Google AI Studio のスターター ティアの解説

Karl Weinmeister
Director, Developer Relations
※この投稿は米国時間 2026 年 6 月 23 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
あなたは Google AI Studio で実用的なプロトタイプを作成したところであると仮定しましょう。React フロントエンドに Node.js バックエンド、データベースも使っているとします。今は、チーム、ユーザー、試してみたがっている友人と共有するための一般公開 URL が必要です。
Google Cloud は、きめ細かな IAM 制御、請求管理、リージョン選択機能を備えた、本番環境アプリケーションをデプロイするための完全なプラットフォームを提供します。本格的なシステムを構築する場合は、まさにこれが必要です。一方、10 分以内にプロトタイプをオンラインで公開したいだけの場合、今ならもっと手っ取り早い方法を利用できます。
Cloud Run、Cloud Firestore、Cloud SQL for PostgreSQL、Firebase Authentication など、Google Cloud スターター ティアのリソースは、フルマネージド プロジェクトでプロビジョニングされます。利用を開始するのに、お支払い方法(クレジット カードなど)や請求先アカウントは必要ありません。Google アカウントさえあれば、プロンプトの入力から一般公開 URL の取得まで、データベースや認証機能がすべて組み込まれた状態で実現できます。
スターター ティアの概要
Google AI Studio でスターター ティア サービスを設定すると、Google がバックグラウンドでフルマネージド プロジェクトをプロビジョニングします。ユーザー自身がプロジェクトを作成、構成、管理する必要はありません。リージョンの選択、API の有効化、セキュリティ ポリシーについては、Google が処理します。
スターター ティアは現在、個人の Google アカウントでご利用いただけます。企業または教育機関の Google Workspace アカウントでログインしている場合、組織レベルの管理ポリシーにより、リソースをデプロイする機能が制限されることがあります。これは、各リージョンでの Google AI Studio の提供状況によっても変わります。
スターター ティアは、IAM ロールの管理、API の有効化、請求先アカウントとの連携を行う標準の Google Cloud プロジェクトとは異なります。スターター ティア プロジェクトは、設計上、最小限の機能しか備えていません。BigQuery や Pub/Sub を有効にすることはできません。リソースのリージョンも変更できません。これがポイントです。設定項目が少なければ少ないほど、軌道を外れる可能性も低くなります。
コンソール エクスペリエンスもこの理念に沿っています。スターター ティア ユーザーには、数百ものプロダクト ページがある Google Cloud コンソール全体ではなく、プロトタイプにとって重要な要素(アプリケーション ログ、パフォーマンス指標、基本的なコンテナ構成など)に焦点を当てたシンプルなビューが表示されます。サポート対象外のプロダクトにアクセスすると、課金対象のリソースを誤ってプロビジョニングしないよう、別個の無料トライアルを開始するよう促されます。
ご注意: スターター ティアのリソースに標準の Google Cloud 利用規約は適用されません。これらはスターター ティア追加利用規約の対象となります。プロトタイピングやビジネス アプリケーションで、これらの規約が障害になることはありません。
提供内容: 事前構成済みのスタック
スターター ティアでは、Google Cloud カタログ全体を利用できるわけではありません。代わりに、アプリケーション アーキテクチャの要件に応じてオンデマンドでプロビジョニングされる、4 つのプロダクトの事前構成済みスタックが提供されます。


Cloud Run
Cloud Run はコンピューティング レイヤです。Google AI Studio でデプロイを行うたびに、HTTP トラフィックを処理する Cloud Run サービスが作成されます。スターター ティアでは、Google アカウントごとに最大 2 つのアクティブなウェブ アプリケーションを同時にデプロイできます。Cloud Run サービスは、受信トラフィックに応じて自動的にスケールし、アイドル状態になるとゼロまでスケールダウンします。つまり、使われていないときは、プロトタイプはリソースを消費しません。これらのサービスは、スターター ティア環境を最初にプロビジョニングしたときに固定される、単一のリージョンで実行されます。
Firebase Authentication
アプリでユーザー ログインが必要な場合、スターター ティアでは Google ログインが事前構成された Firebase Authentication を利用できます。Google AI Studio の AI エージェントは、プロンプトの内容が暗にユーザー ID を必要としている場合(「共有の ToDo リストを作成して」など)、認証を自動的に有効にするよう提案します。
アプリケーションが Google Workspace のインテグレーションを基盤としている場合、このログインフローにより認証が簡素化されます。ユーザーがログインすると、アプリケーションは OAuth アクセス スコープをリクエストし、Gmail、ドキュメント、カレンダー、スプレッドシートのデータを安全に操作できるようになります。これにより、要約ツールや受信トレイの整理ツールといった社内ツールのプロトタイプを簡単に作成できます。
Cloud Firestore
Cloud Firestore は、NoSQL データ ストレージを扱うデータベース サービスです。Google AI Studio エージェントは、プロンプトの内容から構造化データ ストレージが必要だと判断すると、自動的にプロビジョニングすることができます。AI エージェントは、クライアントサイドの同期コード(通常は /src/lib/firebase.ts ファイル)を生成し、アプリケーションに適した Firebase セキュリティ ルールのドラフトを作成します(たとえば、request.auth.uid を利用して、認証済みの作成者のみにドキュメントへのアクセスを制限します)。
「権限がない、または十分ではない」というエラーが発生した場合は、Google AI Studio で [エラーを修正] をクリックすると、更新されたアプリのロジックに合わせてエージェントがセキュリティ ルールを書き換えます。ただし、アプリを広く共有する前に、これらのセキュリティ ルールを手動でご確認ください。AI によって生成されたセキュリティ ルールはあくまで出発点であり、確実性を保証するものではありません。
Google AI Studio エージェントによって作成されたすべての Firestore データベースは、使用量の割り当てを共有します(詳しくは、下記の制限事項のセクションをご覧ください)。
Cloud SQL for PostgreSQL デベロッパー エディション
適切なスキーマ、結合、ACID コンプライアンスを備えたリレーショナル データが必要な場合、スターター ティアでは Cloud SQL for PostgreSQL デベロッパー エディションがプロビジョニングされます。これは、AI Studio エージェントとシームレスに連携するよう設計されています。デベロッパー エディションでは、即時のプロビジョニングとゼロへのスケーリングが可能で、迅速かつ低コストな開発環境を実現できます。また、pgvector などの機能を備えたオープンソース PostgreSQL の全機能を利用できるため、独立したベクトル データベースを追加しなくても、セマンティック検索や RAG アプリケーションを構築できます。
プロンプトを使用してアプリケーションの改良を重ねていくと、Google AI Studio エージェントはアプリケーションの構築や公開の進行状況に合わせて、必要なスキーマの生成や移行を自動的に行います。
プロンプトの入力から一般公開 URL の取得までの 5 つのステップ
1. Google AI Studio のビルドモードを開く。Google AI Studio にアクセスし、ビルドモードに切り替えます。お支払い方法の登録もプロジェクトの設定も不要です。
2. アプリの説明を入力する。「Firebase をバックエンドとして使用する共有 ToDo リストアプリを作成して」のようなプロンプトを入力します。エージェントが React フロントエンドと Node.js バックエンドを生成し、画面の右側にライブ プレビューを表示します。
3. Firebase を有効にする(メッセージが表示された場合)。プロンプトにユーザーデータや認証に関する内容が含まれていた場合、エージェントは Firebase を有効にするための構成カードを表示します。設定アイコンをクリックしてリージョンを選択し(これにより Cloud Run のリージョンも固定されます)、確認します。
4. [公開] > [使ってみる] > [アプリを公開] をクリックする。エージェントがコードをパッケージ化し、スターター ティア プロジェクトに Cloud Run サービスをプロビジョニングします。
5. URL を取得する。数秒で一般公開の .run.app URL を取得できます。アプリケーションの状況は、デプロイ済みコンテナのログと指標を表示する、簡素化された Google Cloud コンソール画面からモニタリングできます。
以上です。Dockerfile も gcloud も YAML 構成ファイルも必要ありません。
スターター ティアとの比較
Google Cloud には、無料で利用できる方法がいくつか用意されています。スターター ティアと、新規ユーザーにとって最も一般的な利用開始方法である無料トライアルとの比較は、以下のとおりです。
スターター ティアは、AI Studio でのプロトタイピングに最適です。BigQuery、GKE、Gemini Enterprise Agent Platform が必要な場合や、課金されるリスクなく 90 日間 GCP を幅広く評価したい場合は、無料トライアルをお選びください。どちらのコースでも、準備が整い次第、有料アカウントにシームレスにアップグレードして、すべての機能をご利用いただけます。
制限に備える
スターター ティアはプロトタイピングには十分ですが、制限もあります。事前に把握しておけば、予期せぬトラブルを回避できます。
アプリケーションは 2 つまで。デプロイできるアプリケーションは最大 2 つです。アクティブなアプリケーションのいずれかを置き換える場合は、Cloud コンソールでサービスを手動で削除しようとせず、Google AI Studio で既存のアプリスロットにデプロイまたは上書きしてください。
リージョンは 1 つ。スターター ティア プロジェクトのリソースはすべて、最初にスターター ティア サービスをプロビジョニングしたときに選択した、1 つのリージョンに固定されます。たとえば、Cloud Run にデプロイする前に Firestore データベースをプロビジョニングすると、その時点でリージョンが選択されます。
API サーフェスは固定。スターター ティア プロジェクトでは、追加の Google Cloud API(BigQuery、Pub/Sub、Cloud Functions など)を有効にすることはできません。これらが必要な場合は、アップグレードしていただく必要があります。
エフェメラル ファイルシステム。公開された Google AI Studio アプリはサーバーレスの Cloud Run コンテナ内で実行されるため、一時的なファイルシステムを継承します。ディスクに直接書き込まれるファイル(アップロードされた画像、生成された PDF、ローカルの SQLite データベースなど)は、コンテナがゼロにスケールされるか、再デプロイされると消滅します。Google AI Studio はプロンプトのイテレーションごとにコンテナを再デプロイするため、この状況は頻繁に発生します。永続データは Firestore または Cloud SQL for PostgreSQL に保存してください。
Firestore の共有割り当て。Google AI Studio エージェントによって作成されたすべての Firestore データベースは、単一の共有割り当てグループを共有します。Google Cloud において、割り当ては、プロジェクトを保護し、不正使用を防ぐことを目的とする、使用量上限または 1 日の予算を表します。サーバー容量が確保されることを保証するものではありません。
グループ内のいずれかのデータベースが 1 日の使用量上限に達すると、そのグループ内のすべてのデータベースは、太平洋時間の午前 0 時頃まで一時停止されます。Firebase Authentication の使用量は個別に測定されるため、ログインが急増してもデータベースの割り当てが減ることはありません。
Cloud SQL の割り当ての共有: Cloud SQL で構築できるアプリは最大 2 つに制限されています。Cloud SQL の割り当てを超過した場合、AI Studio エージェントは自動的に Firestore にフォールバックします。サンドボックスから移行することで、割り当てを増やすことができます。
サンドボックスからの移行
スターター ティアの最大の魅力は、そのアップグレード方法です。移行も、データ エクスポートも、DNS の切り替えも不要です。スケーリングの準備ができたら、そのままアップグレードできます。


Google AI Studio の [プロジェクト] ページで、[お支払い情報を設定] をクリックします。Cloud 請求先アカウントを作成し、お支払い方法を入力して、Google Cloud の標準利用規約に同意します。Google Cloud を初めてご利用のお客様には、自動的に $300 分のウェルカム クレジットが提供され、トライアル期間中の使用料金に充当されます。アップグレードはダウンタイムなしで実行されます。Cloud Run サービスは稼働し続け、データベースはデータを保持し、.run.app URL は変更されません。
アップグレード後は、IAM を完全に制御できるようになり、任意の Google Cloud API の有効化や、すべてのリージョンとスケーリング オプションの利用が可能になります。以下のようなコスト対策が推奨されています。
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予算アラートを設定する: Google Cloud Billing コンソールにアクセスし、使用量が予想(例: $10)を超えると通知するよう、予算アラートを設定します。
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Cloud Run のインスタンス数の上限を設定する: スターター ティアでは、Google によってコンテナ インスタンスの最大数が 1 に固定されています。アップグレードしたら、トラフィックの急増による予期しないスケーリング料金が発生しないよう、インスタンス数の上限を設定(例:
--max-instances 5)します。 -
API の割り当てを設定する: API の呼び出し(Gemini API や Firestore の読み取り / 書き込みなど)に上限を設定し、厳格な制限を使用量に適用します。
ご注意: Google AI Studio エージェントによって作成された Firestore データベースは、請求先を追加した後も共有割り当てグループに残っています。データベースの使用量割り当てを増やすには、Firebase コンソールにアクセスし、Firestore データベースに移動して [データベースをアップグレード] をクリックします。これにより、インスタンスが共有割り当てグループから削除され、標準の請求が適用されるようになります。ただし、課金される前に標準の Firestore 無料枠の上限が適用されます。
パス全体にわたる連続性により、このプロセスはスムーズに進みます。スターター ティアでプロトタイプを作成し、数週間かけて改良を重ね、準備が整ったら、何も再構築することなく本番環境グレードの Google Cloud プロジェクトに移行できます。
スターター ティアについてご質問がある方や、これを使って構築したものを伝えたい方は、ぜひ私にご連絡ください。また、サブレディットの r/GoogleCloud と r/Firebase では、コミュニティと意見を共有できます。
- デベロッパーリレーションズ担当ディレクター、Karl Weinmeister



