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サステナビリティ

よりインクルーシブな経済を促進するための Atlas AI と Google Cloud の取り組み

2022年9月29日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 9 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

安全な飲料水の普及によってコミュニティにもたらされる利益が最も大きい場所を、行政機関が数値化できるとしたらどうでしょう。あるいは、通信会社やエネルギー企業が、インフラストラクチャへのアクセスを拡大し、地域の貧富の格差を改善する方法を特定できたらどうでしょう。  

衛星画像とその他の「地球観測」センサーからのデータを、人工知能(AI)の分析力と組み合わせることで、コミュニティの開発状況を詳細かつダイナミックに把握することが可能になります。これにより、グローバルな投資や政策支援を、最も必要とする場所に結びつけることができます。公益に携わるスタートアップである Atlas AI は、Google Cloud を基盤とする AI を活用した予測分析ソリューションを開発しました。このソリューションは、衛星画像やその他のコンテキスト情報データセットを、世界中のこれまで見過ごされてきたコミュニティに対してよりインクルーシブな投資を行うための根拠に変えるものです。  

同社独自の Atlas of Human Settlements は、空間データセットを相互にリンクしたものであり、Atlas AI のプラットフォームを支えています。これらのデータセットでは、アフリカの農村からヨーロッパの大都市まで、世界中のコミュニティにおけるフットプリントの変化を、幅広い社会経済的特性と併せて測定しています。これらのデータには、地域の各家庭の平均的な支出能力、電力へのアクセス状況、食生活を支える主要作物の生産性などが含まれています。Google Cloud Ready - Sustainability Partner である Atlas AI は、企業、行政機関、社会セクターのお客様が現場における運用、投資、政策上の緊急の課題に対応できるようにするためのソフトウェアとストリーム分析機能を提供しています。  

消費者向けビジネスにおける満たされていない需要や新たな需要の特定

Atlas AI の Aperture™ プラットフォームを活用することで、通信、金融サービス、消費財業界などの最終消費者にサービスを提供する企業は、既存顧客からの収益の拡大機会を特定し、今後のインフラストラクチャ需要を予測して、よりインクルーシブな市場拡大戦略を推進できます。同社のテクノロジーは、人口動態、資産状況、消費成長率など、Atlas of Human Settlements によって導き出された社会経済予測に基づいて最近のマーケット トレンドを分析し、組織の社内業務や顧客データと組み合わせることによって、ビジネスの拡大、顧客の増加、サステナブルな投資を実現する戦略を特定します。

アフリカ初の大陸規模の総合的テクノロジー企業である Cassava Technologies は、「1 人もアフリカ人を取り残さない、デジタルでつながった大陸」というビジョンを掲げ、Aperture プラットフォームの先行ユーザーとなりました。この取り組みを通じて Cassava は、草の根レベルで地域に特化した Atlas AI の市場データと予測分析をもとに、コンゴ民主共和国でスポット的にインターネット利用率が高くなっている地域を特定しました。1 つの国で行われたこの取り組みの成功は、AI の実際的な活用事例と、アフリカの企業が利用可能なインテリジェンスに基づいて意思決定を行える可能性を改めて示しています。

この業績について、Cassava Technologies の代表取締役兼 CEO である Hardy Pemhiwa 氏は、次のようにコメントしています。「Cassava の使命は、テクノロジーを社会的流動性と経済繁栄を実現する手段として活用し、アフリカ大陸全域で個人と企業の生活を変革することです。急速に進化する市場に数十億ドルを投入するには、Atlas AI 登場前には入手することができなかったレベルの、予測に基づくマーケット インテリジェンスとビジネス インテリジェンスが必要です。このテクノロジーには、アフリカの発展に向けた世界的な投資の拡大を促進する大きな可能性があると考えています。」

困窮しているコミュニティを調査し、気候変動対策に役立てる

Atlas AI のテクノロジーは、気候変動が社会的に弱い立場の人々にどのような影響を及ぼしているかの評価にも活用が期待されています。

たとえば、すべての人が安全な水を利用できるようにすることを目指す非営利団体 Aquaya Institute は、Atlas AI の ApertureTM プラットフォーム、特にガーナにおける人と経済活動に関するデータセットを活用し、既存の水道網の普及率の低さと、それらの地域に住む人々の料金支払い能力に基づいて、配水管の拡張に最適な地域を特定しました。

Aquaya は、このプロジェクトで使用された方法は、水と衛生に関するプロジェクトで幅広く使用することができると結論付けています。重要な点として、「同様のアプローチを、医療、気候変動、環境保護、緊急サービスなど、他の開発テーマにも適用できる」ことも挙げられています。

こういったインパクトを研究するために、研究者が最初に必要とするものは、影響を受ける地域に住む人々の社会人口学的特性に関するデータです。しかしこれらの地域では、最新の詳細な統計データがない場合が多いのです。スタンフォード大学の教授であり、Atlas AI の共同創設者である David Lobell 氏、Marshall Burke 氏、Stefano Ermon 氏は、かねてよりアフリカの困窮している地域を特定するために、衛星画像とディープ ラーニングによる AI メソッドを使用することの有効性を、学術研究を通じて実証していました。チームは、地球の昼間の画像と、夜間の明るく照らされたエリアのある画像に、経済活動の盛んな地域との相関関係を見出しました。そして研究者たちは、この視覚的資料を使用して、世帯の豊かさなど村レベルの開発指標を予測したのです。

Atlas AI は、ロックフェラー財団とのパートナーシップにより、このスタンフォード大学での研究結果から誕生しました。その目的は、Atlas of Human Settlements を世界規模に発展させ、そのデータをサステナブルなインフラストラクチャ開発の指針にするなど、実際の意思決定に役立つ有益な情報にすることです。スタンフォード大学での研究から Atlas AI の現在の製品開発まで一貫して使用されているのが Google Earth Engine です。Google Earth Engine は同社のペタバイト級の衛星画像の取り込みと処理を継続的に支えています。  

グローバルにサステナブルな投資を促進する Atlas AI と Google Cloud

衛星画像などの惑星規模の新しいデータセットとディープ ラーニングによる AI テクノロジーは、データが不足しがちまたは古くなりがちな国々において、経済的な予測、投資の指標の提供、組織の業務効率の改善など、これまでにない可能性をもたらします。これらのテクノロジーは、社会的なプログラムのターゲティングを改善し、孤立したコミュニティでインフラストラクチャを整備し、私たちの活動が地球に与える影響についての理解を深めるために活用できます。  

Google Cloud は、Atlas AI をはじめとするパートナーと協力し、世界中の共通のお客様が環境、社会、ガバナンス(ESG)関連のコミットメントを達成できるよう支援しています。Google Cloud Ready - Sustanability プログラムは、最近発表されたパートナー向けの検証プログラムで、ESG 関連の変革を推進できるソリューションの開発の加速を目的としています。

Atlas AI は、Google Cloud パートナーとして初期に Google Cloud Ready - Sustainability の認定を受けた企業の一社です。Atlas AI をはじめとするソリューション プロバイダ間の共同作業により、世界中の何百万人もの人々の今後の生活を改善する革新的でインテリジェントなテクノロジーが、これからも生み出されていくことでしょう。

詳細については Google Cloud Ready - Sustainability をご覧ください。

- Google Cloud、サステナビリティ / Geo ISV パートナーシップ Denise Pearl
- Atlas AI、最高経営責任者 Abe Tarapani 氏

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