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ハイブリッド クラウド

マルチクラウド エンジニアへの道 - クラウドに関する複数のスキルを習得するには

2022年1月18日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2022 年 1 月 8 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

私は数か月前に、AWS エコシステムから Google Cloud に移行することを選択しました。どちらも優れたクラウドです。その両方に精通したおかげで、自分がより熟練し、バランスの取れたテクノロジストになれたと感じています。

しかし私の体験は、大きなトレンドの中の単なる一例にすぎません。ここ最近言われているように、今やマルチクラウドは中規模から大規模の組織にとって不可欠となっています。IT の存在が複雑化するにつれて、より広範囲のクラウド プロバイダ要件が仕事や商談の場面で検討されるようになります。マルチクラウドは待ったなしで迫っています。

実際、Hashicorp が最近実施したクラウド戦略アンケートによると、雇用主の 76% がすでに何らかの方法で複数のクラウドを使用しており、50% 以上がクラウドで生き残るための最大の課題として従業員のスキル不足を指摘しています。

エンジニアにとっては、これはキャリア チャンスでもあります。しかし、時間や労力の余裕がない中、これまで以上に先行き不透明な世界で競争力を維持するためには、何に賭けるべきでしょうか。

クラウドを 1 つ選んでそれに精通し、使い続けることは、キャリアの賭けとして申し分ありません(1 つのクラウドにキャリアを賭ける場合は、Google Cloud を選択すべきです。その理由はこちらでご確認ください)。ただし、この投稿では、エンジニアとしての守備範囲を米国の大手クラウド プロバイダ 3 社(Google Cloud、AWS、Microsoft Azure)のうち少なくとも 2 社に拡大することで、将来生き残るためのキャリアの選択肢が広がることをご説明します。

「マルチクラウド精通度」とは

ここでは、「マルチクラウド精通度」という用語を、各クラウド プロバイダから提供されている主要なプロフェッショナル レベル認定に合格できるレベルのクラウドに対する精通の度合いとして用いています。認定の例としては、Google Cloud の Professional Cloud Architect 認定や AWS の Certified Solutions Architect Professional が挙げられます。ただし、マルチクラウド精通度とは複数のクラウドで本番環境のワークロードを管理した経験を意味するわけではありません。その理由はこの後でご説明します。

マルチクラウド精通度がクラウド エンジニアとしてのキャリアアップにつながる理由

Twitter のクラウド コミュニティで、複数のクラウドに関する知識がキャリア開発にどのように役立ったかという質問をしたところ、数十人のエンジニアによる洞察に富むディスカッションが繰り広げられました。

私たちの多くがそうであるように、同じプロジェクトに複数のクラウドからのサービスを組み込んだ経験がなくても、他のクラウドの機能や仕組みを理解していることは依然として重要であるということがわかりました。

クラウドの共通語を学ぶ

複数のクラウド プロバイダを「ロマンス諸語」のような枠組みでとらえることができます。つまり、同じ語族に含まれる人間の言語と同様に、クラウドはそれぞれ同じ概念的構成要素を多く共有しています。大人は主に、過去に経験したこととの類似性を通じて学びます。1 つのプログラミング言語を学ぶと、他のプログラミング言語を学びやすくなるのと同様に、1 つのクラウドについて学ぶことで、他のクラウドを短期間で習得できるようになります。

さまざまなクラウド プロバイダの強みと欠点を把握しておくと、新しい情報をより迅速に吸収できるだけでなく、新しいプロジェクトに最適なサービスとアーキテクチャを選択することが可能になります。実際、AWS のみを取り扱っていたコンサルティング会社で働いていたときにこれに苦労したことを覚えています。クライアントから「Azure でこれを実行したらどうなりますか?」と尋ねられても、確信を持って答えるのに必要な知識がありませんでした。一方、主要なプロバイダのサービスに関する基礎をしっかり理解していれば、適切なサービスを自信を持って提案し、相手を納得させることができます。

ユニコーンを目指す

といっても、このレベルの意識がエンジニアリング分野の人材に浸透しているわけではありません。マルチクラウドのスキルを兼ね備えた人材が、採用市場で「ユニコーン」(現実離れした能力の持ち主という意味)と呼ばれているのはそのためです。2022 年にライバルに差をつけるには、複数のクラウドに精通していることをアピールすべきです。そうすることで、自分が精通している各クラウドにフォーカスした企業にスキルを売り込めるようになり、採用市場が拡大します。

マルチクラウドの経歴の価値を最も高く評価している企業の例として、コンサルティング会社が挙げられます。コンサルティング会社は、その時点で担当しているクライアントのプロジェクトに応じて、さまざまなクラウドに取り組む必要があるからです。独立系コンサルタントであり、私が最も尊敬しているクラウド テクノロジストの 1 人である Lynn Langit 氏は、自身のコンサルティング時間の約 40% を Google Cloud に、40% を AWS に、20% を Azure に費やしていると推定しています。複数のプロバイダに精通している Langit 氏は、同氏にとって関心が高い案件を選択し、最大の価値を提供するテクノロジーを推奨することができます。

また、社内のエンジニアリング チームで働いているエンジニアの場合、マルチクラウド スキルはキャリアアップにも役立ちます。企業のクラウド アプローチがより複雑になるにつれて、その会社におけるクラウドの意義・効果全体を理解している技術系の経営陣と意思決定者が必要になります。中規模~大規模企業または成長中のスタートアップでプリンシパル エンジニアやエンジニアリング マネージャーになりたいと思いませんか?これらの役割には、組織全体のテクノロジー ランドスケープを理解していることが求められ、これにはおそらく複数のクラウドのサービスも含まれます。

マルチクラウドのキャリアを開拓するには

複数のクラウドにある程度精通していると、キャリアの選択肢が広がることについて説明しました。ただし、1 つのクラウドについて学習するだけでも、大変な課題のように聞こえるかもしれません。そのクラウドが現在担当している仕事の一部でない場合はなおさらです。二兎を追う者は一兎をも得ずという事態に陥らずにマルチクラウド キャリア計画を立てるには、どうすればよいでしょうか。

コアコンセプトを把握する

クラウドはすべて互いに異なりますが、IAM仮想ネットワーキング、高可用性などに対して同じ基本的なアプローチを共有しています。これらは、必要に応じてクラウド間を移動できる応用力の高い基礎知識です。クラウド経験の浅いエンジニアの場合は、アソシエイト レベルのソリューション アーキテクト認定取得に向けて学習すれば、基礎をカバーできます。ただし、コンセプトを現実のものにするために、ハンズオンラボを必ず行ってください。読むだけよりも実際にやってみることで、はるかに多くのことを学べます。

優先したいクラウドについては深く学ぶ

基本はさておき、1 つのクラウド プロバイダについてはネイティブ レベルの精通度を身に付けることが非常に重要です。マルチクラウドのスキルは習得する機会は職に就いてからでもありますが、クラウド エンジニアリングの仕事を獲得するには、まず、特定のクラウドに関する重要な専門知識があることを示す必要があります。

メモ: クラウドの経験がまったくなく、どのプロバイダから始めればよいかわからない場合は、個人的な(ただし情報に基づいた)アドバイスとして、Google Cloud から始めることをおすすめします。無料枠があるため、許可を与えない限り支払いを求められることはありません。プロジェクト構造が上手くできているので、さまざまなテスト環境の立ち上げと破棄を簡単に行えます。

エンジニアリング チームが何を専門としているかにも注目すべきです。フォーカスを定めていないチームもありますが、可能な限り 1 つのクラウド プロバイダで標準化しようとしている場合がほとんどです。そのようなチームに所属している場合は、この機会を利用して、チームが優先的に使用しているクラウドについて実践的な経験をできるだけ積むようにしてください。

次のクラウドについては広く学ぶ

T 型人材というコンセプトを耳にしたことがある方もいらっしゃると思いますが、バランスの取れた開発者は、特定の分野を極めながら、その他の関連するさまざまなテクノロジー(「T」の横軸部分)についても広く精通しています。優先する(プライマリの)クラウド プロバイダに関するスキルは「T」の縦軸部分と考えることができます(現実的には、単一のクラウドでさえもサービスが多すぎて、専門家レベルで精通するのは困難です。専門家レベルで極めることができるのは、セキュリティやデータなど、プライマリ クラウドで提供されているサービスの一部に限定されます)。

別の言い方をすれば、プライマリ クラウドに関する知識を土台にして、次の(セカンダリの)クラウドについて認定を受けるべきです。そうすることで、「母語」であるプライマリ クラウドに関する優れた専門知識に加え、市場の他の部分の状況認識が得られます。セカンダリ クラウドを足場にするチャンスが訪れたら、キャリアアップの準備が完了です。

ただし、何人からの人が指摘していることですが、複数のセカンダリ クラウドに精通しようとする場合、ある点を境に努力の増加が成果の増加に結びつかなくなります。つまり、ある点を過ぎると認知の切り替えに圧倒され、学習を追加しても大した価値を得られなくなるのです。おそらく、スイート スポットは「1 < 2 > 3」(1 個よりは 2 個、3 個よりは 2 個)であると言えます。

クラウドネイティブ サービスとマルチクラウド ツールに賭ける

クラウドをキャリアの基礎にする上で肝心なことは、クラウドの強みを活用することです。たとえば、SpannerVertex AI などのネイティブの強力なマネージド サービスに精通しておくと効果的です。

一方、クラウド エコシステムは成熟を遂げ、各プロバイダに固有のサービスを集約するための優れたマルチクラウド管理ツールがオープンソースで提供されています。クラウドでコンテナを導入している組織は、おそらく Kubernetes を使用していると思います。また、DevOps のポジションを探している場合は、組織が専門とするクラウドが何であれ、Terraform の専門知識を備えた人材が選ばれる可能性が大です。これらのクロスクラウド ツールの学習に時間を投資することで、自分が希望したチームで面白い仕事をする機会の幅を広げることができます。

マルチクラウドとどう付き合うべきか

私は AWS Hero として長年仕事をしてから Google Cloud に移りました。Stephanie WongRichard Seroter など、Google Cloud を先導する人物の意見や活動に注目するようにしてきましたが、AWS を使用している友人との付き合いをやめたわけではありません。両方のエコシステムに精通していることが、テクノロジスト(そしてコミュニティ メンバー)としてのレベルアップにつながると考えています。

「そうは言っても、クラウド A の機能やアップデートだけでも多すぎてついていけないのに、クラウド B も学ぶことなど考えられない」と考えていませんか?すべてを知ることは不可能だということを受け入れましょう。すべてに精通している人などいません。クラウドの基礎に関する幅広い知識を指針にして、よく使用するサービスに関するドキュメントによく目を通し、セカンダリ クラウドについての関心を保ち続けることが重要です。

  • 重要な動向を見極めるのに役立つ、信頼できるリーダーを何人か特定してフォローする

  • 四半期に 1 回程度の頻度で仮想イベントに参加する(ライブ学習へのアクセスがこれまで以上に簡単になりました)

  • 週末にスキルを実践できる場としてサイド プロジェクトを構築する

結局のところ、皆さんのキャリアの軌道を決めるのは、(所属するチームやテクノロジーの選択肢ではなく)皆さん自身です。この投稿を読んでキャリアに関する質問が生じた場合は、Twitter でお気軽にご連絡ください。今後もこのトピックについてコミュニケーションを続けていけることを楽しみにしております。


- コンテンツ部門リーダーForrest Brazeal
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