検証可能なプライベート AI: Google Cloud が Confidential Computing の新たな領域を切り開く
Sam Lugani
Product Lead, Confidential Computing, Google Cloud
Ranjit Narjala
Engineering Lead, Confidential Computing, Google
※この投稿は米国時間 2026 年 6 月 24 日に、Google Cloud blog に投稿されたものの抄訳です。
AI で使用される機密データの保護は、Google の先進的でセキュアなクラウド インフラストラクチャを提供するという取り組みにおいて極めて重要です。Confidential Computing は、ハードウェア ベースの高信頼実行環境(TEE)で、使用中のデータを暗号で保護しながら、データの完全性を検証可能にします。
このたび、Cloud AI のデプロイにおける検証可能なプライバシーをさらに強化する、ハードウェア エコシステム全体にわたる最新の Confidential Computing のイノベーションを発表いたしました。
グローバル規模での Confidential AI
Confidential AI の機能をグローバルに拡大することで、AI の推論やファインチューニングのワークロードが、強制力のあるプライバシー保証のもとで実行されるようにします。
Confidential AI の民主化: NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell GPU を搭載した Confidential G4 VM のプレビュー版の提供開始
このたび、グローバル規模でアクセス可能な Confidential AI を発表できることを嬉しく思います。NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Server Edition GPU を搭載したアクセラレータ最適化 G4 マシンシリーズにおいて、Confidential VMs と Confidential GKE ノードが利用可能になりました。
これが革新的なのは、そのグローバルな規模と柔軟性にあります。Confidential G4 は、標準の G4 が利用可能なすべての Google Cloud リージョンで提供されており、オンデマンド、予約、DWS Flex Start、Spot / プリエンプティブルなど、複数の使用量モデルに対応しています。
「組織が複数のインフラストラクチャ環境にわたって AI をスケールするにつれ、データや実行環境に対するプライバシーと制御の維持がますます難しくなっています。NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell GPU を搭載した Google Cloud Confidential G4 VM は、拡大を続ける Confidential AI のインフラストラクチャ エコシステムにとって重要な追加要素といえるでしょう。AI ワークフローは現在、エージェント、データソース、インフラストラクチャの境界を越えて広がっています。Super Protocol は、Google Cloud Confidential VM、他社のクラウド、オンプレミス環境にわたり一貫した Confidential AI 運用モデルを提供することで、Confidential Computing の複雑さを抽象化し、チームが AI による成果の創出に集中できるようにしています」と、Super Protocol の COO である Yulia Gontar 氏は述べています。
AMD SEV を活用した 第 5 世代 AMD EPYC Turin CPU と NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell GPU を搭載する G4 マシンシリーズは、堅牢なハードウェア ベースのセキュリティを実現します。このアーキテクチャにより、TEE 内での処理中に機密データが確実に保護されるだけでなく、CPU と GPU 間のデータ転送時にもデータが暗号化されます。
「Vertebrae が、GCP の Confidential G4 VM を選択したのは当然のことでした。当社のお客様にとってプライバシーとセキュリティは譲れない条件だからです。当社のプロダクトは業務上の機密性の高い議論を処理するため、CPU と GPU の両方が TEE 内で動作していることを示す、ハードウェア署名による証明をサポートする必要があります。Google Cloud の Confidential Computing を使用することで、クラウドにおける最先端の AI のプライバシーを実現しています」と、Vertebrae の CEO である Andy Qin 氏は述べています。
Confidential G4 を使用することで、パフォーマンスへの影響を最小限に抑えながら、AI 推論、ファインチューニング、HPC を実行できるほか、厳しく制限されたデータ、機密性の高いモデル、プライベート プロンプトを扱うユースケースにも対応できます。Confidential G4 VMs と Confidential G4 GKE Nodes の利用を今すぐ開始しましょう。
エンドツーエンドのプライベート推論を実現: オープンソースの Prompt Encryption SDK
Confidential AI の利用を促進する一方で、AI ワークロードにおける機密データの保護は、モデルの実行環境を保護するだけでは不十分であることも理解しています。プロンプトやレスポンスそのものに、機密性の高い情報が含まれている可能性があるからです。推論のライフサイクル全体を暗号で保護するために、Google は Prompt Encryption SDK のオープンソース版をリリースしました。現在、GitHub で公開されています。
このツールキットにより、AI 推論ワークロードのエンドツーエンドのセキュアなチャネルを確立することができます。プロンプトがクライアントから送信された瞬間から TEE で処理されるまで暗号によって保護され、モデルのレスポンスも同様に、クライアントに戻るまで保護されます。


Prompt Encryption SDK を使用したプロンプトとレスポンスの暗号化。
クライアント SDK はクライアント アプリケーションに組み込まれ、TEE で実行される推論サーバーに組み込まれたサーバー SDK と連携して動作します。SDK を使用して証明済みの TLS セッションが確立されると、クライアントは、サーバーが検証済みの Confidential Computing 環境内で認証されたワークロードを実行していることを確認できます。
これにより、クライアント アプリは、TEE でプロンプトを復号して処理できるのはこのサーバーのみであることを前提として、暗号化されたプロンプトを推論サーバーに送信できます。サーバーはレスポンスの準備ができると、暗号化された同じチャネルを介してクライアント アプリにレスポンスを返します。
GitHub リポジトリと Codelab の利用を今すぐ開始しましょう。
Google Cloud での Apple Private Cloud Compute(PCC)の活用
Google のプライバシーへの取り組みは、Google Cloud での Private Cloud Compute(PCC)の拡張に向けた Apple とのコラボレーションに深く表れています。
このたびの Apple とのコラボレーションにより、Apple のプライバシーとセキュリティへの取り組みを Google Cloud 上の PCC に拡張できることを大変誇りに思います。PCC における Apple のプライバシーへの取り組みは、Google Cloud のインフラストラクチャ上に構築されている多層的なセキュリティ アプローチによってサポートされます。これには、Intel TDX を使用した Google Cloud Confidential Computing、NVIDIA Blackwell GPU を使用した NVIDIA Confidential Computing、Titan チップを使用した Titanium セキュリティ アーキテクチャ、検証可能な透明性を確保するための共同設計されたオープンソースのホストスタックの活用が含まれます。
これらのテクノロジーを組み合わせることで、Google Cloud 上の Apple PCC で、データ保護とユーザーのプライバシーに関する厳格な要件を満たすことができます。このコラボレーションについて詳しくは、ブログ投稿「次世代の Confidential AI を推進」をご覧ください。
機密性の高い基盤の進化
Google Cloud は、インフラストラクチャ全体で Confidential Computing 機能を広く利用できるようにすることに取り組んでいます。Google の目標は、ハードウェア ベースのセキュリティ機能を基本的なコンピューティング サービスに深く統合し、お客様がパフォーマンスや運用の柔軟性を損なうことなくデータ保護を強化できるようにすることです。
C4 マシンシリーズにインテル トラスト ドメイン エクステンションズ(TDX)を導入
C4 マシンシリーズのインテル TDX を搭載した Confidential VMs は、まもなくプレビュー版が提供される予定です。
最新の第 6 世代 Intel Xeon プロセッサを搭載したこのインテグレーションにより、データ量の多いワークロードでのコンピューティング密度とパフォーマンスが大幅に向上します。インテル TDX を使用することで、C4 インスタンスはハードウェア的に分離された信頼ドメイン(TD)を作成し、基盤となるホストやハイパーバイザから機密性の高いアプリケーションやデータを保護します。
このアーキテクチャは、機密性とプライバシーを確保すると同時に、リモート認証も可能にするため、機密データを処理する前に環境が安全であることを暗号で検証できます。しかも、コードを変更することなく、数回クリックするだけで Confidential Computing を有効にできます。
ライブ マイグレーション機能の拡張
ミッション クリティカルな本番環境の運用には、クラウドの定期メンテナンス中であっても、高可用性と継続的な稼働時間の確保が求められます。
C3D ベースの Confidential VMs におけるライブ マイグレーションの一般提供が開始されています。この機能により、Google Cloud はワークロードを中断したり、暗号化されたゲストメモリを公開させたりすることなく、計画的なハードウェア メンテナンスを行うことができ、長時間実行される機密アプリケーションのシームレスな稼働時間を確保できます。
信頼とコラボレーションの強化: Confidential Space のイノベーション
Confidential Space は、セキュアなマルチパーティ コンピューティングとデータ共有を実現するために設計された Confidential Computing 環境です。これにより、組織は共同での ML やデータ分析といった機密データを扱ったコラボレーションを、互いの組織や Google Cloud にデータを明かすことなく行えるようになります。
「Google Cloud Confidential Space を使用することで、オンプレミス サービスと同等、あるいはそれ以上のセキュリティ保証を金融機関に提供できるようになりました」と、Symphony のプラットフォームおよびサイト信頼性エンジニアリング担当バイス プレジデントである Olivier Richaud 氏は述べています。「Confidential Computing を活用できなければ、セキュリティとプライバシーへの配慮が特に必要なお客様を、クラウドベースの SaaS サービスに移行させることは不可能だったでしょう。」
Confidential Space の重要な設計原則の 1 つは、ワークロード オペレーターを信頼境界から排除し、認証された証明済みのワークロードのみがデータにアクセスできることを暗号によって保証することです。
「金融サービスにおいて、AI システムが消費者に代わって行動することが増える中、データの処理方法に対する信頼が極めて重要になっています。Sahamati では、Google Cloud Confidential Space を、インドのオープン ファイナンス エコシステムでプライバシーを保護する AI を実現するための基盤技術と位置付けています。これにより、強固なセキュリティと説明責任を維持しながら、イノベーションに必要な信頼を築くことができます」と、Sahamati の最高イノベーション責任者兼 Sahamati Labs の責任者である Kiran Gopinath 氏は述べています。
Confidential Space の新たな機能強化により、柔軟性が向上し、保証がさらに強化されています。主な更新内容は次のとおりです。
独立した検証: インテル Trust Authority とのインテグレーション
このたび、Confidential Space 向けの独立した証明書検証サービスとして、インテル Trust Authority(ITA)の一般提供が開始されたことをお知らせします。
このインテグレーションにより、組織は、暗号鍵がワークロードにリリースされる前に、インテルのハードウェア ルート証明書を使用して Confidential Space 環境の完全性を独立して検証できます。証明書の検証をクラウド サービス プロバイダから切り離すことで、お客様は透明性の向上、保証の強化、より堅牢な信頼モデルの恩恵を得ることができます。
「Google Cloud とインテルは、Confidential Computing をコア インフラストラクチャに組み込むことで、ハードウェア ルートのセキュリティと独立した証明書を、現代のコンピューティングにおける標準機能の一部にしています。本番環境ワークロードを実行するインテル TDX 搭載の C4 Confidential VMs から、検証可能なマルチパーティ コラボレーションを可能にするインテル Trust Authority を備えた Confidential Space(一般提供中)まで、お客様は極めて厳格な規制環境下でも、アプリケーションの書き換えやパフォーマンスの低下を招くことなく、最も機密性の高い AI およびデータ ワークフローを暗号化、検証、スケールできるようになりました」と、Intel Corporation の Intel Product Assurance and Security(IPAS)担当ゼネラル マネージャー兼バイス プレジデントである Anand Pashupathy 氏は述べています。
セキュアなコラボレーションの加速: Confidential Space の H100 GPU のサポート
セキュアなマルチパーティの AI と ML を強化するため、Confidential Space での NVIDIA Hopper GPU のサポートが一般提供されるようになりました。これにより、複数のパーティが Confidential Space 環境内で Hopper GPU を活用し、データをプールしてトレーニングや推論を行うことができます。その際、各パーティのデータは、他の参加者や Google Cloud から確実に保護されます。
Confidential Space を使用すると、機密性の高いデータセットでのフェデレーション ラーニングや、データを一元化せずに共同でモデルを構築するなどのユースケースが可能になります。
「Google Cloud Confidential Space での Confidential GPU のサポートは、セキュアな AI を導入する上での最大の障壁の 1 つ、機密性の高いワークロードの保護と本番環境レベルのパフォーマンスの実現というトレードオフを解消します」と、Duality のプロダクト担当バイス プレジデントである Adi Hirschtein 氏は述べています。「これにより、ヘルスケア、金融サービス、行政機関における Duality のお客様は、機密データ上でフェデレーション ラーニング、機密 AI、暗号化された RAG ワークフローを大規模に実行しながら、処理全体を通じてデータとモデルを保護することが可能になります。」
次のステップ
AI 時代において、Confidential Computing はクラウド コンピューティングに不可欠な要素となりつつあります。拡大を続ける Google の Confidential VM、アクセラレーション ハードウェア、オープンソース ツールのポートフォリオをご覧いただき、組織内でセキュアなコラボレーションとプライベート AI のイノベーションを実現する方法をご確認ください。
詳細については、2026 年 6 月 23 日および 24 日に開催される Confidential Computing Summit にぜひご参加ください。
- Google Cloud、Confidential Computing 担当プロダクト リード、Sam Lugani
-Google、Confidential Computing 担当エンジニアリング リード、Ranjit Narjala


