コンテンツに移動
コスト管理

データ仕様のオープン化を目指す – Google Cloud とオープンな課金データ

2023年6月1日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 5 月 20 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

FinOps 実践の重要な柱である、クラウド費用の最適化は、まず理解することから始まります。しかし、クラウド料金の請求書は解読するだけで一仕事です。マルチクラウド環境の場合、クラウド プロバイダ間で、クラウド料金の請求方法が同じであることはめったにないはずです。複数の請求書の内容をすべて理解しようと思うと、残業が必要となります。Google Cloud の請求書に関する不明点を解消し、よくある質問への回答を確認するには、前回のブログ投稿 Google Cloud 課金ツールについてをご覧ください。このブログ投稿では、課金コンソール内のさまざまなリソースを取り上げています。それらを活用して、Google Cloud からより高い価値を引き出し、イノベーションの実現につなげることができます。

お客様には、クラウドの請求書の解読に多くの時間をかけていただきたくはありません。それよりも、課金データを効果的かつ効率的に活用することで、ビジネス上の意思決定の質の向上と、組織全体で明確で体系的な費用の配賦を実現していただきたいと願っています。そこで、「Framing Up FinOps」の最新エピソードから重要な情報をご紹介します。このエピソードでは、Google Cloud Billing チームのプロダクト マネージャーである Rupa Patel に加え、FinOps Foundation のエグゼクティブ ディレクター、J.R. Storment 氏と FinOps の CTO、Mike Fuller 氏をお迎えし、FOCUS プロジェクトの提供開始を発表しました。FOCUS は、FinOps Open Cost and Usage Specification の略語で、クラウドの費用、使用量、課金データの標準化されたオープン仕様です。

FOCUS を提供する理由

的確な意思決定のためには、質の良いデータが不可欠です。そして、クラウドデータを信頼するにはまずそれを理解する必要があります。しかしながら、複数の企業やクラウド プロバイダに対して実際にそれができている組織はほとんどありません。業界の専門家は、それぞれ異なる方式で書かれたクラウドの請求書の内容に、頭を悩ませています。問題は、データが間違っている、正確ではないといったことではなく、データが詳細で、細分化され、複雑であることです。個々のクラウドデータを理解するだけでも十分大変なのに、複数のクラウドや、複数の他の種類のソフトウェア テクノロジーを利用している場合にいたっては、専門家でさえ理解することは不可能に思えます。

オープンソース仕様プロジェクトの FOCUS は、クラウド エコシステム全体における取り組みです。FOCUS は、クラウド費用データすべての標準化と信頼性向上だけでなく、そのデータの組織全体での配賦と関連付けの効率化も意図されています。Google Cloud は、お客様が望む方法で自由かつ安全にイノベーションを行えるようにするための、オープンで安全な世界規模のインフラストラクチャです。オープン環境、オープン データベース実装、オープン データレイク処理、オープン AI ツール、オープンデータ、その他のあらゆるオープンなものとのシームレスなインテグレーションを目指しています。オープンであることは、Google の DNA に刻み込まれています。  

共通の言語

現在、クラウド使用量や課金データに標準の言語はありません。業界全体で一般に利用可能なリソースはないため、多くのチームが複雑な作業を社内で行っています。皆様も心当たりはありませんか。クラウドデータを 1 つのレポートに標準化することや、複数のクラウド プロバイダの費用をまとめて、各プロバイダとの関連で配賦することは、多くの組織にとって悪夢のような作業です。

FOCUS には、用語、分割項目、指標の共通セットが含まれており、これを徐々に業界全体で標準化していきたいと考えています。FinOps の機能が複数のクラウド プロバイダにわたり正規化されると、ベスト プラクティスの促進、ビルドの加速化、課金データに関するトレーニングや学習に必要な時間の削減が可能になります。

複数のクラウドにわたる関連付け

課金データの粒度や頻度を理解することは一筋縄ではいかない、時間がかかる作業です。組織によっては、マルチクラウドの課金データの理解と関連付けが、過酷な作業と感じられることもあるでしょう。  

複数のクラウドにわたるデータの関連付けの負担を軽減するために、FOCUS は、分割項目(リソース ID やサービス カテゴリなど)、指標(費用の額や使用量など)、属性(更新頻度や提供方法)、メタデータ(スキーマ、リファレンス、データカタログなど)の標準化と正規化を行います。

エンジニアの支援

最近の「State of FinOps」の調査では、回答者の 40% が、エンジニアに費用最適化に関する推奨事項に沿ってもらうことが最大の課題であると答えています。FinOps を実践していて、これが組織における主要な課題になっている企業は少なくありません。エンジニアに意識を変えてもらい、予算を念頭に置いた行動を取ってもらうようにするには、別の方法が必要です。必要とされる重要なデータを、エンジニアの業務の中に取り込むには、どうすればいいのでしょうか。

FOCUS を利用すると、クラウド フットプリント全体のデータと重要な情報をまとめることができます。このプロジェクトは、エンジニアが日常業務の中で対応しなければならないノイズの軽減を目指しています。FOCUS により、エンジニアは FinOps のレポートに集中して、特定の課題と重要な指標に対処できるようになります。また、そのデータの可視性、透明性、アクセスしやすさが向上するため、エンジニアリング チームは業務に集中できます。

FOCUS と Google Cloud でビジネス上の意思決定の質を向上

Google の使命は、情報を整理し、世界中の人々がアクセス、利用できるようにすることです。FOCUS は Google の使命に沿っており、このプロジェクトを主導する創設メンバーであることを誇りに思います。Google Cloud Billing を導入すれば、情報に基づいてビジネス上の意思決定を行うために次のクラウド請求まで待つ必要はありません。Google Cloud Billing では、課金データが毎日更新されます。そして FOCUS を利用することで、課金データへのアクセスとその利用がさらに簡単になるため、費用の管理、削減、最適化に時間をかけて集中できるようになります。

Google Cloud Billing のデータと FOCUS の利用開始

現在、Google Cloud Billing には、3 種類の充実した BigQuery 経由のデータ エクスポートが用意されています。

標準的な使用料金データのエクスポート: Cloud 請求先アカウントの標準的な使用料金情報。

詳細な使用料金データのエクスポート: Cloud 請求先アカウントの詳細な使用料金情報。Compute Engine や Google Kubernetes Engine(GKE)といったさまざまなサービスのサービス使用料が発生する仮想マシンや SSD などのリソース単位の費用データを含む。

料金データのエクスポート: Cloud 請求先アカウントの料金に関する情報。

FOCUS の最初のリリースは、費用配賦の分割項目と指標を対象としており、2023 年 6 月 27 日~30 日までサンディエゴで行われる第 2 回年次 FinOps X カンファレンスで提供を開始します。このバージョン 0.5 のリリースにより、完全リリースの前に言語の標準化を開始できます。FOCUS の分割項目と指標をご使用のツールに組み込むことで、並列データの調整を開始して、複数のクラウド プロバイダにわたって分割項目を関連付けられるようになります。Google Cloud 固有の実装の構築を検討している場合は、今後の情報にご注目ください。初期のものは、2023 年 8 月 29 日~31 日にサンフランシスコで開催される Google Cloud Next で提供を開始する予定です。

FOCUS は、オープンソース ライセンスのオープン プロジェクトであるため、どなたでも登録し、貢献していただけます。唯一のメンバーシップ要件として、お客様が貢献内容を自主的にオープンソース化するものとするコントリビューター ライセンス契約(CLA)への署名があります。登録を希望されない場合は、今夏にプロジェクトの提供が開始された後に仕様をご確認ください。

詳細情報

FOCUS グループについて詳しくは、最新のプレスリリースまたは FinOps Foundation のウェブサイトをご覧ください。また、6 月 27 日~30 日までカリフォルニア州サンディエゴで行われる FinOpsX イベントにもぜひお立ち寄りください。Twitter スペースの「Framing Up FinOps」には隔週で新しいエピソードが投稿されます。こちらもぜひご視聴ください。


- Cloud Billing エクスペリエンス担当プロダクト リーダー Sarah McMullin
- Google Cloud、プロダクト マネージャー
Rupa Patel

投稿先