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インフラ モダナイゼーション

秘められた大きな可能性: Google Distributed Cloud Edge Appliance の業界別ユースケースを探る

2023年1月17日
Google Cloud Japan Team

※この投稿は米国時間 2023 年 1 月 6 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。

多くの組織がクラウドへの移行によってデジタル トランスフォーメーションを推進していますが、業界、地域、ユースケースによっては、クラウドのモダナイゼーションに対して異なるアプローチを必要とする場合があります。医療、保険、製薬、エネルギー、通信、銀行などの規制の厳しい業界では、データの所在地や主権に関する厳格な要件があります。また、データ処理に関する地域の要件に対応する必要がある業界や、製造ラインの欠陥検出など、ミリ秒未満のレイテンシでリアルタイムにデータ処理を行う必要がある業界もあります。これらのユースケースでは、インフラストラクチャにエッジサービス、オンプレミス サービス、クラウド サービスを組み合わせて利用することが求められます。

これらの要件を念頭に置き、Google Cloud は、Google Cloud のインフラストラクチャとサービスをエッジ(またはそれ以上に近い場所)にまで拡張する、Anthos を利用した Google Distributed Cloud を発表しました。このサービスの基盤となるインフラストラクチャには、コンピューティング、ストレージ、ネットワーキングのデバイスを搭載した 42U ラック「Google Distributed Cloud Edge Rack」と、1U アプライアンス「Google Distributed Cloud Edge Appliance」の 2 種類があります。

今回のブログ投稿では、Google Distributed Cloud Edge Appliance について、また、製造業、小売業、自動車産業の各業界において、一般的なユースケースに対処する際にこのアプライアンスをどのように活用できるかを解説しています。

アプライアンスの仕組み

まず、Google Distributed Cloud Edge Appliance そのものについて説明しましょう。

Google Distributed Cloud Edge Appliance は、(1)Distributed Cloud Edge インフラストラクチャと(2)Distributed Cloud Edge サービスの 2 つのコンポーネントで構成されています。

Google Distributed Cloud Edge サービスは Google Cloud 上で動作し、アプライアンス上で動作するノードとクラスタのコントロール プレーンとして機能します。アプライアンスのリモート管理を実行して指標を収集するには、Distributed Cloud Edge サービスが常に Google Cloud に接続されている必要があります。これにより、Google Cloud コンソールを介してエッジ ハードウェア上のワークロードを管理できます。データの所在地や主権にかかわる理由で常時接続できないお客様には、必要なセキュリティ パッチやアップデートを適用できるよう、少なくとも月に一度はアプライアンスをクラウドに接続することを強くおすすめします。

Google Distributed Cloud Edge Appliance にはネットワーク ポートが内蔵されており、インターネット、Cloud VPNDedicated Interconnect 経由でコントロール プレーンに接続できるほか、オンプレミス ネットワークへの接続も可能です。各 Google Distributed Cloud Edge Appliance は特定の Google Cloud リージョンをホームとしていますが、Google Cloud のコントロール プレーンと通信するために任意のパブリック Google Cloud エンドポイントも使用するように設計されており、これらのアプライアンスを異なる地理的位置に移動できます。

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図 1 - Google Distributed Cloud Edge Appliance の論理設計

各アプライアンスには NFS 共有が 2 種類あります。1 つはオフラインでデータは Google Cloud に転送されませんが、もう 1 つはオンラインで、その共有に保存されたデータが Google Cloud の Cloud Storage に同期され、さらに処理されます。アプライアンスは、通信用にサーバー メッセージ ブロック(SMB)およびセキュア ファイル転送プロトコル(SFTP)をサポートしています。

各 Google Distributed Cloud Edge Appliance は、アプライアンスの基礎となるファイル システムにアクセスできる単一ノードの Kubernetes クラスタを構築できるよう Google Distributed Cloud Virtual を実行します。これにより、基盤となるアプライアンス ハードウェア上にコンテナ化アプリケーションを構築し、次のような業種のユースケースに対応できます。

業種別ユースケース

Google Cloud Edge Appliance の構成について理解したところで、独自の価値を提供できる業界のユースケースをいくつか考えてみましょう。

製造

製造業において、品質管理と安全性は重要な要素です。企業は、市場での競争力と顧客を維持し、工場労働者の安全を守るために、製品が最高水準で製造されていることを保証する必要があります。そのために、メーカーは確実な品質管理を行って、製造現場のどこに人がいるかをリアルタイムで把握するために、生産ラインで製造されている製品に関するリアルタイムのデータを必要とします。

製造環境では、Google Distributed Cloud Edge Appliance を利用することで、危険や製造上の欠陥をリアルタイムに検出できます。図 1 は、製造現場で Google Distributed Cloud Edge Appliance を使用して実行される危険検出ソリューションのリファレンス アーキテクチャです。

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図 2 - Google Distributed Cloud Edge Appliance を使用した危険検出アーキテクチャ

このアーキテクチャでは、工場内にあるカメラがライブ映像を Google Distributed Cloud Edge Appliance にストリーミングします。カメラとアプライアンスの数に応じて、カメラの分割や異なるアプライアンスへのマッピングが可能です。このアーキテクチャにより、まずオンライン NFS 共有を使用して Google Cloud に映像データを転送できます。Google Cloud に転送されたら、AutoML を使用して危険検出ソリューションの一部として使用できるモデルをトレーニングおよび構築できます。

これらのトレーニング済みモデルが構築できた状態で、カメラからリアルタイム ストリーミング プロトコル(RTSP)を使用して、映像データをアプライアンスにストリーミングします。その後、AutoML 推論を使用して、リアルタイムの動画ストリーミング データを分析できます。

たとえば、このリファレンス アーキテクチャでは、フォークリフトに人が近づきすぎると、エッジ アプライアンス上で実行されているマイクロサービスによって関数がトリガーされ、通知がメッセージ サービスまたは企業のリソース プランニング ツールに push されます。これにより、工場管理者はリアルタイムで製造現場の危険性を認識し、是正措置を講じることが可能になります。

また、予防策を練るためにメッセージや動画を後で見直すこと、またはストリーミング動画を Cloud Storage に push しアーカイブして、アプライアンスのストレージ スペースを効率的に活用することも可能です。

Google Cloud へのデータ転送は、Google Cloud DedicatedInterconnect、またはリージョンとサイト間での VPN を介して行えます。この接続により、アプライアンスのコントロール プレーン ネットワーク トラフィックをリージョンに送信することも可能です。

また、図 2 のリファレンス アーキテクチャは、製造現場または製造ラインの Google Distributed Cloud Edge Appliance で実行される製品異常検出ソリューションに使用することもできます。この例では、最終的にパッケージングされる前に完成品の異常を検出するように機械学習モデルがトレーニングされます。

小売

小売業界では、図 2 の Google Distributed Cloud Edge Appliance リファレンス アーキテクチャにより、以下のような小売業務を変革するさまざまな機能を実現できます。

  • 非接触型の購入手続き

  • 製品スキャン

  • ウォークスルー決済

  • セルフレジ

  • 無人店舗

  • 会計の映像モニタリング

すべて小売業者の施設内で、データをローカルで処理するために必要な低レイテンシと高スループットで実行されるため、データから実用的な分析情報を得られます。

あるいは、Google Distributed Cloud Edge Appliance をエッジで使用して、店舗管理業務を全面的に見直すことも可能です。例として、店舗の占有率、行列の長さや待ち時間のモニタリング、床滑りや転倒、品切れの検出、在庫に関するコンプライアンスのモニタリングなどが挙げられます。

自動車

現在、先進運転支援システム(ADAS)は自動車の標準になりつつあります。ADAS に関する継続的な改善を成功裏に進めて展開するために、自動車業界は、製造する車両に組み込まれた ADAS システムに対する広範なテストを継続的に実行しています。自動車会社は、Google Distributed Cloud Edge Appliance を使用することで、開発中の ADAS システムのデータ収集方法をモダナイズ、変革することが可能です。たとえば、テスト車両にはデータを生成する複数の異なるセンサーが搭載されており、これらのデータを車載エッジ アプライアンスにすばやくオフロードできます。

次に、アプライアンス内で、センサーデータの変換、動画や画像の推測、イベントの検出を行うためのコンテナ化されたワークロードをデプロイできます。これにより、オペレーターがすべてのイベントにラベルを付ける必要がなくなり、開発チームはテストから迅速に分析情報を収集できます。

情報のサブセットに焦点を当てたい場合は、車両が開発センターに戻ったときに、特定のデータまたはデータ ペイロード全体を Transfer Appliances に転送できます。これらのシステム(Transfer Appliance とエッジ アプライアンス)はすべて連動し、クラウドベースのコントロール プレーンによってローカル システムの管理運用コストを削減できます。

このアプローチにより、データセンターまたはエッジのロケーションで実行されているサービスをクラウドからデプロイし、トラッキング、モニタリング、構成できます。工場から、データをオフラインまたはオンラインで Google Cloud に移動し、さまざまなストレージ クラスと処理機能を使用して、さらにデータを処理または保存できます。また、新たにトレーニングしたモデルやビジネスルールをエッジ アプライアンスにデプロイすることもできます。このすべてにおいて、クラウドとアプライアンス間のデータ転送はエンドツーエンドの暗号化を使用して実行され、データをコントロールできます。

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図 3 - Google Distributed Cloud Edge Appliance を使用した ADAS の実装

図 3 のリファレンス アーキテクチャは、ADAS の実装で、自動車業界のエッジでのデータの収集、処理、変換に Google Distributed Cloud Edge Appliance が使用されている場合を示しています。このアーキテクチャは、有人および無人車両でのデータの取得と処理のユースケースにも応用できます。クラウドにデータを送信するか、他のクラウドベースのサービスを利用することで Distributed Edge Appliance がクラウドに拡張されていることに注目してください。

Google はこれからも発展を続けます

これまでご紹介してきたのは、製造業、小売業、自動車業界の組織が、Google Cloud を利用した最新のコンテナ化アプリケーションで Google Distributed Cloud Edge Appliance を使用しているユースケースのほんの一部です。Google Distributed Cloud Edge Appliance を使用して Google Cloud のパワーをエッジに導入し、ビジネスを変革したいとお考えの方は、Google または Google 認定パートナーまでぜひお問い合わせください


- エンタープライズ GSI、シニア パートナー エンジニア、Schneider Larbi
- Google Cloud、プロダクト マネージャー、Abhishek Lal

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