザーがより柔軟な運用を行うことを奨励する、より優れたフレームワークが必要であることも認識しています。Google は、エネルギーを大量に利用するユーザー、電力網パートナー、政策立案者と協力して、電力網の効率性、費用対効果、クリーン性をさらに高める、需要側の柔軟性のさらなる向上に取り組んでまいります。

-グリッド サービス担当テクニカル プログラム マネージャー Varun Mehra

-エネルギー分析担当シニア データ サイエンティスト Raiden Hasegawa

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