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サステナビリティ

Kaluza、電気自動車の充電でエネルギーの移行を推進

2023年6月1日
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Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

電気自動車はすでに世界の自動車販売の 7 台に 1 台を占めています。世界中で新しいガソリン車とディーゼル車が段階的に廃止されていることを受けて、世界の電気自動車の販売台数は 2040 年には 7,300 万台に達すると予測されています。しかし、電力網は風力や太陽光などの変動するエネルギー源への依存度が高まっており、電気自動車からの需要が高まることで、ピーク時に電力網に過度の負担がかかり、停電につながる危険性があります。

Kaluza では、自社のプラットフォームが電力網や公益事業会社のネットワークを安定させると同時に、より手頃な価格でクリーンなエネルギーを消費者に提供するうえで重要な役割を果たすと考えています。Kaluza Flex ソリューションの背後にある、Google Cloud を活用した高度なアルゴリズムは、電力供給が最も安価で最も環境にやさしい時間帯に電気自動車を自動的に充電し、ゼロカーボンの未来への世界的な移行を加速します。

低コストのスマート チャージ プログラムによる電力網の脱炭素化

2019 年に OVO Energy によって設立された Kaluza は、エネルギー市場を深く理解しており、オーストラリアの AGL、英国のフィアットと日産、日本の三菱商事と中部電力など、世界の大手エネルギー供給会社や自動車メーカーと提携して、お客様が温室効果ガス排出量を削減しながらコストを節約できるスマート チャージ プログラムを立ち上げました。

その一例が英国で OVO Energy と最近立ち上げた Charge Anytime です。この料金制度では、お客様は Kaluza を使用して電気自動車をスマート充電し、その料金として支払う金額は 1 kWh あたりわずか 10 ペンス(家庭用電気料金の 3 分の 1)です。どのような仕組みかというと、お客様が仕事から帰宅したとき(たとえば午後 6 時)に電気自動車を充電するためにプラグを差し込んだとしても、この時間帯は需要と電力網の二酸化炭素排出原単位の両方が最も高まるため、車両は夜間を通じて最も低コストで環境にやさしい時間帯にスマートに充電され、朝の必要なときに使用できるようになっているというものです。

このスマート チャージで、電力会社はより安価な卸電力価格を利用できるため、コストを削減できます。こうしたコスト削減は、Charge Anytime などの料金制度を通じて最終顧客に還元され、お客様は年間数百ポンドを節約でき、温室効果ガス排出量を削減できるようになります。一方 National Grid は、ピーク時間中のネットワークへの負担を軽減しながら、同時に無駄になっていた可能性がある余分な再生可能エネルギーを使い切ることができます。

充電スケジュールの最適化に Google Cloud を活用

Kaluza のスマート チャージ ソリューションの背後には、いくつかの高度なテクノロジーがあり、そのすべてが Google Cloud 上に構築されています。当社の中核となる最適化エンジンは、幅広いソースから電気自動車のバッテリーや充電データなどのリアルタイム データを収集し、エネルギー供給業者や電力網事業者から二酸化炭素排出原単位や価格予測などのデータを収集します。

リアルタイムのデータ バックボーンを通過した後、データは BigQuery に保存され、スマート チャージ最適化モデルのトレーニングと検証に使用されます。これらのモデルは Google Kubernetes Engine でデプロイされるため、お客様が電気自動車にプラグを差し込むたびに、その自動車のデータが当社の最適化エンジンにリアルタイムで渡され、その自動車の理想的な充電スケジュールが計算されます。これにより、利用可能な中で最も安価で二酸化炭素排出量が少ないエネルギーを確実に使用できます。

お客様のインターフェース: 使いやすく、ビルドも簡単

もちろん、お客様はこの複雑さにまったく気づいていません。お客様がすべきことは、充電アプリを開き、Kaluza の直感的なインターフェースを使用して、何時までに車を利用可能な状態にするのかと充電するバッテリー量を設定することだけです。後は車にプラグを差し込むだけで、残りは当社のアルゴリズムが処理します。

またお客様は Kaluza を使用して、削減した炭素量や節約した金額の内訳を、請求額やバッテリー駆動時間などの分析情報とともに表示することもできます。これらすべてに Cloud SQL が使用されています。

Google Cloud を使用することで、このエンドユーザー アプリを迅速に展開することができました。オペレーティング システムごとに異なるバージョンのアプリをビルドするのではなく、Flutter を使用して OS に依存しないバージョンをビルドできました。その後、Flutter が各プラットフォーム向けにアプリをビルドするので、より迅速に市場投入できました。

これは当社のアーキテクチャ全体の利点になっています。Google Cloud を使用したことで、時間のかかる開発プロセスから複雑さが取り除かれ、提案をすぐに試して検証し、新しい製品や機能を短時間で展開できるようになりました。これにより、急速に進化する業界の先頭に立ち続けることができています。

BigQuery と Looker を使用してエネルギー企業に完全な可視化を実現

電力網事業者やエネルギー企業は、Kaluza プラットフォームを使用することで、参加している電気自動車のうち何台が同時にネットワークに接続しているかを可視化できます。BigQuery と Looker Studio のダッシュボードには、アイドリング状態の車両の数や、充電中の車両の数に加えて、最適化エンジンがどの程度機能しているかといったきめ細かい分析情報が表示されます。

またこのプラットフォームでは、車両を集約レベルで表示して、問題を特定することもできます。Google Cloud の ML 機能を使用することで、電力網事業者はこの集約ビューに基づいて一度に必要なエネルギー量を予測し、それに応じて発電量を増減させることもできます。

最終的に、これらの分析情報を利用することで、ネットワーク事業者や公益事業会社はエネルギー使用を最適化して、需要と供給の浮き沈みのバランスをとることができるため、二酸化炭素排出量の多い燃料使用を削減しながら、余分な再生可能エネルギーを取り込むことができます。

双方向充電で電力網にエネルギーを戻す

Vehicle-to-Grid(V2G)充電(双方向充電)は、当社が非常に期待しているもので、世界市場での発売に向けて準備を進めながら、英国での展開を開始しました。V2G は、Kaluza Flex の他の部分と同じ Google Cloud アーキテクチャ上に構築されており、スマート チャージを可能にするだけでなく、電気自動車は蓄えたエネルギーを電力網に戻すこともできます。

たとえば、電気自動車のバッテリーが 40 kWh のエネルギーを蓄えられるものの、1 日 5 kWh しか使用しないとします。需要が低い(エネルギーが最も安価で最も環境にやさしい)時間帯にバッテリーを充電し、1 日 35 kWh を残して、ピーク時にネットワークに戻せば、需要を満たすためにさらに多くの化石燃料を燃やす必要がなくなります。

V2G が従来のスマート チャージよりも進んでいるのは、再生可能エネルギーが豊富なときに、それを利用してエネルギー システムのバランスをとることだけではありません。お客様はエネルギーを効率的に電力網に売り戻すことになるため、お客様のエネルギー価格がさらに下がることになります。たとえば、OVO および日産と提携して行われた大規模な国内 V2G トライアルで、Kaluza を使用したお客様は、年間平均 450 ポンドを節約できました。余剰エネルギーを電力網に売り戻したことで、年間最大 800 ポンドを節約したお客様もいます。自宅をミニ発電所に変えたのです。

Kaluza Flex を使用することで、電力網事業者からエネルギー小売業者や自動車メーカー、さらにはお客様に至るまで、すべての関係者がメリットを得られるプラットフォームが実現します。現在の目標は、この素晴らしいサービスをできるだけ多くの市場に提供することですが、Google Cloud のスケーラブルなインフラストラクチャと時間節約ソリューションのおかげで、これは容易に実現できるでしょう。

電気自動車に切り替える人が増えている今、当社の目標は、より環境にやさしく脱炭素化された未来に貢献する電気自動車の可能性を引き出しながら、スマート チャージが標準的な方法になるようにすることです。


- Ben White 氏、エンジニアリング責任者、Kaluza Flex
- Valts Grintals 氏、プロダクト マーケティング リード、Kaluza Flex

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