画像で学ぶ: 米国農務省林野部が Google Cloud ツールを使用して変化し続ける地球を分析している方法
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 4 月 13 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
米国農務省林野部は 117 年にわたり、米国の森林、草原、水路の管理を行っています。78 万平方キロメートルの土地を直接管理し、合計 2,023 万平方キロメートルにもおよぶ私有地、州有地、部族の土地において持続可能な管理を支援しています。その影響力はさらに広がりを見せ、その研究や学習の成果は世界に無償で提供されています。
Google では、そんな林野部のミッションに非常に感銘を受けています。そのため 2011 年に、地球科学のデータと解析のための地球規模のプラットフォームである Google Earth Engine が、森林局の研究者たちの研究、理解、有効性を支援していると知ったときには、非常に光栄に思いました。それ以来長年にわたり、Google は林野部と連携し、その独特な要件に合わせて地球の映像情報を入手できるようにしています。過去と現在のデータの両方を使用して、林野部は天然資源をより効率的かつ持続的に管理できる新しいプロダクト、ワークフロー、ツールを構築しました。また、Earth Engine と Google Cloud を利用して、気候変動、森林火災、昆虫、災害などの影響を研究し、新たなインサイトと戦略を創出しています。
林野部では、新たなインサイトを得ただけでなく、研究を飛躍的にスピードアップさせたことで、チーム全員がより多くの業務をこなせるようになりました。Google Cloud と Earth Engine を使って、10 年分の土地被覆変化の分析にかかる時間を、たった 100 行のコードによって、3 か月からわずか 1 時間に短縮しました。また同部は、景観変化監視システム(LCMS)プロジェクトで、変化に対応する新しいモデルを構築し、こうした変化を時間の経過とともにマッピングしました。
山火事やハリケーンなどの自然災害の後に発生する新たな脅威に対して、緊急サービスがより効果的に活動できるようになりました。森林衛生の専門家は、侵略的な昆虫や病気、干ばつなどの影響を検知し、監視できます。林野部内の数多くのトレーニングやアウトリーチ セッションのおかげで、より多くの職員が Earth Engine の新しいツールやプロダクトを利用できるようになりました。
林野部は新しいツールキットを作成し、GitHub に投稿して一般公開しました。これにより、外部の研究者も大いに恩恵を受けています。たとえば、Google Earth Engine の Python コード モジュールのリポジトリであり、一般的なデータ処理、分析、可視化に有用な geeViz があります。
これだけにとどまりません。林野部は、カリフォルニア州の山火事と森林の回復行動計画といったプロジェクトにも、Google Cloud の処理、分析ツールを使い始めました。同部の研究者はまた、放牧地管理者、火災専門家、生産者に実用的な情報を提供する Fuelcast や、地域や国の土地管理シナリオをモデリングするシナリオ投資計画策定プラットフォームなどのプロジェクトを通して、Google Cloud を使って景観全体の生態学的条件への理解を深めています。
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林野部は、地球への理解と思いやりを育むための技術を構築するパイオニアだと言えます。より頻繁な画像提供、豊富な衛星データセット、高度なデータベースとコンピュート システムにより、地球を大規模な動的システムとして捉えてモデル化することが可能になりました。
こうして科学者、エンジニア、レンジャー、USFS の消防士の固有の要請に応えていけることを大変光栄に思っています。また、これからずっと長い間、この星の貴重な資源について学びを続け、大切に慈しんでいきたいと思っています。
*画像 1: 米国農務省林野部(USFS)の Geospatial Technology and Applications Center(GTAC)は、科学的根拠に基づくリモート センシング手法を用いて、山火事の後の植生や土壌の状態を特徴付けています。この結果は、災害軽減のための緊急評価、山火事後の復旧計画、国の消防政策の有効性のモニタリングに利用されます。GTAC は長年にわたり確立された地理的ワークフローを用いて、現在これらのマッピング作業を行っています。しかし、GTAC は、USFS の他のユーザーのニーズに対応するために、火災後のマッピングと評価のワークフローを Google Earth Engine(GEE)内で動作するように適応させました。中程度の解像度の多重スペクトル データソース(Landsat、Sentinel 2 など)の空間的および時間的な包括的カバレッジと、GEE によって提供される分析能力により、ユーザーは地理空間燃焼度関連製品を迅速かつ簡単に作成できます。Box 1 は、火災発生前の Sentinel-2 の着色合成画像です。Box 2 は火災後の Sentinel-2 の着色合成画像で、火災跡が赤褐色で表示されています。Box 3 は、Box 1、2 の火災前と火災後の変化を示す差分正規化燃焼比(dNBR)画像です。Box 4 は、森林管理者に提供される最終出力である、燃焼度(未燃から高燃焼度まで)を 4 つのクラスに分類した燃焼領域のしきい値を設定した dNBR 画像です。
*画像 2: 米国農務省林野部(USFS)の Geospatial Technology and Applications Center(GTAC)と USFS のリージョン 8 は、Google Earth Engine(GEE)を活用し、大型ハリケーンによる樹木の風害を予測し、景観全体に空間製品を生成する樹木構造被害影響予測(TreeS-DIP)モデリング手法を開発しました。大規模な暴風雨が上陸した後 48 時間以内に、TreeS-DIP の結果が利用可能となります。これにより、戦略的な計画や管理のために地上リソースを現場に割り当てられるようになります。上記の Box 1 と 3 は、さまざまなデータ入力とパラメータを使用した TreeS-DIP のモデル出力を示しています。Box 2 は、ハリケーン アイダからの復旧時に GEE で測定した緑度の変化(正規化燃焼率: NBR)を、TreeS-DIP から迅速に提供された製品と視覚的に比較したものです。
*画像 3: アメリカ西部の深刻な干ばつにより、広大で独特な生態系を持つピニオン ジュニパー森林の健全性と現在の状態が懸念されています。米国農務省林野部(USFS)の Geospatial Technology and Applications Center(GTAC)と Forest Health Protection(FHP)の協力プロジェクトで、米国西部 10 州にまたがるピニオンマツとジュニパー枯死の地図作成に Google Earth Engine(GEE)が使用されました。この成果は、現地での活動、高解像度画像の取得、航空調査、綿密な枯死率のモデリング、2022 年の現場でのシーズンワークの計画など、今後の作業計画に利用されています。
Box 1 は、GEE を用いて生成したリモート センシングによる変化検出出力(白色)で、米国南西部におけるピニオン ジュニパーの減少を表しています。Box 2 は 2017 年の NAIP 画像で、Box 3 は 2021 年の NAIP 画像を示しています。これらの年の NAIP 画像から、2017 年には健康で緑色だった樹木が、2021 年には茶色くなり枯れかかっていっていることがわかります。さらに、Box 2 と Box 3 では、Box 1 で出力されたアリゾナ州フラッグスタッフ郊外の場所の変化検出結果をポリゴン(白色)に変換して表示しています。Box 2 のポリゴンは参考のため点線で表示し、Box 3 では 2021 年の実測変化を実線で示しています。ラスターをポリゴンに変換することで、データが容易にタブレット デバイスで利用でき、現地調査時の情報や写真も追加できるようになりました。
- 連邦文民セールス部門ディレクター Lesta Brady