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顧客事例

キッツ: 旧分析システムで 1~2 時間かかっていた需要量算出が BigQuery を採用した K-DAP で 20~30 秒に短縮

2024年3月7日
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Google Cloud Japan Team

国内トップクラスのシェアを誇り 、世界でも有数の総合バルブメーカーである株式会社キッツ(以下、キッツ)。同社はデジタルを活用することで、迅速かつ柔軟に社会環境の変化に対応し、業務改善を加速させるビジネス変革(BX)の推進を目的に、データ活用基盤 K-DAP(KITZ Data Analytics Platform)の構築、および従来の基幹システム SAP ERP Central Component(以下、SAP ECC) のサポート終了に伴う SAP S/4HANA の移行に Google Cloud を採用しています。K-DAP 構築プロジェクトと SAP 移行プロジェクトついて、執行役員をはじめ各プロジェクトの責任者、担当者にお話を伺いました。

利用しているサービス:
BigQuery, Cloud Storage, Compute Engine

利用しているソリューション:
Data Analytics, Data Warehouse Modernization

Google 社内も含め、データ分析で 10 年以上の実績がある BigQuery を採用

2021 年に会社設立 70 周年を迎えたキッツは、バルブをはじめとする流体制御用機器、およびその付属品の製造、販売を行う総合バルブメーカーです。グループ 34 社、社員数約 5,300 名でグローバルに展開。主力のバルブ事業以外にも、伸銅品事業やホテル事業なども手掛け、2022 年 2 月には長期経営ビジョン「Beyond New Heights 2030『流れ』を変える」を公表し、目まぐるしく変化する社会環境の中で、2030 年に向けたあるべき姿を掲げています。

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執行役員 IT 統括センター長の石島 貴司氏は、「約 70 年間、大きな変化のなかった業界ですが、VUCA(Volatility: 変動性、Uncertainty: 不確実性、Complexity: 複雑性、Ambiguity: 曖昧性)の時代といわれる現在、予測不能な市場やお客様のニーズの変化に迅速かつ柔軟に対応することが求められています。そのためには勘と経験に頼るのではなく、徹底的にデータの分析を行い、事実に基づいて次のアクションにつなげるデータ ドリブン経営が重要になります」と話します。

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キッツでは、2015 年にデータ ウェアハウス(DWH)製品を導入し、データ分析を行っていましたが、利用にあたりいくつかの課題を抱えていました。IT 戦略企画部 部長の藤森 正樹氏は、次のように話します。「データ活用では受注や発注情報、実績など、会計につながるすべての物流データを活用することが必要でしたが、導入していた DWH 製品は、利用できるのが構造化データだけで、非構造化データが利用できないことが課題でした。」

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また BX 推進部の小澤 拓也氏は、「DWH 製品は、データの収集や加工がブラック ボックスで、新たに項目を追加したり、デザインを変更したりする場合、開発ベンダーに依頼することが必要でした。そのため時間と工数、コストがかかり、できあがったときには、すでに変更が必要で使えないことが多く、さらに大量のデータを分析したい場合は BI ツールの制約により、ツールがフリーズして必要なデータを抽出できないことが課題でした」と話します。

そこで構造化データはもちろん、非構造化データも含め、大量のデータをスムーズかつ迅速に分析するためのデータ分析基盤 K-DAP(KITZ Data Analytics Platform)を構築することを決定。2020 年より検討を開始し、2021 年から IT 部門も交えて複数のクラウド サービスを調査した結果、Google Cloud を選定し、約半年かけてトライアルを実施。Google Cloud を採用した理由を BX 推進部 副部長の藤澤 英之氏は、次のように話しています。

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「最大の決め手は BigQuery の存在でした。トライアルの結果、BigQuery は最も安定しており、高いパフォーマンスを発揮したことを評価しました。分析からアクションまでつなげるデータ活用のためには、大量のデータの加工が必要で、クエリの内容に合わせて柔軟かつ迅速にスケールできる環境があること、Google 社内での使用も含め、すでに 10 年以上の実績があること、データ基盤を展開していく中でコストを抑えてスモール スタートできることという 3 つのポイントを評価しました。」

K-DAP に BigQuery を採用したことでデータ分析のスピードが大幅に向上

2022 年 10 月より本格的な利用が開始された K-DAP は、基幹システムである SAP ECC や各種データベース、ローカルデータなどのオフィス オートメーション(OA)データを、Compute Engine 上で稼働する ETL ツールにより、Cloud Storage で構築されたデータレイクに取り込み、データレイク上で加工して、分析用標準化データとして BigQuery に蓄積され、さらに目的別データとして別の BigQuery に分類されます。この目的別データをデータ活用環境から利用して、集計・平均、予実分析、要因分析などを行い、次のアクションにつなげています。

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IT デジタルプラットフォームグループの芦川 昂氏は、「現在、必要なデータはシステム部門やパワーユーザーが収集し、BigQuery に取り込んでいます。しかし将来的には、データ分析の担当者自身が必要なデータを収集し、加工して BigQuery に取り込み、可視化できる仕組みにしていくことを目指しています。また現状、分析対象のデータは OA データだけですが、今後はファクトリー オートメーション(FA)データや外部データなども BigQuery に取り込んで、生産ラインを分析し、改善につなげることも視野に入れています」と話します。

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Google Cloud を採用した効果を藤澤氏は、次のように話します。「K-DAP により、データ分析のスピードが大幅に向上しました。これまで使っていた分析システムでは、部品表から需要量を算出するための処理に 1~2 時間かかっていましたが、BigQuery は、同じ処理が 20~30 秒で終わったので本当に感動しました。また BigQuery は操作が容易で、データ分析の改善ための時間も、工数も、コストも大幅に低減できたので内製化が可能になり、現場からの『こんな分析がしたい』といった要望にも迅速かつ柔軟に対応できるようになりました。内製化の実現により、1 年で 200 以上のテーブルを新たに作成しています。」

今回、K-DAP の設計から構築までをサポートしたのは、京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)でした。KCCS をパートナーに選定した理由を芦川氏は、「メーカーである京セラ株式会社のデジタル変革(DX)をサポートした経験や実績、ノウハウが生かせることを期待して KCCS にサポートを依頼しました。K-DAP でやりたいことを十分に理解し、設計から構築までの最適な構成を一緒に考えてもらえたのでとても助かりました。今回は OA データの利用のみでしたが、今後は IoT 技術を活用した FA データの分析の実現に関してもサポートを期待しています」と話しています。

K-DAP との高い連携性を評価して SAP S/4HANA の基盤に Google Cloud を採用

キッツでは、基幹システムとして SAP ECC を利用していましたが、2027 年にサポートが終了することから、SAP S/4HANA に移行することが必要でした。 SAP ECC の開発・運用インフラとして他社のクラウドサービスを利用していましたが何点か課題があったため、いくつかのクラウドサービスを検討することになりました。その結果、Google Cloud が候補に上がったのです。Google Cloud を採用した最大の理由は、K-DAP との高い連携性でした。K-DAP と同じ Google Cloud を利用すれば、これまで以上に連携が容易になります。

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また IT デジタルプラットフォームグループ グループ長の守屋 仁氏は、次のように話します。「Google Cloud への移行を決めた理由は QCD(Quality: 品質、Cost: コスト、Delivery: 納期)の最適化です。これまで複数のクラウド サービスを利用して、業務システムを運用してきましたが、マルチクラウドの運用は負荷が高いので、できる限り集約して運用負荷を軽減したいと思っていました。クラウドを集約することで、年間数億円のコスト削減が期待できます。また事業継続計画(BCP)の観点から、ディザスタ リカバリ(DR)環境を、他社に比べて安価で実現できるのも魅力でした。」

現在、他社のクラウド サービスで運用している SAP ECC を Google Cloud 上の SAP S/4HANA に移行する作業は、グループ会社である株式会社キッツエスシーティー、およびベトナムの拠点で実施されており、2025 年のリリースを目指しています。その後、 2027 年の SAP ECC のサポート終了までに、全社の基幹システムが Google Cloud 上で稼働する SAP S/4HANA に移行する計画です。さらに 2024 年には、IT 環境の運用・保守業務を外部のベンダーにアウトソーシングすることも検討しています。

今後の取り組みについて藤森氏は、「これからも BX 活動を推進するためには、IT の力でビジネスを支えていくことが不可欠です。IT 環境の運用・保守業務をアウトソーシングすることで、運用・保守業務に必要だった工数を BX 活動に振り向けることができます。また K-DAP を中核としたデータ活用によるデータ ドリブン経営の実現、自動化・効率化に向けたローコード / ノーコード開発の推進、Vertex AI や Gemini などの生成 AI を活用した BX 推進という 3 本柱に取り組んでいきます。この 3 本柱の推進においても、Google Cloud の的確な提案やサポートを期待しています」と話しています。


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株式会社キッツ
1951 年 1 月、株式会社北澤製作所として設立。1984 年、東京証券取引所 1 部に上場し、1992 年に現在の社名に変更。「わたしたちは、流体制御技術と材料開発で社会インフラを支え、ゆたかな地球環境と持続可能な未来を創造していきます」という企業理念に基づき、バルブ、流体制御機器、および付属品の設計から鋳造、加工、組み立て、検査、出荷までの一貫した生産体制を確立し、グローバルに事業を展開。世界 17 か国に拠点を置き、50 か国以上への販売実績を持つ。

インタビュイー(写真左から)
・執行役員 IT 統括センター長 石島 貴司 氏
・IT デジタルプラットフォームグループ 芦川 昂 氏
・BX 推進部 副部長 藤澤 英之 氏
・IT デジタルプラットフォームグループ グループ長 守屋 仁 氏
・BX 推進部 小澤 拓也 氏
・IT 戦略企画部 部長 藤森 正樹 氏


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