データ活用の民主化で小売 DX を推進するフェズの挑戦
Google Cloud Japan Team
編集者注: Google Cloud を利用する企業のリーダーの皆様にお話を伺い、想いを語っていただく Google Cloud Leader’s Story。連載 20 回目となる本記事では、株式会社フェズ(以下、フェズ) の開発本部長である青野 紳三郎氏に話を伺いました。
データとテクノロジーで小売業界の未来を創造するフェズは、Google Cloud を活用し、購買データに基づいた売上向上を実現する様々なソリューションを提供しています。小売業界特有の購買データを保有し、データ活用の民主化を促進することで、顧客の解像度を高めてマーケティング活動を進化させている業界のトップランナーです。
今回は、フェズの開発本部長である青野 紳三郎氏に、これまでのキャリアや、Google Cloud に決めた理由、フェズの未来について話を伺いました。
利用しているサービス:BigQuery, Looker, Cloud Run, Cloud SQL, Security Command Center,Cloud Storage
利用しているソリューション:データアナリティクス、サーバレス、オープンソース データベース
データとテクノロジーで小売業界の未来を創造
株式会社フェズ(以下、フェズ)は、情報と商品、そして売り場を網羅的に把握し、リテールテック産業の新たなエコシステムを構築することを目指しています。小売企業から提供された購買データを活用し、小売 DX 領域に特化した事業を展開し、そのデータを広告・販促領域(リテールメディア)でマネタイズすることで、小売企業に還元する仕組みを構築しています。
フェズのビジネスモデルの中核を成すのは、購買データに基づく売上向上です。この価値軸を基盤に、様々なソリューションを開発・提供しています。競争の激しい市場において、フェズは独自の強みを持っています。それは、小売業界特有の購買データソースを保有していること、そしてそのデータを具体的な施策に落とし込めるソリューション力です。例えば、消費者の購買履歴に基づいたターゲティング広告や、広告効果測定など、実効性の高いソリューション提供が可能です。商品数の増加や顧客ニーズの多様化、人口減少といった社会変化に対応するために、One to One マーケティングを実現するデータインフラの構築を支援しています。
Google 出身、青野氏の挑戦:データで小売業界の未来を拓く
Google で Google ショッピング等を担当していた青野氏は、EC サイトのエコシステム構築に携わる中で、消費者の購買行動を分析し、オンラインとオフラインの購買体験を繋ぐ重要性に着目したと言います。より消費者に近い場所でデータビジネスを展開したいという思いから、Google を退職。スタートアップのフェズに参画しました。「多種多様なチャレンジをしている同期が多く、とても刺激になった」と語る青野氏。大企業からスタートアップへの転身には、不安は全く無かったと言います。
Google でビジネスサイドを経験した青野氏が、フェズでは開発を統括する理由。それは、日本における「ものを作る側」への優秀な人材の不足という課題意識があるからです。ビジネスサイドの経験を活かし、ものを作る側に自ら飛び込むことで、ビジネスの民主化を促進したいと考えています。技術的なキャッチアップは、周囲の専門家に質問したり、自らプロトタイプを作成するなど、積極的に行動することで実現。ビジネスサイドと開発サイドの橋渡し役として、データとテクノロジーで小売業界の未来を創造していきます。
Google Cloud はデータ活用における最強のパートナー
フェズの主要サービスでは Google Cloud が活用されています。その選定理由は、データ活用のインターフェースの柔軟性と多様性です。元々他社製品を利用していましたが、データ量の増加に伴い、導入コストの低さから Google Cloud への移行を決定しました。「その他にも、スプレッドシートや Ads Data Hub など、他の Google アプリケーションとのシームレスな連携は、フェズのビジネスモデルと非常に相性が良かったです」と青野氏は語ります。
Google Cloud の活用で特にメリットを感じているのは、SQL を使うなら BigQuery、API を使うなら Looker など、リテラシーに応じて最適なインターフェースを選択できることだと青野氏は言います。BI ツールを開発・提供するフェズにとって、ユーザーのリテラシーに合わせた柔軟な対応は不可欠です。Google Cloud は、多様なインターフェースとデータベースを提供することで、データ活用の民主化を促進し、フェズのビジネスを強力にサポートしています。
さらに、BigQuery のデータ クリーンルームも大きなメリットです。データ共有におけるセキュリティ懸念を解消し、クラウド内での安全なデータ共有を実現しています。これにより、データ活用に関する意思決定が迅速化され、小売業界におけるクラウド化を推進する要因となっています。
顧客の解像度を高め、マーケティング活動を進化させる
フェズは、KGI 達成にコミットし、売上を最大化するための施策に注力しています。直近のビジョンは「顧客の解像度を高める」こと。消費者の多様化ではなく、商品に対するニーズの多様化に着目し、消費者が商品に何を求めているのかを言語化することを目指しています。
現在、購買データは保有しているものの、購買データ以外で消費者を理解できていないことが課題だと青野氏は言います。今後は、アンケートなどの他のデータソースも活用し、顧客の解像度を高めていく計画です。例えば、ある消費者は歯磨き粉は安いものを買う一方で、ドリンク剤は高価なものを購入するという購買行動があるとします。この背景には、健康に対する意識の高まりや、疲れに対するケアなど、様々な要因が考えられます。フェズは、このような個々のニーズを捉え、よりパーソナライズされたマーケティング活動を実現することを目指しています。
さらに、生成 AI を活用し、商品説明文などから属性を抽出し、クラスタリングすることで、消費者のセグメント化を図る計画です。これにより、より効果的なターゲティング広告や、パーソナライズされた商品提案が可能になります。フェズは、データとテクノロジーを駆使し、マーケティング活動を進化させることで、小売業界の未来を創造していきます。
フェズの未来、そして Google Cloud への期待
最後に、青野氏に会社の展望と Google Cloud に対する期待についてお伺いしました。
組織作りにおいては、技術を活用し、人々の課題解決に貢献することに重点を置いています。生成 AI の登場により、コーディングや実装だけの価値は低下しています。だからこそ、プロトタイプを用いて試行錯誤を繰り返しながら、迅速にプロダクトを開発できる組織作りが重要です。エンジニアだけでなく、誰でもプロダクトの開発に参画できる環境を整備し、開発サイクルを高速化することで、競争優位性を築きたいと考えています。
Google Cloud には、リテラシーの低い人でもクラウドを活用できるような仕組み作りに期待しています。現在、Google Cloud を使っているのはリテラシーの高い人や、エンジニアなどが中心だと思いますが、非エンジニアも含めたより多くの人がクラウドの恩恵を受けられるよう、ナレッジの共有や、ユーザー同士のコミュニティ形成をもっともっと促進していってほしいと思います。
フェズは、データとテクノロジーを駆使し、小売業界の未来を創造していきます。Google Cloud と共に、データ活用の民主化を推進し、より良い社会の実現に貢献していくことを目指します。
株式会社フェズ (Fez Inc.)
2015 年 12 月に設立。「情報と商品と売場を科学し、リテール産業の新たな常識をつくる。」をミッションに、あらゆるデータを組み合わせて科学し、リテール産業の成長を支援することを目指す。リテールデータプラットフォームである「Urumo(ウルモ)」を中心に、分析、商談、広告ソリューションなどを展開している。
インタビュイー
株式会社フェズ 開発本部長 青野 紳三郎氏