SAP と Google Cloud: ビジネスの卓越性のために、より迅速に価値を引き出してスマートなイノベーションを実現
Michael Harding
Partner Manager, SAP Strategy and Architecture
Dinesh Vandayar
Partner Manager, SAP Strategy and Architecture
※この投稿は米国時間 2025 年 5 月 21 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
SAP と Google Cloud は、データ分析、AI、セキュリティなど、さまざまな分野でコラボレーションを強化し、お客様が最も必要としている、ビジネス価値をより早く生み出す方法、複雑なプロジェクトのリスクを軽減する方法、仮説上のユースケースではなく実際のワークロードに対応するために構築された、エンタープライズ対応のスマートなイノベーションを提供しています。
SAP Sapphire 2025 では、BigQuery を使って SAP データにアクセスする方法の簡素化、Gemini と Agentspace による新しい AI エージェントと AI 機能の強化、最も要求の厳しい SAP ワークロードに対する Google Cloud の最先端インフラストラクチャの活用など、いくつかのアップデートをご紹介します。
ビジネス価値を高める AI コラボレーション
AI は、SAP と Google Cloud の連携の中核をなしています。本日は、Google の最新 AI テクノロジーを SAP のデータとシステムに取り込み、すべてを一から再構築せずに測定可能な効果を生み出すイノベーションについてご紹介します。
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AI 搭載アプリケーションを構築する: Vertex AI プラットフォームには、主要な基盤モデル、SAP の ABAP 言語用の SDK、Model Garden への完全なアクセスが備わっています。Model Garden には Google と Google パートナーのモデルが事前に統合されており、一か所でさまざまなモデルを検索、検出、操作できます。SAP のお客様には、請求書の解決などのビジネス プロセスの改善、より迅速で正確なカスタマー サービス エクスペリエンスを提供する生成 AI chatbot の利用、パーソナライズされたマーケティング コンテンツの生成などに、SAP システムからのデータをご活用いただけます。
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SAP Joule に Gemini を導入する: SAP は、あらゆる SAP アプリケーションに AI エージェント機能を提供する、SAP ネイティブなエージェント インテリジェンス レイヤである Joule の構築と改良を続けています。最新の Gemini モデルが SAP Business Technology Platform(BTP)の SAP の生成 AI ハブに組み込まれたことで、これらのエージェントは Google Cloud の最先端の言語モデルを活用して、よりインテリジェントで自律的な動作を実現できるようになりました。Google Cloud では世界 10 か所の SAP BTP リージョンが利用可能なため、お客様はガバナンス、データの局所性、運用上の制御性に関する企業の要件を満たしつつ、これらの機能で AI エージェント アプリケーションをスケールできるようになりました。
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Agentspace で SAP データにアクセスする: Google Agentspace は、SAP エージェントを含むエンタープライズ エージェントとアプリケーションへのアクセスを統合することにより、タスクを効率的に自動化し、さまざまなシステム、アプリケーション、データ形式にわたってエンタープライズ ナレッジへの安全なアクセスを確立する単一の場所を提供します。そのため、一般的なパートナー製の CRM、IT、データ プラットフォームも含め、エンタープライズ インテリジェンスがどこにあっても、従業員は現在使用しているツールからデータにアクセスできます。Agentspace で SAP データにアクセスすることで、従業員の既存の環境から、AI エージェント、構造化データと非構造化データ、コンテキストに基づく推奨事項へのアクセスが改善されます。
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Agent2Agent の相互運用性を実現する: SAP は、Google Cloud の Agent2Agent(A2A)相互運用プロトコルをサポートし、これに貢献しています。このプロトコルにより、プラットフォーム間で AI エージェントが安全に情報交換やコンテキスト共有を行い、連携してビジネス成果を達成できるようになります。たとえば、SAP のオーケストレーターは A2A を利用し、コンテキストを失うことなく BigQuery から Vertex AI エージェントをトリガーできます。手動による脆弱なインテグレーションのかわりに、標準ベースの自律的なコラボレーションを利用できるのです。
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Gemini による AI 搭載の SAP 運用: RISE with SAP の導入が拡大するなか、SAP と Google Cloud は、AI の共同イノベーションに関するパートナーシップを結び、より迅速でインテリジェントな SAP 運用を大規模に提供しています。この取り組みの一環として、Google は SAP と共同で、最新の Gemini モデルを活用した専門の AI エージェントを開発し、サービス停止の防止、パフォーマンスの最適化、トラブルシューティングの迅速化を実現しました。
たとえば、AMD は Google 提供の AI 機能を利用して SAP のユーザー エクスペリエンスを強化しています。同社は、財務、人事、カスタマー サービスの各チームが自然言語を使用して SAP システムから必要な情報を検索できるよう、生成 AI chatbot をいくつか開発しました。顧客オペレーション chatbot は、注文のスケジュールと配送に関するデータを取得して、顧客の質問に迅速に回答します。一方、Vertex AI と Cortex Framework で構築された財務 chatbot は、キャッシュフロー予測を加速させます。
エンタープライズ データの価値を引き出して強化する
企業データは、接続され、最新で、実用的な場合に初めて真の価値を発揮します。お客様は、Cortex Framework によって強化された BigQuery のスピードを活用することで、これを実現できます。Cortex は、SAP、Google 広告、その他のエンタープライズ データソースなどの主要システム向けの事前構築済みモデルを提供しており、異なる種類のデータへの接続とリアルタイム シグナルの統合を簡素化しています。これにより、BigQuery のネイティブ ML に対応した信頼性の高いデータモデルを既存の信頼できる情報源から構築し、機会に対して先を見越した行動をとり、AI への準備態勢、分析、運用のアジリティを高めることができます。
世界最大級の製紙会社であり、Google Cloud RISE with SAP のお客様である Suzano は、Cortex を使用して、これまで世界中の従業員がアクセスするのが困難だった膨大な運用データを一元化しています。その後、従業員の自然言語による質問を SQL クエリに変換する生成 AI ツールを開発し、技術者ではないユーザーが SAP データから分析情報を簡単に取得できるようにしました。これにより、データアクセスが大幅に民主化されて、データの問い合わせにかかる時間が 90% 短縮され、組織全体でより多くの情報に基づいた意思決定を迅速に行うことができるようになりました。
SAP と Google Cloud は、SAP Business Data Cloud を使用して SAP ソースシステムと BigQuery 間のデータ統合を共同で開発し続けており、ワークロードを SAP から移動しなくても SAP データを AI、分析、可視化にすぐに利用できるようにしています。お客様は、すでに使っているツールとすでに信頼しているデータを使用して、新しいインテリジェンス パイプラインを構築できます。
SAP ワークロード向けの優れたインフラストラクチャ
SAP システムにとって、適切なクラウド インフラストラクチャを選択することは非常に重要です。Google Cloud は、ビジネスのパフォーマンスと効率性を直接高めることを目的とした、新しい SAP 最適化仮想マシン(M4 および C4D ファミリー)の提供を始めました。一般提供中の M4 は、メモリ最適化された最もパフォーマンスの高い VM Compute Engine インスタンスを提供します。前世代と比較してパフォーマンスが最大 127% 向上しており、TCO が 36% 改善されます。つまり、コア SAP ワークロードの速度を大幅に高めながら、費用を削減できます。
Google Cloud インフラストラクチャは、優れた信頼性とセキュリティを実現するために一から設計されています。現在では、業界をリードする単一インスタンスの稼働率 99.95% のサービスレベル契約(SLA)をサポートしており、ビジネス クリティカルなオペレーションの中断を最小限に抑えることができます。さらに、拡張された大規模 X4 インスタンスにより、最も要求の厳しい S/4HANA 環境であっても、RISE の下でエンタープライズ規模で安心して運用できます。これにより、IT 基盤はビジネス目標に逆らうことなく、それに合わせてスケールします。
セキュリティとコンプライアンスの強化
Google Cloud は、安全性を重視して設計されたグローバル インフラストラクチャとデフォルトのデータ暗号化をはじめとする包括的かつ多層的なセキュリティ アプローチを通じて、重要な SAP システムと貴重なビジネスデータを保護します。これにより、導入初期からリスクを軽減できます。また、Google Unified Security によって、正確なアクセス制御、継続的なモニタリング、一元的なセキュリティ管理が提供されるため、SAP 環境全体にわたって脅威をプロアクティブに可視化でき、セキュリティがさらに強化されます。機密性の高い SAP ワークロード(特に公共部門のワークロード)については、Google Cloud は、SAP Ariba の ITAR と RISE with SAP をサポートする、差別化された Assured Workloads 制御プラットフォームを通じてコンプライアンスを確保します。このような Google Cloud ソリューションの組み合わせにより、運用上のコンプライアンスを徹底しながら、高度な脅威を迅速に検出、調査、無効化し、ビジネスへの影響を最小限に抑えて、オペレーショナル レジリエンスを高めることができます。
次のステップ: 学習、試用、構築
SAP のお客様は、価値創出までの時間の短縮、アーキテクチャの簡素化、既存のデータとシステムの利用率向上といった明確な成果を求めています。SAP と Google Cloud が共同で構築しているのは、まさにこのようなものです。Google Cloud は 2025 年以降も、高度なエンタープライズ AI と地球規模のクラウド インフラストラクチャによって、さらに大きな価値をお届けできると考えています。
ここ数週間にわたって皆様にお伝えしてきた進歩によって何が可能になるのか、SAP Sapphire では次のような内容をご紹介しています。ぜひご参照ください。
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A2A プロトコルとエージェント統合シナリオの詳細
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-SAP 戦略およびアーキテクチャ担当パートナー マネージャー、Michael Harding
-SAP 戦略およびアーキテクチャ担当パートナー マネージャー、Dinesh Vandayar