ビーサイズ株式会社の導入事例 : BoT が人に代わって見守る、位置情報見守りサービス
Google Cloud Japan Team


家電ベンチャーのビーサイズ株式会社は、2017 年 4 月に位置情報を活用して子供を見守る AI ロボット「GPS BoT」をリリース。 GPS だけでなく、携帯電話基地局や周辺の WiFi アクセスポイントから、より正確な位置情報を特定するとともに、Google Maps APIs で使いやすい UI/UX を実現。リーズナブルな価格もあいまって発売開始から半年間で 5,000 回線を超え、さらに成長を加速させています。この GPS BoT 開発にあたってGoogle Maps APIs をどのように活用したか、ビーサイズ株式会社代表の八木さんにお話をお伺いしました。


代表/デザインエンジニア
八木啓太さん
■ 利用しているサービス
Google Maps APIs
■ ビーサイズ株式会社
ギリシャ哲学において、学問・道徳・芸術の追求目標として、人間の理想とされる「真・善・美」。この言葉を理想とするモノづくりを手がけるべく、 2011 年 9 月に設立された家電ベンチャー。社名は、3 つの概念の頭文字 “B” “si”“ze”から命名。目下、BoT により人々の生活を察して暮らしをサポートするプラットフォームを開発しており、その第 1 号のサービスとして「GPS BoT」をリリースした。
Geolocation API を採用し、複数の測位エンジンで位置を特定
2017 年 4 月、テレビ番組で紹介されて人気に火がついた見守りサービス「GPS BoT」。人気の秘密は、生活に安心をもたらす UX にあります。保護者が遠隔で子供を見守るのでなく、BoT が子供を見守り、何かあれば教えてくれるという UX は顧客から高く評価されています。シンプルで簡単、高い見守り性能をもちながら、リーズナブルで明瞭会計(端末 5,800 円、月額 480 円・定額通信料含む)であることもあいまって、口コミで急拡大しているといいます。「GPS BoT」は、5cm×5cm×1.9cm の BoT 端末と内蔵セルラー回線、クラウド、スマートフォンアプリで構成。BoT 端末は、一般的な GPS 電波に加え、周辺の WiFi アクセスポイントの電波や、携帯基地局の電波もセンシングしてクラウド上で位置を特定する「高精度トリプル測位エンジン」を搭載。これにより、GPS 電波の届かない屋内や地下の位置特定も可能としました。日本中をカバーする携帯電話回線に自動接続するので、BoT 端末を子供のランドセルなどに入れるだけで、どこにいても現在地を一定間隔で発信し続けます。保護者のスマホアプリでは、Google マップ上に子供の現在位置を数分に 1 度の間隔で表示。移動経路も一目でわかります。本製品がこれまでの見守りサービスと大きく異なるのは、保護者が子供の位置をいちいち手動で呼び出す必要がなく、常にクラウドで位置を把握し続けているということ。その行動ログから、自宅や学校、いつも通る通学路など、生活パターンを学習し、自動的に特定します。登下校や帰宅などの通知はもちろん、いつもの経路から外れているなど、異常検知も実装中とのこと。
「本サービスは、保護者に代わって BoT が自動でお子様を見守ることを前提に開発しました。そもそも保護者としては子供が安全であってほしいだけで、常時、見張っていたいわけではありません。誤解を恐れずに言えば、“見守らなくてもいい”サービスこそ私たちが実現させたいことなのです。BoT がお子様につきそい、保護者に代わって見守る。そういうサービスを目指して開発しました。」(八木さん)


ユーザーが Google マップの UI/UX に馴染んでいることが大切
同社が Google Maps APIs を採用した理由を、八木さんは次のように説明します。「大きく 2 つあります。1 つは、Google マップには圧倒的に多くのユーザーがいて、 UI/UX に馴染んでいること。採用する側にはとてもメリットになります。もう 1 つは、 Geolocation API の存在です。」
Geolocation API は、モバイル端末が検出する携帯電話の基地局や WiFi ノードの情報に基づいて、その位置と精度半径を返す API。「GPS BoT の Geolocation エンジンは 3-4 種類を検討しましたが、Google のものが規模的にも最も信頼性があると判断しました。」
さらに、ストリートビューの機能を活用して子供がどんなところにいるのかを確認できることも保護者にとって一つの安心材料となっているようです。そのほか、Google Maps JavaScript API と Google Maps Android API/Google Maps SDK for iOS を利用しています。
「主なユーザーは、ママやパパなどの保護者。ギークに向けたガジェットではないため、できるだけ“テクノロジー感”を意識させず誰でも簡単に使えるものにすることにこだわりました。これらの API を裏側で活用し高い機能を実現する一方で、それを感じさせない自然な UI/UX が実現できたと自負しています。」
本システムは、Google Maps APIs 関連の開発に数多くの実績を有する株式会社ゴーガに協力を要請。「ゴーガさんの位置情報サービスに関する知見のおかげで、優れた UX の実現ができました。」と八木さんは評価します。
ユーザーが難なく使いこなせると高評価
本サービス開発の最大の課題は、位置を特定する精度と頻度でした。「測位精度の高さは至上命題として、サービスリリース後も日々改善を続けています。BoT 端末の内部ソフトウェア、サーバーサイド、スマホアプリをそれぞれアップデートし、ノイズ除去フィルタや補正アルゴリズムを精緻化するなど『高精度トリプル測位エンジン』のチューニングを続けています。」測位頻度は、最短で 1 分に 1 度。見守りサービスとしては圧倒的な高頻度を実現しています。一方で、測位を行うほどに BoT 端末のバッテリーを消費することになり、バッテリーの持ち時間とのトレードオフになります。このため、状況を判断し、必要性に応じて動的に頻度を変えるなど、見守り性能とバッテリーの持ちのバランスを最適化しており、改良もすすめています。本サービスの顧客からの声も多数寄せられるといいます。
「『これまで使っていたサービスに比べて、子供がどこにいたかがすぐ分かる』ですとか、『駅や学校についたことなども通知してくれるため、安心して送り出せる』『忙しいなかでも状況がわかり生活に安心が加わった。大変重宝している』といったお声をいただきます。作り手冥利に尽き、大変光栄でうれしいですね。ある事例では、子供が学校に行ったのにアプリに移動がないと思ったら、BoT 端末をご自宅に忘れていた。GPS BoT が安心を支えてくれていたことを改めて感じた。など、期せずして本サービスの有効性が確認できたというケースもありました。」
子供が下校したタイミングがわかることで、保護者が途中で出迎えるといった使われ方もされているといいます。
Google マップに関しては、ユーザーは難なく使いこなしているようで、まさに文句なしの太鼓判だと八木さんは評価しています。リリース後から、学校や自治体、法人などから「複数端末を一元みまもりしたい」という要望が多数寄せられているとのこと。「現在、Web 版の一元管理 SaaS を開発しています。」と八木さん。また、新 BoT サービスとして、屋内で高齢者を見守る BoT や、営業車などの車載用 BoT などの開発を進めています。
「例えば車載用 BoT の場合、車は車道を走るため、Google Maps Roads API が活用できます。より正確に移動経路をトレースしたり、目的地までの到着予測や渋滞予想などにも活用が見込めます。運転や航行に関するオートレポーティングや自動車の管理保守などにも活用できます。」また「IoT/AI の活用を進化させることで、半歩先の未来を予測して機会を捉えたり、注意を促したりできます。 BoT が、頼りになる相棒のように、人生や事業を支える存在となるよう育てたいですね。」(八木さん) 同社のサービスがどう発展するか、楽しみです。


(右)Google マップのストリートビューで、子供の移動している状況を確認 (子供が実際に移動している画像ではありません)
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