Compute Engine X4 マシンで SAP S/4HANA のピーク パフォーマンスを実現

※この投稿は米国時間 2024 年 12 月 17 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

SAP S/4HANA などのエンタープライズ ワークロードは、パブリック クラウドへの移行時に特有の課題があるため、クラウド プロバイダの選択が非常に重要となります。SAP を大規模にデプロイする際のインメモリ データベースとして、SAP HANA はメモリ容量と CPU 処理能力の要件が厳しい場合がありますが、課題はそれだけではありません。企業が生み出し、処理し、ビジネス上の意思決定に使用しているデータはかつてないほど増え、ますます複雑なデータ分析、アルゴリズム、報告が必要になっています。SAP は、企業が情報に基づく意思決定を迅速に行うために必要な運用分析と履歴分析、インサイトをリアルタイムで提供しています。しかし、そのためには、膨大なデータをリアルタイムで処理および分析できるマシン、そして高いレベルのメモリ容量と処理能力が求められます。

こうしたニーズに応えるべく、Google Cloud が最近導入したのが X4 マシンタイプです。Compute Engine X4 マシン ファミリーは、SAP HANA のオンライン トランザクション処理（OLTP）ワークロードとオンライン分析処理（OLAP）ワークロードの厳しい要件への対応に特化して開発されています。X4 マシンはパフォーマンス、スケーラビリティ、信頼性に優れており、企業は SAP S/4HANA、SAP HANA 上にデプロイされた SAP Business Suite（ECC）、そして SAP の業種別ソリューションを最大限に活用できます。X4 は SAP BW/4HANA や SAP BW on HANA などの OLAP ワークロードにも対応しています。

スケーラブルなソリューションで妥協のないパフォーマンス

事業の拡大や企業買収などによって企業が成長すると、SAP HANA システムの CPU とメモリが限界に達するリスクの発生が多くなります。そうなると、企業はより大規模なスケールアップ マシンに早期にアップグレードするか、スケールアウト構成で複数のマシンを使用することを迫られます。スケールアウトは、アプリケーション データの再設計と SAP の承認を必要とする複雑なカスタム プロセスであると同時に、運用面とリソース面から見て費用がかさみます。さらに、ミッション クリティカルな業務に SAP を利用している組織では、こうした移行オペレーションに必要な計画的ダウンタイムが許容範囲を超える場合があります。

X4 なら、企業はパフォーマンスのボトルネックに達する前にスケールアップ モードでさらに成長できるため、こういった課題が解消されます。X4 は、16 TB、24 TB、32 TB のメモリ構成と、それぞれ 960、1440、1920 の vCPU コア数で提供されています。SAP HANA の OLTP と OLAP の両方について「Standard Sizing」の SAP 認定を受け、最も要求の厳しい SAP HANA のエンタープライズ ワークロードに対応しています。X4 マシンはまた、OLTP についてサーバー規模のノード 4 つまで Scale-Out 認定も受け、S/4HANA のユースケースで合計 128 TB を実現できます。これはクラウド プロバイダの中で最大規模となります。16 TB の X4 マシンは、SAP ベンチマーク IaaS SAPS の結果が、次点の IaaS クラウドよりも 8% 超高くなりました（出典: SAP Note 2456432 - ログインが必要）。

Google Cloud は、SAP の認定を受けた 32 TB のマシンを提供する唯一のクラウド IaaS プロバイダです。SAP HANA 環境をビジネスニーズに応じてシームレスに拡大できるほか、費用対効果が高くシンプルなクラウドネイティブ エクスペリエンスを提供します。この実現方法は、以下のとおりです。

• 業界トップクラスのコンピューティングとストレージ: Google Cloud X4 マシン ファミリーは、強力に最適化したハードウェアとソフトウェアを組み合わせることで、その処理能力とスケーラビリティを確保しています。Google Cloud Hyperdisk とのインテグレーションにより、優れたパフォーマンスとスケーラビリティ、そしてレジリエンスを備えたブロック ストレージを実現しています。Hyperdisk は、1 秒あたりの専用読み取り / 書き込みオペレーション数（IOPS）を動的にチューニングすることが可能です。各ボリュームのスループットは 1 秒あたり最大 5 GB を達成でき、旧世代の Persistent Disk と比べてパフォーマンスが大幅に高くなっています。このレベルのパフォーマンスは、データベース、リアルタイム分析など迅速なデータアクセスを必要とするアプリケーションには不可欠で、SAP HANA のリハイドレーション時間を短縮します。また、X4 マシンは民間企業として世界最大規模のマネージド ネットワークで実行されるため、低レイテンシのパフォーマンスが可能です。

• 高い可用性と信頼性: ミッション クリティカルな SAP アプリケーションのダウンタイムを最小限に抑えることは、お客様の優先課題の一つです。X4 マシンは、Compute Engine のメモリ最適化単一インスタンスの SLA が 99.95% と業界トップクラスです。X4 と Hyperdisk の組み合わせにより、SAP HANA リハイドレーション機能が迅速化されます（32 TB のフル リハイドレーションが 45 分未満）。その結果、アプリケーションのビジネス プロセス ダウンタイムを最小限に抑え、ミッション クリティカルな SAP アプリケーションの実行を継続できます。

• パフォーマンスを高めるイノベーション: Titanium は、ハードウェアとソフトウェアに基づくテクノロジーであり、ワークロードのパフォーマンス、効率性、セキュリティを著しく高めることを視野に設計されています。また、多数のインフラストラクチャ レベルのタスクを自動化することで管理を簡素化します。Titanium により、ネットワークとストレージの機能がマシンの CPU から専用のハードウェアに移動されるため、マシンの CPU は SAP HANA アプリケーションの実行に専念できます。Titanium は、Google Cloud の Hyperdisk ブロック ストレージ サービスとの緊密な統合により、最高水準のストレージ I/O パフォーマンス（インスタンスあたり最大 40 万 IOPS）を実現します。これは従来のアーキテクチャで可能な水準を大きく上回っています。

• セキュリティとコンプライアンスの強化: X4 マシンは Google Cloud の堅牢なセキュリティ機能を継承しています。Google Cloud の Assured Workloads に対応しており、転送中と保存中のデータの暗号化のほか、業界標準への準拠や規制の遵守を実現します。Titanium が暗号化や鍵管理など機密性の高いタスクを、保護強化機能を備えた専用のハードウェアにオフロードすることにより、セキュリティ機能のパフォーマンスが強化されます。これは、ワークロードのセキュリティ ポスチャーの改善に役立ち、脆弱性のリスクを低減します。また、お客様はコンプライアンスや規制の要件を満たすことができます。

• シンプルなクラウドネイティブ エクスペリエンス: X4 マシンは、Google Cloud のエコシステムとシームレスに統合し、幅広いクラウド サービスへのアクセスを提供することで、クラウドネイティブ アーキテクチャのメリットを SAP S/4 HANA にもたらします。Compute Engine には、X4 へのシームレスな移行機能も用意されています。SAP インスタンスは M2 サーバー（最大 12 TB）から X4 に簡単に移行できます。他のサーバーやオンプレミス環境から X4 に移行するプロセスは、他の Google Cloud サーバーに移行する際の標準プロセスと同じものです。

• サービス モデルの選択肢: SAP をご利用のお客様が Google Cloud に移行するときには 2 つの選択肢があり、直接（BYOL）デプロイモデルを選択するか、RISE with SAP を利用できます。これは、SAP やテクノロジー エコシステム パートナーのソリューションや専門性を 1 つの単一契約のサブスクリプションにまとめたものです。

「この何年かで、当社の SAP HANA システムのデータは顕著に規模が拡大し、ますます高い性能が必要になっています。24 TB の X4 マシンと Hyperdisk ストレージを導入したことで、将来のデータの増大に対応できる余裕を確保できたのと同時に、処理性能の向上にも期待しています。そのうえ、Google の X4 マシンはクラウドネイティブなので、システムの管理と運用を自動化する機会ももたらしてくれます。」- Deloitte、米国最高技術責任者 Shawn Lund 氏

Google Cloud の X4 マシンは、SAP HANA インフラストラクチャを大きく進化させ、高いパフォーマンス、スケーラビリティ、コスト効率を実現します。Google Cloud の強力なエコシステムと統合し、クラウドネイティブ エクスペリエンスを提供する X4 マシンにより、企業は SAP S/4HANA のデプロイメントを最大限に活用し、デジタル トランスフォーメーションを推進できます。

Google Cloud 上の X4 マシンと RISE with SAP の詳細についてはこちらをご覧ください。また、Google Cloud Marketplace で SAP Datasphere for Google BigQuery をご確認ください。

ー シニア プロダクト マネージャー Mike Eacrett