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通信

クラウドネイティブへの移行に取り組む CSP が知っておくべき 5 つのこと

2022年1月17日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 1 月 7 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

通信サービス プロバイダ(以下 CSP)が 5G の導入を掲げて邁進を続ける中、筆者は職務柄、事業者やネットワーク機器プロバイダを相手にクラウドネイティブのアプローチを採用すべき理由やその方法について話し合う機会が増えています。特によく話題にのぼるのは、5G の真価を得られる状況にできるだけ早く移行することや、ネットワークおよびそこで利用するアプリケーションのデプロイ、管理を簡易化するといったテーマであり、そのための最善策について議論を重ねています。Gartner の予測によると、デジタル関連の新規事業のうち、クラウドネイティブのプラットフォームを基盤とするものの割合は 2021 年には 40% 未満だったのが、2025 年には 95% 以上にまで増えるとのことです。最近、CSP がクラウドネイティブを有効活用するにはどうすればよいかというテーマのもと、通信業界のエキスパートを招いてディスカッションを行いました。参加したのは、Nokia のクラウドおよびネットワーク サービス担当 CTO の Jitin Bhandari 氏、Vodafone の新テクノロジーおよびイノベーション担当責任者の Lester Thomas 博士、Google Cloud の通信業担当エンジニアリング部門責任者の Ankur Jain です。

5G 以降への対応を見据えながら、ネットワークの「クラウド化」をご検討中の方は、すでに移行を開始または完了している先達の意見を参考にしてはいかがでしょうか。ディスカッションの要点を 5 つにまとめて、以下にご紹介します。

すべきこと: クラウドネイティブのアプローチを取り入れて、ネットワークをシンプルにする

5G は、CSP 各社や企業にとって価値の創出を約束してくれるものです。しかし、何よりも先にそのネットワークをシンプルにする方法を考える必要があります。Nokia の Jitin Bhandari 氏は、Google の Ankur Jain との対話において、「過去 20 年間かけて、私たちは通信ネットワーク上に複雑なレイヤーを構築してきました。2G、3G の波を経て、現在は 5G の構築中ですが、そこにもまだ固定ネットワークの名残が見受けられます」とコメントしています。クラウドネイティブのアプローチに移行することで、CSP 各社はこのサイクルを断ち切り、通信ネットワークの構築方法や運用方法をシンプルにすることが可能となります。幸い、Google は他社に先駆けて、クラウドネイティブのアプローチを取り入れながらサービスやネットワークを構築してきました。これが決め手となって、Nokia などの事業者は 5G 時代の価値を促進するコラボレーション パートナーとして Google を選択しています。

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すべきでないこと: これまでの運用プロセスをクラウドで流用する

クラウドに移行するということと、クラウドネイティブのアプローチを採用するということは、まったく別次元の話です。Vodafone の Thomas 博士の言葉を借りると、「既存のシステムやアプリケーションをクラウドに移行する場合、これまでの運用プロセスをそのまま流用する傾向があります。それを見ると『ビジネスにとって真のメリットは何なのか?』と質問したくなります」。これに対し、クラウド サービスや消費ベースモデルに移行し、クラウドネイティブのソリューション(Kubernetes、マイクロサービス、オープン API など)の活用を始める場合は、アプリケーションの構築方法を必然的に見直すことになり、イノベーションを鈍化させる原因となっていた従来の運用方法を断ち切ることができます。さらに、Thomas 博士はこうも発言しています。「我が社のクラウドネイティブのアプローチは、通常、DevOps というアジャイルな配信方法とセットになっているため、運用には信頼性エンジニアリングを使用し、データとオープン API に注力できます」

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すべきこと: ネットワークを所有、制御するのは、これまでどおり事業者であるという点を明確にする

クラウド(具体的には Google Cloud)がキャリア グレードかつ通信事業者に対応するレベルかどうか、ということについて CSP の皆様と議論しているときに、よく話題になるのが、セキュリティ、プライバシー、そして制御です。第一に、ネットワークおよびそこにあるデータを制御、所有、管理するのは、今後も事業者であり続けるということを明確にすべきだと、私は考えています。Google Cloud は、「実現技術を提供する」ものであるとお考えください。それを前提としたうえで、Google Cloud の信頼性とセキュリティを守ることが、私たちにとって最重要課題であると考えています。そうした考えに基づき、Google Cloud ではセキュリティに対するアプローチを規定する信頼に関する原則を公開し、遵守しています。Google では、世界中で 10 億人以上のユーザーを抱える 9 つのアプリケーションおよびサービスに投資し、安全性重視のインフラストラクチャを構築するとともに、これらアプリケーションやサービスのスピード、信頼性、安全性を維持できるよう努めています。CSP 各社は Google Cloud と連携することで、その同じ基盤を利用することが可能となります。

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すべきこと: データ プラットフォーム上でスケールとシンプルな構造を確立し、データの用途の可能性を広げる

制御が話題になったときに、Thomas 博士は事業者としての立場から、データ プラットフォームにおいてスケールおよびシンプルな構造を確立すべきであると述べました。「データ ガバナンスを適切に整備することは、重要な課題です」と言って、博士は続けます。「データの用途には、ビジネス分析、ビジネス価値の促進など、さまざまなものがあります。これらの基盤となるデータは、共通のデータベースに保存されています。ユースケースごとに新たなデータがデータの海に注ぎ込まれるのですが、これらのデータはすべて標準化、正規化されます」。こうした状況では、データを統合、正規化するのに加え、各種標準を設けること(データの品質、所有権、ライフサイクル管理、相互運用性、交換方法など)が必要不可欠となってきます。そうした標準を確立したうえで初めて、5G や IoT を中心としたビジネス価値の提供に注力できるようになります。ネットワークの最適化も、データや分析によるところが大きいので、そうした用途も促進できる可能性があります。

博士は例として、データおよび自動化を用いてネットワークの異常を検出する、といった用途をあげています。しかし、これは始まりにすぎません。「これまでの異常検出は、ネットワーク上で起こっていることの根本原因を調べるというものでした。私たちの見解では、これは自律的ネットワークのごく初期段階にすぎません」

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すべきでないこと: 仮想化ワークロードとコンテナ化ワークロードに対して別々のインフラストラクチャを構築するという悪習慣を繰り返す

ソフトウェア ベンダーの多くは、クラウドネイティブのコンテナ化されたワークロードへと移行を進めていますが、その一方で、仮想化ワークロードが依然として存在しており、今後もその状況が続くことが予想されます。仮想化ワークロードとコンテナ化ワークロードに対して別々のインフラストラクチャをデプロイするという現状は、無用な複雑化を招き、スケールを制限し、管理不能なサイロを生み出します。率直に言って、それはサステナブルであるとは言えません。その解決策となるのが、マネージド インフラストラクチャを 1 セット所有し、そこで Kubernetes を実行して、CNF や、VNF、さらにはエッジ アプリケーションまでもシームレスに配置してオーケストレートする、というやり方です。CNF や VM の共存に対応する機能を備えた Google Distributed Cloud を使えば、インフラストラクチャのサイロは過去の遺物となるでしょう。

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通信事業各社は、次世代のネットワークやサービスの構築、運用、維持を見据え、より近代的なアプローチに目を向けています。そのような通信業界に身を置く仲間たちが教えてくれることは、示唆に富んでいます。Google Cloud では、ここで述べたようなタスクは単独で行うものではなく、また、サイロ化してはならないと考えています。これは、エコシステムを通じ、パートナーシップのもとで成し遂げるべき課題です。Google は、クラウドネイティブ、データ、AI/ML ソリューションの分野で強みを発揮しながら、通信に関する専門知識や技術に長けているパートナー各社と共同でこの課題に取り組んでいく所存です。

通信ネットワークのクラウド化をテーマにした動画シリーズで、エキスパートとの対話の全貌をご覧ください。


- 通信事業担当アウトバウンド グループ プロダクト マネージャー Max Kamenetsky
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