MIXI: 研修内容の社外公開や技術カンファレンスなど、MIXI の DevRel 戦略から学ぶ、これからの人材育成と獲得

Google Cloud Japan Team
今や、すべての企業が共通して抱えていると言っても過言ではない人材確保の悩み。もちろんそれは国内有数のテック企業として知られる株式会社 MIXI(以下、MIXI)も例外ではないと言います。そうした中、同社がどのように人材を育成・獲得しているのかを、取締役 上級執行役員 村瀨 龍馬氏と、村瀨氏のもとで採用・技術広報を担う CTO 室 DevRel(Developer Relations)グループの喜多 功次氏に伺いました。
利用しているソリューション:
Google Cloud トレーニング, Advanced Solution Lab
研修内容を広く公開することで能動性を引き出し、注目を集める
2018 年に経済産業省が発表した『DX レポート』において警告された「2025 年の崖」。2025 年前後に国内企業の競争力が大きく低下し、最大 12 兆円 / 年の経済損失が発生するというショッキングな内容が話題になりました。その理由の 1 つとして挙げられているのがエンジニアの絶対的な不足です。同レポートでは 2025 年に約 43 万人の IT 人材が不足すると予想しており、その兆候はエンジニア獲得競争の激化というかたちですでにはっきりと表れています。
もちろん企業側もそうした状況を手をこまねいて見ているわけではありません。自社の競争力を向上させるべく社内エンジニアを育成していく試みや、優秀なエンジニアを自社に呼び込むための DevRel 活動を多くの企業が加速させています。そうした中、MIXI ではどういった人材育成・獲得を行っているのか。取締役の村瀨 龍馬氏 は次のように説明します。
「育成については現在、新卒エンジニアを中心に幅広い研修を行っているほか、非エンジニア向けにも AI の研修などを行っています。そのうえで、中途採用のエンジニアについても "今さら聞けない" ことを学び直してもらったり、MIXI が注目している技術について知ってもらうという観点で研修を開放中です。私たちは、こうした育成の取り組みが業務に必要な技術や知識を身につけるだけでなく、自分自身のキャリアを考えるきっかけになってほしいと考えています。」
そのためには能動性を社員から引き出すことも重要だと村瀨氏は言います。そこで同社では研修内容を幅広く設定。多くの社員が興味を持つ AI のような最新トレンドをしっかり押さえつつ、デザイナーだけでなくエンジニア向けにも UI・UX の研修を用意したり、全社的にデータ マネジメントの研修を実施するなど、社員の視野を広げ、将来に向けた選択肢を増やす、さまざまな工夫を行っています。


「とは言え、あれもこれもと増やしていくわけにはいきません。最新の技術動向をしっかり押さえつつ、研修期間が長くなりすぎないよう、毎年見直しをし続ける必要があります。例えば基本のアプリ開発において、以前は iOS、Android ネイティブで作れる人を増やそうとしていたのですが、現在はクロス プラットフォームが当たり前になってきていますから、モバイルアプリ用のフレームワーク "Flutter" の研修を新たに取り入れるなどといった転換を行っています。そのほか、最近ではインシデントの発生時から解決までの対応を行うインシデント ハンドリングの研修も追加しました。今春には間に合いませんでしたが、次回の研修ではリアルタイム コミュニケーションについても強化する予定です。」(村瀨氏)
なお、MIXI ではこうした研修の資料や動画を無償で公開。多くの企業が優秀なエンジニアの獲得に苦労している中、MIXI の技術力や方向性をアピールすることで、「まずは興味を持ってもらえたら」(村瀨氏)という狙いがあると言います。CTO 室 DevRel グループの喜多 功次氏によると、こうした取り組みはつい最近始まったものではなく、少なくとも 10 年以上前から行われていたとのだとか。
「私が把握しているだけでも、2013 年からネット上に研修の資料を公開しています。2020 年からは研修がリモート化したことを受けて動画の公開も開始しており、より多くの方に見ていただけるようになりました。中でも多く見られているのは バージョン管理システム "Git" について解説した研修動画ですね。単なる使い方だけでなく、より深い仕組みの部分まで解説し、難しいトラブルにも対応できるようにしたことが好評だったようです。」
さらに 2020 年からは新人研修の一環として、Google Cloud 認定トレーニングを採用。自社内に十分な知見を持つエンジニアがいるにもかかわらず、あえて外部の講座を導入するという判断を下しました。
「私はクラウドを体系的に学ぶためには、クラウド事業者が持つトレーニングを使うのが一番だと考えています。仮に配属先で別のクラウドを使っていても、基本的なところが押さえられていれば技術の転用は容易ですから、Google Cloud に優れたトレーニング プログラムが用意されているのはとてもありがたかったです。具体的にはクラスルーム形式でのトレーニングや Skills Boost(旧 Qwiklabs)などを利用させていただきました。また、それとは別に 2019 年には Advanced Solutions Lab (ASL)も受講しました。MIXI における AI 導入の着火剤になったと感じており、機会があればまたぜひ受講させていただきたいですね。」(村瀨氏)
そして 2023 年 3 月には MIXI 初となるエンジニア向け技術カンファレンス「MIXI TECH CONFERENCE 2023」を 3 日にわたって開催。カンファレンスは DevRel グループ主導で運営されたものの、村瀨氏はこれを採用目的というよりも、技術発表の場として考えていたと言います。
「エンジニアの発表、登壇の機会を増やしていきたいというのがまず 1 つ。特に QA(品質保証)のようになかなか表に出る機会のないメンバーがその取り組みや技術をアピールできる舞台を用意したかったのです。そのうえで、昨今の技術カンファレンスがテーマを細分化する傾向にある中、多様なサービスを提供する MIXI ならではの総合的な技術発表会をやってみたかったという思いもありました。ただ、結果としては思っていた以上に MIXI に興味を持ってくださる方が多くいらっしゃって、うれしかったですね。」(村瀨氏)
「DevRel グループとしては、研修とカンファレンスを通じてさまざまな分野の発表資料が蓄積されたことに価値を感じています。一連の取り組みから MIXI に興味を持ってくださった人と採用担当者が面談した際、関連する情報をすっと取り出せるようになるなど、採用観点でも大きなメリットが生まれています。」(喜多氏)
「Google Cloud は MIXI にとって最高のパートナー」
MIXI が高品質なサービスを生み出し続けていくために、今後もたゆむことなく継続していくことが求められる人材育成・獲得の試み。DevRel グループの設立や、Google Cloud との協力関係など、一連の取り組みの成果について、村瀨氏らは次のように語ります。
「トレーニングを経て成長したエンジニアが、何かを始めるにあたってまず呼び出される、戦力としてカウントされる "1 人目のエンジニア" と言える存在になっており、それをさまざまな領域で量産できていることが何より大きな成果だと考えています。また、受講者側もとても楽しそうで、講習から良い刺激を受けていることが伝わってきます。」(村瀨氏)


「受講した社員から、同じチームのメンバーに講習を受けさせたいという声も上がるなど、自身が成果を強く感じていることがわかります。今後はそうした声も踏まえ、さらに受講者を増やしていきたいと考えています。何か技術が必要になってから受講するのではなく、もう少しゆるく、興味があるから受けたいという社員にもトレーニングの場を提供していきたいですね。それによって MIXI 全体の技術力を高めていくことが、会社として目指すところなのではないかと考えています。」(喜多氏)
「トレーニング中の和気あいあいとしたフランクな雰囲気なども含め、Google Cloud と MIXI は極めて親和性の高い、最高のパートナーだと感じています。今後、これまで以上に多くのことを教えていただきたいですね。特に Google Cloud のトレーニングから "教え方" も学び、研修で得た知見を社内に広めていくことに取り組んでいきたいです。」(村瀨氏)


株式会社 MIXI
1999 年設立。2004 年にリリースした SNS『mixi』で事業規模、知名度を劇的に伸長させ、現在は、「デジタルエンターテインメント領域」「スポーツ領域」「ライフスタイル領域」の 3 領域でコミュニケーション サービスを提供する。2022 年 4 月にコーポレート ブランドをリニューアルし、ロゴも一新させ、同年 10 月には社名表記を「ミクシィ」から「MIXI」に変更。従業員数は 1,556 名(連結・正社員のみ。2023 年 3 月末現在)
インタビュイー
・取締役 上級執行役員 開発本部 / デザイン本部 / セキュリティ室担当
村瀨 龍馬 氏
・開発本部 CTO 室 DevRel グループ
喜多 功次 氏
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