東社協:高いセキュリティで安心、安全に利用できる ChromeOS で約 1 万人の民生児童委員活動を支援
Google Cloud Japan Team
社会福祉法人東京都社会福祉協議会(以下、東社協)の会員組織である東京都民生児童委員連合会(以下、都民連)では、「令和 4 年度デジタル機器導入による民生・児童委員活動支援事業」の一環として、東京都の約 1 万人の民生児童委員に Chromebook を配布し、Google Workspace を活用した民生児童委員活動の支援に取り組んでいます。ChromeOS の利活用を推進するモデル地区である立川市(東京都)の取り組みについて、東社協の部長と担当者 2 名、立川市民生委員・児童委員協議会の会長、副会長、および 7 名の民生児童委員にお話を伺いました。
※民生委員・児童委員とは地域福祉を担うボランティアで、住民の立場に立った相談支援活動等を行っています。民生委員法と児童福祉法にもとづき、厚生労働大臣が委嘱します。
利用しているサービス:
Chromebook、ChromeOS、Google Workspace
個人情報を安心、安全に管理できる ChromeOS を採用
都民連では 2023 年 2 月より、東京都の補助事業の一環として、東京都内の約 1 万人の民生児童委員を対象に Chromebook を配布しています。最大の目的は、行政や関係機関・団体との連携にあたり、必要な情報の入手や、対面が難しい地域の方々とのコミュニケーションを容易にするなど、民生児童委員活動の支援および効率化です。ChromeOS の利用に際して、2023 年 2 月~ 3 月の期間、都内 12 カ所で、32 日間 59 コースの民生児童委員向けの研修も実施しました。
都民連の事務局を運営する東社協の民生児童委員部 部長の荻野 剛氏は「都内の民生児童委員の平均年齢は 66 ~ 67 歳なので、モバイル PC を使い慣れている人もいれば、世代的にまったく使えない人もいるという状況で、電源の入れ方、写真の撮り方など、最初のステップで苦労している方もいました。当時はコロナ禍でもあったので、まずはオンライン会議やオンライン研修、メール / チャットによる情報共有、カレンダー機能の活用、情報検索など、ChromeOS の基本的な使い方の研修からスタートしました」と話します。
都内の民生児童委員は、一人あたり平均で 680 世帯、多いと 2,000 世帯を担当することもあり、担当する住民の個人情報や地図、生活状況などの情報が安心、安全に管理できることが不可欠でした。ChromeOS は、信頼できないアプリやファイルに実行権限を付与しないので、ウイルスやマルウェアの攻撃に対して強く、リリースからこれまでにランサムウェアやウイルスによる被害はゼロです。また、デフォルトでデータが暗号化されており、基本構造としてクラウド上のデータを利用する設計になっているので、情報が漏えいする心配もなく、セキュリティ対策は万全です。
民生児童委員部 統括主任 の本多 由加理氏は、「個人情報を含む民生児童委員の活動情報の管理には高いセキュリティが求められるので、『ウイルス対策ソフトが入っていないが大丈夫か』という問い合わせもありました。また、安全性については理解していても、個人情報の取り扱いは、個人情報保護法をはじめ、区市町村の条例や取り扱う機関ごとに異なっているので、活動で知り得た個人情報を ChromeOS で管理するか否かは、容易に判断できないという現状もあります。私も今回導入するまで、ChromeOS のセキュリティの高さについては十分認識していなかったので、具体的な活用例やその実績がもっと自治体や関係機関に周知され理解が深まれば、活用の幅が広がると感じています」と話します。
東社協では、いかに少ない人的リソースで、効率的に民生児童委員の活動や情報の管理を実現できるかが重要なポイントになります。都民連は、国内で最も多いアカウント数を持っている組織です。日々の運用管理は、それぞれの区市町村の協議会事務局で行いますが、もし何か問題が発生した場合、東社協に連絡して対応する運用になっています。民生児童委員部 藤野 真琴氏は、Google 管理コンソールを利用した ChromeOS の運用管理について、次のように話しています。
「2023 年秋から年末にかけて Google のオフィスで実施されたトレーニングが参加者に好評で、トレーニング後に興味を持ち、使ってみようという人が増えたので、本当に良い機会だったと思っています。ChromeOS の運用管理は、簡単なマニュアルで対応できるので、個人的には容易だと感じました。それぞれの地区によりChromeOS の使い方はさまざまで、利用者も多いのですが、Google 管理コンソールで『全体を見通せている』という安心感があります。また、電源を入れて約 9 秒で ChromeOS が立ち上がるので、すぐに作業を開始できるのも便利です。」
台風の日でも Google Meet によりオンラインで編集会議が可能に
ChromeOS と Google Workspace の利活用を推進するモデル地区に指定されている立川市では、Google Meet や Google カレンダー、Google フォームなどのアプリケーションを利活用した民生児童委員活動の効率化に取り組んでいます。例えば年に 3 ~ 4 回発行している広報誌の編集会議は、以前は市役所の会議室で行っ
ていましたが、この会議に Google Meet と Google カレンダーを活用しています。立川市民生委員・児童委員協議会 会長で、立川市第 3 地区民生委員・児童委員協議会 会長でもある中村 喜美子氏は、次のように話します。
「ある会議の日に台風が来てしまい、参加者が市役所に来ることができなくなったので、急遽 Google Meet によるオンライン会議に変更しました。参加者全員が自宅の Wi-Fi が使える環境でしたので、問題なく編集会議を行うことができました。Google Meet の良いところは、原稿チェックなどの作業でお互いに顔を見ながら会話ができることで、変更や修正を即決、即断できることです。またこれまで会議の案内は、メールやメッセージアプリで連絡していましたが、Google カレンダーを使うことで、招待した全員が事前に出欠を確認できるので本当に便利です。」
また管外研修の情報集約などにも、Google フォームを活用しています。アンケートを作成した民生児童委員は、「Google フォームは、各自で入力するので入力ミスが少なくなりました。アンケート結果は Google スプレッドシートで自動的に集計され、写真の取り込みも容易で、研修の準備を効率化できました。今後、Google フォームを使ったアンケート作成のノウハウを、他の民生児童委員にも広めていくことが大事だと考えています」と語ります。
さらに立川市民生委員・児童委員協議会 モバイルPC活用委員会委員長で、立川市第 6 地区民生委員・児童委員協議会 副会長の萩野 博美氏は、「他社オフィス スイートの資格は持っていますが、Google Workspace は使ったことがありませんでした。そのため当初は戸惑いましたが、協議会の報告に Google スライドを使ってみると操作性が良く、簡単にプレゼンテーションを作ることができました。その際は制限上、動きのあるプレゼンテーションは作れなかったのですが、今後は Google スライドを使った動きのあるプレゼンテーションを協議会の報告や発表などに使っていきたいと考えています」と話しています。
安心かつ楽しんで Chromebook を使ってもらえる取り組みを推進
今後の取り組みについて、萩野氏、中村氏は次のように述べています。
「民生児童委員のみなさんに、ChromeOS を使わなければならないというプレッシャーがあると今後の展開も難しくなります。現状は抵抗感を覚える民生児童委員もいるので、安心かつ楽しんで使える工夫を続けていきたいです。特に活動記録の集計は、民生児童委員全員ができる状態を実現したいと思っています」(萩野氏)
「万が一災害が起きたときなどに立川市の 150 名余りの民生児童委員が Chromebook のカメラを使って写真を撮り、市の職員に送信することで、災害状況を迅速に把握することができます。また一時避難所の様子なども写真を撮って送ることもできます。もし民生児童委員が被災した場合、各班で情報が共有できていれば今後何をすれば良いかを明確にすることもできます。民生児童委員は普段仕事をしている人も多いので、今後さらに ICT 化を進めていかないと民生児童委員になってくれる人も少なくなります。そのためのサポートを、今後 Google の担当者に期待しています」(中村氏)
社会福祉法人東京都社会福祉協議会
1951 年 1 月、東京都における社会福祉事業、その他の社会福祉を目的とする事業の健全な発達、および社会福祉に関する活動の活性化により、地域福祉の推進を図ることを目的に設立された公共性の高い非営利の民間団体。社会福祉に関わるさまざまな課題の解決や、福祉サービスの向上などを目的として、広報・啓発や調査研究、講座・研修、ボランティア・市民活動の推進、権利擁護、福祉人材の確保、施策提言など、幅広い活動を行っています。
インタビュイー
社会福祉法人東京都社会福祉協議会
民生児童委員部 部長
荻野 剛 氏
社会福祉法人東京都社会福祉協議会
民生児童委員部 統括主任
本多 由加理 氏
社会福祉法人東京都社会福祉協議会
民生児童委員部
藤野 真琴 氏
立川市民生委員・児童委員協議会 会長
立川市第 3 地区民生委員・児童委員協議会 会長
中村 喜美子 氏
立川市民生委員・児童委員協議会 モバイルPC活用委員会委員長
立川市第 6 地区民生委員・児童委員協議会 副会長
萩野 博美 氏
東京都社会福祉協議会の導入事例 PDF はこちらをご覧ください。
その他の導入事例はこちらをご覧ください。