データ戦略 = AI 戦略シリーズ: Google Cloud で開発者を AI アーキテクトに進化させる

Abirami Sukumaran
Staff Developer Advocate, Google
※この投稿は米国時間 2026 年 3 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
エージェントの性能は、データによるグラウンディングの質に左右されます。データが整理されていないと、エージェントは高い確信度で回答していても、実際にはハルシネーションを起こしている可能性があります。2026 年には、データ戦略と AI 戦略は実質的に同じものになります。どちらか一方だけでは成り立ちません。
このシリーズ「データ戦略 = AI 戦略」では、この戦略のさまざまな側面を取り上げ、自律エージェントを構築しながら、より決定論的なワークフローを設計する方法をご紹介します。本投稿は、データと AI アーキテクチャの融合に焦点を当てたシリーズの第 1 回です。
業界は重要な転換点を迎えつつあります。2024 年と 2025 年は「API 時代」と定義され、開発者はアプリやエンドポイントを通じて LLM を統合する方法を学びました。2026 年には、エンタープライズ アーキテクチャへの移行が求められます。本番環境に対応したアプリケーションを構築するには、プロンプトを書く段階から、インテリジェントなエンドツーエンドのスタックを設計する段階へと移行する必要があります。
課題は、使用する AI モデルだけではありません。それを支えるインフラストラクチャも重要です。アプリケーションがエンタープライズ グレードであるためには、スピード、スケール、セキュリティという 3 つの重要な柱の要件を満たす必要があります。本記事では、AI の導入を目的としたエージェントの構築から、十分に戦略化されたコンテキストに基づくエージェントの設計へと移行するという観点から、これらの柱に焦点を当てます。具体的には、このブログとリンク先の Codelab において実践的な学習プログラムを提供し、Google のデータクラウドを活用してアーキテクチャを構築する方法を示します。このアプローチでは、PostgreSQL と完全互換のリレーショナル データベースを使用します。
戦略的転換: コンテキスト エンジンとしてのデータベース
最新の AI スタックでは、データベースはもはや単なるストレージ レイヤではなく、コンテキスト エンジンとしての役割を担うようになっています。Google の戦略は、AlloyDB for PostgreSQL や Cloud SQL など、PostgreSQL と完全互換のサービスを活用し、本番環境における AI の主なボトルネックであるレイテンシ、AI 機能、検索精度を解消することに重点を置いています。
この学習プログラムでは、開発者からアーキテクトへの移行を支援するために、インフラストラクチャに伴う負担を減らし、高レベルのアーキテクチャ設計に集中できるようにすることを重視しています。
1. インフラストラクチャ税の解消
これまで、ローカルでのプロトタイピングからクラウド規模のデプロイへ移行する際には、「インフラストラクチャ税」とも呼ばれる問題が大きな障壁となっていました。これは、クラスタ、インスタンス、VPC ネットワーク ピアリングの設定などに多くの時間を費やさなければならないことを指します。自動設定ユーティリティを導入することで、開発者はこうした構成上の障壁を回避できるようになります。
その結果、焦点はインフラストラクチャの管理から、安全なデータフローや高スループットのベクトル パイプラインの設計へと移ります。最近開催されたインストラクター主導の Code Vipassana セッションでは、参加した開発者が、この変化により、各ラボで 1 時間以上の時間を節約できました。このアプローチにより、本番環境への移行を効果的に加速できます。
2. スケーラビリティを前提とした設計: 100 万ベクトル、ループなし
エンタープライズ アーキテクチャを構築するには、小規模なデモの段階を超える必要があります。そのため、ベクトル検索を高速化するために、エンベディングのバッチ処理に重点を置いています。AlloyDB では、データベース レイヤ内でエンベディングを大規模に直接生成できます。この機能を活用することで、従来のループ処理に伴うレイテンシを解消し、大規模なデータセットに対してリアルタイム分析を行えるようになります。
3. ソブリン インテリジェンスと行レベル セキュリティ(RLS)
AI におけるセキュリティは、単にファイアウォールを設ければよいというものではなく、データ ガバナンスまで含めて考える必要があります。そのため Google は、アクセスが許可された特定のデータのみにアクセスするように AI エージェントを制御する仕組みとして、行レベルのセキュリティ(RLS)の活用を重視しています。このプライベート Vault アーキテクチャは、データの分離が不可欠な規制業種において特に重要です。たとえば、ユーザーがエージェントと対話する中で、他のユーザーに関する情報やベンチマーク情報まで知ることができてしまう状況を想像してみてください。データレベルのセキュリティをデータベースに組み込むことは、もはや任意ではありません。誰に何を知らせるべきかという判断を、エージェント任せにすることはできません。
アーキテクチャ学習プログラム
Google は、エンタープライズ AI 開発の全体像を体系的に理解できるよう、一連のハンズオン形式の技術ラボを用意しました。各ラボは、インテリジェント スタックを構成する特定のレイヤに対応しています。
多くのラボでは AlloyDB を使用します。ただし、このアーキテクチャ戦略の流れは Cloud SQL のエコシステムにも広がっています。そのため、この学習プログラムには Cloud SQL for PostgreSQL ユーザー向けの代替ラボもいくつか含まれています。
推奨される学習プログラムには、次のコア アーキテクチャ ラボが含まれています。
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AlloyDB クイックセットアップ ラボこのラボは、必要な VPC とネットワーク設定を備えた高性能な AlloyDB クラスタを数分でプロビジョニングする方法を紹介するアーキテクト向けの入門ラボです。ここでは、後続のすべての AI ロジックのための安全でスケーラブルな基盤を確立するための「デイゼロ」オペレーションに焦点を当てます。
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アプリを AlloyDB データに接続して Cloud Run にデプロイする(または Cloud SQL に接続して Cloud Run にデプロイする)デプロイの段階に進み、このラボではサーバーレス アプリケーションのアーキテクチャを取り上げます。開発者は、セキュリティ向上のためにマネージド ID や接続文字列を活用しながら、Cloud Run サービスを AlloyDB(または Cloud SQL)に接続する方法を学びます。このアプローチにより、アプリケーション レイヤもデータレイヤと同様に堅牢な構成にすることができます。
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リアルタイム余剰エンジンを構築する: Gemini 3 Flash と AlloyDB(または Gemini 3 Flash と Cloud SQL)このラボでは、エンドツーエンドのデータドリブン AI アプリケーションを構築し、スピードの柱に対応します。高効率な Gemini 3 Flash モデルを用いてストリーミング データを処理し、リアルタイムのインサイトを生成する方法をご紹介します。このアプローチにより、データベースとエンドユーザーの間に応答性の高いフィードバック ループが構築されます。
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100 万ベクトル、ループなし: AlloyDB によるスケーリングスケールに焦点を当てたこのラボでは、ベクトル検索のプロセスについて詳しく説明します。アーキテクトは、データベース内でエンベディングのバッチ処理を直接実装する方法を学びます。このアプローチにより、アプリケーション レイヤのボトルネックを回避し、エンタープライズ グレードのパフォーマンスで数百万規模のベクトルの取り込みと検索を実現できます。
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プライベート Vault: RLS によるゼロトラスト インテリジェンスアーキテクチャのパズルの最後のピースは、セキュリティの強化に焦点を当てています。このラボでは、開発者向けにゼロトラスト エージェントの構築方法をご紹介します。PostgreSQL で RLS を実装することで、AI エージェントがユーザーごとのデータ境界を確実に尊重する仕組みを構築できます。このアプローチは、セキュリティを強化しながらコンプライアンスにも対応した AI システムを設計するための指針となります。
未来をデザインする
インフラストラクチャの負担を減らし、スピード、スケール、セキュリティという基本原則に注力することで、新世代の AI アーキテクトを育成することができます。この戦略的な転換により、現在構築されているアプリケーションが、将来の本番環境の要件にも対応できるようになります。
今後開催されるインストラクター主導のハンズオン セッションに参加し、開発者からアーキテクトへのステップアップを始めたい方は、Code Vipassana にご登録ください。
- Google、スタッフ デベロッパー アドボケイト Abirami Sukumaran



