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通信

AI とインテントベースの自動化によって実現する動的 5G サービス

2025年3月21日
Naresh Rao

Head of Telco Analytics & Partnerships, Google

Rohit Singhal

Head of Technology Evolution and Strategy, Solution Area BSS/OSS, Ericsson

※この投稿は米国時間 2025 年 3 月 1 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

5G ネットワークの登場により、接続性の新たな領域が切り拓かれ、超低レイテンシ、強化されたモバイル ブロードバンド、大規模なモノのインターネット(IoT)を必要とする高度なユースケースに対応できるようになりました。しかし、このようなハイパー コネクテッドの未来は同時に、複雑な 5G ネットワークを管理するという課題に対処しなければならないことを意味します。帯域幅、レイテンシ、信頼性に対する動的要件には、従来の静的構成と手動操作ではもはや十分に対応できません。

そこで登場するのが、AI と自動化をサービス オーケストレーションと保証に組み合わせた先駆的なアプローチであるインテントベースのサービス管理です。インテントベースのサービス管理では、5G ネットワークのネットワーク リソースは、ビジネス インテントに基づき、リアルタイムの需要に応じて動的にスケーリングおよび調整されます。5G ネットワーク リソースは、クラウド コンピューティング、ストレージ、ネットワーキング、ストリーミング サービスの場合と同様に、動的にオーケストレーションされ、調整されます。​

Ericsson と Google Cloud は、ともにこの技術の限界を押し広げ、運用を簡素化するだけでなく、5G のビジョンを実現する方法を再定義するテクノロジーを探求しています。

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5G におけるインテントベースの自律的なオペレーションの威力

特にスタンドアロン 5G のようなクラウドネイティブなネットワーク環境においてサービスを作成、提供、維持するためには、高度な自動化によってネットワークの複雑さを克服しなければならないという認識が通信業界に浸透していくにつれ、インテントベースのネットワーキングが注目を集めています。インテントベースの実装なしでは、ネットワークとそれに関連するオペレーションの自動化は、完全なクローズドループを達成する自律性へと進化、成熟することはできません。

たとえば、超低レイテンシの緊急時の通信をサポートするために、5G ネットワーク スライスによって提供される専用の 5G 接続を必要とする病院を例に挙げます。このようなシナリオで必要な構成は、静的な構成であってはなりません。最適なサービス エクスペリエンスを提供するためには、ネットワークの状況や需要に応じて進化する必要があります。ネットワーク層では、あらゆるサービスのリクエスト(「超低レイテンシの動画サービスを提供する」など)の背後にある意図を理解し、それをネットワーク全体で実行可能な構成に変換する必要があります。この構成は、トラフィック状況の変化、基盤となるネットワークの状態などのリアルタイムの要因に基づいて動的に更新されます。

Ericsson の Service Orchestration and AssuranceGoogle Cloud の Vertex AI を使用することで、このプロセスははるかに容易になります。このソリューションは、自然言語で表現された大枠のインテントを、帯域幅、レイテンシ、スループットなどの正確な技術要件にマッピングし、リアルタイムでカスタマイズされたネットワーク スライスの作成をオーケストレートします。インテリジェントなクローズド ループの自動化メカニズムにより、ネットワーク スライスとして提供されるサービスの品質が保証されます。

インテントベースのオペレーションのための TMF 標準化

高額で脆弱な統合ソリューションを使用せずにさまざまなソリューション コンポーネントを相互に統合するには、標準ベースのインターフェースとモデルが必要です。

Telemanagement Forum(TMF)は、この種の統合を可能にするために、API と一般的なインテントを備えたモデルを指定しています。ビジネス、サービス、リソースの各レイヤにおけるインテント モデルとインターフェースが用意されており、これらは CSP が定義したビジネス目標から導き出され、自律型ネットワーク リファレンス アーキテクチャに準拠しています。Ericsson と Google Cloud のアプローチは、これらの標準とインテント モデルに完全に準拠しています。

AI と自動化の役割

このソリューションの中心には、AI を活用したクローズド ループ自動化があります。サービスがインスタンス化されると、AI エージェントはサービス品質(QoS)などの定義済み KPI に対してパフォーマンスを継続的にモニタリングします。病院の例に戻ると、病院のネットワーク スライスのレイテンシが許容範囲を超えた場合、システムは自動的に問題を特定し、RAN リソースやコア ネットワークの再割り当てなどの是正措置を提案します。

このクローズド ループ システムは、単なる受動的なシステムではなく、予測システムです。ネットワークからのデータがリアルタイムで分析されるため、問題を予測して、ユーザーに影響が及ぶ前に解決できます。通信事業者のお客様にとって、これは高い運用効率だけでなく、優れたサービス品質の実現も意味します。

Ericsson のクローズド ループ システムでは、Google Cloud の AI エージェントを活用して意図を解釈し、スライスの保証と修復に提案のエージェントと評価のエージェントを使用しています。AI エージェントは、モデル、ツール、オーケストレーションを活用し、利用できる入力とツールに応じて、目標を達成する最適な方法を推論します。

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Ericsson Service Orchestration and Assurance は、Gemini ベースの AI エージェントに加えて、Vertex AI を使用して、他のクローズド ループ エージェント(保証、測定、作動など)の予測 AI サービスを実装しています。

Ericsson Service Orchestration and Assurance と Google Cloud を選ぶ理由

Ericsson Service Orchestration and Assurance は、アクセス、トランスポート、コア ネットワークにわたる領域横断型のオーケストレーションを可能にする、多領域型のマルチテクノロジー プラットフォームです。サービス ライフサイクルを自動化することで、オープンでプログラム可能なネットワークの簡素化という CSP の重要なニーズに対応し、最終的には収益と収益性も向上させます。

このプラットフォームには、通信エコシステムにおけるイノベーションとマルチベンダー統合を促進する、オープンな標準ベースのアーキテクチャが用意されています。これにより、CSP のお客様はネットワーク環境と IT 環境の両方でサービスを簡単に設計できるため、製品化までの時間短縮、さまざまなチームやユースケースにわたるコラボレーション、手動によるエラーの削減が可能になります。

さらに、インテント主導のオーケストレーションにより、マルチベンダー環境での新しいサービスのテストとリリースが加速し、リリースできるサービスの数も増える可能性があります。クローズド ループの自動化により、SLA コミットメントが強化され、顧客満足度と運用効率が向上します。ベンダー、テクノロジー、サービスに依存しないよう設計された Ericsson のプラットフォームを使い、領域横断型のサービス オーケストレーションを効果的に実装することで、サービスの拡大と収益の増加を実現していただけます。

この高度なフレームワークをサポートするために、Google Cloud は、現代の通信ネットワークの要求を満たす基盤を提供しています。

  • 動的ネットワークのスケーラビリティ: 5G ネットワークが拡大するなか、Google Cloud の弾力性のあるコンピューティング能力を活用することで、インテントの変換やリアルタイム保証などのリソースを大量に消費するプロセスであっても、パフォーマンスのボトルネックを生じさせることなくシームレスに実行できます。

  • AI ファースト インフラストラクチャ: Vertex AI を活用したインテリジェント エージェントがインテントを実用的な構成に変換し、ネットワーク パフォーマンスを最適化します。また、BigQuery ML などの AI ツールを使用することで、基本的な分析にとどまらず行動につながるインサイトを取得し、よりスマートな意思決定ができるようになります。

  • オープン イノベーションのための Vertex Model Garden: Vertex AI Model Garden のトレーニング済みモデルとオープンソース LLM を活用して高度で専門的な 5G サービス管理ソリューションを開発し、カスタマイズできます。

  • ハードウェア アクセラレーション: Google Cloud の Tensor Processing Unit(TPU)と Nvidia の GPU は、インテントベースのサービス管理のための複雑な AI モデルを効率的にトレーニングしてデプロイするために必要なコンピューティング能力を提供します。

  • ハイブリッド機能とエッジ機能: 5G ネットワークでは、クラウド環境とエッジ環境にまたがるハイブリッドな設定が必要です。Google Cloud のエッジからクラウドへのオーケストレーションは、中央データセンターの最適化からエッジでの超低レイテンシ サービスの提供まで、運用の確実性を高めます。

  • セキュリティとコンプライアンス: 通信ワークロードの厳格なコンプライアンス要件を満たすようにカスタマイズされた、Google Cloud の安全で信頼性の高いインフラストラクチャは、規制の厳しい環境で事業を展開する通信事業者のお客様を支援します。

  • 高度な推論のための Gemini: Gemini のマルチモーダル モデルは、自然言語とネットワーク テレメトリー データを処理することで、意図の解釈を強化します。これにより、ニュアンスや細かい意図まで正確に解釈できるようになるため、5G サービス管理において、より効果的な自動アクションと効率性、信頼性の向上につながります。

Ericsson Service Orchestration and Assurance と Google Cloud は、こうした課題に対処するためのテクノロジーを共同で研究し、自動化、インテリジェンス、スケーラビリティを組み合わせることで、CSP のお客様が革新的で効率的かつ収益性の高い 5G サービスを提供できるよう支援します。

実際の効果: 病院のユースケース

病院のシナリオに戻りましょう。ネットワーク スライスに関するリクエストが、システムのインテント トランスレータを通じて病院のユーザーから送信されます。リクエストの内容は「患者と医師のやり取りに超低レイテンシの動画サービスを提供すること」です。

ソリューションがすぐにアクションを起こします。

  1. インテントの解釈: リクエストは、RAN とコア ネットワークの技術的な構成に変換されます。

  2. スライスの作成: システムはオーケストレーション ツールを使用してリソースを割り当て、5G ネットワーク全体でサービス品質(QoS)目標を達成するようにネットワーク スライスを構成します。

  3. パフォーマンスの保証: クローズド ループの自動化により、AI エージェントは、レイテンシやパケットロスなどのサービス品質の要素を継続的にモニタリングします。意図に反する逸脱が発生した場合、または発生すると予測された場合、是正措置が提案され、自動的に実行されます。

このシナリオでは、病院のニーズが動的に満たされ、重要なオペレーションが中断なく進行されるよう保証します。

効率性を超えて: 5G イノベーションの再定義

インテントベースのサービス管理は、大規模なイノベーションを可能にします。複雑なタスクを自動化することで、通信事業者は新しいサービスの創出、新規市場への参入、収益源の開拓に集中でき、たとえば、ゲーム、製造、ヘルスケアなどの業界に合わせてカスタマイズされたスライスを提供することによって、競争の激しい市場で競争力を高めることができます。

さらに、Gemini のようなカスタム生成 AI モデルを統合することで、これらのソリューションを通信事業者に固有のニーズに合わせて調整することが可能です。これらの LLM は、通信事業者固有のデータでトレーニングされており、直感的で応答性の高いインテリジェントな自動化を実現します。

Ericsson と Google Cloud のコラボレーションは、インテントベースのサービス管理の可能性を示しています。Ericsson の技術的専門知識と Google Cloud の AI インフラストラクチャを組み合わせることで、通信事業者のお客様には 5G の複雑さを自信を持って乗り越えていただけます。

5G の導入が加速するにつれて、このようなソリューションが通信事業の基盤となり、シームレスかつダイナミックなネットワークで新たな時代の接続性を実現します。

5G の未来は、単に速度を速くしたり、レイテンシを低くしたりすることではありません。世界中のニーズにリアルタイムで適応する、インテリジェントでインテント主導のネットワークが重要となります。Ericsson と Google Cloud が実現するその未来にどうぞご期待ください。

-Google、通信分析およびパートナーシップ担当責任者、Naresh Rao
-Ericsson、ソリューション分野 BSS / OSS、テクノロジー進化および戦略担当責任者、Rohit Singhal 氏

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