Box が Gemini Embeddings 2 でマルチモーダル エンタープライズ エージェントを実現

Sandhya Patil
Agentic Product Consulting Lead, Google
Darryl Sladden
Staff AI Product Manager, Box
※この投稿は米国時間 2026 年 8 月 19 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
エンタープライズ コンテンツ管理は、クラウド移行の時代以来、最も大きなアーキテクチャの転換期を迎えています。
長年にわたり、企業は財務モデル、臨床試験プロトコル、M&A デュー デリジェンス ルーム、エンジニアリング スキーマ、法令遵守ハンドブックなど、数兆ギガバイトに及ぶ重要なデータを Box に保存してきました。これまでは、テキストベースの検索と検索拡張生成(RAG)によって、これらのリポジトリ内の膨大なナラティブ ナレッジが効果的に活用され、エンタープライズ AI インテリジェンスの強力かつ非常に効果的なベースラインが確立されてきました。
従来の RAG アーキテクチャはテキスト処理に優れていますが、エージェントの時代にはそれ以上のものが求められます。次なる論理的な進化は、このフレームワークを拡張して、テキストと並存する本質的にマルチモーダルで、高度な空間情報や構造を持つ要素を捉えることです。テキスト エンベディングは文章のインデックス作成に優れていますが、マルチモーダル アーキテクチャは、これまでにない画期的な機能を実現します。たとえば、財務表における厳密な行と列のセマンティクスを保持したり、臨床データのような視覚的情報を解釈したり、複数ページにわたるフローチャートのロジックを空間レイアウトを維持したままマッピングしたりすることが可能になります。
あらゆるデジタル コンテンツに対応する次世代の機能を提供するため、Google Cloud と Box は Gemini Multimodal Embeddings 2 を活用して高度なマルチモーダル機能を Box の Agentic Platform に統合し、業界をリードする Box のインテリジェント コンテンツ管理プラットフォームと Google Cloud の高度な AI エンべディングを融合させています。
エンベディングの改善によるメリット: ドキュメント コンテンツの次元の拡張
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視覚的および空間的なジオメトリの保持: 複数列の表や財務マトリックスなどの複雑なドキュメント要素は、その空間的なレイアウトによって意味を成しています。これらの要素をフラットなテキスト文字列に変換すると、列ヘッダーと対応するデータポイントとの関連付けが失われてしまうおそれがあります。マルチモーダル エンベディングにより、システムは人間とまったく同じようにドキュメントを解釈できるようになり、空間的な位置関係の整合性が維持されます。
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視覚的なモダリティの解明: 企業のドキュメントには、技術的な図表、プロセス フローチャート、ブランディング アセット、製品写真などの視覚的なインジケーターが多数含まれています。マルチモーダル機能により、これらの要素は検索システムにとって不可視なものではなくなり、ユーザーは画像とテキストを組み合わせた同時検索が可能になります。
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ハイブリッド ファイル形式の接続: 実際のビジネス ワークフローが、単一のドキュメント形式で完結することはほとんどありません。エージェントは、PDF ポリシー、ログを追跡するスプレッドシート、プレゼンテーション資料を相互参照する必要がある場合があります。マルチモーダル エンベディングによって RAG を拡張することで、これら多様な形式を横断した統一的な理解が可能になります。
アーキテクチャ ソリューション: Gemini Multimodal Embeddings 2
Google Cloud の Gemini Multimodal Embeddings 2 は、テキスト、ラスター画像、ドキュメント ページ、レンダリングされたスプレッドシートの表、ビジュアル チャートを同一のセマンティック表現空間に埋め込むことができる、統合されたマルチモーダル ベクトル空間を実現します。


gemini-embeddings-2 によって実現される主なプロダクト機能:
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クロスモーダル検索(テキストからビジュアル / ビジュアルからテキスト): 自然言語クエリにより、手動のタグ付けをすることなく、膨大なスライド ライブラリから特定のチャートや図解といったピンポイントなビジュアル要素を検索および抽出できるようになります。
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レイアウトを考慮したドキュメント エンベディング: ファイルを任意のテキスト ブロックに分割するのではなく、ドキュメント ページのレンダリングを直接埋め込むことで、視覚的な階層構造、コールアウト ボックス、構造的なコンテキストをそのまま保持できます。
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異種形式のブリッジ: モダリティ固有の構造情報を損なうことなく、.docx、.xlsx、.pdf、.pptx、.png、.csv 間のコンテンツをシームレスにつなぐネイティブ サポート。
マルチモーダル エンタープライズ エージェントの 3 つのコアパターン
Box 内でマルチモーダル エンベディングを活用することで、従来の RAG を拡張して複雑なビジュアル ワークフローをサポートするための、主要な 3 つの独自デザイン パターンを見出しました。
パターン 1: 複雑な財務レポートと分析レポート
課題
企業の財務、調査、監査の各チームは、高度に構造化されたドキュメントを分析します。こうしたドキュメントでは、埋め込みの表、成長チャート、脚注アノテーションの中に重要なデータが存在しています。テキストのみのインデックス登録では、これらの数字がコンテキストから分離されるため、自動分析が困難になります。
マルチモーダルの利点
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構造の整合性: エンベディング モデルは表やグラフの物理的な構造を捉えるため、財務エージェントは、どの列ヘッダーが特定の指標の行に対応しているのかを正確に理解できるようになります。
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視覚的な傾向分析: エージェントは、記述された要約と、付随する棒グラフや折れ線グラフの視覚的な傾向を相互参照し、文書内の主張とソースデータとの不一致を特定して指摘できます。
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コンテキストに応じたソースの特定: ユーザーは複雑なポートフォリオに対してクエリを実行し、特定の指標を裏付ける正確なページ、表、グラフを即座に取得できます。


パターン 2: マルチモーダルによる臨床意思決定支援と診断補助
課題
医療および臨床環境では、重要な患者データが、外部の外観写真(視覚的証拠)、顕微鏡の病理スライド(検査レポート)、構造化されたリスク マトリクス(トリアージ グリッド)など、さまざまな非構造化の視覚およびテキスト形式に断片化されています。従来のテキストベースのシステムや個別の分析ツールでは、こうしたクロスモーダルな関係性を同時に統合して理解することはできません。その結果、重要な診断の遅れを招いたり、生命に直結する処置上の合併症を見逃したりするリスクが生じます。
マルチモーダルの利点
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クロスモーダルな臨床情報の統合: 臨床写真、組織病理画像、トリアージ グリッドを同一のスペースにインデックス化することで、身体症状と細胞レベルの検査エビデンスを同時に評価します。
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微細な異常の特定: 顕微鏡下で観察される微細な視覚パターン(寄生虫の嚢胞壁など)を医学的知識と結び付け、希少な疾患を迅速に特定します。
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リスクを考慮した意思決定支援: 得られた所見をトリアージ フレームワークと照合し、生命を脅かすアナフィラキシー ショックなど、患者の差し迫ったリスクについて即座に警告を発します。


パターン 3: ドキュメント間のマルチモーダル統合とデータ調整
課題
企業内の情報は、接続されていないファイルや形式(PDF の議事録、Excel のグラフ、PNG のチラシ、メールスレッドなど)に断片化されています。従来のツールはこれらのファイルを個別に分析するため、独立したドキュメントを横断して詳細を確認したり、データの矛盾を解消したりする際に、情報を結びつけて全体像を把握することができません。
マルチモーダルの利点
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ファイル間の統合: 完全に異なる形式(PDF、スプレッドシート、画像、メール)の情報を同時に結び付けて、複雑なビジネス クエリに回答します。
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不整合の解決: アセット間の不整合を特定して解消します。たとえば、最新の財務スプレッドシートと照合することで、画像内に記載された古い価格情報を見つけ出すといったことが可能です。
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画像とテキストの照合監査: 画像やスキャンされたファイルをテキストベースの記録と照らし合わせ(署名済みの PDF 契約書を法的レビューのメールで検証するなど)、条項の欠落や変更箇所を特定します。


エージェント型エンタープライズ コンテンツ管理の未来
gemini-embeddings-2 と Box のエージェント プラットフォームのインテグレーションは、次世代のコンテンツ インテリジェンスを向上させる重要な新機能です。マルチモーダル エンベディングにより、Box は従来の検索の枠を超え、能動的かつインテリジェントなコラボレーションへと進化します。Box のインテリジェント コンテンツ管理プラットフォームは、エンタープライズ AI インフラストラクチャの根本的な転換を体現するものです。単なる受動的なドキュメント ストレージから、ガバナンスの効いたセマンティック インデックスによる推論レイヤに移行することで、AI エージェントは、既存のコンプライアンスとセキュリティ管理を維持したまま、コンテンツの照会や相互参照、アクションの実行を自在に行えるようになります。
マルチモーダル エンベディングと、検索、メタデータ抽出、調査、分析、作成にわたるネイティブ AI エージェント スイートを搭載した Box により、組織は、古い価格データの特定、契約条項の期限切れ、ドキュメント間の矛盾といったインサイトを、ビジネスリスクが顕在化する前にプロアクティブに抽出できるようになります。金融サービス、ライフ サイエンス、法務業務といった複雑性の高い業界では、マルチモーダル理解が競争上の必須要件となっています。Box なら、テキスト、表、グラフ、画像を横断して推論することが可能です。
より広範なエンタープライズ AI エコシステムとの相互運用を前提に設計された Box は、ガバナンスの効いた一元的なコンテンツ基盤として機能します。これにより、AI を活用したあらゆるワークフローが、承認済みで監査可能な企業データに基づいていることが保証されます。
考えてみれば、企業のデータ環境はもともとマルチモーダルなものでした。そして今、それを最大限に活用するためのテクノロジーが現実のものとなりました。gemini-embeddings-2 とのインテグレーションにより、Box は、ユーザーが非構造化エンタープライズ コンテンツからこれまでにない価値を引き出せるよう支援します。マルチモーダル ファーストのアーキテクチャ、厳格な精度ベンチマーク、そして監査対応のグラウンディングを積極的に取り入れるプロダクト リーダーが、企業の生産性とイノベーションにおける次なる波を牽引することになるでしょう。
このプロジェクトに携わってくださった Ken Ikeda、Afshaan Mazagonwalla、Samip Thakkar の各氏に感謝いたします。
- Google、エージェント プロダクト コンサルティング リード、Sandhya Patil
- Box、スタッフ AI プロダクト マネージャー、Darryl Sladden 氏


