NTT コミュニケーションズ株式会社:高度な自然言語処理 API を Google Kubernetes Engine で実現

Google Cloud Japan Team
創立 20 周年となる 2019 年を、10 年先、20 年先を見据えた新たな創業ととらえ、人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造し、社会に貢献することを目指す NTT コミュニケーションズ株式会社(以下、NTT Com)。NTT グループの 40 年以上にわたる自然言語処理技術の研究成果を生かし、2018 年 9 月よりサービスの提供を開始した API サービスである COTOHA API の開発について、AI 推進室の担当課長 荒川 大輝 氏と、竹越 智也 氏に話を伺いました。
利用している Google Cloud サービス:Google Kubernetes Engine、Cloud Memorystore、Cloud SQL、Apigee
一歩進んだコンテナ技術、Google Kubernetes Engine を採用
NTT Com では、2019 年の創立 20 周年を機に、「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する。」という新しい企業理念をうちだしました。新しいタグラインである「Go the Distance.」は、まだ見ぬコミュニケーションの創造を通じて、距離を超えた先にある価値を創り出す、という意味が込められているとともに、時代の変化にあわせ、社会や顧客の期待を超えて、信条を貫き、企業理念を実現する決意も表現しています。
顧客企業のデジタル トランスフォーメーション(DX)実現に貢献する「DX Enabler」として、インターネット事業やそれを支える先進的な通信インフラの展開、ICT の活用による経営課題の解決やスマートな社会の実現などの取り組みを推進。最新の人工知能(AI)を活用したサービスでは、労働人口の減少による人手不足や、顧客とのコンタクト業務の多様化などの業務課題の解決をも目指しています。
そんな NTT Com が提供する AI サービスの 1 つが、自然言語処理技術を利用するための API サービスである Communication Engine “COTOHA API”(以下、COTOHA API)です。COTOHA API では、世界最大級である 210 万語を超える言葉が登録された日本語辞書や、NTT グループ独自の高度な日本語構文解析技術、さらに、単語を 3,000 種の意味属性に分類できる日本語語彙大系を基礎技術に、文脈も踏まえた正確かつ精度の高い自然言語処理を実現しています。
「 COTOHA API は、NTTグループで 40 年以上にわたって蓄積し、精錬した日本語辞書と自然言語処理技術、音声認識技術により支えられています。例えば、お客さまは音声認識と感情分析を利用してお客さまの会話と内容を簡単に可視化することできます。その結果、VOC やコールセンターの応対品質の向上にもつながります」と、アプリケーション&コンテンツサービス部 AI 推進室 担当課長の荒川大輝さんは話します。


COTOHA API の開発プラットフォームとして採用されたのが、Google Cloud Platform(GCP)でした。同部の竹越智也さんは、GCP 採用の経緯をこう振り返ります。「COTOHA API の開発では、コンテナ技術を使う方針で、2017 年末から 2018 年初めごろまでに、いくつかのクラウドサービスを比較検討しました。その当時、コンテナ技術を正式にサポートしているマネージド サービスは GCP だけで、Google Kubernetes Engine(GKE)は起動速度も速く、コンテナ技術に関して一歩進んでいると感じました。」
GKE のメリットを最大限に活用、効率的かつスピーディーな開発を実現
NTT Com では、2017 年 11 月より COTOHA API の検討を開始。2018 年 3 月より GCP を利用した開発をスタートし、2018 年 6 月には β 版を提供、そして 2018 年 9 月に正式リリースしました。プロトタイプの検証や仕様の検討フェーズを経て、延べ 10 名のエンジニアで 3 ~ 4 か月という短期間での開発を実現しています。荒川さんは、「この分野は 1 つの技術で成り立つ領域ではないと考えています。我々が持っている日本語辞書や AI 関連技術、自然言語処理技術などのアセットを、お客さまが他の技術と組み合わせて活用しやすい API としてプロダクト化することがポイントでした。提供までのスピードも重要であり、GCP を利用することで効率的な開発を行うことができました」と話します。
COTOHA API では、API 経由でアクセスすることで、テキスト分析や翻訳、接客対応、マーケティング、ヘルプデスクなどのアプリケーションから、精度の高い自然言語処理を活用することができます。API の構成としては、構文解析などの基本的な仕組みのほとんどを、GKE をベースに開発しています。「COTOHA API では、ユーザー企業がパーツとしてどのように使うかはお客さまの用途によります。処理によっては、瞬間的に負荷が増えるケースも多く、スケーラビリティが非常に重要です。PaaS ベースでの開発も検討しましたが、NTTグループ独自のデータやモデルの組み込みが難しく、エンジン部分に関してはコンテナ技術を使うのが最良の方法だと判断しました。GKE の採用に関しては、Kubernetes を Google が開発しているという期待感もありました。」(荒川さん)
GKE の特性である、ノードの起動時間が速いこと、スケールするときのチューニングがやりやすいこともメリットだったといいます。竹越さんは、次のように話します。「コマンドラインで細かくコンテナを管理できるのも GKE を利用したメリットの 1 つ。オートスケールのためのチューニングは、試行錯誤で少し時間がかかりましたが、フレーバーを選べたので自分たちのエンジンに最適なスケールの設定ができました。CI/CD もやりやすいアーキテクチャでした。」
また、COTOHA API は、3 か月に 1 度程度アップデートされています。IaaS を利用した構成に比べ、GKE では Blue/Green デプロイが容易となっており、アップデートの準備にかかる負荷も、リリースに対するリスクも軽減できます。「体感としてデプロイのためのコストが半減している気がしています。」(荒川さん)
さらに、2016 年に Google の傘下になった Apigee が、日本で初めて GCP 上で稼働したのが COTOHA API でした。現在では Apigee と GCP との連携も進み、データベースを Apigee から管理できるようになっています。「今後、さらに連携を密にすることで、GCP の各サービスを、Apigee のエクステンションとして利用できるようになることを期待しています。これにより、さらに API の管理が簡単になります。」(竹越さん)


一方で、NTT Com ではクラウド技術について GCP のサービスと連携を進めています。荒川さんは、「NTT Com ではクローズド ネットワークの接続や、共有型と専有型を用途に応じてハイブリッドで提供できるプライベート クラウドを提供しており、Google Cloud のプレミアパートナー及び Anthos のサービス パートナーとして GKE On-Prem を活用したハイブリッドクラウド ソリューションの提供も進めています。既存の環境と同じく閉域でセキュアに COTOHA API を利用したいというケースもありますが、将来的にこのようなケースでは NTT Com と Google Cloud を使い分け、あるいは組み合わせることにより、お客さまの環境に応じたソリューションを幅広くご提供していきたいと考えています」と話します。
「私たちは、COTOHA Everywhere というコンセプトのもと、自然言語処理や音声認識技術でお客さまのビジネスも拡大し、人が本来行うべき仕事や生活の時間が生まれる、そんな未来を目指しています。その実現に基盤テクノロジーとして今後も Google Cloud に期待しています。」(荒川さん)




(写真右から)
アプリケーション&コンテンツサービス部 AI 推進室 担当課長 荒川 大輝 氏
アプリケーション&コンテンツサービス部 AI 推進室 竹越 智也 氏
日本電信電話株式会社(以下、NTT)の持株連結経営移行に伴い、長距離・国際・インターネット通信を担う会社として 1999 年に設立。インターネット サービスからグローバル ネットワークサービス、AI/IoT などを活用したスマート事業まで、幅広い事業を展開。2019 年 7 月のグローバル事業の統合により、さらにサービスメニューを拡充し、サポートエリアを拡大。現在、国内 14 拠点、海外 70 以上の国や地域の拠点で、顧客企業のグローバルビジネスをサポート。190 以上の国や地域にネットワークサービスを展開。
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