API 対応エコシステムでアジリティを獲得した Deutsche Bank の手法

Stefan Mesquita
API strategy & Integration, Deutsche Bank
※この投稿は米国時間 2026 年 8 月 5 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
銀行のデジタル トランスフォーメーションというと、モバイルアプリや新しいデジタル サービスといった、目に見える結果に目を奪われがちです。しかし、これらのサービスすべてを実現している、目に見えないインフラストラクチャが存在します。それが API です。Deutsche Bank では、API を単なる技術的な「配管」ではなく、現代の銀行業務の「神経系」であると認識していました。
数年前、当行のアプリケーション環境はモノリシック システムが主流でした。これらをモジュール式の再利用可能な API に分割する方法を評価する中で、明らかになった点が 1 つあります。それは、単に業務を API に分解するだけでは不十分で、これから生じるものを管理するための一元的な API 管理プラットフォーム(APIM)が必要であるということです。ドキュメント、セキュリティ ポリシー、ガバナンスが、後付けではなく最初から組み込まれているプラットフォームが必要でした。
問題は、モダナイズの方法だけではありませんでした。特に技術面で新たなパラダイム シフトが発生している中で、お客様に最適なサービスを提供し、将来の機会に備える方法が重要でした。
現代の銀行業務の需要に対応できる適応性、スケーラビリティ、信頼性、安全性、AI 対応能力を備えたシステムを必要としていた当行は、APIM プラットフォームとして Google Cloud の Apigee を選択しました。
バックボーンの構築: 4 つの主要な機能
現在、フィンテック パートナーと当行をつなぐオープン バンキング API から、さまざまなバンキング プラットフォームを支える社内マイクロサービス、オンライン バンキングなどのシームレスなデジタル エクスペリエンスを可能にするクライアント向けアプリケーションまで、当行の API エコシステムを Apigee が管理しています。
このプラットフォームが提供する 4 つの重要な機能は次のとおりです。
1. スピードを犠牲にしない統合ガバナンス
Apigee は、当行の API カタログの基盤です。すべてのエンドポイント、バージョン、依存関係が文書化され、検出可能な状態になっています。開発チームは、機能を再構築するのではなく、既存の API を探して再利用しています。数日をかけて顧客データ API を探し回る環境から、どの開発者でもアクセスできる検索可能なリアルタイム カタログに移行しました。
しかし、ガバナンスは本来、ボトルネックとなるものではなく、ガードレールの役割を果たすものです。当行では、Apigee のポリシー フレームワークを使用して、標準を自動的に適用しています。現在では、OpenAPI 仕様、スキーマ検証、エラー処理がプラットフォームに組み込まれています。一貫したフレームワーク内で作業できるため、チームの作業が迅速化しました。
2. セキュリティ: 従業員のオンボーディングとの類似性
API のセキュリティについて、新入社員のオンボーディングにたとえて考えてみましょう。新入社員に、初日からすべてのシステムに対するアクセス権を付与することはないでしょう。最小権限の原則に従い、その役割に必要な権限のみを付与します。異動した場合は、アクセス権が更新されます。退職した場合は、アクセス権が直ちに取り消されます。Apigee は、サービスやアプリケーションについて同様に機能します。
たとえば、顧客アカウントにアクセスする新しいサービスに接続する場合、いきなりすべてを許可することはありません。OAuth2 スコープと API キー管理を通じて、次のようにエージェントがアクセスできるものを細かく定義します。
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口座残高の読み取り: 許可する。
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電信送金の開始: 許可しない。
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90 日間の取引履歴へのアクセス: 許可する。
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過去のデータ全体: 昇格された権限がある場合のみ。
従業員のアクセス権と同様に、これらの権限は一元管理され、定期的に監査され、即座に取り消すことができます。コンプライアンスを目的に従業員の活動を追跡する場合と同様、Apigee はすべての API 呼び出しをログに記録し、誰が、いつ、どのデータに、どのような理由でアクセスしたのかを確認します。
この点は、大量のデータを処理する自動化システムでは特に重要です。構成が不適切な場合、自動化されたサービスが、休むことなく 1 分間に数千回もの呼び出しを行う可能性があります。レート制限と割り当てを適用することで、問題が発生した場合でも、その影響範囲を抑えることができます。
3. 大規模なレジリエンスとパフォーマンス
銀行業務にダウンタイムはありません。顧客が午前 3 時に残高を確認した場合や、市場の取引活動が急増した場合も、API が即座かつ確実に応答する必要があります。
Apigee のロード バランシングと自動スケーリングにより、こうしたトラフィックが均等に分散されます。ヘルスチェックと回路ブレーカーが、問題のあるサービスを自動的に回避します。また、頻繁にアクセスされるデータについては、Apigee のキャッシュが、バックエンドにアクセスすることなくミリ秒未満の応答を実現します。
4. オブザーバビリティ: すべて測定可能
Apigee を導入する前は、API のパフォーマンスを把握することは、別々の箱からピースを集めてジグソーパズルを組み立てるようなものでした。現在は、リアルタイムのトラフィック、サービス別のエラー率、消費者別の使用状況分析、コンプライアンス指標を示す統合ダッシュボードがあります。この可視性が、運用、パートナーの価値を追跡するプロダクト マネージャー、異常を特定するセキュリティ チームの支えとなっています。


Apigee は、API ライフサイクル全体を管理するための中心的な機能スイートを提供する
将来を見据える
当行は、API エコノミーのためにこのインフラストラクチャを構築しました。また、そうすることで、デジタル バンキングの未来に向けた強固な基盤も構築できました。業界の進化に応じて、この API ファーストのアプローチは、次世代のサービスを統合するうえで不可欠になるでしょう。
デジタル バンキングの進化に伴い、リアルタイムで対応、予測、支援できるインテリジェント サービスへの移行が進んでいます。リアルタイムのパターン認識、予測インサイト、AI 搭載アシスタントなどの機能は、日常的なデジタル エクスペリエンスの一部になりつつあり、導入が加速するにつれて、その可視性と影響力が高まっています。これらの機能はそれぞれ API を使用します。そして、超低レイテンシ、高スループットのデータフロー、複数の API にわたる安全なオーケストレーションといった新しい要件が生まれます。
当行は、Apigee で柔軟な API プラットフォームに投資したため、インフラストラクチャを再構築する必要はなく、こうした将来のニーズに合わせてインフラストラクチャを適応させ、最適化していく準備が整っています。
新たな標準: MCP、A2A、そして未来
業界は新たな統合標準を模索しています。Model Context Protocol(MCP)や Google の Agent2Agent(A2A)などのプロトコルは、既存の API インフラストラクチャを基盤としているため、興味深いものです。
Apigee で管理している当行の API では、こうした進化を最適な形で活用できます。たとえば、MCP は OpenAPI 仕様のメリットを享受でき、A2A は OAuth2 フレームワークを活用できます。そして、どちらも当行が構築したガバナンスを基盤にすることができます。
また、最新のワークフローに対応しながらセキュリティ管理を維持するために、新しいタイプのサーバーを Apigee プロキシの背後に配置するといったパターンも検討しています。当行の「常時 API」パターンでは、サービスへのアクセス方法に関係なく、サービスが集中管理のメリットを確実に享受できます。


MCP と A2A は補完関係にあり、MCP はツールとリソースに、A2A はピア コラボレーションに重点を置いている
ビジョン: ユニバーサル インターフェースとしての API
すべての銀行業務機能は最終的に API として公開されるようになるでしょう。これは、API が流行しているからではありません。モバイルアプリ、パートナー フィンテック、分析プラットフォーム、その他の自動エージェントなど、何によって利用される場合でも、最も柔軟かつコンポーズ可能で、管理しやすい機能の共有方法だからです。
Deutsche Bank では、この変化がすでに形になりつつあります。当行のコア プラットフォームを支えるものと同じ API 基盤が、銀行全体でのよりインテリジェントな AI 支援サービスへの進化を可能にしています。この基盤は、これらの機能を実際に活用するために必要な整合性、ガバナンス、スケーラビリティを提供し、新しいインテリジェント サービスが登場したときに、シームレスかつ安全に、エンタープライズ規模で統合できるようにします。
Apigee は、すべてのユースケースに拡張できるガバナンスを提供することで、これを可能にします。重要なのはイノベーションを制御することではなく、安全に実現することです。
学んだ教訓
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優れたドキュメントに投資する。セマンティックな要約と明確なスキーマは、単に追加するものではなく、開発者と AI の両方にとって欠かせない基盤です。
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セキュリティを従業員のオンボーディングのように扱う。最小権限とロールベースのアクセス権は、API にも同様に適用されます。
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オブザーバビリティは競争上の優位性をもたらす。統合された分析により、データに基づく意思決定が可能になります。
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今すぐ将来に備える。API 管理インフラストラクチャが高度な統合レイヤになります。
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好奇心を持ち続ける。さまざまな新標準を試しましょう。柔軟性が勝利の要因になります。
まとめ
当行は転換点を迎えています。API エコノミーにより、フィンテックとオープン バンキングが実現しました。今では、同じインフラストラクチャが、次のイノベーションのバックボーンとして機能できます。API プラットフォームへの当行の投資は、API をより適切に管理することだけが目的ではありませんでした。次に何が起こっても対応できる基盤を構築することが重要でした。
業界が変化する中でも、当行の準備は万全です。未来は、破壊を伴わずに迅速に行動できる組織のものです。当行の場合、その未来は Apigee によって実現されます。
- Deutsche Bank、API 戦略およびインテグレーション担当、Stefan Mesquita 氏



