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顧客事例

ALGO ARTIS:SDGs との関わりが強いエネルギー分野の業務最適化における AI 活用を Google Cloud で支援

2022年6月8日
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Google Cloud Japan Team

社会基盤を支える現場の運用を AI によって最適化することを事業の目的とする株式会社 ALGO ARTIS(以下、ALGO ARTIS)。重厚長大産業に特化した運用計画の高度最適化 AI ソリューションのインフラとして、Google Cloud を採用しています。SDGs(持続可能な開発目標)との関わりも強い、エネルギー分野における AI 活用の意義や具体的な取り組み、今後の展望などについて、同社取締役 / VPoE に話を伺いました。

利用しているサービス:

Cloud EndpointCloud RunVertex AICloud FirestorePub/Sub

高度最適化 AI ソリューションで部分最適ではなく全体最適を目指す

現在、エネルギー分野では、いかに脱炭素化を進め、カーボン ニュートラルを実現するかが大きな課題となっています。たとえば電力業界では、火力発電による安定供給を前提としつつも、再生可能エネルギーなどへのシフトを通し、現在 7 割以上といわれる電源構成に占める火力発電の割合を下げていく取り組みを推進しています。

ALGO ARTIS では、エネルギー分野をはじめ、製造業や化学業界などのサプライ チェーンの運用計画業務の最適化を支援していますが、この領域でも CO2 排出量の最小化を計画することが可能です。たとえば配船問題では、船の行き先やスピードなども含めて最適化することで、必要な燃料の量が削減され、トータルの CO2 排出量を低減できます。

取締役 / VPoE の武藤 悠輔氏は、「世界レベルのデータ サイエンティスト チームが構築した ALGO ARTIS 独自のアルゴリズムを利用することで、経済性重視、安定供給重視など、視点の異なる計画を容易に作成できます。許容できるリスクレベルを定めたうえで、CO2 排出量を最小化した運用計画も作成できます」と話します。

たとえば、海外で原材料を調達し、物流で配送して、複数の国内製造拠点で製品を生産、倉庫で保管して、需要家に届けるという、数百億円のコストがかかる大規模な業務プロセスを、ALGO ARTIS 独自のアルゴリズムを搭載した高度最適化 AI ソリューションで最適化することで、1% のコスト改善ができれば数億円のコスト削減につながります。

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武藤氏は、「ALGO ARTIS では、電力、資源、素材、物流、鉄鋼、建設などの業界で、人の能力を超えた高度な最適化を AI で実現することを目指しています。高度最適化 AI ソリューションの効果をサプライ チェーン全体に拡大することで、さらなるコスト削減も期待できます。部分最適ではなく、全体最適を目指すという方針です」と話します。

現在、7 件のプロジェクトを推進しており、そのうち 2 件が運用を開始。現場で使える高度最適化 AI ソリューションを活用することで、業務を最適化し、実際のオペレーションで効果を上げています。この高度最適化 AI ソリューションの開発・運用プラットフォームとして、Google Cloud が採用されています。

最適化アルゴリズムの検証サイクルを高速に回せる Google Cloud を採用

Google Cloud を採用した理由を武藤氏は、次のように話します。「ビジネス的な観点と、システム的な観点があります。ビジネス的な観点ですが、顧客の重要な業務データを預かるシステムなので、セキュリティ面が担保されること、日本国内リージョンのみで高い可用性を実現できること、最適化アルゴリズムの検証サイクルを高速に回せることが重要なポイントで、これらの要件を満たせるのが Google Cloud でした。」

ALGO ARTIS のビジネスモデルは、顧客からヒアリングした要件をもとに、問題の本質的な構造を特定し、シンプルな問題に置き換え、その問題を解決し、要件を追加して、フィードバックをもらう検証サイクルを繰り返すことで、現場で使える最適化アルゴリズムをアジャイルに完成させていきます。この検証サイクルを、顧客と高速に回すことができる仕組みが必要でした。

一方、システム的な観点では、大きく以下の 4 つの要件があります。

(1)最適化アルゴリズムの品質を担保できること

(2)顧客に提供する検証環境の更新をアルゴリズムエンジニアができること

(3)最適化アルゴリズムの継続的な更新が容易な形で本番サービスに組み込めること

(4)システム環境の複製が容易であること

「特に品質担保の点で、最適化アルゴリズムには CACE(Changing Anything Changes Everything:1 つが変わるとすべてが変わる)の原則があるため、実装を更新するたびに FEET(Frequent, Entire and Exhaustive Testing:頻繁で、全体的かつ徹底的なテスト)をする必要があります。単体テストだけでなく、結合テストを複数のケースで回すことも必要なため、テストが実行しやすい環境として採用したのが Vertex AI でした。」(武藤氏)

Vertex AI を利用することで、たとえば最適化のジョブを 100 並列でテストする場合でも、容易に実行・管理が可能です。また、マネージドなコンテナ環境の利便性やセキュアなシステム構築の容易性、サービス間のセキュリティ設定、外部ツールや SaaS との親和性なども評価して Google Cloud が採用されています。

武藤氏は、「最初の段階で、複数のクラウド サービスを比較したのですが、最適化アルゴリズムを実行する部分をほかのシステムから切り離しつつ、連携もしやすい状態を実現できることを評価しています。たとえば 100 並列のテスト環境を作る場合、他社のクラウド サービスでは、しっかりと作りこみが必要ですが、Google Cloud は、マネージド サービスにお任せできるのも選定のポイントでした」と話しています。

CO2 排出量をユーザーごとに表示する仕組みの実現も検討

高度最適化 AI ソリューションは、フロントエンドのホスト部分とバックエンドの API 部分で構成されています。フロントエンドは、Cloud Run を利用してスタティックなファイルを管理し、シンプルにウェブページをホストしています。ウェブページにアクセスすると、認証サービスを経由し、Cloud Endpoint の API を介して、バックエンドの Cloud Run を利用した最適化サーバーに連携され、Vertex AI を利用した最適化 AI によりアルゴリズムが最適化されます。

最適化の結果は、Cloud Storage に保存され、Pub/Sub により非同期で通知することで、フロントエンドではリアルタイムに状況を把握できます。ほとんどの設定やデプロイは、Terraform で可能になっています。サービスごとの構成はもちろん、Google Cloud のサービス間の認証なども含めて、Terraform のモジュール化を意識して構成することで、環境の複製や保守、メンテナンスがしやすい構成になっています。

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システム構成での工夫について武藤氏は、次のように話します。「IaC(Infrastructure as Code)で、すべてを構成できるようにしています。サービス間の認証やセキュリティ関連も、IaC にすることで、新しい環境を構築したときに、セキュリティリスクがないことをあらかじめ担保できる構成になっています。Cloud Run をいかに利用するかが最大のポイントで、Cloud Run を中心としたアーキテクチャになっています。」

Google Cloud の導入効果を武藤氏は、「ビジネス的な観点、システム的な観点の、すべての課題に対して適切に対応できる構成を実現できました。新たな環境も、かなり少ない工数で用意できます。PoC 環境を毎回フルスクラッチで構築するときに比べ、75% 以上の工数を削減できます。アルゴリズムの性能テストを 100 並列で実行するときに、Vertex AI のおかげで初期構築の必要もなく、アルゴリズム エンジニアだけで対応できる望ましい環境を実現でき、開発期間の短縮にもつながりました」と話します。

今後の取り組みについて武藤氏は、「さまざまなサービスとの連携を強化していく計画で、外部サービスとの API 連携機能を検討しています。また、最適化したスケジュールにおける CO2 排出量を GHG プロトコルなどの基準に従った形で算出し、サプライチェーン全体における CO2 排出量を API を通じて相互に連携できる状況を実現していきたいと考えています。Cloud Console により、カーボン インパクトが低いリージョンを表示できますが、同様に計算リソースを利用したら API で CO2 排出量を取得して、ユーザーごとに表示する仕組みが実現できないかも検討しています。こうした面でのサポートも、今後 Google Cloud には期待しています」と話しています。


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写真左から:リードアルゴリズムエンジニア 門脇 大輔 氏、取締役 / VPoE 武藤 悠輔 氏

株式会社 ALGO ARTIS

株式会社ディー・エヌ・エーの AI 活用事業として、2018 年に開始された関西電力株式会社の火力発電所の燃料運用最適化の取り組みを引き継ぐ形で 2021 年 7 月に設立。社会基盤を支える現場の運用を AI によって最適化することを目的に、配船計画最適化、プラント運用最適化、タンク繰り最適化、ロジスティクス最適化をサービスとして提供。社名は、アルゴリズム(Algorithm)の職人(Artisan)に由来。

インタビュイー

株式会社 ALGO ARTIS 取締役 / VPoE 武藤 悠輔 氏


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