次世代のコアバンキング プロバイダと提携して金融サービスを変革
Google Cloud Japan Team
※この投稿は米国時間 2022 年 12 月 15 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
既存の金融サービス機関(FSI)は現在、企業向けテクノロジーからクラウドへの世代交代の真っただ中にいます。これらの機関は、クラウドでデジタル トランスフォーメーションに向けた取り組みを加速し、フィンテックとの競合に必要なスピード、アジリティ、スケーラビリティを得ることに対して賭けに出ています。こうしたクラウド移行の基本的な要素は、以前のコアシステム(主にメインフレーム)のモダナイズを中心としています。しかし、 数十年前のミッション クリティカルな以前のシステムから最新のクラウドネイティブ ソリューションへの移行に伴う時間、費用、リスクの問題を考えると、FSI の対応は遅れています。また、以前のシステムは復元性と可用性の面で概ねうまく機能しているものの、維持費はますますかさみ、サポートは難しくなっています(COBOL 開発者の人材プールが絶えず縮小しているなど)。さらに、高まる市場ニーズに応えて、データドリブンでパーソナライズされたエンゲージメントをほぼリアルタイムで提供することにも苦慮しています。API 対応のマイクロサービス(お気に入りの消費者プロダクトの BNPL 融資など)に左右されるオープン バンキングや組み込み金融エコシステムをサポートできるだけのアジリティも確保しきれていません。
こうした限界が明白かつ深刻になるにつれ、業界全体でコア モダナイゼーションを推進する機運が高まっており、FSI はリスクを最小化し、価値創出までの時間を最大化するためにさまざまなアプローチを検討しています。これらのアプローチは、コアシステムをまるごと置き換えるものから、既存のコアを次第に縮小して「空洞化」することを重視した、より段階的なものにまで及びます。後者のアプローチでは、まず一連のカスタマー ジャーニーの優先順位を決め、それらをクラウド ネイティブのマイクロサービスとして再構築すると同時に、以前のサービスを徐々に非推奨にしていきます。このアプローチでは、今や Google Cloud の Dual Run などの新しいテクノロジーも利用できます。Dual Run を使用すると、以前のサービスとクラウドベースのサービスでワークロードを同時に実行できるため、リアルタイムのテストを実行し、パフォーマンスと安定性に関するデータを迅速に収集できるうえ、ビジネスの中断がありません。
もう一つよく見られるアプローチは、主として、クラウドネイティブの新しいコアバンキング プロバイダを利用して、対象地域にグリーンフィールド バンクを立ち上げるというものです。このアプローチにより、FSI は最新技術のメリットを直ちに享受できます。ただし、一般的には新規顧客のみに対象を絞るため、初めのうちは小規模となります。
一般的になりつつあるアプローチの一つは、以前のコア システムの「空洞化」と、クラウド ネイティブなコア ソリューションにおけるグリーンフィールド バンクの立ち上げを同時に組み合わせることです。この方法を選ぶ FSI は、 以前のコア テクノロジーを段階的に置き換え続けるという骨の折れる作業を行いながら、同時に整った環境で新しいコア テクノロジーをテスト、学習することができます。
機関がどのような方法を選択してモダナイゼーションを実現するとしても、従来のトランザクション機能だけでなく、ユーザーにリーチし、規制要件、セキュリティ、リスクを管理するための新しい方法も兼ね備えたエンドツーエンドのバンキング ソリューションを提供するには、技術パートナーによる堅牢なエコシステムが必要です。
Thought Machine、Mambu、Finxact が Google Cloud でいかにお客様にとっての価値を実現しているか
こうした状況を受け、Google Cloud は前述のようなフィンテック パートナーのエコシステムに加え、オープン クラウド、最高水準のセキュリティ、およびデータ機能を銀行に提供する Google 独自のサービスについて投資と構築を行ってきました。Google の目標は、デジタル トランスフォーメーションが加速するこの混乱の時期を経て進化する金融サービス業界を支援することです。
「あまりにも長い間、銀行は柔軟性に欠ける低速なコアシステムにとらわれてきました」と、 Thought Machine の CEO および創設者である Paul Taylor 氏は述べています。同社は、クラウドネイティブのコアバンキング システムである Vault Core を提供しています。これにより、銀行はコア テクノロジーをクラウドで実行し、高度にパーソナライズされたバンキング プロダクトを構築して提供できます。「Thought Machine の次世代コアバンキング機能を Google Cloud のスケール、セキュリティ、オープン クラウドの特性と組み合わせることは、お客様にとってまさに変革にほかなりません。」
Thought Machine、Mambu、Finxact などのクラウドネイティブのコアバンキング システムは、Apigee(API 管理)、Google Kubernetes Engine(GKE)、Security Command Center をはじめとする Google Cloud テクノロジーを活用して、安全性、スケーラビリティ、相互運用性、拡張性に優れたサービスをお客様に提供しています。
Mambu を例にとれば、ワークロードの中核部を GKE に移行し、お客様が簡単に Mambu のサービスを以前のシステムや複数のクラウドと統合して柔軟な相互運用性を実現できるようにしました。また、GKE の高可用性と復元性をすぐに利用できるため、65 か国のお客様の厳しい SLA を満たすことができます。幅広い VM ハードウェアに対応した Compute Engine により、お客様に必要な速度とレイテンシを確保することもできます。
「セキュリティは欠かせません」と、Mambu の製品および技術担当最高責任者である Fernando Zandona 氏は言います。「Google Cloud を使用すると、あらゆる自社データが暗号化され、サービスからネットワーク レベルまで管理されるアクセス制限が適用されるようになります。Google Cloud のグローバルで安全なインフラストラクチャ上に構築すれば、必要な国に地域のデータ所在地を提供することもできます。」
Finxact の創設者および CEO である Frank Sanchez 氏(現在は、2022 年 4 月に Finxact を買収した Fiserv の副会長)は、Google Cloud のスケーラビリティとデータ機能が重大な価値をもたらすと語ります。「銀行は、水晶玉をのぞき込み、さまざまな最悪のシナリオに備えて準備しておく必要がありません。より高い流動性をもってサービス提供や市場参入を検討でき、巨額の設備投資をしなくても済みます。」
Finxact は、マルチポジションの口座に対して高速なトランザクション処理を必要とする金融機関向けに、高度な記録システムを提供しています。「Finxact は、プラットフォームとしてのバンキングに対応した信頼性が高くスケーラブルで安全なエンジンであり、エコシステムの他の部分と統合してエンドツーエンドのソリューションをお届けします」と、Sanchez 氏は述べます。「クラウド プロバイダは、そのエコシステムがどのように見えるか、あれこれ言いたいことがあるようです。Google Cloud は業界最大級の取り組みを展開しています。当社の API と統合された AI / ML やデータサービスは、お客様に堅牢なソリューションを提供します。」
業界随一のクリーンなクラウドの最新コアバンキング ソリューション
上述のような次世代のコアバンキング プラットフォームとの提携に加え、Google Cloud は独自のフレームワークとパートナーシップ主導のソリューションを開発し、より安全で革新的なデータドリブンのバンキング プラクティスを推進しています。その一部を以下にご紹介します。
組み込み金融 / オープン バンキングを強化する Apigee ベースの業界ソリューション
Google Cloud AI / ML を利用したマネー ロンダリング防止(AML)サービス
財務データとリスクデータの管理方法および構成方法について効率化と自動化を図り、報告のニーズをサポートする、BigQuery ベースの法令上の報告ソリューション
Google Cloud の包括的な金融エコシステムは、テクノロジーのモダナイゼーションを必要とする銀行にワンストップ ショップを提供しますが、そのメリットは Google Cloud におけるシームレスな調達、管理、サポートの容易さの枠をはるかに超えて広がっています(ただし、新しいソリューションをテストする際の煩雑な手続きを回避し、技術スタックの管理方法を効率化することは簡単ではありません)。
Google Cloud にデータを保存することで、復元性が高くグローバルにスケーラブルなインフラストラクチャが保証されます。ハイブリッドとマルチクラウドの柔軟性があれば、クラウド戦略が停滞することはありません。また、Google Cloud のイノベーションへの取り組みにより、機関は AI / ML を利用して今日の開かれた競争の場で遅れを取らず、カスタマー エクスペリエンスのパーソナライズ、新商品の開発、効果的な業務を推進できます。最後に、業界随一のクリーンなクラウドにデプロイすることで、サステナブルな金融といった ESG の目標を促進できます。
Google Cloud の金融サービス パートナーとリテール バンキング ソリューションのエコシステムについて詳しくは、こちらをご覧ください。
- Google Cloud、グローバル リテール バンキング ソリューション担当マネージング ディレクター Toby Brown
- Google Cloud、FSI パートナーシップ プリンシパル Cid Leeker