Cloud Atelier : Gemini Enterprise がもたらす、小売業界のプレイブックの刷新

Christina Houghton
Group Lead, Content & Experiences, Google Cloud
Mauricio Ruiz
Group Creative Lead, Demos & Experiments, Google Cloud
スーツケースを開けて、「何を持って行こう?」と途方に暮れた経験は誰にでもあるはずです。
今年のカンヌライオンズで、Google Cloud は Cloud Atelier を紹介しました。これは目的地ベースの仮想ショッピング体験で、小売ブランドがこの古典的なジレンマを、商品検索のワクワクする瞬間へと変える方法を示すものです。
Gemini Enterprise Agent Platform 上に構築されたこの業界向けデモでは、ユーザーは旅行の詳細、スタイルの好み、最新データ(気象条件や現地のトレンドなど)に合わせてカスタマイズされた旅行用のワードローブをバーチャルで試着できます。
Google の「バーチャルで試着」機能(対象となるショッピングの検索結果に表示)とは異なり、Cloud Atelier は、エージェント型コマース、パーソナライズされたクリエイティブ、リアルタイムの実行を組み合わせて、コンテキストを認識した購入可能なルックブックを作成します。
Cloud Atelier はこの機能によって、小売ブランドが Google Cloud AI スタックを活用して従来の商品レコメンデーション エンジンの先へと進み、顧客の意図に、より直接的に応える方法を示しています。たとえば、「何を持って行けばいいか」という質問に対して、シームレスな購入経路を提供します。
エージェントが自然言語を次のレベルのコーディネートに変換
パーソナライズされたバーチャル試着室を実現するには、1 つのプロンプトだけでは不十分です。Cloud Atelier が、Google ADK で作成され、Cloud Run にデプロイされたエージェント チームをどのように活用して、ユーザーが旅行計画を共有してからカスタムのワードローブの推奨事項を受け取るまでのプロセスをガイドするのかを詳しく見ていきましょう。
デモの最初のステップでは、ユーザーが自分の言葉で、予定している旅行について説明します。バックグラウンドでは、Gemini のネイティブ機能が自然言語の回答を処理し、重要なデータ(旅行先と旅行時期)を抽出して、不足している情報を補うためにフォローアップの質問が必要かどうかを判断します。


Cloud Atelier のユーザー オンボーディング プロセスにおけるいくつかの場面
ユーザーがオンボーディング プロセスを完了する間、エージェント チームのオーケストレーターであるワードローブ プランナー エージェントは、さまざまな専門的な調査サブエージェントをデプロイして、バックグラウンドでタスクを完了します。タスクの複雑さに応じて、エージェントは Gemini Flash または Gemini Flash-Lite モデルを利用します。また、Google 検索ツールなどの特殊な機能を備えており、これによってすべての結果が現実世界の正確な情報に基づいていることが保証されます。
- 天気調査エージェント: Weather API ツールにアクセスして、ユーザーの旅行日の正確な天気予報データを取得します。
- 旅行調査エージェント: 現地の文化に根ざした目的地のアクティビティを提案します(例: イタリアのローマで晴れた週末に「ベスパに乗る」や「ジェラートを食べる」など)。
- トレンド調査エージェント: 外部のウェブソースを検索して、地域のファッション トレンドを調査します。
- ロケーション調査エージェント: Google Maps Places API を使用して、ホテルのデータとロケーションの画像を取得します。
その間、ユーザーは、厳選されたスタイル カテゴリ(アウトドア、ビジネスカジュアル、プレッピーなど)のライブラリから選択して、スタイルの好みを共有します。最後に、ユーザーは全身写真を撮影するか、アバターの選択肢から選んで完了します。
調査サブエージェントが結果を返すと、新しいサブ エージェントのチームが作業を開始します。その間、ユーザーは旅行のヒントや、旅行に合わせてパーソナライズされた旅程を確認します。まず、ワードローブ プランナー エージェントは、推論機能を使用して調査データを統合し、関連する商品のおすすめを生成します(例: 秋のスコットランド旅行に最適なパッカブル レインシェル)。


Cloud Atelier のパーソナライズされた旅行データと旅行の持ち物リスト
その後、ワードローブ検索サブエージェントが引き継ぎ、これらの推奨事項を商品データベースと相互参照して、実際の在庫商品と照合します。
これを行うために、サブエージェントはベクトル検索を使用します。ベクトル検索は、Gemini の推論の創造的な柔軟性と、エンタープライズ グレードのセマンティック検索の正確性を橋渡しします。ベクトル検索では、キーワードの完全一致を検索するだけでなく、数千もの抽象的な特徴に基づいてアイテムを比較するため、トレンチコートとレインシェルが密接に関連していることを認識できます。たとえば、サブエージェントが「防水ブーツ」を検索している場合、システムは「耐候性フットウェア」を表示したり、その商品が在庫なしの場合は最適な代替品を見つけたりできます。
最適な一致が見つかると、サブエージェントは BigQuery から関連する商品データ(商品名、価格、説明など)を、Google Cloud Storage バケットから商品画像を取得します。


Cloud Atelier のエージェントおよびデータ アーキテクチャ
これらの商品画像とユーザーの写真は、コンテンツ生成サブエージェントに渡されます。サブエージェントは Nano Banana 2 を活用して、旅行先の風景をバックに、提案されたコーディネートを身にまとったユーザーの姿を可視化します。これにより、一人ひとりの体型を活かした、魅力的なスタイリングを提案します。


デンマークのコペンハーゲンへの秋の旅行に合わせてパーソナライズされたルックブック
そして、一番の目玉であるインタラクティブなデジタル ルックブックが登場します。ユーザーは、インタラクティブな商品カードを備えた、カスタマイズされた購入可能な 5 つのコーディネートをチェックできます。お気に入りのコーディネートをカートに追加した後、ユーザーは画面上の QR コードをスキャンして、お気に入りのコーディネートが動いている動画(Veo 3.1 で生成)のほか、商品のチェックリスト、おすすめのホテルなどの役立つ詳細情報を含むデジタル テイクアウェイを入手できます。
これらのデジタル タッチポイントをすべて織り交ぜることで、Cloud Atelier は、「バーチャルで試着」体験が単なるコーディネート提案の枠をはるかに超えられることを示しています。これにより、小売業者は顧客のインスピレーションを即座に購入へとつなげるための柔軟な基盤を構築できるようになります。
未来のテクノロジーが、今、ビジネスの最前線へ
すでに多くの小売ブランドが Gemini Enterprise を活用して実際のビジネス成果を上げています。
- Kohl's(ギフト専門エージェント): Kohl's は、Looker のセマンティック レイヤと Gemini の機能を組み合わせて、会話型分析を構築しています。また、同社は母の日ギフトに特化したエージェント(Gemini Enterprise for Customer Experience を使用)もリリースしました。このエージェントは、会話プロンプトに基づいて、関連性の高いギフトの発見、選択、カートへの追加を動的にサポートします。
- Lowe’s(キッチン インスピレーション アプリ): Gemini 2.5 Flash を搭載したこのキッチン インスピレーション体験は、たった 1 枚の写真から、パーソナライズされたデザインのアイデアを広げます。空間に合わせたキッチン スタイルを生成し、わずか数分でデザインの方向性を明確に定めることができます。そのため、Lowe's のデザイナーに相談する際には、自分の理想を迷いなく正確に伝えられるようになります。
- Futuriza(バーチャル試着室): このリテールテック スタートアップは、Nano Banana と Veo を活用して、アパレル ブランド向けのプラグ アンド プレイの AI バーチャル試着室を提供しています。同社の小売顧客である Arm Fitness では、わずか 1 か月で 2 万回以上のバーチャル試着が行われました。その結果、ユーザーの 38% が商品をカートに追加し、売上コンバージョン率は 3.5% から 4.7% へと向上(35% の増加)しました。
これらの例は、コマースの未来が単にデジタル上の棚に商品を置くことだけではないことを示しています。それは、お客様が今どこに立ち、次にどこへ向かおうとしているのかを正確に把握し、自信を持ってスタイリッシュに一歩を踏み出せるようお手伝いすることなのです。
その未来を創造するのはあなたです。Cloud Atelier のコード スターター キットを一般公開しました。その仕組みを体験し、自社のカタログに合わせてカスタマイズすることで、コンテキストを認識した独自のショッピング体験の構築をすぐに始められます。あなたは何を構築しますか?
※この投稿は米国時間 2026 年 6 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
- Google Cloud、コンテンツ&エクスペリエンス、グループリード、Christina Houghton
- Google Cloud、デモ&テスト担当グループ クリエイティブ リード、Mauricio Ruiz



