AI を活用した現実のメインフレーム モダナイゼーション: メインフレームからクラウドへの安全でスケーラブルな道筋
David Yahalom
Group Product Manager, AI Application Modernization
※この投稿は米国時間 2026 年 8 月 4 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
長年にわたり、レガシー メインフレーム資産を抱える企業は、重大なジレンマに直面してきました。メインフレームの保守を継続して実質的にモダナイゼーションを先送りにするか(いずれ対処が必要なことは承知の上で)、あるいは未知の要素やリスクが渦巻く危険な「ビッグバン」移行を断行するか、という選択です。
Google Cloud では、AI の力とクラウドのアジリティを活用し、反復的かつ継続的なモダナイゼーションを可能にするモダナイゼーション戦略という代替案を提案しています。このアプローチは、メインフレームのモダナイゼーションが単なるコード間の変換作業ではない、という本質的な事実に基づいています。もちろん、他から独立した単一の小規模なアプリケーションであれば、昨今の AI や大規模言語モデルの進歩もあり、モダナイズは比較的容易です。真の課題は、大規模なグローバル企業に見られる複雑に絡み合った依存関係やレガシーデータ形式を損なうことなく、機能の同等性を確保しながら、実際の規模でモダナイゼーションを実現することです。
たとえば、以下のような「現実世界」の課題があります。
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アプリケーション ロジックが、レガシーな独自のデータベースやレコード スキーマと、直接かつ緊密に結合している。
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VSAM、フラット ファイル、IMS 階層構造など、AI エージェントがアクセスできない非リレーショナル形式。
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CICS や IMS TM などのトランザクション モニタが、高度に統合されたトランザクション管理を提供している。1 つのトランザクション シナリオが数百万行ものコードで構成されている場合がある。
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複雑な条件付きステップ ロジックと依存関係を持つ、入り組んだシーケンシャル ワークフロー。
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CTG、IMS Connect、MQ、LU 6.2 ソケットなどの独自プロトコルを利用した、システム内外の境界。
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専門性の高い独自のメインフレーム ユーティリティ スイートによる、運用上の深いロックイン。
つまり、メインフレーム アプリケーションの実際のモダナイゼーションは、COBOL から Java への変換をはるかに超えるものです。また、基盤となるデータモデルをモダナイズし、数十年にわたって不明瞭だったアプリケーションの依存関係やインターフェースに対処し、さらに基盤となるデータストアもモダナイズする必要があります。最も重要なのは、本番公開の前に、実際の本番トラフィックを使用して最新のコードを検証し、リスクを軽減する必要があるということです。
Google のアプローチでは、コード理解のための高度な推論と Gemini モデルのスケールを、メインフレーム固有のモダナイゼーション プロダクトと組み合わせて、現実世界の複雑さと課題に対処します。Google のソリューションは、評価、モダナイゼーション、リスク軽減、データ移行という 4 つの主要な柱で構成されています。


では、それぞれ詳しく見ていきましょう。
1. 評価: レガシー アプリケーションの AI リバース エンジニアリング
Google の Mainframe Assessment Tool(MAT)は、レガシー コードベースを極めて大規模にリバース エンジニアリングし、現在のレガシー アプリケーションの動作を明確化するとともに、モダナイゼーションに必要な基盤を構築します。
MAT は、メインフレーム環境に関する詳細な分析情報を、次の 4 つの主要分野で提供します。
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依存関係の可視化: DB2 データベースや VSAM ファイルなど、異なるアプリケーションとデータストア間の関係や相互接続をマッピングします。
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自動ビジネスルール抽出(BRE): 複雑なメインフレーム アプリケーション ロジックを、分かりやすい自然言語による要件と視覚的なディシジョン ツリーの両方に変換します。
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自動ドキュメント生成: 本番環境のメインフレームのソースコードから、包括的で最新の技術ドキュメントを直接生成します。
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ドメインとビジネス機能の検出: アプリケーションの境界を自動的に特定し、アプリケーションをハイレベルなビジネス ドメインにグループ化して、入力、出力、インターフェース、処理が行われる場所など、これらのドメインのアーキテクチャを可視化します。
MAT は、既存のアプリケーションとビジネス プロセスを理解し、クラウドネイティブな未来を設計する上で不可欠な、クリーンで検証済みのロジック要件を提供します。これらの出力を、MCP を介してエージェント型のモダナイゼーション ワークフローに直接統合することで、高精度のコード変換、実行のスケーリング、独自のコードベースの最適化を保証するために必要な、アプリケーション固有のきめ細かいコンテキストを AI エージェントに提供します。


Google Mainframe Assessment Tool: レガシーなメインフレーム アプリケーションからのビジネスルール抽出(BRE)


Google Mainframe Assessment Tool: アプリケーションのリバース エンジニアリングにより、入力、出力、処理、ユーザー インターフェースを可視化するインフォグラフィックを生成している様子
2. モダナイゼーション: コード変換
モダナイゼーションには、目指すべきビジネス成果に合わせた戦略的な選択が必要です。すべてのユースケースに適合する唯一のパスというものは、ほとんど存在しませ。Google の柔軟なアプローチにより、ビジネスに必要なモダナイゼーションの深さを正確に選択し、メインフレームのワークロードごとに異なる戦略を適用することが可能になります。理論と実行(AI から実用 AI へ)のギャップを埋めるため、Google はメインフレーム モダナイゼーション プロフェッショナル サービスチームと提携し、専門的な AI エージェントを構築しました。これらのエージェントは、実証済みの手法や現場での実践的な経験を、構造化されたエージェント型のモダナイゼーション ワークフローへと直接コード化します。Google のエージェント型メインフレーム モダナイゼーション ソリューションでは、次の 2 つの方法でモダナイゼーションを実現できます。
書き換え / 再構築
ビジネス ロジックのイノベーションによって戦略的 ROI が最大化されるレガシー アプリケーションには、このパスを選択します。このパターンでは、Mainframe Assessment Tool(MAT)によるビジネスルールの抽出と、Mainframe Modernization Agents によるフォワード エンジニアリングを組み合わせて活用します。このエージェント型のワークフローは、複雑なビジネス プロセスを分析および抽出することで、レガシーコードを明確なビジネス仕様へと変換します。
エージェント型ハーネスとして Antigravity と組み合わせることで、このソリューションは、安全で AI 加速型の開発パイプラインを提供します。このパイプラインでは、メインフレームからのビジネスルール抽出、ターゲット アプリケーション仕様の作成、ターゲット アーキテクチャ設計の作成、ユーザー ストーリーとバックログの生成、さらにはエージェントによるコーディング実装計画の作成など、あらゆるステップでオプションの人間参加型ガバナンスを備えています。
これにより、エンジニアリング チームは複雑なロジックを実装の詳細から切り離し、従来のメインフレームの「ブラック ボックス」を、透明性が高く、保守が容易で、優れた進化性を備えたクラウドネイティブ アプリケーションへと置き換えることができます。


エージェント型のモダナイゼーション ワークフローを確立するために連携する Google Mainframe Modernization ソリューション
決定論的なモダナイゼーション(同等移行)
このパターンは、レガシー アプリケーションの動作を厳密に維持しながら、構造的なモダナイゼーションを必要とするユースケース向けに設計されています。Google は、厳格なコントラクトの忠実性を基本原則とする制約として、内部アプリケーション構造をコードからコードへ直接モダナイズするために AI を使用しています。モダナイズされたシステムには、外部インターフェースを維持したまま技術的負債を解消し、どのような入力に対してもレガシー システムとまったく同じビジネス結果を出すことが求められます。
ワークロードに応じたパターンの適用
これら 2 つのパターンによるモダナイゼーションは、実際にはどのようなものなのでしょうか。金融サービス業界のお客様が、自社のシステム環境全体にわたって混合アプローチを適用しているケースを想定してみましょう。安定した大量のバックオフィス バッチジョブ(夜間の明細書処理など)を同等移行のパスでモダナイズすれば、リスクを抑え、短期間で MIPS 消費量を削減することが可能です。たとえば、基幹システムである総勘定元帳に決定論的 AI モダナイゼーションを採用し、規制遵守のロジックを維持したまま、データ構造を Google Cloud SQL へとモダナイズして分析機能を向上させる、といった選択も考えられます最後に、顧客向けのローン組成プラットフォームなど、競争上の差別化要因となるアプリケーションについては、AI による書き換え戦略を導入し、Gemini を使用してアプリケーションを書き換えてリアルタイムの承認を実現することで、ビジネスにおける真の優位性を確立できます。
3. セーフティ ネット: 本番稼働前のリスク軽減
本番稼働のリスクを排除するために、Google Cloud の Dual Run は、メインフレームと新しい Google Cloud 環境の両方で、実際の運用ワークロードを同時に処理します。メインフレームのライブ トランザクションを自動的にキャプチャし、モダナイズされたアプリケーションに対して実行して、出力を並べて比較します(プロトコル、メッセージ、データの変更内容など)。この継続的検証は、ロジックとデータの完全な同等性が達成されるまで実行されます。これにより、メインフレーム上のレガシー アプリケーションを廃止する前に、安全性を確保し、運用の中断をゼロにすることを保証します。グローバル企業はすでに Dual Run を使用して移行リスクを排除しており、特定の業界でモダナイゼーションに必要とされる厳格な規制当局の承認までも確保しています。Dual Run は、メインフレームのモダナイゼーションを成功させるための、本番環境グレードの「保険」のような存在です。


4. データ移行: サイロ化されたメインフレーム データのモダナイズ
最後に、Google Cloud Mainframe Connector を使用すると、メインフレームからデータを取り出し、BigQuery、Spanner、Cloud SQL、Cloud Storage などのさまざまな Google Cloud サービスにコピーできます。Mainframe Connector は、コードベースやデータ型の変換を処理します。既存の ETL プロセスに簡単に統合できるため、メインフレームから Google Cloud へと反復的にデータをコピーすることが可能です。Mainframe Connector を活用することで、メインフレームから処理をオフロードし、拡張モダナイゼーション パターンと分析 / データ ウェアハウジングの両方をサポートできるようになります。MIPS の使用量を削減しながら、サイロ化されたメインフレーム データを解放し、クラウド上で新しいビジネス機能を創出できるようになります。
これら 4 つのソリューションを組み合わせることで、目的を絞った応用 AI が、メインフレームのお客様が直面する実際のモダナイゼーションの課題(既存のビジネス プロセスの理解、アプリケーションのモダナイズ、本番環境への移行前のリスク軽減、サイロ化されたデータのモダナイズ)をどのように解決できるかを実証しています。
ぜひお試しを
メインフレームのモダナイゼーションは、確信が持てないまま進めるべきではありません。不確実な状況から実行へと貴社を導くために設計された、対象を絞ったパイロット プログラムを通じて、AI 加速型の Google のアプローチをぜひお確かめください。
まずは、以下のステップから始めましょう。
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自動コードベース評価: ターゲット アプリケーションで Mainframe Assessment Tool スキャンを実行して、隠れた依存関係をマッピングし、ドメイン アーキテクチャを可視化します。また、ビジネスルールを平易な言葉でレガシー コードから直接抽出します。
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エージェント型モダナイゼーション ワークショップとパイロット: Google Cloud のエキスパートや専門パートナーとハンズオンで協力し、エージェント型のワークフローを実社会で適用して、メインフレーム モダナイゼーションの課題を解決する能力を実証します。共にモダナイズするアプリケーションを 1 つ選び、モダナイゼーションのビジネスケースを構築しましょう。
ご関心をお持ちの場合は、mainframe@google.com までお問い合わせください。
- AI アプリケーション モダナイゼーション担当グループ プロダクト マネージャー、David Yahalom


