AI を原動力に : テクノロジーが支えるイングランド代表のワールドカップ対策

Olly Grundy
Head of Cloud Strategic Partnerships & AI Innovation, EMEA
イングランドサッカー協会(FA)は、Google AI を活用して、試合の先発出場メンバーからチームの拠点の決定まで、ほぼすべてのことを最適化しています。
今週、イングランド男子代表チームが 60 年ぶりのワールドカップ優勝を目指して戦いを始めますが、取り組む相手はサッカー界のトップ選手だけではありません。トロフィーを掲げるには、前例のないほど複雑な移動スケジュールや地理的な難題を解決する必要もあります。
今年の大会は、参加チーム数(48)と試合数(104)が過去最多で、米国、メキシコ、カナダの 3 か国にまたがって開催されます。決勝戦にたどり着くまでに、長距離を移動しながら灼熱の気温の中で最大 7 試合を勝ち抜くことは、どのチームにとっても過酷な道のりです。
アスリートの成功は、もはや競争相手よりも優れていることだけでは決まりません。最近では、移動、天候、予算、スポーツ医学、睡眠科学などの要素を克服する必要があります。そして、多くの成功したビジネスと同様に、最も効果的なチームとは、選手とデータの力を引き出し、最高のテクノロジーで融合することができるチームです。
イングランドサッカー協会は、2023 年夏の女子ワールドカップでイングランド女子代表チームが決勝に進出した際も、データドリブンなスポーツのリーダーとして、データ分析と AI を活用した先発出場メンバーの決定と試合中の交代を行い、チームをサポートしました。そして今、史上最大の国際大会で、男子代表チームは今世紀最大の勝利を目指しています。その舞台裏では、あらゆる組織においてテクノロジーの重要性がかつてないほど高まっています。
大量のデータからより多くの分析情報を抽出
現在、サッカーは膨大なデータを扱うスポーツとなっています。組織内外の無数にあるソースから得られる膨大な指標を読み解くことは、継続的な課題です。しかし、わずかな優位性であっても、それを見つけ出すことで勝敗を左右することもあるため、取り組む価値は十分にあります。
指標の種類が爆発的に増加しているため、その重要性はますます高まっています。たとえば、わずか 10 年前には、チームはプレー中の個々の選手の単純な座標を追跡していましたが、現在では、各選手の体の 10,000 個のマーカーを 1 秒間に 25 回追跡しています。しかし、それが自動的に勝利につながるわけではありません。

「データに溺れるのではなく、すべてのデータを集約して実用的に活用し、パフォーマンスに関する真の疑問に答えることが重要です」と、FA の男子パフォーマンス責任者である Mark Jarvis 氏は説明します。
データポイントが多すぎて混乱する事態を避けるには、身体能力から試合の技術的または戦術的な分析まで、あらゆる情報から意味を見出す方法を考える必要があります。そのために、FA は Google Cloud を使用してすべてのデータを取り込み、一元化して整理し、Google Cloud プラットフォーム上に構築されたチーム専用のソフトウェアである Helix にフィードしています。
この統合された技術アーキテクチャにより、イングランドはワールドカップの試合に関わる無数の要素をリアルタイムでモニタリングできるようになり、チームは重要なパフォーマンスに関する分析情報を収集して、試合に臨むことができます。
時差を味方に付ける
FA がサッカーの本質に集中できる環境を整えるには、選手のパフォーマンスの効率を最大限に高めるだけでなく、多数のワールドカップ開催都市と、ミズーリ州カンザスシティにある大会ベースキャンプ(米国の中央に位置するという戦略的な決定によるもの)間の移動を最小限に抑える計画を立てる必要がありました。また、コーチ、マネージャー、経営幹部、その他の主要な担当者が、英国のチーム本部と 24 時間体制で連絡を取れるようにする必要もありました。
FA は、Google Cloud で共有された大きなファイルにほとんど遅延なくアクセスして編集し、世界中の全スタッフが安全かつリアルタイムに利用できる単一のワークスペースを実現しています。「このクラウド プラットフォームにより、どこにいても分析作業に即座にアクセスできるため、試合の準備を継続的にサポートできます」と、FA のパフォーマンス分析責任者である Gerard Moore 氏は述べています。


チームにおける意思決定の多くは、AI による分析と推奨事項を参考にして行われています。
都市間の移動はもちろん、3 つの開催国にまたがる最大 5 つの時差を頻繁に行き来することで生じる、身体と感覚のズレをコントロールするのは、間違いなく過酷なものになるでしょう。しかし、時差がイングランドに有利に働く点もあります。それは、英国の本部がチームのいる現地より数時間進んでいることです。英国の分析チームは、1 日の試合が終わると、選手が休んでいる間に試合データを分析し、次の対戦相手に備えることができます。朝選手が目覚める頃には、スマート アナリティクスの結果が用意されています。
時間がもたらす最大のアドバンテージ
他のスポーツと同様に、サッカーは対戦相手との組み合わせが重要です。相手の出場選手に対して最も的確な準備をしたチームが有利になります。
しかし、キックオフの約 75 分前まで先発メンバーが発表されないのが一般的であるため、これは難しいことです。対戦相手が予想外の布陣を発表した場合、イングランドのゲームプランが台なしになる可能性があります。また、チームは試合後のレポートをできるだけ早く入手し、次の試合に備えて選手と振り返りを行う必要があります。
FA との取り組みの進化について、さらに詳しい情報はこちらのレポートをご覧ください。
すべてのデータを集約して実用的に活用し、パフォーマンスに関する真の疑問に答えることが重要です。
イングランドサッカー協会、男子パフォーマンス責任者, Mark Jarvis 氏
これらすべてが、スピードが非常に重要であることを意味しています。以前は、チームが必要なデータを統合して要約するのに 5 日もかかっていました。しかし、Google Cloud サービスを使用すれば、わずか 5 時間で完了できます。
関係者全員が休息、回復、ゲームプランの策定により多くの時間を費やせるようにすることで、試合やトーナメント全体の行方を左右する 5 秒間のプレーに対して万全な備えができる可能性があります。どちらにしても、ピッチでの 1 分 1 秒が、勝負の分かれ目となるのです。
スマート アナリティクスが導く勝利
米国、メキシコ、カナダの 3 か国で開催される今年の大会を巡っては、200 を超える代表チームが予選を争いました。本大会に出場する 48 チームのほとんどがそうであるように、イングランドは強豪としての地位を確立しています。しかし、真の優勝候補にまで上り詰めるには、満員のスタジアムから遠く離れた場所にあるものも含め、あらゆる可能性を秘めた利点を活用する必要があります。そのため、チームの幹部が勝利につながる意思決定を行うには、あらゆるデータをインテリジェントに分析できることが不可欠です。
試合当日、スリー ライオンズ(イングランド代表チームの愛称)のファンがクラウド テクノロジーや AI ツールの存在を意識することはないでしょう。多くの点で、チームにとっても同じことが言えます。これは、テクノロジーの重要性と有効性を証明するものです。テクノロジーによってノイズが排除され、より迅速かつ詳細に分析情報が提供されるため、選手、コーチ、スタッフはこれまでどおり、基本に集中できます。
これこそがテクノロジーの本質です。パフォーマンスを向上させ、サッカーという競技の素晴らしさをより深く理解できるのです。
※この投稿は米国時間 2026 年 6 月 16 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
- EMEA 地域クラウド戦略的パートナーシップおよび AI イノベーション担当責任者、Olly Grundy


