「デジタルものづくり」の可能性を拡げるプラットフォーム

3D プリントなどのデジタル製造技術は、ものづくりに大きな変化を起こしています。株式会社カブクはスタートアップでありながら、その変化の中で企業が効果的にビジネスを行えるように、またクリエイターがクリエイティブを活かせるように次々にサービスを展開しています。そのスピードの理由とは?

足立昌彦さん、大橋啓介さん

写真左から
株式会社カブク
Founder/CTO 足立昌彦さん
ソフトウェアエンジニア 大橋啓介さん

スタートアップにとって魅力的な選択肢

2013 年に個人向け低価格製品の登場で一気に盛り上がった 3D プリンター 市場。株式会社カブクはその年 1 月に創業し、3D プリント プロダクトのマーケットプレイス「Rinkak」(2013 年 9 月正式オープン)など、3D プリントにまつわる多くのサービスを展開してきました。昨年リリースした 3D プリント技術をビジネス ベースで活用するための工場向け基幹業務クラウドサービス「Rinkak 3D Printing Manufacturing Management Service(以下、MMS)」もその 1 つ。これは、3D プリンターによる製造業務を製造管理から顧客管理、会計管理などまでワンストップで提供するという画期的なもの。クラウド技術を活用することで生産性の大幅向上と、コストの劇的低減を両立してくれます。

カブクではこの MMS のほか、Rinkak など、全サービスで Google Cloud Platform を利用。中でも特に Google App Engine を駆使することで、早急なサービス立ち上げと効率的な運用を実現してきました。

今回お話をお伺いした同社 CTO の足立さん(Android の大定番 IME アプリ「Simeji」開発者としても高名)と MMS 開発エンジニアである大橋さんは、Google Developers Experts に認定されている国内トップレベルのエンジニア。同社が Google Cloud Platform を全面採用している理由について、次のように語ってくれました。

「我々のようなスタートアップ企業にとって、Google App Engine は非常に魅力的な選択肢。とりわけインフラについて考えないですむのが大きな魅力ですね。インフラ管理だけでなく、データベースのメンテナンスなども気にせず使えるため、開発に専念できます。似たようなサービスはほかにも存在するのですが、それらと比べて Google はストレスが少ない。動作の安定性や、コンソールの利用感など、エンジニアとして気になる細かい部分がとても洗練されているんです。また、利用するプラットフォームを Google に限定することで、サービス間の連携で重要となるセキュリティ認証部分の実装が楽になり、開発効率が飛躍的に向上。そのおかげで短い開発期間でもしっかりとしたサービスを構築することができました」(大橋さん)

Google Magic

実際、MMS は 2015 年 1 月の設計着手後、6 月には β 版をリリース、8 月末に正式リリースされるという、この規模のサービスとしては驚くほどのスピードでローンチ。現在も週に 1 つ程度のペースで新機能が追加されているそうです。また、優秀なオートスケールのおかげで、事業規模の拡大に柔軟に対応できることも大きなメリットだと言います。

「サービスを最速でローンチできる、しかもその成長に合わせて適切にスケールアップしてくれるという魅力のほか、将来的にグローバルで展開していくことを考えたときにも Google Cloud Platform は最良のプラットフォームと言えるでしょう。全世界どこからでも高速かつ安定したレスポンスを期待できます。一般的に米国西海岸サーバーにアクセスすると応答までに 150 ms 以上かかるのですが、Google では何と 70ms 程度しかかかりません。これは他のサービスでは考えられないこと。まさに “Google Magic” です(笑)」(足立さん)

「その上で、何より動作が高速なのも大きなメリットと言えるでしょう。Google Compute Engine は立ち上がるのも速ければ、内部のデータのやり取りも高速。MMS ではサイズの大きな 3D データを取り扱うので、これにはとても助けられました。また、Google Cloud Trace など、サービスをモニタリングするために必要な機能が一通り揃っているのもうれしいところ。運用開始後も Google Cloud Logging でサービスの稼働状況しっかり監視できます。そして何より、これらが全て無償で提供されているのが素晴らしい」(大橋さん)

  • 編集注: Cloud Trace、Cloud Logging は現在それぞれ Stackdriver Trace、Stackdriver Logging として提供されています。

製造業へ新たな価値を

今後も Google Cloud Platform を活用して MMS の機能向上や、新サービスの開発を予定しているというカブク。直近では顧客とのチャット機能を Firebase を使ったものに置き換えることを検討しているそうです。ほか、大橋さんは、先日、α 版の提供が開始されたばかりの Google Cloud Functions にも興味津々なのだとか。「Google Cloud Platform のさまざまな機能の良いパイプ役になってくれるのではないかと期待しています。Node.js をベースにしているので、既存のライブラリが使えるのもうれしいですね」

個人的に今、注目しているのが、先日ライブラリがオープンソース化された、人工知能ライブラリ TensorFlow。私が元々、人工知能分野の出身ということもあって、これを使って何かできないかを模索しています。流行りのディープラーニングと 3D プリント技術を融合させることで、製造業に新たな価値をもたらしたいですね。準備運動として、まずは社内に専用の GPU マシンを導入しました。将来的にこれがクラウドで使えるようになれば、もっといろいろなことができるようになるはず。期待しています」(足立さん)