AI を駆動させるデータの力: 強力基盤を築く 5 ステップ

Ami Dave
Senior Principal, Data Analytics, Value Creation, Google Cloud
Joyeeta Banerjee
Global Head Data Analytics and Security, Value Creation, Google Cloud
生成 AI のスケーリングを妨げるデータ課題の克服には、統合された強力なデータ戦略が不可欠です。
※この投稿は米国時間 2025 年 2 月 13 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
生成 AI の導入が進む一方で、多くの組織がデータ課題という大きな障壁に直面し、成功への道を阻まれています。AI 技術を取り入れるのに積極的でありながら、企業のビジョンを実現するための適切な基盤を欠いている企業も少なくありません。
McKinsey の調査によると、生成 AI を導入している組織の 70% で、データ ガバナンス、AI モデルへのデータの統合、トレーニング データの量の不足に関する課題に直面しています。その結果として、試験運用から本格運用へのスケールアップで苦労しています。データへのアクセスを制限する戦略が足かせとなり、データを検出する上での障害となったり、データ品質を低減させているのです。
こうした問題への対処のために、Google は、データと AI プラットフォームの戦略に関する数万社との取り組みを踏まえて、「データと AI から価値を創出するためのエグゼクティブ ガイド」を作成しました。自社のデータ戦略を構築する際に指針となるものを探している方のために、AI での成功につながる確固たるデータ基盤を構築するための 5 つの基本的なステップをご紹介します。
1.強力な AI ファーストのデータ戦略を構築する
AI 時代の需要に応えるための第一歩は、組織文化の基本原則が組み込まれ、業務の担当者とデータ分析担当者の連携を促進し、エンドツーエンドのデータ エコシステムの構築に寄与する強力なデータ戦略を策定することです。多くの場合、データ戦略の再構築には、メンバー、プロセス、ポリシー、技術の整合だけでなく、データの本質的な価値についての企業マインドセットの転換が必要となります。
データは戦略的資産であるため、戦略的な扱いが求められます。強力なデータ戦略の特長の一つは、収益向上、コストおよびプロセスの最適化、顧客体験の向上、生産性向上など、全社的な戦略目標を考慮し、将来に向けた大規模な AI 戦略を支えるように策定されている点です。重要なのは、AI ファーストのデータ戦略は、データを活用して戦略的な優先事項を推進し、明確なガバナンス ポリシーを確立し、組織内の全員がデータへのアクセス、データの検出、使用を効率的に行えるようにするスキル、ツール、プロセスを提供するものだということです。
2. AI イニシアチブのための信頼できる一元化された情報源を確立する
生成 AI から期待する価値を引き出すためには、まずデータを AI に接続する必要があります。具体的には、全てのデータを活用可能な状態にする必要があります。サイロに閉じ込められたデータやアクセスできないデータがあってはなりません。特に、動画、画像、テキストなどのマルチモーダルな非構造化データが複数のプラットフォームに多様な形式で整理されずに保存されていることが多くあります。このような状態では、データを統合して包括的なセキュリティ ポリシーとガバナンス ポリシーを設定するのは困難です。
Google Cloud では、1 つの場所にデータをコピーしたり移行したりすることは現実的でなく、費用対効果も低いと考えています。その代わりに、データに対してオープンなアプローチを追究することを推奨しています。統合プラットフォームを基盤として、オープン形式のものも含むあらゆる種類や形式のデータを、信頼できる一元化された情報源に統合するというアプローチです。このオープン アプローチにより、データライフサイクル全体の管理が容易になり、誰もがインサイトの抽出と意思決定に使用できる、一元化された信頼できる情報源を確立できます。
たとえば Bayer では、最新のデータ ソリューションを構築し、膨大な環境データポイントを効率的に収集・分析することで、革新的な農業部門を支援しています。自社のすべてのデータを保存、接続できる能力により、運用の合理化、テクノロジーの集約、全社的な共同作業の促進が可能となり、研究開発のために数百ものチームやアプリケーションが重要なデータセットに簡単にアクセスできるようになりました。
3. AI 活用のためのデータ統合を AI により加速する
データの統合により AI の活用が可能になりますが、AI はデータの力を存分に発揮するための鍵でもあります。エージェント型ワークフローの発展に伴い、生成 AI や AI エージェント エクスペリエンスをユーザー ジャーニーに組み込んで生産性と成果を高めている組織が増加しています。
たとえば AI エージェントは、クエリの作成、データの移行と管理、データ変換の作成、データ可視化など、多岐にわたるタスクを支援できます。データのクエリが簡単にできたり、自然言語での質問と回答によってコスト最適化やコンプライアンス確保の方法の提案を受けたりということが、日々使用しているツールで可能になったらどうでしょうか。
データ プラットフォームに直に埋め込まれた生成 AI 機能をすでにお客様の多くが活用しており、従業員がエンタープライズ データと「チャット」できるようにすることで知識の発見やデータ分析を改善しています。たとえば、自然言語処理と生成 AI を組み合わせた会話分析を導入すれば、データについて平易な言葉で質問して、明確で簡潔な回答を得ることができます。一元化された IT 部門やデータ アナリストに頼らなくても、専門知識を問わず誰もがデータにアクセスし、情報を見つけ、正確な分析情報を迅速に得られます。
4. AI ライフサイクル全体でデータを管理、統制、保護する
収集するデータの量が増えるほど、セキュリティとガバナンスの重要性も増します。データ侵害のコストが数百万ドルに達する可能性や、脅威と規制が進化する速さを考慮すると、データは負債にもなり得ます。データを安全で規制に準拠した状態に保つには、管理、統制するだけでなく、エンドツーエンドで保護する必要があります。
そのためにまず考えられるのが、データの品質を優先した耐久力のあるデータ ガバナンス フレームワークを構築しながら、すべての環境で管理、適用できるような包括的なポリシーを導入することです。データリネージのモニタリング、異常の検出、データの品質問題への対処に使用するデータ オブザーバビリティ ツールの実装も必要となるかもしれません。たとえば、クラウド上のコンテンツ管理のリーダーである Box は、一元的なデータカタログとして、Google Cloud のデータ ガバナンス ソリューションである Dataplex を採用し、データ検出の合理化、データ取り込みパイプラインのエンドツーエンド オブザーバビリティ、包括的なデータ分類機能を実現しています。
5. 効率を改善してデータコストを削減し、スケールする
かつてない速さで成長しているのはデータの量だけではありません。データの保管と処理のコストも急速に増えています。特に、AI プロジェクトでは大きな計算能力とデータ保存容量が必要となり、増加するコストを放置すれば、予算が圧迫され、イノベーションが妨げられます。生成 AI への投資から価値を最大限に引き出すには、データを活用することと、費用やリソースの需要を厳しく管理することとの間でバランスを取ることが必要です。
お客様のデータ費用の低減とスケーリングを支援するためのベスト プラクティスとして、マネージド サービスによるワークロードの自動化、ストレージとコンピューティングの最適化、データの取り込みと抽出のプロセスの改善、クラウド FinOps の導入などが挙げられます。たとえば、マネージド クラウド サービスやサーバーレス プラットフォームを使用すれば、データベースの管理や維持のために繰り返し行われるタスクが不要となり、オーバーヘッドと費用が最小化されます。また、需要の変化に対応してインフラストラクチャの規模を拡大縮小できる柔軟性も得られます。Ford Motor Company では、データベース資産の大部分を Google Cloud マネージド サービスに移行した結果、データベース運用タスクにチームがかける時間が大幅に減り、パフォーマンスが 30% 向上しました。
結局のところ、AI は供給されるデータ以上のものにはなりません。生成 AI 活用の取り組みを成功させ、データチームが AI イノベーションを加速できるようにするには、組織は、堅牢で拡張性がある統合されたデータ基盤の構築に取り組む必要があるのです。
各ステップについてのさらに詳しい説明とデータを AI に対応させるための Google Cloud の活用方法については、ガイド全文をお読みください。お客様の組織で AI によるデータ変革を加速させるための次の一歩と専門家が推奨する施策を知るには、データ戦略と AI 戦略の評価で AI 対応度をご確認ください。
-Ami Dave Google Cloud、データ分析、価値創出担当シニア・プリンシパル
-Joyeeta Banerjee Google Cloud、データ分析とセキュリティ、価値創出担当グローバル責任者