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顧客事例

シュッピン:AI が中古カメラの売買価格を自動設定する新システムを Vertex AI の AutoML 機能で実現

2022年8月4日
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Google Cloud Japan Team

新品・中古のカメラなどの買取や販売を行う「Map Camera」などを運営するシュッピン株式会社(以下、シュッピン)は、中古カメラの売買価格を自動設定するダイナミック プライシング システム「AIMD」を開発しました。開発を支援したのは株式会社シグマクシス(以下、シグマクシス)、また AIMD で売買価格の設定を担っているのが Google Cloud の機械学習サービスである Vertex AI の AutoML 機能です。今回は AIMD の開発および運用に携わる担当者の方々に話を伺いました。


利用しているサービス

Vertex AI の AutoML 機能BigQueryPub/SubDataflowCloud StorageCloud RunCloud FunctionsCloud SchedulerCloud TasksCloud LoggingCloud Monitoring


利用しているソリューション

小売業のための Google CloudAI と機械学習のソリューション

中古品市場の特性に合わせたモデル設計で、Vertex AI の AutoML 機能が高精度の価格予測を実現

シュッピンの主力事業であるカメラ事業では、顧客数、取扱い商品数、コンテンツ量が日々増加している一方で、中古商品の買取・販売価格の設定業務は少人数の経験豊富な担当者による人手で行われており、タイムリーな価格改定が難しくなってきているという問題を抱えていました。価格改定業務では、担当者が市場動向や過去の販売データなどに基づいて価格の設定を行いますが、明確なロジックがあるわけではなく、経験豊富な担当者のノウハウなどに依存する部分が大きいという問題もありました。

これらの問題を解決するために、Google Cloud の Vertex AI の AutoML 機能を利用して開発されたのが、ダイナミック プライシング システムの「AIMD」です。AIMD では、過去の買取および販売に関するデータを基にして、AI が自動的に買取価格と販売価格を決定します。AI が決定した価格は人の手による事前チェックを介することなく Web サイトや店舗に反映されます。

シュッピンの執行役員 情報システム本部 本部長 システム開発部 部長で本プロジェクトのプロジェクト リーダーである松崎 真紀子氏は、AIMD の開発に至る経緯について次のように語ります。

「弊社は薄利多売のビジネスモデルではないため、粗利の確保が重要になります。AI を利用して市場動向を踏まえたタイムリーな買取価格と販売価格を予測することで、最大限の粗利額を実現できるという期待がありました。 しかし実際には、AIMD の開発は一筋縄ではいきませんでした。Google Cloud を採用する以前の話になりますが、約 3 年に渡っていくつかのベンダー様と開発に取り組んだものの、期待するゴールに辿り着く現実的なイメージを得ることができなかったのです。」

そこで新たなパートナーとして選ばれたのが、Google Cloud のサービス パートナーであり、シュッピンの基幹システムの構築支援を通じて同社ビジネスへの理解が深いシグマクシスでした。

「シグマクシスさんの提案は過去の買取・販売データの分析に基づいており、弊社のビジネスモデルをよく理解したものだと感じました。特に、それまでの取り組みが AI によって買取価格や販売価格を直接予想するというものだったのに対して、シグマクシスさんの提案は価格ではなく販売最大数を予測した上で、その販売数をベースとして買取・販売価格を調整するものになっており、中古品市場の特性を把握した上で AI ありきではない現実的な解になっていたことが大きなポイントでした。」(松崎氏)

シグマクシスのプログラムマネジメント シェルパ ディレクターである古田 雅俊氏は次のように説明します。

「中古品売買の場合、​販売価格だけでなく買取価格も予測しなくてはならないため、想定される価格の組み合わせをすべて試すやり方では、天文学的な数字になり時間がかかりすぎてしまいます。私たちの過去の経験から、価格を直接予測するのではなく、販売数量を予測した上で価格を説明変数とする方が業務的な適応性が高いということが分かっていましたので、売買される数を予測するモデルとすることで、短時間での価格決定を実現しました。」

AIMD では、価格予測モデルの作成や予測の実行において Vertex AI の AutoML 機能を採用しているほか、分析用データの格納や加工には BigQuery、業務システムとのデータ連携や中間ファイルの格納には Cloud Storage、データ処理の実行基盤には Cloud Dataflow、Dataflow の利用に必要なスクリプトの実行には Cloud Run など、システム全体に渡って Google Cloud のマネージド サービスをフル活用しています。

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<クリックして図を拡大>

Google Cloud を採用した理由について古田氏は次のように語ります。

「今回はリリースまでの期間が 8 か月と短かったこともあり、プロジェクトを成功に導くためには Google Cloud を使うのが一番理にかなった選択でした。処理するデータ量の多さから BigQuery を使う方針は決まっていましたが、その他にも開発速度を重視してサーバーレスのマネージド サービスをフル活用する構成になっています。Google Cloud 上のサービスですべてを完結させるという基本方針をとったことで、非機能要件や冗長化などを自前で考慮する必要がなくなり、短期間でのリリースを実現することができました。」

AIMD の核である価格決定の機能については、買取価格を予測するモデルと、販売価格を予測するモデルの 2 つを構築しており、毎日最新の売買データを読み込ませてモデルを更新することで、タイムリーな価格決定を実現しています。この機能の実装に Vertex AI の AutoML 機能を採用した経緯について古田氏は、「事前検証において複数の AI サービスを使用して結果を比較したところ、Vertex AI の AutoML 機能は精度が高く、コスト面でも安価に運用できることが確認できたことから、採用を決めました」と説明します。

また、8 か月という短期間でのリリースを実現できたことについては、Cloud Dataflow も大きな役割を果たしているとのことです。

「開発にあたっては、PoC(概念実証) を実施しながら、本番でも PoC の成果物を積極的に利用するという戦略をとりました。このプロセスでは Cloud Dataflow が大きな役割を果たしました。Cloud Dataflow では PoC で作成したスクリプトを簡単に本番環境で再利用できたため、要件定義から PoC、設計、実装までのサイクルをシームレスに進められ、開発期間の大幅な短縮に繋がりました。」(古田氏)

AIMD によって販売価格の改定回数が大幅に増加し、セグメント利益 135.7% の急成長を達成

AIMD の導入後、シュッピンのカメラ事業の 2022 年 3 月期の決算短信では、セグメント利益は前年同期比 135.7% と大幅に伸長しました。当初の狙いであった販売価格の改定スピードも大幅に向上しており、その回数は従来の約 6 倍に増加しています。シュッピンでは、商品の販売価格や買取価格が変わった際に、その商品を「欲しいものリスト」に入れているユーザーに対してメールで通知するといった One to One マーケティングも行っています。そのため、価格改定の回数の増加は、そのまま対象商品の売買数の増加に繋がっていると松崎氏は説明します。

「欲しいものリストの商品に対するメール通知は、従来は 1 日あたり数百件だったのに対して、AIMD 導入後は約 4 万件にまで増加しました。このことがダイレクトに売上に繋がったという手応えを感じています。Vertex AI の AutoML 機能で導き出された価格については、営業チームもその妥当性を高く評価しています。人手でのチェックを行わずにそのまま実際の売買に反映させるというのは挑戦的な決断ではありましたが、結果的にそれが価格改定のスピードを上げることに繋がりました。」

現在、AIMD による自動価格改定の対象になっているのは売れ筋商品を中心とした約 1,250 点で、これを今後どのように拡大していくのかが現在の課題だと、シュッピン 情報システム本部 システム開発部 マネージャーの二見 容敬氏は次のように語ります。

「AI による価格決定を行うには、十分な量の売買データが必要になります。今はどの程度のデータが蓄積できたら対象商品に加えることができるのかを模索している段階です。また、直近の売買データしか存在しない新商品についてどうするのかという問題もあります。対象商品の追加や選定に関するプロセスをルーティン化できれば、より効果的に Vertex AI の AutoML 機能を活用できるようになるはずです。」

一方で、今後の拡張性について、二見氏は次のように語ります。

「AIMD は Google Cloud 上にサーバーレスで実装しているため、スペックの増減やパッチの適用といった運用面での負担が無く、有用性を実感しています。Vertex AI の AutoML 機能の性能についてもまだ余裕がありそうなので、対象商品の増加を検討中です。業務システム側に新たに追加されたコンテンツ レコメンド機能に対して AIMD の価格データを渡すという拡張を行いましたが、Google Cloud のサービスだけで柔軟に対応することができました。」

この拡張性やメンテナンス性の高さは、Google Cloud を採用したことで得られた強みのひとつでもあると二見氏は続けます。

「Google Cloud には、AIMD の一連の流れを実現できる、すべてのサービスが揃っていました。将来的に増えていくであろうデータ量や計算量のリソース確保をサービス側に任せられる安心感は、継続的に運用や拡張という点で、ユーザー側にとっての大きな利点と考えます。今回 AIMD のすべての機能を Google Cloud に集約したことで、今後の成長につながる新たなシステム基盤を構築できたという手応えを感じています。」

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シュッピン株式会社

2005 年 8 月設立。カメラ専門の EC サイト「Map Camera」、腕時計専門店「GMT」、レディース腕時計専門店「BRILLER」、筆記具専門店「KINGDOM NOTE」、ロードバイク専門店「CROWN GEARS」の EC サイトを運営している。「価値ある新品と中古品を安心、安全に取引できるマーケットを創造し、社会貢献すること」を理念として掲げ、インターネットの利便性を生かした事業展開を行っている。

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シュッピンが運営する EC サイト

インタビュイー

・執行役員 情報システム本部 本部長 システム開発部 部長 松崎 真紀子 氏

・情報システム本部 システム開発部 マネージャー 二見 容敬 氏


株式会社シグマクシス

(Google Cloud パートナー)


インタビュイー

・プログラムマネジメント シェルパ ディレクター 古田 雅俊 氏


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