Google AI デベロッパー ツールの使い分けガイド
Richard Seroter
Chief Evangelist, Google Cloud
※この投稿は米国時間 2025 年 8 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
長期旅行の準備が 20 年前はどうだったか覚えていますか?カメラ、スケジュール帳、たくさんの本、携帯ゲーム機、地図を含む観光ガイド、携帯電話、CD プレーヤーなどを詰め込んだことでしょう。しかし今では、すべてスマートフォンだけあれば十分です。
これは統合の一例ですが、多様化についても同じことが言えます。たとえば、少し前まで「コンピュータ」といえば、あらゆる場面で活躍するデスクトップ PC でした。現在では、持ち運び可能なノートパソコン、デジタル コンテンツを気軽に楽しめるタブレット、外出先でインターネットを利用できるスマートフォン、あらゆるコンテンツを視聴できるスマートテレビ、そして幅広いゲーム機などがあります。
こうした動的な環境は、現在の開発者向けツールの状況と類似しています。最近まで、開発環境はかなり静的でした。モックアップには UX デザインツール、コードの記述には IDE、アーティファクトの組み立てにはビルドシステム、インフラストラクチャとアプリのデプロイにはシステムとシェル スクリプトといった具合です。しかし生成 AI の登場により、開発環境が大幅に多様でダイナミックなものになりました。業務の内容や使用するツールは、これまでとはまったく異なるものになるでしょう。
では、いつ何を使うべきでしょうか? Google だけでも、Gemini アプリや Google AI Studio などの LLM インターフェース、Gemini Code Assist などの IDE 拡張機能、Firebase Studio などのブラウザベースの開発環境をはじめ、Jules や Gemini CLI などのエージェント サービスまで提供しています。多すぎると感じるかもしれません。では詳しく見ていきましょう。


これほどまでツールが多様化した一因は、ソフトウェア エンジニアリングで AI の活用方法が広がったことにあります。
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委任型、エージェント型のオプションが利用可能になりました。サードパーティに作業をアウトソーシングした際に、詳細な指示を提供した後は、作業が完了するまで限られたやり取りしか行わない場面を想定してください。その際の目標は、自分のスキルを高めるのではなく、作業を迅速に完了することです。
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次のカテゴリは、AI が部下のように働いてくれる「教師あり」です。やり取りは増えますが、経験に基づくインテントを AI エージェントに提供することでスケーリングします。
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最後のカテゴリは「コラボレーション」です。ここでは、AI アシスタントとの会話型インタラクションを介して互いに「学習」しています。


各 AI デベロッパー ツールの重要なポイント
Jules は、GitHub.com のソースコードに対して無人でバッチ作業を実施するような明示的な指示(ドキュメントの追加、テストカバレッジの改善、コードの外科的なモダナイゼーションなど)に最適です。
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インフラストラクチャや機械の管理と更新が不要
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作業を依頼する前に、Jules と計画を繰り返し確認
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変更のセットと、それを受け入れるプルリクエストを取得
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有料の Pro および Ultra に加えて、無料枠も提供
Gemini CLI は、コードやコンテンツをインタラクティブに、または委任を通じて操作できる、オープンで高速かつ柔軟なインターフェースです。
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Node のローカル インストールのみで動作する軽量の CLI ツール
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MCP のサポートと組み込みツールを含む、豊富な拡張ポイント
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Gemini Code Assist や Firebase Studio などの他のツールに統合
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オープンソースの Gemini CLI GitHub Actions は、非同期トリガーまたはユーザーが開始したトリガーを使用して、コード リポジトリにバックグラウンド作業(問題のトリアージ、pull リクエストのレビュー)を委任するのに最適
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Gemini の最上位モデルを無料で利用できる上限が大幅に引き上げられました。最上位モデルは Vertex AI モデルを介したエンタープライズ アクセスをサポートしており、Gemini Code Assist ライセンスでもご利用いただけます。
Gemini Code Assist は、コードベースとの会話型またはエージェント型のやり取りに対して、豊富な IDE 拡張機能を提供します。
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Visual Studio Code と JetBrains IDE 向けのプラグイン
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コード補完、テスト生成、コード説明、コード生成に対応
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カスタム コマンド、ツールサポート、プライベート コードベースのコードカスタマイズによる拡張性。エージェント モードは Gemini CLI で動作し、より複雑なインタラクションに対応します
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無料枠に加えて、ユーザー単位のチーム向け月額料金でも利用可能
Firebase Studio は、プロの開発者でなくてもプロフェッショナル グレードのソフトウェアを構築したい場合に適しています。Google が管理するブラウザベースの開発環境で作業できるのが特徴です。
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一般的なフレームワークと言語に対応した組み込みテンプレートで、すぐにプロジェクトを開始可能
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Gemini によりアプリのコードをバイブ コーディングできるほか、カスタマイズ可能な基盤 VM を最大限に活用してコードを掘り下げることも可能
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Nix を使用してワークスペース環境を構成
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プレビュー期間中は無料。Google デベロッパー プログラムに登録すると、さらに多くの環境をご利用いただけます
Google AI Studio は、Google の最新モデルを操作し、プロンプトをテストし、軽量なウェブアプリのバイブ コーディングを行うのに最適なツールです。
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メディアの生成、インタラクティブなセッションのための Live API の使用、Gemini モデルと Gemma モデルで使うプロンプトの作成
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プロンプトの作成、ツールの使用、Google 検索によるグラウンディング、比較の実行
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Gemini モデルをプログラムで呼び出すための API キーが提供
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十分な無料枠に加えて、より高いレート制限、より多くの機能、さまざまなデータ処理を利用できる有料枠も提供
クイック リファレンス
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アプリの迅速なプロトタイピングには Gemini アプリ が最適
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特定のモデルと機能でのプロンプトのテストには Google AI Studio
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使い慣れたツールチェーンと環境を使用して、AI を活用したソフトウェア開発を行うには Gemini Code Assist
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Google が完全に管理する環境では Firebase Studio。フルタイムのソフトウェア デベロッパーでなくても、美しいソフトウェアのプロトタイプを作成したり、バイブ コーディングしたりできます
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さまざまな生成 AI プロジェクトに取り組んでおり、エージェント CLI のスピードとポータビリティを重視する場合は Gemini CLIGitHub ベースのプロジェクトでインタラクティブ タスクまたはバックグラウンド タスクをトリガーしながら、Google Cloud のセキュリティとモデルを使用するには Gemini CLI GitHub Actions
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GitHub ベースのプロジェクトにて、一連の指示で明確に説明できる変更が必要な場合は Jules
私のキャリアの中で、ソフトウェア開発ツールがこれほど大きく変化したのは初めてです。新たな分野を何でも試してみたいという意欲がこれほど高まったことはありません。これはワクワクしますが、同時に混乱しがちです。これらのツールは補完的なものとして捉えることが重要です。作業を完了するには、複数のツールを組み合わせて使用することになるでしょう。Google では、最高の AI アプリを構築するための最高の AI ツールを提供できるよう引き続き注力していきます。両方のエクスペリエンスを改善する方法について、ご意見をお聞かせください。
- Google Cloud チーフ エバンジェリスト、Richard Seroter