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顧客事例

テレビ朝日:生成 AI 動画コンテストを機に Veo を本格活用。番組制作の未来を語る

2026年3月9日
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Google Cloud Japan Team

テレビ朝日では、強みであるコンテンツ制作を中核とし、放送事業のみならず、配信、イベント、ショッピング、海外展開など多角的な「360°戦略」を推進しています。その成長戦略の一環として近年特に注力しているのが AI の活用です。2025 年夏からは AI を経営の柱の一つに据え、専門部署である「AI 推進部」を設立。同部署が中心となり、Google Cloud の動画生成 AI モデル「Veo」を活用した社内企画「生成 AI 動画コンテスト」を開催しました。このプロジェクトを牽引した AI 推進部とデータソリューションセンターの担当者に、Veo がもたらした衝撃と、AI 活用の未来について話を伺いました。

利用しているサービス:
Gemini 2.5 Flash Image, Veo, Vertex AI / Vertex AI Studio, Google Cloud Storage など

「楽しく最新 AI の能力を理解」し、同時にAI リテラシーを向上させた、テレビ朝日独自の生成 AI 動画コンテスト

テレビ朝日が「生成 AI 動画コンテスト」を開催した背景には、2 つの大きな課題感がありました。一つは、AI が実際のコンテンツ制作にどう役立つのか、社員が具体的なイメージを持ちにくいこと。もう一つは、著作権やガイドラインなど、AI 活用に伴うリスクへの理解を深める必要性です。

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今回のプロジェクトのリードを務めた、インターネット戦略局 AI 推進部の小俣氏は、コンテスト形式を採用した理由を次のように語ります。

「単に AI を『使ってください』と促すだけでは浸透しません。座学のような受動的な学びではなく、参加型のコンテストにすることで、社内で注目される企画に仕立て、自発的に動画生成 AI への理解を深めてもらう仕掛けとしました。実際にコンテンツ作りを楽しみながら、 AI をうまく扱う力と、安全に利用するポイントを自然にマスターしてもらうことが最大の目的でした。」

コンテストは 2025 年 6 月から 8 月にかけて実施され、応募資格は全社員を対象としました。現場のクリエイターだけでなく、バックオフィスの社員も含め、年齢、性別、部署を超えて 50 以上の応募作品が集まりました。AI 推進部のメンバーは、参加者一人ひとりに「伴走者」として寄り添い、技術的なサポートだけでなく、ガバナンスや著作権に関する個別指導を徹底しました。

動画生成 AI 「Veo」がもたらした衝撃:PC 1 つで “頭の中のイメージ” を映像化する

コンテストの核となるツールに選ばれたのが、Google Cloud の最新動画生成 AI 「Veo」です。採用の決め手となったのは、その圧倒的なクオリティと、商用利用における権利関係がクリアな点でした。

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AI 推進部で技術担当を務める山口氏は、初めて 触れたときの衝撃を振り返ります。

「プロンプトを入力するだけで、頭の中にあるイメージが数分でアウトプットされる体験は衝撃的でした。通常、海外ロケや大規模な CG 制作が必要な映像が、PC 1 つで生成できてしまう。人物の動きや周囲の環境音まで含めた “その場の空気感” を一瞬で作り出せる点に、従来の制作フローを根底から変える可能性を感じました。」

しかし、その圧倒的な表現力を持つ Veo でも、プロの制作現場で活用するには、生成映像を意図通りにコントロールすること、および放送局としてのガバナンス担保という実運用上の課題がありました。この革新的な技術を組織として安全かつ効率的に使いこなすための「解」が求められました。AI を「遊び」で終わらせず、放送業務支援ツールとして利用させるために、AI 推進部は技術的な工夫も凝らしました。その一つが、Veo と Nano Banana を同時に安全かつ効率的に使いこなすために開発した社内ツールです。コンテンツ制作をサポートするために、主に以下の機能を備えました。

  • プロンプトの構造化: 自然言語を AI が理解しやすい構造に変換し、意図に近い映像を出しやすくする機能を搭載
  • ガバナンスの徹底: 誰が、いつ、どのようなプロンプトで生成したかのログを管理し、著作権保護やコスト管理を徹底できる仕組みを構築
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また AI 推進部とデータソリューションセンターのメンバーが協力し、参加者一人ひとりの「伴走者」となり、プロンプトのコツから著作権ガイドラインの遵守までを個別にフォローしました。「生成 AI は自由度が高い反面、コントロールが難しい。そこをシステムと伴走でカバーすることで、クリエイターが安心して『実験』できる環境を整えました。」 とデータソリューションセンターの北川氏は振り返ります。

最新鋭のツールを提供するだけでなく、独自のシステムと密な人的サポートを両輪で動かしたこの導入プロセスこそが、社員たちの「まずは一歩を踏み出す」勇気とクリエイティビティを支える基盤となりました 。その結果、コンテスト作品の中には、テレビ朝日の社屋や廊下・トイレの写真をベースに非現実的な世界を合成したものなど、プロの目から見ても「AI か実写か判別がつかない」ほどのリアリティを持つ作品が登場し、社内で大きな反響を呼びました。

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クリエイティブとテクノロジーの融合:番組制作の現場で見え始めた、動画生成 AI 活用の姿

今回のコンテストの成果は、単なるツールの体験に留まりませんでした。コンテスト後、社内では「Veo」という言葉が日常会話で当たり前に使われるようになり、さらに AI への心理的ハードルが劇的に下がり、AI を「自分たちの武器」として捉える文化が芽生え始めています。

AI 推進部の技術チーフ 中村氏は、インフラとしての Google Cloud の安定性を高く評価しています。

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「アカウント管理のしやすさや課金の安定性など、Vertex AI のプラットフォームとしての信頼性は非常に重要です。誰がいつ何を生成したかというログ管理や、コストコントロールが可能な仕組みがあるからこそ、企業として安心して AI 活用を推進できます。」

今後の展望について、チームはさらなる高みを見据えています。既に、ドラマの背景映像の補完や、バラエティ番組のネタ映像、再現 VTR の制作など、実際の地上波放送での活用に向けた具体的な検討が始まっています。

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「目指しているのは、AI を単なる効率化のツールではなく、社員の発想を広げるパートナーにすることです。」とデータソリューションセンターの皆木氏は語ります。

「クリエイターがより創造的な仕事に時間を割ける環境を作り、テクノロジーとの融合によって、これまでにない新しいコンテンツを視聴者の皆さまに届けていきたいと考えています。進歩する生成AIと共に、私たちはこれからも未知の領域へ挑戦し続けます。」

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株式会社テレビ朝日
1957年に日本教育テレビとして創立され、1959年にテレビ放送を開始。1970年にニュースネットワークとして発足した ANN(All-Nippon News Network) のキー局を務める。2000年代以降、看板報道番組や強力なドラマシリーズ、スポーツ中継を武器に躍進し、近年は年度視聴率三冠王(個人全体・世帯)を獲得するなど、民放トップクラスの支持を確立。2000年代よりデジタル化やインターネット配信、ABEMAとの連携を推進。現在は放送を核にコンテンツ価値を全方位で最大化する「360°戦略」を掲げ、IP(知的財産)の多角展開やグローバル市場への進出、先端技術の活用を通じ、総合コンテンツ企業としてのさらなる成長を目指している。

インタビュイー (写真右から)

・ビジネスソリューション本部 インターネット戦略局 AI推進部 小俣慎太郎 氏
・ビジネスソリューション本部 インターネット戦略局 AI推進部 中村敦 氏
・ビジネスソリューション本部 インターネット戦略局 AI推進部 山口真由子 氏
・ビジネスソリューション本部 インターネット戦略局 データソリューションセンター 北川玲音 氏
・ビジネスソリューション本部 インターネット戦略局 データソリューションセンター 皆木渓夏 氏

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